二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.281 )
- 日時: 2020/10/26 17:55
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: /8z3.y80)
※今回からサスペンス?です。
※作者ぶっちゃけそんなに頭良くないです
※矛盾していたって堂々とそれっぽく言えば何とかなるさの精神です
※私に頭の良いキャラの再現はこれが限界なんじゃあ…許してください…_:(´ཀ`」 ∠):
解き明かせ、真実! 1
江派の刀剣男士は、そろそろ終わる旅行を和風の旅館で締めくくろうとしていた。そうしようと決めたのは、豊前の一言からだった。
「この合宿、ってのは楽しそうだな。そういや、ぱらでぃーすにも旅館あったはずだし、ちょっとやってみっか、合宿」
合宿。それは学園、部活モノのアニメやドラマで一回は挟まれる強化期間。作者も一度だけ学校での寝泊まりになったが合宿をしたことがある。閑話休題。
とにかく、篭手切はそんな合宿に心を躍らせていた。
「ああ、早く畑の様子を見に行きたい……」
「と言っても、桑名は毎日のように主の所へ言って一時的に戻っているだろ?」
「あのね、一時的に見るとの毎日きっちり見るのじゃ違うんだよ……。来年は留守番してるよぉ……」
「そんなこと言うなって。珍しい野菜とか見れたろ?」
「あっそうだそうだ。持ち帰れる苗とかは買って行かないと。それから増築も」
「一気に元気になるな……」
そんな桑名、松井、豊前の会話にくすりと笑いながら旅館へ入っていく。
「あ」
「あ?」
「あっ」
「お、南泉たちもここか!」
「鳴上くんたちもここなんだねぇ」
旅館の受付にはすでに、鳴上悠を筆頭とする自称特別捜査隊のメンバーと、南泉、山鳥毛、日光一文字の福岡一文字派の面々に加え、若干解せぬ、という顔をした山姥切長義がいた。彼らはすでに受付を済ませたのか複数の鍵を持っている。
「篭手切たちもここなんだな」
「ああ。ここで歌って踊れる付喪神として合宿をしようと言う話になって」
「合宿……?」
「合宿になるのか……?」
花村陽介と長義が首を傾げるが空気だけでもな、と豊前が返す。
そんな風に世間話をしていると突然、フロントの一角から「そんな話聞いてません!!」という怒鳴り声が聞こえた。思わずそちらに目を向けると複数の少女たちが同じく複数の男たちを睨んだり、怯えた目や困惑した目を向けている。
「聞いてないって、そりゃそうじゃないか。キミたちみたいな若い子に事前に承諾を取ろうとしても嫌がるだろう? どうせ全部見せるわけじゃないのだからそう怒らなくても」
小太りな男が開き直ったように言う。しかし少女は怒ったまま口を開く。
「当たり前です!! 事前に承諾が取れないからって、騙し打ちみたいなことをされて怒らない人がいますか!?」
「はぁあ、全くうるさいね。いいかい? キミたち程度、いくらでも潰せるんだよ?」
「それは穏やかではないな」
少女たちを守るように、山鳥毛と日光、南泉が間に入る。その中でも男たちに怒鳴っていた少女の口から思わずかあなたは、とこぼれた。
パッと見はヤの付く自由業な三振りに男たちはたじろいだ。
「な、なんだね、キミたちは。いきなり割り込んできて失礼な奴らだな」
「失礼。ただ、あまりに聞き逃せない言葉が出てきたものでね。割り込ませてもらった」
「あまり公共の場で騒ぐもんじゃねー……にゃ」
「これ以上騒ぐようであれば、第三者の介入が必要か」
「っ!! ……ちっ。とにかく、今のところそれ以外のスケジュールはこなしてもらうからな」
そう言って男たちは歩いて行く。少女たちは明らかにホッと息を吐いた。
「あ、あの」
「大丈夫か? ……ん?」
「やっぱり、海で会った……あの時も、今も、ありがとうございます」
綾瀬絵里が頭を下げる。全員が歩み寄り、彼女ら、μ'sに大丈夫かなど声をかけて行く。
「あれ、キミは……」
「あっ、空港の……」
「あの時はごめんね。大丈夫?」
「い、いえ、大丈夫です……」
「桑名さん、彼女らと知り合いなんですか!?」
「? 知り合い、というか空港でぶつかっちゃってね。そういう篭手切は知ってるの?」
桑名が聞けば篭手切ははい! と元気よく返した。
「彼女らは音ノ木坂学院のすくぅるあいどる、みゅーずです!」
「すくぅるあいどる? 普通のあいどると何が違うの?」
「ええ、すくぅるあいどるというのは、正式な事務所を通してのでびゅうはしていないのですが各学舎の少女たちが結成している、一つのあいどるの形です!
