二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.15 )
- 日時: 2019/08/12 20:36
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: joMfcOas)
柊「やっと書けた(白目)」
陸奥守「結果バレンタイン小説は…」
柊「無理でした(白目)」
来年、リベンジします…←
【小さなお宿】前編
紅閻魔は、柊本丸に来ていた。というのも光忠や歌仙から料理を教えてもらえないかと言われたためだ。ただ、少し早くに来てしまったらしく、まだ準備が終わっていないと聞き、その間庭を散歩することにしたのである。
色とりどりの紫陽花は、先ほどまで降っていたらしい雨のためにキラキラと陽の光に反射して自然の美しさを感じさせる。
「ん、あんたは……」
「おや、確か、食霊の流しそうめんでちたか」
「そうそう。そういうあんたは『さーゔぁんと』、だったか。それの紅閻魔だろう?」
「そうでち。こうしてお話するのは初めてでちね。よろしくお願いしまチュ」
「ああ、よろし」
そこまで言いかけた時、少し離れたところから先生ーっ、という二人の少女の声がした。二人でそちらを見ると諸葛孔明……ロード・エルメロイII世が二人の少女、ジャベリンとボーカロイドの一人であるV_flowerに囲まれている。その近くではロード・エルメロイII世の内弟子であるグレイがあわあわと困惑していた。
二人が彼を先生、と呼ぶのは単純にアレキサンダーの真似をしていたからなのだが、ひょんなことからシュミレーターに巻き込まれた二人を発見し、守った時以来二人が彼に惚れて、彼に積極的に話しかけたりしている、というわけだ。どうやらエルメロイII世とグレイは戸惑っているようだが。
「賑やかでちねぇ」
「ああ、そうだな」
「そこの二人、のんびり語らっているなら少しでも助けてくれないか!」
「え、め、迷惑でしたか?」
「ご、ごめんねセンセー……」
「あ、な、泣かないでくださいっ」
「め、迷惑というかなんというか、ああ泣きそうな顔をするな!!」
……強気に出れないあたり、弱いなぁと思う。優しい、とも言うのだが。
「あっ。おーい、紅ちゃん!」
「スプリングさん」
走ってきたのは貴銃士のスプリングフィールドだ。今はこの本丸の二の丸に住んでいると言う。しかしどこか見回りにでも行くのか、服装は貴銃士として出撃する時の服装に銃を持っている。
「もしかして、呼びに来てくれたのでちか? 申し訳ありまちぇん……」
「ううん、いいの! じゃあオレ、今から見回りだから行ってきます!」
「はい、行って……ん?」
紅閻魔がふと視線を別の方向へ向ける。そこにはいくつかの扉があり、その中の一つの扉、【WORLD_oty】と書かれた扉の隙間から光が漏れている。
それを認識したのとほぼ同時に。扉から勢いよく引き寄せられる。
「わっ!?」
「な、なんだ!?」
「きゃああっ!!」
「す、吸い込まれるっ!?」
「だ、ダメ、足、が……!!」
「くっ、そ……!!」
「う、わぁあ!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.16 )
- 日時: 2019/08/12 20:41
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: joMfcOas)
「……うぅ、ん……」
紅閻魔がゆっくりと目を開く。数回瞬きすると視界がクリアになって周りがよく見える。……どこかの平原のようだった。そこで紅閻魔を含む面々は倒れていた。
「……ここは……?」
「う、ん……」
「! 流しそうめんさん?」
近くに倒れていた流しそうめんは額を抑えながら頭を振る。そして周りを見て眉間にシワを寄せた。
ここはどこだ、と言う前に彼はみんなを起こそう、と提案し、紅閻魔もそれに頷く。一人一人丁寧に起こし、困惑する面々を落ち着かせて話をすることになった。一番状況を飲み込めていたのはスプリングフィールドで、あの時の扉はとある事情から世界の繋がりが不安定になっていたものだと言う。本来ならば紅閻魔がカルデアにやって来た時期くらいに再度繋がるはずだったが延びに延びていたのだとも。
「じゃあ、スプリングくんもあの扉がどこの世界のものだったか覚えてないの?」
ジャベリンの言葉にスプリングフィールドは眉を八の字にして頷いた。
「うん……。もう少しきちんと見れたら、分かったかもしれないけど……本当にごめんね」
