二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.160 )
- 日時: 2020/05/21 17:55
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
VS闇の御子
「なるほど、事前には聞いていたが確かにやりやすそうだな」
燐はそう呟きながら迫り来るロボット軍団を見ている。周りを水で囲い、渡れる術を橋のみにした理由は『やってくる敵を一方向に集め、戦える敵の数を減らし、有利に戦うため』だった。元々はロボットではなく、お偉方が呼ぶだろうブラック側の政府の人間相手の作戦だったのだが。
しかしロボット相手でも十分機能している。その上、こちらは後方にいる敵を艦娘らがトリモチのような液体が入ったボールを投げて当てたりするため、より有利な状況が作られる、はずだった。
『こちら西の庭、悪霊が多すぎる!! 石切丸をよこしてくれ!』
『南側、これ悪霊多すぎるよ!!』
『東側! 悪霊を防ぎきれない! 札持つ!?』
西の庭から御手杵、蛍丸、大和守の連絡が耳に入る。問題は悪霊の方だ。視界の端に映るだけでもかなりの多さ。とは言え、月詠さんからの物資である十二枚の札が建物を守っていた。札が破られることはないはずだ。
「落ち着いてくれ。札はこの程度の奴らでは破られない」
『そ、そっか、それなら良かった』
『こちら長谷部。西に石切丸を向かわせた。南には数珠丸、ツクヨミ様を、東には祢々切丸を向かわせている。
正面、そちらには太郎太刀、次郎太刀を向かわせた。悪霊の相手は任せてくれ』
「分かった」
連絡を聞き、燐は一気にロボットたちと距離を詰める。一体の頭を掴み、そのまま他のロボットを巻き込むように投げる。ガシャ、ガシャンと音を立てながらロボットのいくつかの部位が壊れていく。中にはそのまま動かなくなったり、橋から落ちて水没したロボットも出てきた。
後ろから気配を感じる。しかし燐は慌てることなく振り向き、口から火を吐き出した。鉄パイプごとロボットが溶け、そのまま崩れ落ちた。
何体かがすり抜けたとしても、後方に控えていたカニみそ小籠包と真剣少女の左文字さよ、一文字めづるや転生した文豪、三好達治らが侵入を許さない。
「っ、三好さんお願いしますっ!」
「任せるッス!」
さよがロボットの腕を切り落とし、三好の銃弾がロボットの核を的確に撃ち抜く。
「はぁあっ!!」
「てりゃあっ!!」
めづるがロボットの胴体を切り捨て、すかさずカニみそ小籠包が素手で破壊する。
「えぇいっ!!」
「当たれーっ!!」
艦娘の時雨、戦艦少女のギアリングがボールをロボットたちの足元に投げつければロボットたちの動きが止まる。そこを狙い、燐がロボットを破壊していく。
『正面、下がってくださいっ!!』
その声に全員が一気に下がれば、上から石が大量に降ってくる。それらはロボットを一気に減らした。見上げれば、手隙になっていたであろう短刀、脇差、打刀たちが投石兵を装備している。
「再度構え!! 放てーっ!!」
前田の号令と共に石が放たれる。かなり減りはしたが、完全にゼロになったわけではない。それに、悪霊には当たることはない。
ふと、奥の方で壊れたロボットの何体かが起き上がるのが見えた。……全く、悪知恵は働く悪霊だ。これではいくら壊してもキリがない。おそらく、この事態を引き起こしている闇の御子とやらを倒さねばどれだけ戦っても意味はないだろう。
闇の御子討伐及び、贄とされた二人の救出に向かったメンバー、そしてその中にいる麻琴の無事を祈りながら燐は再び火を吐いた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.161 )
- 日時: 2020/05/21 18:02
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
イノシシが鼻を動かしながら先導していく。
「本当に大丈夫なのか……?」
「ダイジョウブ、アイボウ、はなイイ!」
モウロが自信満々と言わんばかりに胸を叩く。その間にもイノシシはずんずん進んでいる。
すると、イノシシは突然止まり、壁に向かって鳴き始めた。
「ココ?」
モウロが聞けばそれを肯定するように鳴く。しかし、どう見ても普通の壁にしか見えない。
「陸奥守さん」
「……分かる。主の気配がありゆう。しかし、一体……」
「壁を破壊してみるか。隠し通路かもしれない」
タケミカヅチが布都御魂を構え、壁に斬りかかる。だが、普通の壁だったはずのそれはぐにゃりと歪み、その斬撃を物ともしない。
まさか、と思い、麻琴が手で触れようとするが触られない。思い切って顔を入れれば、そこには暗い空間が広がっていて……遠くに、ぼんやりとした光が見える。そこに、微かにではあるが柊とイライの姿を捉える。
「!! ここだ!!」
麻琴がそう言うとほぼ同時に、足を踏み入れる。真っ暗なそこは一応踏める床のようなものがあるらしい。そのまま走り出せば、後ろから陸奥守たちが着いて来る気配を感じる。
間に合え!! そう思いながら全速力で走るも、光には一向に辿りつかない。むしろ光が遠ざかるようだ。
その間にも光の中で柊とイライに触手は襲いかかる。徐々にその触手は二人に近づいていることが分かった。
そして。触手は。
とうとう、イライを掴み上げた。
「!!」
「ぐっ、あ!!」
嫌に声だけがはっきり聞こえる。触手は容赦なくイライを締めつけ、嬲るようにゆるりと上へ上へ持ち上げていく。
きゃはははは、と甲高い、普通の赤ん坊が発していれば聴き心地が良かったであろう、耳障りな笑い声が響く。
「ぐ、い、あ……!!」
触手を掴み、呻くイライ。それを見ていることしかできないのか! 誰もがそう思った時だった。
「い……あ゛っ……!! っすぅ……!
いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ!!」
それに何かを察したのか触手が一斉にイライの顔に向かって伸びていった。しかし。
「あい! あい! はすたあ!!」
間に合いはしなかった。それと共に、顔に伸びていった触手は禍々しい別の触手によって阻まれる。イライが、その禍々しい触手に包まれ、闇の御子が悲鳴を上げる。
気が付けば、『それ』は闇の御子の前へ降り立っていた。
「ふむ、姿が赤子であれど中々に頭は回るようだな。が、甘かった」
『それ』がゆっくりと何かを握り潰すように手を動かせば、パリン、とガラスが割れるような音がして……気が付けば、全員があの光の中に立っていた。
「なっ!?」
「ど、どうなって……!?」
「夢、のようなものよ。幻とは違い、どれだけその足を進めようとも進まぬ。『走っている夢』を見て、現実の己が走ることはあるまい?
さて、占い師よ。よくぞ我を召喚する呪文を覚えていたな。……本来であれば蜂蜜酒を口にし、唱えることで我ではなくビヤーキーを遣わす所だが、ここは我がいた世界でもお主がいた世界でもない。多少の違いがあっても良かろう」
にたり、と近くにいても見えない深淵に浮かぶ目、全てが嗤った。
黄衣の王。ハスターが降り立っているのである。
「ハスター殿、ようやく来てくれたのか」
「む、タケミカヅチか。ようやくとはどういう意味だ」
「ハスター殿は、他のさばいばーやはんたーと違い、あの建物にいなかっただろう?」
タケミカヅチの言葉にああ、とハスターは不愉快そうな声をあげ、はあ、と呆れたように息を吐いた。
「あの変質させられた付喪神たちに、あまり我が近くにいるべきではなかろう。神で、分霊と言えど我は邪神。清浄な場にいられぬわ。イドーラとて同じ理由で引っ込んでおるのだぞ」
「……」
「……そこの女よ。何か言いたそうだな?」
「え、ああ……いや、少し意外で」
「意外とな?」
「そういうの、気にしないのかと思ってさ」
「何、我は……うむ、本霊から切り離された雀の涙程度の『良心』。我とイドーラはそのような形でこの世界に転移してきたのだ。
何かを愛でるのも悪くはない故な、変質させられた付喪神たちも我なりに愛でてやろうとしているだけだ」
と、話してはいるが彼らの後ろにはまだ闇の御子がいる。闇の御子は苛立ったように叫び、触手に加えて悪霊、そして己の手で全員を襲い始める。
しかし、ほとんどはそれを見ていた。
陸奥守はすぐに本体を抜き、斬り捨てる。織田も二刀を持って軽々と斬り捨てた。タケミカヅチは布都御魂を振り下ろし、一等太い触手や悪霊を両断する。ブラウンが銃を構え、襲い来る触手を撃ち落としていく。
モウロは相棒に乗り、触手、悪霊をおびき寄せて少しでも彼らを襲うそれらを減らそうとしている。そしてハスターは闇の御子の手を触手で防いでいた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.162 )
- 日時: 2020/05/21 18:07
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
そして、倒れている柊とあまり動けないイライの側には長曽祢、むつみ、アブラナ、ミルク、ジウ、麻琴がいる。
長曽祢が本体でイライの手、柊の手足を拘束している縄を切り、ミルクがカプセルと水を差し出した。
「イライさん、こちらを飲んでください」
「これは……解毒剤かな?」
「はい。お水もあります。月詠さんの物資から持ってきましたので」
「ありがとう」
ミルクはかなり短気だ。同じことを二回やらせると苛立ってしまう。それを分かっていたイライは特に聞き直すこともないため解毒剤のカプセルと水を受け取り、素直にそれを飲んだ。
柊にはゆっくりと丁寧に飲ませる。
「止血しなければ……包帯はあるか?」
「ええ、ありますけど……」