みゅーずの他にもあらいず、というすくぅるあいどるもいるんですよ!」
「へぇ。いろいろ形があるんだねぇ」
桑名と篭手切がのんびり話しているが、それをそんなことより! とりせが遮った。
「ねえ、さっきの奴らに何言われてたの? 騙し打ちって……」
「ああああ!! あ、あなたは……久慈川りせさん!? ふぁああ、ほ、本物……可愛いですっ!!」
「えっ、あ、ありがとう!」
「うぅ、こんな状況じゃなければ、サインが欲しかったよぉ……」
「さ、サイン? もし後でよければ」
「いいんですかっ!?」
「う、うん!」
「わぁあ……ありがとうございますっ!!」
「わ、私も、私も欲しい!!」
「う、うん、あげるよ! とりあえずさっき何言われてたのか話してほしいな!?」
りせが言えばすっかり興奮していた小泉花陽と矢澤にこはハッとして、そうだった、と呟いた。
怒りが収まらない絵里と、そんな絵里の説明を補足する東條希の話によれば、彼女たちはスクールアイドルの中から抽選で当たる『スクールアイドル強化合宿』に当選してもう一組のスクールアイドルたちとこのパラディースに来た。今までは適度に遊びつつ歌、ダンスのレッスンに基礎体力を付けるための運動とその名前に違わぬ活動をしていたのに、今日、この旅館に来て突然『温泉に入る写真や映像を撮る』などと言い出したのだと言う。
当然、何も聞かされていないμ'sの面々は困惑。どういうことかと説明を求めればあの男たち……スタッフたちは平然と『プロデビューするなら当然のことだろう』と言って退けたのだ。しかしμ'sの面々はまだプロデビューは考えておらず……その予定はないと言えばいずれ心変わりするだろうと。
「温泉に入る写真や映像……仕事によってはあるけど、それでも事前に説明がないなんておかしい!」
「うん。普通は事前に説明しておくべきことなのに……」
憤慨するりせに天城雪子が頷く。
むしろ、ほとんどがそれを聞いて怒ったりしている。
「そ、それも」
「ん?」
花陽が目を泳がせ、少し震えながらタオル一枚で、って、と言えば何人からか表情が消えた。
「なっ……に考えてんのあいつら!?」
里中千枝が叫ぶ。確かに、確かにそういう仕事も番組もある。が、それだって騙し打ちなどするわけがないだろうに。
下手をすれば彼女たちに深い心の傷を負わせるかもしれないのに。
「……まずいかもしれないな」
長義が呟いたのを、南泉が聞き逃さなかった。どういうことだ、と聞けば長義は眉間にシワを寄せたまま口を開いた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.282 )
- 日時: 2020/10/26 18:01
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: /8z3.y80)
「正直、あの男たちは合宿なんてどうでもいいのかもしれない。目的は、キミたち自身だろう」
「でしょうね。……突然言い出したのは騙し打ちもあるのでしょうが、何よりも冷静さ、正常な判断力を奪い、思い通りに話を運ぶためかと」
長義に白鐘直斗が言えば、μ'sの面々は一気に顔を青くした。花陽と南ことりに至っては目に涙が浮かんでいる。
「皆さん、部屋はどこですか?」
「え? ええと……梅の間です」
「! ちょうどいいです。僕らはその隣にいます。何かあったらすぐに駆け込んできてください」
「私たちもその近くの鳥の間だ。なるべくキミたちの部屋の方を気にかけるようにしよう。
白鐘、もし彼女らが駆け込んできたら私たちを呼んでくれ」
「分かりました、山鳥毛さん」
「俺たちの部屋も近くだったら気にかけとくよ。な?」
「うん」
「ええ! 権力を盾に、卑怯な者たちを許してはおけません」
「ああ。何かあったらすぐに連絡してほしい」
「あ……ありがとうございますっ!!」
μ'sの面々は頭を下げる。気にしないで、と言ったところで花陽、ことりだけでなく全員が涙を浮かべていることに気付いた。……安心からだろうか。
