二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.29 )
- 日時: 2019/11/24 22:15
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
甘くて美味しい果実
秋田藤四郎はその丸い目をきらきらとさせて目の前の果樹園を見ていた。その隣には秋田に似た桃色の髪で片目を隠したフランケンシュタイン(FGO/剣)と両目を隠したフランケンシュタイン(FGO/狂)がいる。(以下、両フランケンシュタインをフラン、剣の方のフランは(剣)を付けて表記する)
その後ろには某名探偵が「あそこまでの笑顔は見たことがない。まあ当たり前だがね」と真顔で言い切るレベルの、デレッデレな笑顔を浮かべた新宿のアーチャーがいた。彼の胸元にはチャールズ・バベッジを連想させるブローチがある。
ここは年中、さまざまな果物が実っているというコルス果樹園だ。二年前に一般の人々に対してフルーツ狩りを提供するようになったのである。
コルス果樹園の初代園長が「多くの人に美味しい果物を届けたい」という願いから生み出した魔法によってどんな果物も季節を選ばずに実るようになった。それを一般人に使わせるのは勿体ない、美味しい果物を楽しめれば良いと考えた貴族たちなどの手によって三代目からは貴族のみに提供されるだけになってしまったのだ。しかし、二年前に新たな園長に代わり、その園長が初代園長の願いに触れたことにより、反対、恐喝に屈さずに一般に解放し、今に至る。この解放には、柊以外の『統治人』の協力があったというが。
さて、何故秋田がここにいるかと言えば、きっかけはチラシだった。書類を届けに執務室に入った秋田の目に入った『コルス果樹園フルーツ狩り』の文字は秋田の興味を惹くには充分すぎた。だが、一期一振と鳴狐は出陣や遠征で忙しく、鯰尾や骨喰らでは不安だと言われ、諦め掛けていたところにフランたちが来て、新宿のアーチャーが自ら保護者として名乗り出たお陰で来られた。(柊曰く『推しでも疑ってるけど、フランちゃんが関わるならやべえことはしないだろ』とのこと)
ただバベッジも着いてくるものかと思っていたのだが、彼はその見た目などから来ないと言っていた。その代わりがあのブローチらしい。
「さて、まずは確認するとしようか我が娘と息子!」
……そういえば言い忘れていたのだが。フランたちと秋田、そして新宿のアーチャーはまっっっっったく血の繋がりはない(当然だが)。が、ある夏のイベントをきっかけに新宿のアーチャーはフラン(剣)を娘として扱い、通常のフラン、そして彼女らと髪の色が似ている、ということから仲良くなった秋田も娘、息子として扱うようになった。なおバベッジが近くにいれば常に冷静なツッコミが入る。
そんな四人が果樹園に入ろうとした時だった。
「おや、フラン嬢! 奇遇だね!!」
とてもとても爽やかな笑顔を浮かべた褐色肌の美青年──バーソロミュー・ロバーツがいた。その後ろにはバーソロミューに呆れた目を向ける黒髭と何やら察したような目でバーソロミューを見た後に秋田たちに手を振る刑部姫、ロング・アイランド、そして食霊のオムライスが。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.30 )
- 日時: 2019/11/24 22:21
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
「ウ……」
「ばーそろみゅー、きぐうー」
「こんにちは、バーソロミューさん、刑部姫さん、黒髭さん、ロングアイランドさん、オムライスさん!」
フランが手を振り、フラン(剣)が手を挙げてゆるゆるっとした口調で言い、秋田は頭を下げて挨拶をする。しかし新宿のアーチャーだけはじとりとバーソロミューを見ていた。
「奇遇、か。フラン、確か昨日彼にフルーツ狩りに出かけると言ったと言っていたネ?」
「うん」
「……奇遇、ねー」
「通りで急にフルーツ狩り行くぞなんて言うと思ったわこの野郎」
「黙っていろ黒髭」
「フランちゃんたちの行き先突き止めて即予約したって控えめに言ってもやばいよね」
「それなでございます」
「も〜、わたしはゲームやりたかったのに〜」
「それねー」
そんな新宿のアーチャーの冷めた目や黒髭らの言葉をスルーしてバーソロミューはフランたちとの会話に華を咲かせていた。若干バーソロミューが一人で話しているだけのようにも見えるが。
