二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.214 )
- 日時: 2020/07/08 00:04
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: KwETyrai)
柊「ギ リ ギ リ 過 ぎ ま し た」
そんなわけで七夕SS、天悪さんとのコラボになります!
七夕は奇跡に染まり
本来、異世界というのは交わることのないものだ。交わったとしてもそれはとある権限を持つ者同士が互いに許可し合う時くらいだろう。しかし、ごく稀に自然と、けれどまた別の世界で交わることもある。
これは、そんなほんの少しの奇跡のお話。
七月七日。言わずと知れた七夕の日。しかし七夕の日というのは実は梅雨の最盛期にかかっており、雨が降りやすい日でもある。
そんな話を、福富しんべヱ(表)はぼんやりと空を眺めながら思い出していた。七夕に都合が付く人限定にはなってしまうが柊サイドの世界──ハザマセカイで行う七夕パーティー、七夕祭りに誘われたのだが、雨になってしまわないか心配だった。
それに、雨になってしまえば天の川で会うはずの彦星と織姫が会えなくなってしまうと聞く。それが可哀想で仕方ない。
「どうか、七夕の日は晴れますように」
手を合わせてお祈りする。意地悪な神様じゃなくて、優しい神様に届きますように。
遠くから乱太郎(表)ときり丸(表)の声がして、しんべヱ(表)はそちらへぽてぽてと駆けていった。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.215 )
- 日時: 2020/07/08 00:08
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: KwETyrai)
ふっと、目を開く。周りはほんのりと明るい不思議な森だった。上を見ると何故かほんのりと光る白い木の実がいくつも実っていた。下にも何故かこれまたほんのり光るきのこが生えている。
「わ〜きれいだなぁ」
しんべヱ(表)はほのぼのと言う。しかしふとそういえば自分は自室の布団で寝ていたはずだけど、と思い出した。
「あ」
「?」
高い声がしてそちらを見る。そこには兎の耳を模した飾りの付いたフードをかぶる少女だった。
お互いに無言で見つめ合うこと五秒。先に動いたのは少女だ。少女はしんべヱ(表)に歩み寄ってくる。
「こんばんはなの」
ぺこり。少女は頭を下げた。
「こんばんは〜」
ぺこり。しんべヱ(表)も頭を下げる。
「初めましてなの。ウーちゃんはウサギゴケっていうの」
「初めまして、福富しんべヱだよ!」
「うん、よろしくなの。ところで、しんべヱはここ、どこか分かるの?」
「ううん、ぼくも気が付いたらここにいたんだ」
「そうなの……ウーちゃんも気付いたらここにいたの。団長さんのお部屋で眠っていたはずなの」
「あ、ぼくも部屋で寝てたんだ〜」
「おんなじなの」
「おんなじだね!」
実に癒される会話である。そんな二人の後ろからそれぞれ二人ずつ、ひょっこりと森から人が現れた。
「あれ、しんべヱ?」
「わー、しんべヱもいたんだねー!」
ラグナス(表)とブラウン(表)。ちなみにラグナス(表)は青年の姿である。
「ウーちゃん……いた……」
「兎の子もここにおったか」
ラフィーと始皇帝(FGO)。お互いがお互いに誰? という目を向けている。
「ラフィーお姉ちゃん、始皇帝さん」
「ん……ウーちゃん、この人たち、だぁれ?」
「見かけぬ顔だな」
「ラグナスさん(表)! ブラウン(表)!」
「ねえねえしんべヱ、この人たち誰?」
「初めてみる人たちだぞ!」
「えっとね、あの子は福富しんべヱって子なの」
「えーとね、あの子はウサギゴケちゃんだよ!」
「それから」
「それから」
「「後はだぁれ?」」
お互いが首を傾げるとほとんどがズッコケた。始皇帝(FGO)だけが笑っている。
「ははは、兎の子も抜けているな。朕は始皇帝。遠慮なく始皇帝と呼ぶことを許そう」
「ラフィー……」
「おれはラグナス(表)だ!」
「ぼくはブラウン(表)です! よろしくお願いします!」
自己紹介を終えると、今度はふわりふわりと何かが浮いて近づいてきていた。見るとそれは小さな人のようだ。
「マニュ、マニュ」
「あれ……? この子、妖精さん?」
「こんばんは、まにゅ」
「しゃべったぞ!」
「こんばんは!」
ウサギゴケが妖精さんと呼んだ、赤、青、黄色、紫のフードをかぶった妖精たちが集まってくる。しかし中にはその妖精たちとは異なり、ゴーグルを着けたり、鎧を身に付けている妖精? もいた。
「妖精の森へようこそ、まにゅ」
「妖精の森とな?」
「そうでございます!」