篭手切たちはすぐに受付に行き、部屋を取る。梅の間の近く、月の間だった。あそこまで騒げばさすがにフロントの従業員の耳にも届く。それとなく他の従業員に気にかけるように言っておくと声をかけてくれた。
四振りで頭を下げて全員で部屋まで行く。よもやこんな騒動に巻き込まれるとは思わなかったが、μ'sの面々が汚い者たちに手込めにされるのを見過ごして後悔するよりは余程マシだ。
部屋は広々とした和室。窓からは煌めく海が見える。
「わぁあ……とても綺麗ですね!」
「だなぁ! 近くの部屋もこんな景色が見えてるんだろうな」
篭手切と豊前は外を見ながら感動の声を上げる。一方、桑名と松井はあることに頭を悩ませていた。
「ねえ豊前、篭手切」
「みゅーずの子たちを守るのは賛成だけど、れっすんの間とかに何かあったらどうする?」
「あ、そうか……さすがにそこまでは行けねえよな」
「風呂の時間は雪子さんたちが合わせてくれると思うけど」
「れっすんなら問題ありません! 私たちも、合宿でここに泊まっているんですよ!」
「! そっかぁ、僕らもれっすんで一緒にやればいいのかぁ」
「多分、れっすん用の部屋とかあるかもな。そこを一緒に使わせてもらえばいいのか」
「確か二つ、隣同士であったはず。聞いてくるよ」
「ありがとうございます、松井さん!」
「少ししたら夕餉の時間だし、その時に隙を見て話しておこうか」
「ああ!」
夕食時、この旅館では食事はバイキングとなっていた。席を取り、各々好きな料理をとって堪能する。
そんな中、桑名はついじぃ、と花陽を見てしまっていた。
「美味しい……!! ここのご飯美味しくて、お箸が止まらないよぉ!!」
花陽は実に幸せそうな顔をして料理を食べていた。見ているこっちが幸せになるような、そんな顔を。
しかし桑名が見ていることに気付いたらしいにこが「見られてるわよ」と言えば花陽はハッとして桑名を見て顔を赤くし、気まずそうに頭を下げた。桑名もぺこっと頭を下げる。
「く、桑名さん、あまり見るのは失礼かと……」
「あ、そうだよね。後で謝っておかなきゃ」
「まあでも、つい見たくなるような幸せな笑顔ってのは分かるぜ?」
「……分かるけどね」
「うん。あんなに幸せそうに食べてるところを見ると、作った甲斐があるんだろうなぁって」
へにゃり。桑名が笑う。畑仕事が好きでやっているが、あんな風に幸せな顔で食べてくれるならと思うとよりやる気が出るというものだ。
そう考えながら、桑名たちは食事を終え、隙を見てレッスンに合わせて自分たちも隣でレッスンをすると伝えておいた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.283 )
- 日時: 2020/10/26 18:07
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: /8z3.y80)
夜、松井はふらりと旅館の中を歩き回っていた。レトロなゲーム筐体や今では珍しいエアホッケー、別の部屋に卓球台の並ぶゲームコーナーを覗き、みんなでやるのも楽しいだろうなぁと思いつつ、他の場所へ移動しようと小さめの階段へ近づいた時だ。
「ひゃあっ!!」
「えっ?」
上を見る。階段の上から落ちてくる少女。松井は彼女を咄嗟に抱きしめる形で受け止めた。
──カシャ
「大丈夫? 怪我は?」
「だ、大丈夫……です、ありがとうございます……」
「良かった……どこかにつまづいた?」
「あの、急に押されて」
「押された?」
彼女が落ちてきた後、階段の上は見なかった。今更ながらに顔を上げてもやはり誰もいない。少しばかり悔やむが何より少女の方だ。
「ほ、本当にありがとうございます」
「ああ、大丈夫だよ」
本当に怪我はないらしい。ホッと息を吐く。しかしまた何かあっても大変だ。彼女……星空凛を部屋まで送り届けることにした松井は凛と共にその場を後にした。
「これで……これで……!」
翌朝。絵里は少し早く目が覚めてふと窓を見た。キラキラと煌めく海。なんとなく、そこに行きたくなった。
スマホを持ち、少し周りを警戒して旅館を出て行く。
すぐ近くの砂浜へ降りる。その砂浜にはすでに誰かがいた。