そんな中、果樹園の方から声がした。どうやら係員が来たらしい。秋田がそちらを向くと見知った二人の顔があった。
「あっ、クニトモさんにサカイさん!」
「あれ、秋田くん?」
「なんや、秋田くんもフルーツ狩り来たん?」
「はいっ、フランさんたちと一緒です! バーソロミューさんたちとはついさっき僕らもお会いしました!」
「そうなんや、今日は楽しんでいってなぁ」
貴銃士、クニトモとサカイはそう言って秋田に笑いかける。二人は今日はバイトだと言っていたがここだったとは。
秋田と話した二人は秋田たち以外にも来た客たちの前でルールなどを説明し始める。質問にもきちんと受け答えをしている辺り、慣れているのがよく分かった。
「以上がここのフルーツ狩りの際、守ってほしいことです。守ってもらわんと……」
「こちらの『五里山ごり代さん』に投げられてしまうで〜!!」
いつの間にか現れた巨体こと、『五里山ごり代』さん。そのままゴリラがこの従業員の制服を着ているだけのようにも見える。
「いやゴリラだよネ!?」
「えー失礼やなぁ、ごり代さんはちゃーんとした人間の女性やで?」
「なーごり代さん!」
「ウホッ」
「どうあがいてもゴリラなんでつが!?」
「しかも何気に声ひっくいでございますよ!?」
「お前たち、レディに失礼だろう。失礼しました、レディ」
「オメェの目は見えてねえのか!?」
そんな一幕がありつつ、フルーツ狩りは幕を開けるのであった。ちなみにごり代さんはごく普通にゴリラです。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.31 )
- 日時: 2019/11/24 22:26
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
コルス果樹園は四季ごとに分けてフルーツを栽培している。(一部は複数のエリアで栽培されていることもある)秋田たちが最初に向かったのは春のエリアだ。入ると優しい果物の香りが秋田の鼻をくすぐった。
「これは、苺の香りですね!」
「ウ……」
「いちごー、いちごー」
「娘たちと息子が可愛くて私辛い」
「苺やったらこの練乳どうぞー」
「ありがとうございます、クニトモさん!」
クニトモから練乳を受け取り、苺を見に行く。苺は真っ赤に染まってとても美味しそうだ。秋田は一粒を取ってまじまじと見てから練乳に苺を付けて口に入れた。
「!!」
ふっくらとした頬が赤く染まって、目が輝く。それだけでもう美味しかったのだと分かるが秋田は苺を飲み込んでからとっても甘いです! と告げた。
それを聞いて良かったね、と言うようにフランが頭を撫でている。フラン(剣)はパクリと食べてあまーい、と顔を緩めていた。なお、見ていた新宿のアーチャーの方はお察しである。
ちなみに、バーソロミューはと言うと。
「くっ、何故果樹園にピンクな薄い本御用達のような触手が!!」
「しかも的確におめえだけ狙ってて草」
「ふぁ〜このデコポン美味しいよオムライスくん、ロングちゃん」
「そんな物より小生はゼリっちのライブに使ううちわ作りたか、あ、美味しい」
「これ、秋田くんたちにも教えてあげよっか〜」
「そうだね、じゃあ姫たち行くねー」
「少しは手伝ってくれ! ……しかしこんな醜い物がこのような場所にあるわけがない、誰かがここに持ってきたのか……?」
「ほーれ頑張れ♡頑張れ♡」
「やめろ!!!!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.32 )
- 日時: 2019/11/24 22:31
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
次に足を運んだのは夏のエリア。ここでは桃やびわが採れる他、果樹園のスタッフたちがパイナップルやスイカなども切り分けてくれるようだ。
春のエリアに負けず劣らず、種類が豊富で何から食べるか迷ってしまう。けれどやっぱり、一番に食べたいのは桃だった。新宿のアーチャーに抱えてもらって桃を採る。いつも食べている桃よりも何だか硬い気がする。それを三つ。
「フランさん、フランさん!」
「ウ?」
「どうしたのー?」
「はいっ、ぼくらの髪とおんなじ色の桃ですよ!」
「! ……ウー♪」
「おんなじー、秋田も私たちも、桃色の髪ー」
「桃色の髪ー、です!」
「本当だネェ。さ、桃を剥いてあげよう。貸してごらん?」
内心悶えている新宿のアーチャーはそれらを一切顔に出さずに笑顔を向けている。秋田はそんなことを知らずにはい! と元気よく返事をして指定された場所まで歩いていく。