長曽祢の問いにむつみが答える。けれどむつみは笑顔を浮かべるだけで長曽祢は首を傾げた。早くしなければならないのは分かっているが、多分、長曽祢は気づいていないのだろう。
こそりとイライが長曽祢の近くに寄る。
「長曽祢さん、包帯を巻くのはさすがに服の上からでは、ね?」
「? それはそうだが……」
「……ええと。気が動転しているのかな? ……その。服を、脱がせないといけないだろう?」
「……!! す、すまん!!」
ようやく気付いたようですぐに立ち上がり、背を向けた。顔は赤くなって「それはそうだったな……!」と呟いている辺り、本当に気が動転して思い至らなかったのだろう。
そんな中、とうとう触手らがこちらへ攻撃を仕掛けてきた。麻琴は桜花を広げ、触手を斬り、悪霊を防ぐ。その隣で長曽祢は本体で、むつみは『歌仙兼定』で触手を斬り伏せていく。
しかし触手も悪霊も次から次へと湧いて襲ってくる。
「あかん、キリ無いわ!」
「……ハスター、あれの核は分かる?」
「ああ、無論。して、どうするつもりだ?」
「ウチが核に斬り込む」
「何言ってるの!? 危険よ!」
麻琴の言葉にアブラナが反対する。とは言え、無理もないだろう。
「……いや、麻琴殿、任せてえいか?」
「陸奥守さん!? 何言って……彼女、普通の女の子じゃない!」
「……ああなるほど。心配してくれてるのか。ありがとう、アブラナさん。
でもウチは大丈夫。信じてほしい」
アブラナは気付けなかったが麻琴は普通の人ではない。故に仮に失敗しても叩きつけられない限りは大した怪我も疲労もないはず。
少し考えるような素振りを見せて、渋々分かったわ、と返ってくる。
「でも! 危ないと思ったら引き返していい……いや、引き返して!」
「うん、分かった。にしても、アブラナさんって心配性だね?」
「そうでしょう? 普段はあんなにツンツンしているくせに、ね?」
むつみがくすくすと笑いながら言う。ミルクもそこが可愛らしいですが、と微笑みながら同意した。
「〜っ!! も、もういいから行きなさいよっ!!」
「OK。皆さん」
麻琴が全員を見渡しながら口を開く。
「どうか、力を貸して」
全員が、頷く。
一つ息を吸って。吐いて。走り出す。その後ろをモウロ、陸奥守、織田、タケミカヅチが走る。
それを好機と捉えたのか触手が一斉に襲いかかる。その触手を陸奥守とタケミカヅチが前に出て斬り、できた隙間を縫うように麻琴は走る。なるべく並走している織田は集中できるようにとできうる限りの触手を斬っていく。
後ろはむつみとアブラナが固め、ミルクのスキル、『カルシウムシャワー』により呼び起こされた霧雨が全員に付いた傷を少しずつ治していく。
柊、イライを回り込んで襲おうとしている触手、悪霊はジウの『みずでっぽう』で容赦なく退けられていった。
闇の御子は手を使って向かってくる麻琴たちを振り払おうとしてハスターから離れようとした。
「させると思うか? もう少し早く考えるべきであったな」
ハスターの触手が一斉に手を絡めとる。ぎゃあああ、という叫びにくくく、とハスターは嗤う。
「その目も、ただ弱点を増やしただけに過ぎぬわ。見目で恐れさせようとしたのか知らぬが。
貴様に感心したのはこの空間に対する細工のみよ」
手を離させようと暴れるが微動だにしない。
「普段サバイバーに合わせている姿故、かなり矮小な姿ではあるが貴様を動かさぬ程度の力は持ち合わせている。諦め、潔く逝くが良い」
ぎゃああああ、と闇の御子が叫ぶ。最後の抵抗だと言わんばかりに麻琴を真横から触手で狙っていく。しかしそれすら、モウロと相棒の突進により敵わない。
「はぁあああああっ!!」
桜花で、核を切り裂く。闇の御子が叫ぶ。耳障りな甲高い声で。闇の御子が崩れていく。
その中から気絶した審神者が落ちてきた。受け止める者はなく、審神者はぶべっ、と声を上げてそのまま倒れている。……生きているようだ。
「こいつ、生きちょるのか」
「そのようだな」
「モウロ、シッテル、コウイウノ、シブトイ、イウ。リッパーハ、ゴキブリ、イッテタ」
「わりとドストレートな悪口だな???」