彼は足首までを海水に浸からせ、サングラスで隠れていた赤い瞳は海を見つめている。その様子はとても絵になっていて……思わず、絵里は彼に見惚れてしまっていた。
ふと目が合う。そこでやっとハッとして何でもないように振る舞った。
「おはようございます。ええと、山鳥毛さん、でしたよね」
「ああ。おはよう綾瀬嬢。ふと目が覚めて、朝日が美しいものだったからここまで来てみたのだが、やはり美しいな」
「私も同じです。このパラディースの海はどこの島に行っても綺麗で」
穏やかに話す。波の音が心地いい。
「そういえば、サングラスは付けていないんですね」
「あ、ああ……その。少々気恥ずかしいのだが。早くここに来たくて、部屋に忘れてしまった」
ほんのり顔を赤くする彼に可愛らしいところもあるのだな、と思う。
──カシャ
「?」
「どうかしましたか?」
「いいや、今何か音が……」
「音?」
周りを見渡す。しかし誰もいないし、特に物もない。
気のせいじゃないか、と言えばそうかもしれないな、と納得してくれた。
「よし、後はこれを……」
そろそろ朝食の時間になる。山鳥毛と話しながら旅館に戻ると何やら妙に慌ただしい。フロントに集まっていたのは強化合宿のスタッフたちだ。
その側にはμ'sの面々と篭手切がいた。しかし何か言い合いになっている訳でもなく、全員が困惑した顔をしている。
「みんな、どうしたの?」
「あっ、えりち! あのね、谷林さんが起きてこないらしいんよ」
「え?」
「谷林?」
「あ、昨日の……突然、温泉に入るところを撮ると言った、少し体の大きい」
「ああ、あの男か」
あの小太りな男を思い出す。確かにそろそろ朝食の時間だし、起きて来ないの言うのもおかしな話だ。
全員が集合してレストランへ向かうところに江派の四振りが合流し、スタッフの一人である星野と豊前、松井、桑名が起こしに行き、念のため篭手切が残ったのだと言う。
「念のため、私も行こうか」
そう山鳥毛が言った時だ。
「うわぁあああああああっ!!」
「!!」
男の悲鳴が上がった。山鳥毛が走っていく。それに思わず着いていった。
谷林が泊まっている部屋へ着く。扉を開ければ一点を見て固まっている豊前たちと、へたり込んだ男、星野がいた。
「何があった」
「あ、山鳥毛……」
「しっ、しん、死んで、死んでっ、る」
「えっ……」
「! 綾瀬嬢、あちらへ。キミが見るようなものではない」
すぐに山鳥毛が離してくれる。しかし絵里の目には僅かに、椅子に座っていたであろう谷林の、だらりと力の抜けきった手が見えた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.284 )
- 日時: 2020/10/26 18:12
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: /8z3.y80)
「殺人、ですか!?」
ああ、と頷く山鳥毛に直斗は顔を歪めてしまう。彼が悪い訳ではない。だがまさかこの旅行中にそんなことが起きるとは。
話によると起きてこない谷林を星野と共に呼びに行ったところ、椅子に座ったままぐったりとした谷林を見つけた。その時点で豊前たちは違和感を感じていたらしいのだが星野はそれに気付かず呆れたような声色でまた寝落ちですか、と歩み寄って顔を見た瞬間、悲鳴を上げた。顔を見て、一瞬で分かったのだと言う。
「とにかく、外部に連絡を取りましょう」
「ああ、そうしたのだが……何故かこの島に辿り着けないのだと連絡があってね」
「辿り着けない……?」
山鳥毛が頷く。
「聞いた話なので事実か確かめる術はないが、この島に近付いていたはずなのにいつの間にか船が逆方向を向き、戻っていたのだとか。それがどの船でも、どの島からでもだ」
「そんな……」
「我々は、この島に閉じ込められたらしい」
きっと、こんな状況でなければまるで映画や小説のようだ、なんて口走っていたに違いない。それが幸いなのか、不幸なのか分からない。
「白鐘、安心してくれ。我々刀剣男士が人間相手に遅れを取ることはない。だが、食料がいつまで保つかだな」
