二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.178 )
- 日時: 2020/05/25 20:32
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: jfR2biar)
今回は短く、なおかつクロスカプのSSになります!
赤い花騎士と、銀の騎士
ここは、ブロッサムヒルに開かれている一つの喫茶店【ブロッサムタイム】。最近、この喫茶店がブロッサムヒルだけに留まらず、ありとあらゆる街の女性たちからの人気を集めていた。特別可愛らしいケーキがあるわけではない。優雅な外観でもない。その人気の理由、それは。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
銀の髪を持つ、整った容姿の男性店員。彼の名前は、ベディヴィエール。『セイバー』のサーヴァントであり、円卓の騎士の一人。彼がこのブロッサムタイムにおける人気の理由であった。早い話が、『イケメン店員がいる店』なのである。
さて、まずサーヴァントである彼が何故、それも異世界であるこの喫茶店で働いているのか。そちらの理由も単純明快だ。ここのマスターに頼まれた花騎士のサクラが色々な人に頼んで回っていたからである。その中でベディヴィエールが『異世界の仕事も体験してみたい』という理由から名乗りをあげたのだ。無論、事前にマスターである藤丸立香から許可は取ってあるし、シフトも無理のないように組んでいる。
「お待たせしました、ケーキセットになります」
「あ、ありがとうございますっ」
「あのぉ、よろしければ、この後、一緒にお食事しませんか……?」
「お誘いいただきありがとうございます。ですが、まだ仕事がありますのでご遠慮させていただきます、申し訳ありません」
「い、いえぇ……」
困ったように微笑みながら断れば断られたというのに女性たちは顔を真っ赤にする。誰もがベディヴィエールに視線を奪われていた。
ベディヴィエールが入っている時はいつもこんな調子である。店の外では一目でもベディヴィエールを見ようときゃいきゃい色めき立っている。
カランカラン、と来客を告げるベルが鳴る。ベディヴィエールがそちらを向き、いらっしゃいませ、と声をかけた。
「よっ」
「レディ・アキレア、今日も来てくださったのですね。こちらの席へどうぞ」
「サンキュ、ベディヴィエール」
花騎士のアキレア。男勝りな彼女はここの常連だった。とは言え、最初から常連だったわけではない。ベディヴィエールがここで働き始めたと聞き、最初は様子を見に来ていただけだったのだがたまたま頼んだパスタの味に惚れて常連と呼べるほどには来るようになっていた。彼女がよく連れている犬、ちくわは外で待っている。
よく座るカウンター席に座り、彼女はベディヴィエールにいつもの頼むと言えばかしこまりました、と返ってきた。
女性たちはひそひそと話し合う。アキレアはそれを気にする様子もなく、先に出されたコーヒーを口にする。内容はよく聞こえないが、聞いて心地いいものでもないだろうと。
「花騎士の……」
「アキレアさんだわ……」
だからアキレアは、いや、ベディヴィエールも知らない。(そもそもベディヴィエールは気付いていない)
「やっぱり、あの二人ってお似合いよね」
「一見そこまででもなさそうなのだけど……あの二人が並ぶと絵になるわぁ」
「はー、素敵ぃ……」
実は、ほとんどの客は嫉妬などしていないことを。
男勝りで頼り甲斐のあるアキレアと、穏やかで美しいとも言えるベディヴィエール。ほとんどの客はそんな二人を見て目の保養だわ、なんて考えているのだ。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.179 )
- 日時: 2020/05/25 20:37
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: jfR2biar)
「レディ・アキレア、お待たせしました。本日の日替わりパスタセットになります」
置かれたトマトソースのパスタとサラダ。それが来るとアキレアはフォークを持ち、早速食べ始める。
「美味いなぁ! やっぱここのパスタ、最高だな!」
「ふふ、セザール殿も喜びます」
セザール、と言うのはここのマスターだ。基本的には料理等を担当しており、一通り注文を作り終えるとたまに顔を出してコーヒーを淹れている。
その後はベディヴィエールは注文や配膳に忙しく動き、アキレアはゆっくりと食事をしていた。とは言え、他の客に比べれば早い方だ。ちくわを待たせていると言うのもあるだろう。
「ふぅ、美味かった。会計頼む」
立ち上がり、会計へ向かう。会計は別の店員が担当し、スムーズに会計を済ませてアキレアが店を出ようとした時だった。
「あ、待ってください」
「ん?」
ベディヴィエールが何か小さな袋を持ってアキレアの元へ駆け寄る。そこに入っていたのは、小さなケーキ。
「よろしければ、後でゆっくり食べてください」
「お、いいのか! わりぃな! にしても美味そうだなこれ」
「……その、私が作ってみたんです。それ」
その一言に、店にいる女性客がガタッと反応を見せた。外で待っている客もだ。
ベディヴィエールの手作りケーキ!? 何それ自分たちも食べたいメニューに入れて!! と。
「へえ……ありがとな、後でゆっくり食べさせてもらうわ」
「! ええ、是非!」
お互い穏やかに笑い合い、アキレアは店を出て行く。その際にちくわも立ち上がり、アキレアの側から離れずに歩いて行った。
店は少しずつ先ほどまでの空気を取り戻していく。中にはベディヴィエールとアキレアのやりとりに興奮する客もいた。
「はぁあ素敵だわ〜……。あんな恋人のようなことができるなんて……」
「アキレアさんが羨ましい……!」
「本当よ。本当……本当……あれで、付き合っていないのよね……」
「なんで付き合ってないのかしら本当に」
「私たちからしてみればもう付き合っててもおかしくないほどなのに、お二人とも自分の気持ちに気付いてないから……」
「くっ……じれったいわね、ちょっといやらしい雰囲気にしてきます!」
「くっ……じれったいわ一人で行くなんて、加勢します!!」
「援軍呼んできます!!」
付き合っててもおかしくない雰囲気を纏っていながら、どちらも自分の想いにすら気付いていない。そんなじれったい無自覚両片想いは、いつ自覚して、そしていつ、くっつくのだろうか。
ただ言えることは。
まだしばらく、他の客たちのじれったさは解消されないのは、確実な事柄であった。
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