鎧の妖精が頷く。そしてその隣にいたゴーグルを着けた妖精が口を開いた。
「ここはいろんな人々にこっそり力を運んでいる妖精たちが住む森なんです! 元々は別々の世界に住んでいましたが、ハザマセカイという世界が創られ、私たちもこの森で出会い、ここに住もうという話になって住んでます!」
「意外と雑では」
「時々、夢世界、日ノ許という世界から教育係、鍛錬係という妖精に近い存在が来ていろいろ教えてくれたり、鍛えてくれるまにゅ。
まにゅは花騎士に力を運んでるまにゅ」
「時々団長さんが連れてきてくれる妖精さんにそっくりなの」
「多分、ダンチョーさんって人が連れて行くのは百才のマニュたちまにゅ。まにゅはまだ五才だけど、百才のマニュたちは運べる力が多いまにゅ」
「マニュ殿マニュ殿! この方々にあれを頼んでみるのは如何でしょう!」
「ですね!」
「まにゅ〜」
「あれってなぁに?」
しんべヱ(表)が首を傾げて聞けば、マニュや妖精たちは困ったように眉を八の字にする。
「実は、この森は七夕の日に天の川から降る『キラキラ』を浴びないと一年中暗くなってしまうまにゅ。だからいつも神様に「キラキラを降らせるために、良いお天気にしてください」ってお願いしに行くまにゅ」
「ところが、今年行くはずだった妖精さんが怪我をしちゃって行けなくなっちゃったんです」
「その妖精殿はこの森で一番体力のある妖精殿。そうそう代わりは見つかりませぬ」
「だから、ニンゲンさんたちに行ってほしいまにゅ。マニュたち、とっても困ってるまにゅ」
妖精たちがお願いします、と頭を下げた。
「む、それは構わぬがこちらに何か利益は」
「おれたちに任せろ!」
と、ラグナス(表)。
「ぬぅ」
「困ってる人は助けないとですね!」
と、ブラウン(表)。
「むぅ」
「神様に、いいお天気にしてくださいって言えばいいんだね、分かったよ!」
と、しんべヱ(表)が答えた。ウサギゴケもこくこくと頷いている。
「んーむ……まあ良いか。して、その神様とやらに会うためにはどうすれば良い?」
「教えて……」
マニュたちはすっと指を差す。そちらを見ればいくつかの木の実やきのこが青く光っていた。
「きのみさんやきのこさんが教えてくれるまにゅ」
「青く光る木の実、きのこがある方向に進んでいけば神様の元へ辿り着けまする!」
「だけど木の実さんもきのこさんもあまり早いと追いつけないからゆっくり行ってあげてくださいね!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.216 )
- 日時: 2020/07/08 00:13
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: KwETyrai)
青く光る木の実やきのこを頼りに歩いて数十分。時々しんべヱ(表)が疲れて休んだり、始皇帝が痺れを切らして「空から見れば早いのでは?」と飛びそうになったりとちょっとしたトラブル等もあったが、しばらく歩いてしんべヱ(表)たちの目の前にまるで門のような形で光る木があった。
「もしかしてここかなぁ?」
「慎重に行ってみよう……!」
「おれが先に行くぞ、おれは勇者だからな!」
ラグナス(表)が先頭にゆっくりと木に近づいて行く。そっと手を入れるとまるで水面のように木の中の景色が揺れた。
慎重にラグナス(表)が景色の中に入って行く。すると中から「うわぁ」と感動したような声が聞こえた。
「みんな! すっごく綺麗なところだ!」
「綺麗なの?」
ウサギゴケが頭を入れる。彼女も「ふわぁ!」と感動と驚愕が混ざった声を上げた。
無害であることは確実だと分かったしんべヱ(表)たちは景色の中へ次々入って行く。そしてしんべヱ(表)たちの目に映ったのは……静かで、凛としていて、綺麗な場所。
上は優しい星空。月は見えなかったけれど、それでもうっとりと見惚れてしまいそうになる。下にはその星空をはっきりと映した足首までが沈む浅い水面。よく見ると水の中では小さな魚が何匹か泳いでいる。星空と水面の境界線は明るく、不思議な明るさだ。
何も聞こえないと不安になるというのにここではそれすら心地いい。
そしてその中央には、社。紅色の階段を登って入って行くような形だ。
思わずその社の前まで行くと、社の扉がギィと開いた。
「ふむ、今年の遣いは人と、ふむ……実に面白い」
現れたのは、淡い水色の長髪に華美な着物を着た美女だった。吊り上がり、蛇のような目は威圧すら与えそうな物だが優しく細められたその目を怖がることはできるはずもない。しかし、よく見ると美女の頬には鱗のような模様が浮かんでいる。
「よくぞ参った、人の子らよ。妾は『ミズチ』。この神域の主、歓迎するぞ」
ミズチ、と名乗った美女はしんべヱ(表)たちに優しく微笑む。