そんな話をしていると、突然空間が揺れ始めた。
「!? な、何!?」
「ふむ。この空間に細工していた者が存在を保てぬとなればここも崩れるか。戻らねば空間もろとも消えるぞ」
ハスターの言葉に全員がすぐに空間から出ようと走り出す。審神者はタケミカヅチが俵を持つように持ち上げた。
出口はすぐに見つかった。先ほど入ってきた場所だ。
動けぬ柊は長曽祢が抱え、最初に出て行く。次にむつみやアブラナたちが。イライは支えてもらうのを断り、ゆっくりと歩いているがあの距離であれば間に合うはずだ。
「イライ殿っ」
「大丈夫、先に出ていてくれないかい? ……ハスター様も」
「ふむ、良かろう」
心配ではあったが全員がイライを抜かして走り、悠々と脱出する。
イライがもうすぐで脱出する間際、後ろから触手が一つだけ伸びた。それはせめてイライだけでも道連れにするつもりらしい。
「イライさん!!」
「ああ、分かっていたよ」
触手がイライに近付く。近くにいた織田が手を伸ばす。
「前にもこんなことあったなあ。でも。
私は、同じ失敗を繰り返すつもりはない!」
ピュイィ、と鳴き声がして。触手は弾かれた。それとほぼ同時に織田がイライの手を取り、空間から一気に脱出させた。麻琴が霊布で防ぎ、ハスターの触手が出口の前に生やされ。
空間は、崩れかけの闇の御子と共に消えていった。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.163 )
- 日時: 2020/05/21 18:14
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
それとほぼ同時、避難場所。
『こちら西!! 悪霊が増えなくなった!!』
『多分、陸奥守たちがやってくれたんだよ!』
『こちらは東。これより悪霊を除霊に入る』
「了解」
正面の橋からはガシャン、ガシャン、と落ちる音がする。橋の上はトリモチのような液体とロボットの残骸が埋め尽くす。
中には燐が吐いた火で溶けた残骸もある。これは掃除が大変だな、とつい苦笑いしてしまう。けれど水に浮かびながら、喜び合う電、ギアリング、ラフィーの姿にそれは微笑みに変わった。
除霊や残骸の片付けを手伝っていれば、救出組や、あの騒動の中、まだお偉方などをシメていた面々が戻ってきた。まああの状況下、部屋から出ない方が一番の安全策ではあるのだが。お偉方の中には亀甲縛りされている者もいたが誰も触れないでおく。それを見た亀甲が「縛りが甘いよ!!!!!」と縛り直していたのも触れないでおく。
残骸の片付けを終わらせ、小規模とは言え祝いのパーティーが開かれる。ちなみにお偉方と審神者は全員縛られ、一ヶ所に集められ、見張りが何人か交代で立っている。
パーティーが終わってからお偉方に審神者は全員政府に引き取られ、公正な裁きを受けることとなるだろう。
それから一週間ほど経った日。柊は念のために休まされているところに、東雲がやって来た。
「今なんて????」
「ですから、保護した刀剣女士がこちらへの異動を希望しています。男士は別々の本丸に引き取られますが、刀剣女士は一つの本丸に引き取らせた方が良いだろうと」
「…………ちょーーーーーーーっと待っててもらえます……???」
「構いませんが」
「主、どうするぜよ」
「……え、どうしようか」
「引き取ってもいいと思いますよ」
「東雲さん???」
刀剣女士の異動希望。新しく出てきてしまった悩み事を余所に、この話は終わるとしよう。
ピロン。
【今回の事件、ご協力ありがとうございました。全員でお礼は何が良いかと話し合った結果、こちらをお送りいたします。
加工して頂いても構いません。なお、出た破片なども全然使えると思いますので、どうぞお受け取りください】
月詠さん、葉月さんの世界へ
【厄除けの宝玉】を三十個送りました。
月詠さんの世界へ
【避難の屋敷の設計図】、【罠の設計図】を一枚ずつ送りました。
次は厄除けの宝玉に関する情報です。