さて、バーソロミュー一行はと言えば。
「今度はっ!! 薄い本御用達オークの群れかっ!!!」
「いやぁああああさすがに姫たちも狙ってくるぅううううう!!」
「おっきーごめんね私が戦うとここ壊滅しちゃうからぁあああああ!!」
「そんな中、一切狙われない黒髭なのであった、キリッ!!」
「というかコレ、おっきー氏とロング氏狙ってて小生ら巻き添え食らった形ではぁあああああああ!?」
「何故っ!! こんなっ!! 醜いやつらがっ!!」
「まー誰かの差し金でしょうなぁー。あ、そろそろサカイ氏とクニトモ氏が来てくれますぞー」
「悠々とびわ食べるなでございますぞぉおおおおおお!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.33 )
- 日時: 2019/11/24 22:36
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
三番目にやって来たのは秋のエリア。そしてこのエリアがコルス果樹園で一番人気のあるエリアでもあった。梨、柿……さまざまなフルーツが実っていて、目にも楽しいエリアだからだ。
「いっぱいあって、悩んじゃいます……!!」
「きこうも、すずしー」
「ウ、ウ」
「まだ時間はあるから、ゆっくり考えるといい。どれもこれも一級品なのだから少しずつ味わうのもオススメするよ」
「ああ、ならば私たちの邪魔もせずにいてほしかったな」
新宿のアーチャーが視線だけそちらに向ける。そこにはやたら疲れていそうなバーソロミュー一行(−黒髭)がいた。
「えっ、皆さんどうしたんですか!?」
「どうもこうも……散々な目にあって……」
「それは、たいへん! リンゴ、たべる?」
「ウウ」(梨を差し出しながら)
「うう、ありがとうフランちゃんたち……」
「あー、ロング・アイランドも〜」
女性陣に加え、さりげなくオムライスも秋田たちの方へと歩み寄っていく。そのまま話し始めた秋田たちをちらりと見てからバーソロミューと新宿のアーチャーは向き合った。
「はてさて、キミたちの邪魔とは何のことかネ? 私には皆目見当も付かない」
「しらばっくれるのはよしてもらおう。薄い本御用達の触手やオーク、貴方の仕業だろう?」
「おやおや……私が何のためにそんなことをするとでも? アーでも確かにどこかに仕掛けたような気がするネェ!
いやしかし誤解しないでほしい。あれらは『たまたま』ここに流れ着き、『たまたま』キミたちの邪魔をする形になってしまったんだヨ!」
「残念ながら新茶殿、何やら怪しい動きがあったことはすでに把握済みですぞー。柊氏を生クリームパンで買収して新茶殿がここで何かしてそうという証言ゲッチュ! 柊氏も何をしているかまでは把握してなかったんでつけど」
「あの子、本当に釣られやすいよネ!! アラフィフ心配!!」
そう叫んで、新宿のアーチャーは息を吐いた。
「何となくではあっても我々がここに来ると言うのは察していて、我々の邪魔をするためにあれらを配置していたということか」
「我々っちゅーか、オメエだけだと思うけど」
「しかし、あれでは他の客に被害が及ぶとは思わなかった……とは貴方ほどであれば考えづらい」
「いいや問題ない。私の計算通りに動いてくれたからネェ。被害は最小限さ。……ま、多少のトラブルがあったとしてもそれくらいは計算のうちだし、それに、楽しそうだろう?」
「……なるほど。どうやら、貴方はフラン嬢たちから引き離さなくてはならない人物のようだ!!」
「やるかね? いいだろう、ちょっと本気を出すとしよう!!」
バーソロミューと新宿のアーチャーは互いの武器を構える。何故あるのかは突っ込まないでおいてほしい。
なお、黒髭はとっとと秋田たちと合流していた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.34 )
- 日時: 2019/11/24 22:41
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
最後は冬のエリア。みかんを始めとするフルーツが生っていて、このエリアにはお土産屋も入っている。そのためかこのエリアを最後に回る客も多い。
秋田たちもいくつか採ってきたみかんなどを指定された場所で広げつつ食べていた。
「んー……やっぱりみかんサイコー! おこたもあればなおさら最高なのになー」
「あーそれ分かるー。こたつに入ってみかん食べながらやるゲームは格別だよー」
「キウイも美味しいです!」