「謝るなって。だけど、参ったな。帰る方法も分からないんじゃ……」
「事態にはいち早く気付いてもらえるとは思うがね」
「え、どうしてなのセンセー?」
flowerにエルメロイII世は彼女にちらりと視線をやる。たったそれだけの行為が彼女をどれだけ喜ばせるか気付いていないのだから困りモノでもある。
「スプリングフィールド、キミはあの後見回りだと言ったな? 見回りは一人で?」
「ううん、二人一組だよ。今日はケンちゃんと、あ」
「そういうことだ。時間になっても来なければ彼は柊に報告するのは間違いない。原因の特定などで遅くはなるだろうが」
スプリングフィールドとケンちゃんこと貴銃士ケンタッキーは仲がとても良い。お互いにスーちん、ケンちゃんと呼び合うほどに。そんな仲のスプリングフィールドが来なかったらすぐにケンタッキーは柊に報告するのは目に浮かぶ。……マスターっ、と大慌てで行くに違いない。
そんな光景を想像して、つい吹き出しそうになる。
「きゃあああっ!!」
悲鳴が、聞こえて来なければ。
「悲鳴!?」
「あっ、あそこ!」
ジャベリンの指す方を見れば、カゴを持った少女が犬のような化け物に襲われている。少女は必死に逃げているが化け物の方が早い。
誰が何を言うよりも早く、スプリングフィールドが銃を構える。ほぼ同時に紅閻魔が駆け出す。
銃声。犬のような化け物はギャン、と悲鳴をあげ、紅閻魔はその化け物を斬りつけた。
今度は悲鳴をあげる間も無く、化け物は消滅する。
「無事でちか?」
「あ、は、はい……ありがとうございます」
「それなら良かったでち」
紅閻魔が手を差し出して少女を立ち上がらせる。少女は紅閻魔よりも少し背が高く、痩せ気味で肩までの茶色の髪に、鼻にあるそばかす。実に大人しそうな女の子だった。
少女はカゴの中身を少しだけ確認し、中身の野菜や果物が無事であることが分かるとほっと息を吐いた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.17 )
- 日時: 2019/08/12 20:46
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: joMfcOas)
「お使いの途中でちたか?」
「あ、えっと……はい。
……野いちごが、いっぱい生っていたので、摘んでいたら……」
「あの化け物に襲われたということか」
「!?」
少女はびくりと体を震わせた。声がした方にはエルメロイII世や流しそうめんらがいる。紅閻魔が大丈夫でち、と声をかければ少女は頷く。
「あ、あの、本当に助けていただいてありがとうございました。どうか、お礼をさせていただけませんか?
少し歩くことになりますが、私の家で何かご馳走させてください!」
「それは悪いよ! お礼なんて、ね!?」
スプリングフィールドに紅閻魔が同意して頷こうとした時、くぅう、と控えめな音が鳴る。少しして顔を赤くしたのは、まさかのスプリングフィールドだった。
「……そ、そういえば後でご飯食べようと思って……忘れちゃってた……」
「……申し訳ない、レディ。ご馳走になっても?
その代わり、道中の先ほどの化け物たちは我々で対処しよう」
「はいっ! こっちですよ!」
少女が先に歩き出す。それに紅閻魔たちは付いていく。
「あ、そういえば名前を名乗っていまちぇんでちたね。あちきは紅閻魔と言いまチュ」
「そ、そうだったね! ごめんね、遅れて。
俺はスプリングフィールドだよ!」
「私はジャベリンって言うの、この子はV_flowerちゃん」
「よろしく! flowerって呼んで!」
「諸葛孔明。ロード・エルメロイII世とも呼ばれているから、どちらで呼んでも構わないが後者で呼ぶ場合は必ず『II世』を付けてくれ」
「内弟子のグレイです」
「流しそうめんだ。よろしく」
「私の名前はニナと言います、よろしくお願いしますね!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.18 )
- 日時: 2019/08/12 20:51
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: joMfcOas)
少女、ニナに連れられ、紅閻魔たちがやって来たのはそれなりに大きな村だった。若い男女は畑仕事をしていて子どもたちは仕事を手伝っていたり遊んでいたりしている。
「ニナ、その人たちは……もしかしてお客さんかい?」
「ううん、違うのおばさん。この人たちに助けてもらったから、お礼をするために連れて来たのよ!」