「この島にある宿泊施設がこの旅館のみではありません。他のホテル等と連絡を取り合い、補い合っていけば長期間は保つはずです。
それだけでなく、ショッピングモールやレストランも合わせれば相当な数になると思いますよ」
「そうだな。……だが、犯人がどのような行動を取ってくるのか」
「山鳥毛さん。そのことについてなんですが、やはり早めに犯人を突き止め、犯人を拘束しておき、皆さんを安心させることも重要だと思うんです。
ですから、僕が犯人を突き止めようと思っています」
「!? しかし、キミ一人では危険だぞ!?」
「はい。僕も、一人で全て解決しようとは思っていませんよ。先ほど鳴上先輩に相談したところ、先輩や久慈川さんたちも手伝ってくれると言ってくれました。
仲間がいれば、大丈夫です。それに、山鳥毛さんたちも守ってくれるんでしょう?」
「!! ……ああ、もちろん」
「良かった。では一度皆さんのところへ行きましょう。確か宿泊客は全員、一度レストランに集まっていましたね?」
「そのはずだ。では行くとしよう」
直斗と山鳥毛がレストランへ向かう。だが近くになるにつれ、何やら言い争うような声が聞こえてきたのだ。
お互いに顔を見合わせ、レストランまで駆け足で向かうとスタッフの男たちの前に一人の女性、その前で女性の物なのか、スマホを見て顔を青くするμ'sの面々がいた。松井もどこか気まずそうにしているが、スタッフと女性に対して千枝が負けじと言い返している。
「どうしたんだ?」
「お頭! 実は……」
「あの女性が、μ'sのメンバーのうち誰か、あるいは全員が共犯となって、昨日口論していた谷林を殺したんだろうと言い出したんだ」
「何だって?」
「桑名江がそれはあり得ないと反論したものの……ああ、画面を見せた方が早いかもしれない」
そう言って長義は自分の端末を取り出し、ある画面を表示する。直斗と山鳥毛がそれを覗き込み、絶句してしまう。
『人気急上昇スクールアイドルμ's、実は恋人がいた!?』
そんなタイトルで始まったスレッドに、二枚の写真が投稿されている。一枚は、松井と凛が抱きしめあっているように見える写真。もう一枚は、今朝の山鳥毛と絵里の写真だ。確かに側から見れば恋人のように見えるが、当刃からしてみればあり得ないことだった。
スレッドにそれを鵜呑みにしたり、本気で怒るような人間が少ないのは幸いだったがそれでも多少の誹謗中傷が書き込まれている。
「しかし、この画像がなんだと言うのでしょう……?」
「彼女曰く、ここに写っている男は恋人なのだろう、だからお前らの意見は信用できないし、それどころか殺人に加担しているんだろうと」
「……ずいぶんな言いがかりですね」
μ'sの面々に、一切動機がないかと言えばNoだ。今一番疑われても仕方ない。だが、どうにもあの女性は彼女らが犯人だと『断定』しているように見える。それらしい証拠がないのに断定し、糾弾するなど。
さすがに見ていられない。直斗が前に出ようとした時だ。
「やめろ」
彼女とμ'sの面々の間に、悠が立ち塞がった。
「何よ。部外者は引っ込んでて!」
「部外者というなら貴方もだろう。さっきからきちんとした証拠もないのに彼女らを責め立てているが、犯人じゃなかったらどうするつもりなんだ」
「は? どうだっていいじゃない! そいつらが犯人なのは間違いないんだから!」
「……呆れて物も言えないな」
「何ですって!?」
「俺たちは彼女たちが犯人じゃないと思ってる。……直斗」
「は、はい!」
「直斗に大きい負担をかけるかもしれないけど、いいか?」
悠が何と言おうとしているのか、直斗には分かった。彼を真っ直ぐに見つめて直斗は頷く。悠は小さく笑ってありがとう、と言った後、彼女を真っ直ぐに見る。
「俺たちが、犯人を見つける。もし彼女たちでなかったら、彼女たちに謝ってくれ」
「はあ? 何でそんなこと」
「いいだろう? 何も土下座しろなんて言っていないし、貴女は彼女たちが犯人だと思っているんだから」
「っ……わ、分かったわよ」
彼女は渋々、と言った感じに頷く。この様子から本当に大した証拠もなくμ'sの面々を犯人扱いしていたのが分かり、直斗はこっそりため息を吐いた。