「まさか冬のエリアでキウイあるなんてね」
「お土産コーナーには柚子のジャムもあるそうですぞ」
「御侍たんたちへのお土産には良さそうでございますな」
「ウー♪ウー♪」
「……ぱぱと、ばーそろみゅー、すごくけんかしてるー」
フラン(剣)が目を向けている先には互いの武器で戦っている新宿のアーチャーとバーソロミュー。幸いにも被害は大きく出ていないがそれでもいくつかのフルーツは傷ついてしまっているだろう。周りの従業員たちはとてもではないが止めることはできず、止められそうなサカイとクニトモは被害を食い止めるために奔走しており、上手く止められていない。
先ほど全員で説得を試みたのだがそれも聞こえていないほどだ。
「……」
「ん? どうしたの秋田くん?」
「……ぼく、みんなで仲良くフルーツ狩りしたかったです」
しょんぼりとしている秋田は剥かれたみかんを見ていた。手は進んでおらず、目には涙が浮かんでいる。
「どうすれば、仲良くフルーツ狩りできたんでしょうか……」
「あー……まあ、なんだ。おめえは悪かねえよ。あいつらがくっだらねえ考えしただけだからよ」
「お、くろひーやっぱ子どもには優しいね」
「やめてくれますぅ!? 拙者そんなんじゃないですしおすし!!」
「でも、黒髭氏の言う通りでございますぞ秋田氏。秋田氏は何にも悪くないですから、ゆっくり楽しみましょう!」
「そーだよ秋田くん」
「……皆さん」
顔を上げて涙を拭いて、秋田は笑顔を見せる。はい! と元気よく返事をして。
「……新宿のアーチャー」
「何かね?」
「……我々は、ずいぶんと愚かなことをしてしまったらしい」
「そのようだネェ。いやはや、こればかりは……予想外だった。いや、本当ならば予想しておくべき事態だった」
いつの間にか正気に戻っていた二人の顔は自嘲するような笑みを浮かべ、秋田の涙に心を痛めていた。お互いがお互いの欲に忠実になりすぎた。そのせいで彼を悲しませてしまうとは。
今は、喧嘩などしている場合ではなかったのだ。
「すまなかったね」
「いいや、こちらこそ。ただ……」
ガシリ。頭を鷲掴まれる。しかし二人は慌てない。足が浮く。だが慌てない。というか、思い出して諦めていたところである。
「我々は、気付くのが遅かった」
バーソロミューと新宿のアーチャーの体が振るわれ、頭を鷲掴んでいた手が離れる。いいや、自分たちが離れている。
微かに見えた視界には、五里山ごり代さん(まんまゴリラ)が何かを……自分たちを投げた体勢だった。
──騒ぎ過ぎたネ!!
──その通りだな!!
新宿のアーチャーとバーソロミューは、コルス果樹園の外へと文字通り投げ飛ばされたのであった……。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.35 )
- 日時: 2019/11/24 22:46
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Pk4hF4gE)
「主君、お土産です!」
「わ、ありがとう秋田くん。楽しかった?」
「はい! フルーツもとっても美味しくて、今度は主君も一緒に行きましょうね!」
「ふふ、そうだねえ。粟田口のみんなも連れて一緒に行こうか!」
秋田は柊にお土産のミックスフルーツジュースが入った瓶を渡し、にこにこと笑い合う。
こんな笑顔を見られるならば、行かせて損はなかったと思う。そう、その際にバーソロミューと新宿のアーチャーがドンパチやらかしたと聞いても。その請求が自分に来たとしても。
いや、請求だけは本気で解せない。何故こっちに来る。とりあえず後で二人に折半してもらおう、そうしよう。
「主君?」
「あ、何でもないよ?」
「そうですか? ぼーっとされていたような……あっ! そうだ、今度行く時は長曽祢さんも一緒に連れていきましょう!」
「ファッ!?」
秋田は名案でしょう、と誇らしげに笑っている。可愛い。控えめに言って可愛いが。
「な、んで、長曽祢さ」
「だって主君、長曽祢さんのことす」
「オッケーそれ以上はダメだぁああ!!」
「? 分かりました!」
そのまま秋田は兄弟たちにも渡してきます!と執務室を後にする。それを手を振って見送り、見えなくなると息を吐いた。顔が熱い。
「……何とか二人きりにならないようにしないとな……」
さすがに、ヘタレを発揮して失敗して、呆れられたくはない。そう思いながら途中になっていた書類に手を付けた。
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