「そうかい……ニナを助けてくれてありがとうねえ」
中年の女性が優しく笑って頭を下げる。それに紅閻魔が当然のことでち、と返せば優しい子だねえ、とまた彼女は笑った。
「さ、そこのお宿が私の家です!」
「ニナちゃんの家ってお宿なの!?」
「はい、小さなお宿なんですが……」
ニナの指した方を見れば確かに宿というには小さいかもしれないが、それでもこの村の中では大きな建物だった。
ニナを先頭にそこへ入っていく。一階は大きな酒場になっているようで、テーブルがいくつも並び、大きなカウンターが一つ。そのカウンター内には本来なら酒をしまう棚があるようだが、今は何も飾られていない。それに首を傾げつつ、ニナに促されてカウンター席に座った。
「ちょっと待っていてくださいね、まずはスープをご用意しますから」
「ありがとうございます」
ニナはカウンターの中に入り、鍋を火にかける。どうやらすでに仕込みは終わっていたようだ。ちなみに紅閻魔は事前に自分は大丈夫と断ってある。
少しして温め終わったらしいスープを人数分の皿に注ぎ、上にパセリを散らしている。お待たせしました、と出されたスープは色とりどりの野菜が入ったスープだった。……野菜の大きさがバラバラで、やけに具が多い。
紅閻魔の眉間にシワが寄る。彼女は料理には厳しい。何なら味見しなくとも分かった。多分、このスープは言っては悪いが不味いと。
その考え通り、全員一口食べただけで黙り込んでしまった。いきなり吹き出すほどでないとしても、匙が進まない程度には食べる気はしないのだろう。
「あ、あの、お口に合いませんでしたか……?」
「え、えっと……そのぉ」
「申し訳ないけど、不味い」
「ちょっ! 流しそうめんさんっ!!」
「……そう、ですよね」
流しそうめんの言葉にニナは俯く。
「……野菜の切り方はバラバラ、そのせいで火が通り過ぎているものと通ってないものがありまチュ。肉だったら大変なことになりまチュ。
それからあまりに具が多すぎまちね。もう少し減らしても充分でち。
味も薄すぎるのでちょう」
「……」
「これはニナさんが作ったものでちか? 親御さんには習わなかったのでちか?」
「……両親は、もういないんです」
目を見開く。ニナは少しだけ寂しそうに笑っていた。
「両親は、魔物に殺されてしまって」
「! それって、さっきの……」
「料理は何にも教えてもらえないままでした。……どうにかして、上手くなろうと思っているのですが、どうしても上手くいかなくて」
「村の女性たちに聞けばいいのでは?」
「両親の味を、出したいんです」
ニナの言葉に全員が黙ってしまう。しかし、紅閻魔だけははぁ、とため息をついた。
「料理の基本を何も知らない人が、何故いきなり両親の味を出せると思うのでちか?」
「っ……」
「料理はそんなに甘くありまちぇん。まずは村の女性たちに聞いて基本ができるようになってから、両親の味を追求すべきでち」
「……はい」
耳の痛いことではあるが事実だ。切り方すらままならないような人が、小さいとはいえ宿に出していたであろうほどの料理の味をいきなり出せるはずがない。
すっかりしょげてしまったニナに紅閻魔が再度口を開こうとする。が、後ろからバン、と荒々しくドアが開く音がしてそちらを見た。そこにはガラの悪そうな男たちと明らかに裕福そうな男が笑みを浮かべて立っていた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.19 )
- 日時: 2019/08/12 20:56
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: joMfcOas)
「コンスタンさん……!」
「やあニナ。珍しく客が入ったのかな? まあそれも不味い料理を出されては逃げていくだろうがね」
コンスタン、と呼ばれた男の言葉に周りの男たちが笑う。ニナは悔しそうに顔を俯けた。
「そろそろ意地を張らないでここを売ったらどうかな? 今更こんな宿、どんな奴だって来ないよ」
「絶対嫌です、帰ってください!」
「はは、本当に意地だけは一人前だねえ」
「ここはお父さんとお母さんが、一生懸命作り上げた場所なんです。絶対に売りません!」
「その一生懸命作り上げた場所は、ずいぶん前から閑古鳥が住み着いているみたいだけどね」
「っ……帰って……帰ってよっ!! あんたが変な噂流したくせに!!」
「おやおや、何の証拠が」
「勝手に人を挟んで喧嘩するのはやめてくれないか」
エルメロイII世に注目が集まる。彼はぎろりとコンスタンと男たちを睨みつける。
「口を挟まないでくれないか」