「あのぅ、マニュさんたちが言っていた神様ってあなたですか?」
「マニュ、というのが妖精らのことであればその通り。妾がその神であろう。
ふむ、となれば……。人の子らよ。ここまで来た褒美だ。望みを言うてみよ。妾が叶えられることであれば何でも叶えてやろう」
にこり、と微笑むミズチ。答えは分かっていると言わんばかりだ。それに気付いたのはこの場では始皇帝だけだったが。
しんべヱ(表)がせーの、と口に出す。そしてほぼ同時に始皇帝以外の五人が声を揃えた。
「七夕の日を、良いお天気にしてください!!」
「ふふふ、相分かった。妾が叶えてみせようぞ。そうそう、その願いを伝えに来た褒美もやろうか。
ほれ」
すぅ、と五人の前に現れたのは、小さな星だった。わぁと五人は歓声を上げる。
「この場所に輝く星だ。お主らの望む物の形になって枕元にあることだろう」
「とっても綺麗だね!」
「ありがとうミズチおねえさん!」
「ありがとうなの、ミズチさん!」
「ふふふ、良い良い。……さて。妾は名残惜しいが、ここにはあまり長居せぬ方が良い。お主らを元の場所へと帰そう。
子らよ、七夕を楽しみに待つが良い」
「はーい!!」
「ふふ……なんと愛らしいことか。さあ、『眠るが良い』」
そのミズチの一言でしんべヱ(表)たちの目蓋が重くなり、頭がぼうとしてきた。とっても眠くて、ふぁあとあくびして、しんべヱ(表)たちはぱたんと倒れて、消えた。
始皇帝だけは、その場に残っている。
「朕は帰さぬのか?」
「主はまだ願いを妾に告げておらぬ。……妾の機嫌は良い。あの子らと違う願いでも快く聞き届けようぞ。ただし、他の者に害のない物であればだが」
「ふむ……うん、あやつらと同じで良い」
「は?」
「朕も見てみたいと思ったまでだ。天の川を。何せ兎の子を始めとする者たちから聞かされておったのだから、興味も湧くというもの」
「……ふふ、ふははははっ! いやはや、予想外だった! まさかお主も純粋な願いを告げるとは!
良い、良いだろう、その願い、必ずや叶えようではないか!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.217 )
- 日時: 2020/07/08 00:18
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: KwETyrai)
ふと目を覚ます。そこは眠っていた部屋だった。
「ふぁあ……」
「おはようしんべヱ(表)」
「おはよぉ……」
「今日はいい天気だなぁ!」
「これから絶対に天の川が見られるね」
乱太郎(表)ときり丸(表)の声に外を見る。雨が少し前まで降っていたのか、地面はまだ濡れていたけれど、草木に付いた雫がキラキラと輝いていて、とても綺麗だ。
もしかして、と思っていると後ろからあれ? という声が聞こえた。
「しんべヱ(表)、枕元に何かあるよ?」
その乱太郎の声にパッと顔を明るくする。それはきっと──。
夜、ハザマセカイ。
「あれ、しんべヱ(表)なの?」
「あっ、ウサギゴケちゃん!」
短冊を持って歩いていたら、あの不思議な、妖精の森で出会ったウサギゴケがいた。ウサギゴケも短冊を持っている。
「今日は晴れたの。ミズチさんがお願い、叶えてくれたの」
「うん! 妖精さんたちも喜んでくれてるかな?」
「きっと喜んでくれたの。しんべヱ(表)、お願いは書いたの?」
「書いたよ! ウサギゴケちゃんは?」
「ウーちゃんも書いたの。だから笹に吊るしに行くの。一緒に行くの!」
「うん!」
ウサギゴケと共に吊るす係の岩融に短冊を渡せば彼は笹の天辺に二人の短冊を吊るしてくれた。願い事が叶うと良いな! と笑ってくれた。
二人はそのまま料理や飲み物を食べたり飲んだりしている。
「おお、兎の子よ。ここにおったか」
「あ、始皇帝さん!」
「あっ、あの時のお兄さんだ!」
「其奴は妖精の森におった子か。元気そうだな。おおそうだ、朕はこれから天の川をなるべく近くで見ようと思うが、兎の子らも来ぬか」
「いいの!? 行くの!」
「でも、どこで見るの?」
それはな、と始皇帝が二人を抱える。するとふわりと浮遊感。
「わぁあ!?」
「こうするのだ。そうさな、あまり近づきすぎると彦星とやらと織姫とやらの逢瀬を邪魔しかねんから、ほどほどにしておくか!」
「しんべヱ(表)大丈夫なの? ウーちゃんは慣れてるから大丈夫だけど……」
「だ、大丈夫……わぁ、綺麗!」
「うん!」
「さあもっと近づくとしよう!」
そうして、しんべヱ(表)とウサギゴケは始皇帝に抱えられ、ハザマセカイの誰よりも近くで、天の川を見た。きっと、忘れられない七夕になると、しんべヱ(表)は思っていた。
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