その上で、こういうタイプは基本的に自分の非を認めたがらないタイプだ。真相を突き止めてμ'sの面々が犯人ではないと分かってもあれこれ言い訳して有耶無耶にするかもしれない。
少々ピリピリした空気の中、旅館の従業員たちがやって来て、他のホテル、ショッピングモールと協力し、この謎の現象が戻るまで生き延びることを最優先して動くこと、そのために少しでも食料を持たせるために食事はメニューを決め、バイキングはやめることを告げられる。無理もない。
全員が部屋へと戻っていく。そんな中、他の宿泊客の何人かはμ'sの面々に災難だったね、と声をかけてくれた。それに少しホッとしたように息を吐いていたが、安心などできない。一刻も早く、犯人を捕まえなければ。
そう決意を固めて、直斗たちも部屋へ戻っていく。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.285 )
- 日時: 2020/10/26 18:18
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: /8z3.y80)
「ごめん」
μ'sたちの部屋を千枝、雪子、りせ、直斗、豊前と共に尋ねていた松井はそう言って頭を下げた。突然の行動と謝罪に全員がぽかんとしてしまう。
「僕が、あの時もう少し考えていればあんなことには」
「そ、そんなことありません! 凛ちゃんから聞きました。凛ちゃんが階段の上から背中を押されて落ちたのを松井さんが助けてくれたって。
もし松井さんがいなかったら凛ちゃん、きっと怪我を……ううん、打ちどころが悪かったら……」
花陽がそこまで言いかけて目に涙を滲ませる。彼女の言う通り、もし打ちどころが悪ければどれだけ低い階段であろうと死に至っていた可能性だってあるのだ。
「かよちん……松井さん、かよちんの言う通りだよ! 凛は松井さんに助けられたから、謝られることは何もないんだよ!
……あ、ご、ごめんなさい、つい」
「ううん、気にしないで。むしろその方が僕としても気楽だ。……だけど、もう少し上手い助け方が」
「気にすんなって! 突然だったんだろ? それで考えるのは難しい。お前はその時お前が取れる最善の行動をしたんだ。なっ?」
「豊前……」
「そうだよ、だから、謝らないで?」
「……ありがとう」
松井は弱めにだが、やっと笑った。それに凛たちもつられて笑顔になる。
その時、雪子があれ、と呟いた。彼女のスマホの画面にはあのスレが映っている。
「どうしたの、雪子?」
「……これ、少しおかしいよね? 山鳥毛さんと綾瀬さんはともかく、松井さんと星空さんは突然だったんだよね?」
「うん、そうですっ」
「なら、やっぱりおかしいよ。咄嗟にこんな風に、それもほとんどブレないで撮れるものかな?」
そう言い、雪子がテーブルにスマホを置く。その写真を全員でまた見直す。確かに、山鳥毛と絵里の写真は少しブレているのだが、松井と凛の写真はほとんどブレていない。多少のブレもカメラよりも二人が動いていたことによるものだろう。
咄嗟に撮った、というよりは……。
「そういえば凛、あなた誰かに急に押されたって言ってたわよね?」
「う、うん。押されたにゃ」
「……つまり、これを撮ったのは星空さんを階段付近で押した犯人と組んでいたんでしょうね」
「でもなんで……」
「そんなの、決まってる。こんな風にスレッド立ててるくらいだもん、目的は間違いなくμ'sを貶めることだよ。
……まさか、あのスタッフたちの中に?」
「山鳥毛さんと綾瀬さんの写真は、完全に犯人たちからしても予想外だったのでしょうね。
念のため、この写真をあの人たちに見せて確認してもらいましょうか」
そう言って直斗は写真を送る。送ったのは『小泉真昼』、『ジョゼフ・デソルニエーズ』。真昼は『超高校級の写真家』であり、ジョゼフは第五人格上では『写真家』とされている。どちらも写真に詳しい人物だ。(余談だが、そんな共通点があるからか二人は結構親しい。とは言え、ジョゼフが写真に『生前に生み出した方法』を使えば彼女は怒るだろう)