「失敬。しかし、人を挟んで喧嘩をするのも如何なものかね。しかも相手はこんな少女一人。大人気ないにも程がある」
「……師匠も大人気ない時があるような」
「グレイちゃん、シッ」
「コホン。それに後ろの男たち。いざとなれば実力行使でもしようとしたのか? ならばこちらとて考えはあるが?」
ハッタリ……とは言い切れなかった。エルメロイII世がそこまでやるかどうかはともかくとして、これで襲いかかってくるならこちらも実力行使で解決する気がする。
男たちはこちらの面々を見て大したことはないと思っているのかニヤニヤ笑っているがコンスタンは笑みを消してエルメロイII世を見ている。
「……帰るぞ」
「で、ですがコンスタンさん、こんな奴ら程度」
「いい。放っておけ。ニナ、今度はちゃんとここを売り払う準備を進めておくといい」
「誰がそんなことするもんですか!」
コンスタンが出て行き、その場は沈黙で包まれる。それを破ったのは、ニナの囁くようなごめんなさい、だった。
「お礼なんて言って、全然出来ていないし、こんなところ見せちゃって」
「ニナちゃん……」
「いいんだよ。それにお礼をしてくれる気持ちが俺は嬉しかったよ!」
スプリングフィールドの笑顔に、ニナはむしろ泣きそうに顔を歪めた。
「それにしても、あいつらは何なんだ?」
「……あの人たちは、お父さんたちが居なくなってから、ここを売れって、頻繁に来るんです。
私にとっては大切な宿です。家です。それもありますけど……どうしてここまで執拗に迫ってくるのかは、分からなくて……」
ニナの目から涙が溢れる。彼女はすぐにそれを拭った。
「……もう、ダメなのかな。村の人も、何人かの人が無理せずにもう売った方がいいって言われたんです。
お料理も、上手くないですし」
「ニナちゃん……」
「ね、ねえ、私たちで何か手伝えないかな!?」
「flowerさん……」
「そうだよね、俺も何か手伝いたい!」
「私もっ! 私も手伝いたいよ!」
「俺にも何か手伝えることがあったら言ってくれ」
「スプリングフィールドさん、ジャベリンさん、流しそうめんさん……」
flower、スプリングフィールド、ジャベリン、流しそうめんの言葉にまたニナは涙を浮かべた。
そこで紅閻魔が口を開く。
「覚悟はありまチュか?」
「覚悟……?」
「あちきも、手を貸すことは構わないと思いまチュ。あちきが手を貸したいでちから。
ただ、ああいう者たちは粘り強いはずでち。
その間、ニナは折れずにいられまチュか?」
「……はい! ここを、売りたくないです!
大切な、家ですから!」
返事に紅閻魔は少しだけニナを見つめて、ふと笑った。
「分かりまちた。この紅閻魔が手を貸しまチュ」
「……!! ありがとうございます!!」
ニナが頭を下げる。そうと決まれば、とスプリングフィールドが早速明日からどうするか考えよう、と言い、全員がそれに同意……するはずだった。
「悪いが、私はやめておこう」
「師匠?」
「少々気になることがある。そちらを優先したい。グレイは……そうだな。こちらを手伝いたいならそうしていい」
「……いいえ、拙は師匠を手伝います。ニナさん、皆さん、申し訳ないですが……」
「いいよ、気にしないで!」
「そうそう。その『気になること』が解決したら、な!」
「あの、良ければ部屋はこの宿のお部屋を使ってください。今はどの部屋も空いてますから、言ってくれればその部屋をどうぞ」
「ありがたい」
エルメロイII世はそう言って立ち上がり、グレイと共に二階へ上がっていく。部屋を見に行ったのだろう。
その間に紅閻魔たちは、明日からの計画を立て始めた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.20 )
- 日時: 2019/08/12 21:01
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: joMfcOas)
「あの、師匠。気になることとは?」
二階の廊下、グレイは先程から気になっていたことを口にする。エルメロイII世の『気になること』とは何だったのか。
エルメロイII世は立ち止まってグレイに向き直る。
「あの男たちのことだ」
「コンスタン……でしたか」
「ああ。何故ここを執拗に売れと迫るのか。
土地としてもそこまで良い土地とは思えない」
「……」
「まあ、どことなく予想が着く気もするが」
エルメロイII世はそう言ってまた振り返って歩を進めた。
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