返信には時間がかかるだろう、と直斗はスマホをしまう。
「皆さん、絶対にμ'sの皆さんの無実を証明して真犯人を見つけ出しましょう」
その直斗の言葉に、頷かない者はいなかった。
一方、南泉は緊張した面持ちで山鳥毛、日光を前に正座していた。その後ろには長義、桑名がいる。
「子猫、一体どうした。そのような顔をして」
「お頭、日光の兄貴!! あいつらの護衛、俺たちに任せてほしいっす!!」
「何だと?」
「お頭と日光の兄貴は捜査の方、協力してやってください……にゃ!」
「どら猫、その理由を話せ。まさかその方が楽をできると思っているわけではあるまいな」
「っ、違う、にゃ! ……まず、護衛に当たる奴らを。俺、山姥切、桑名江、豊前江の四振りで当たるにゃ」
「ほう。その刃選の理由は」
「俺たちは打刀、屋外屋内、昼夜問わずに全力を出せるにゃ。お頭と日光の兄貴は太刀、どうしても屋内、夜だと不利になっちまいます、にゃ」
「篭手切江を、護衛につかせない理由は? 篭手切江ならば脇差、護衛には向いているだろう」
「確かに欲しいんすけど……篭手切はここで唯一の脇差。観察力も長けてる。早く解決をするってんなら、篭手切は捜査に回ってもらった方がいいと判断した……にゃ!」
「では。松井江だけ、護衛につかせない理由は?」
「それは僕から説明するよぉ」
のんびりとした桑名の声が響く。
「星空さんとのあの写真、松井が助けた時に撮られたみたいでね。多分、気にして捜査を手伝いたいと思うし、そのまま護衛についてもあの女の人とかにむしろ疑われかねないし」
「ならば俺たち四振りで交代しながら護衛をする方が都合が良いと判断した。ただ、彼女たちには基本集団行動を強いることになるが」
「れっすんの時は隣の部屋を使わせてもらうことになったから、その時は僕、豊前、松井、篭手切が実質護衛のようなものだよぉ」
「ふむ」
「如何します、お頭」
「……子猫よ」
「う、うす!!」
「護衛の務め、きっちりと果たせ。一文字一家として、恥じぬ働きをするように」
「!! うっす!!」
こうして話が纏まり、それぞれが動き出す。事件解決のために。しかし……翌朝のことだった。
「ひぃいっ!!」
またも、旅館に悲鳴が響く。そちらに向かって駆けていけば、そこの部屋はスタッフの一人、『小賀』の部屋。
扉を開く。ヤケにむわりとした熱気が部屋の中から逃げてくる。中にあった引き戸はすでに開け放たれ、そこに見えたのは。
横向きに寝転がった体勢で背中を包丁で刺され、息絶えた小賀の姿だった……。
次はオマケ
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.286 )
- 日時: 2020/10/26 18:23
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: /8z3.y80)
オマケ【お頭は〇〇に入れない】
それは福岡一文字派の刀剣男士が旅館に来た時の話である。
「ふむ、ここの温泉は多くの効能があるのか。実に楽しみだな」
「っすね!」
「お頭、背中をお流しします」
「ああ、頼むぞ」
「あ、あのぉ……」
盛り上がる三振りに恐々と従業員が声をかける。三振りが従業員を一斉に見ると彼女はびくりと体を振るわせたものの、あー、うー、と言い淀んでから小声で言った。
「と、当旅館では、刺青のある方の大浴場の利用はご遠慮いただいております……申し訳ありません……」
「……」
「にゃん……だと……?」
「……」
「お頭、如何なさいましたか」
「……そうか……」(´・ω・`)ショボーン
「ど、どうにか!! どうにかならねえか……にゃ!!」
「頼む、お頭は楽しみにされていたんだ」
「も、申し訳ありませんんんん……!!」
「お前たち、やめなさい。やめなさい」
この後、μ'sとスタッフの騒動に巻き込まれるもののお頭は部屋についていた露天風呂で密かにテンションが上がっていましたとさ。
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