二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.300 )
- 日時: 2020/11/14 22:23
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PyqyMePO)
解き明かせ、真実!3
レストランには宿泊客たちやスタッフたちが集められている。そして出入り口には桑名がおり、刀剣男士はレストラン内に点在していた。
「な、なあ、犯人が分かったって本当か?」
宿泊客の一人が近くにいた悠に声をかける。悠ははい、と頷いて直斗を見た。直斗も頷いてみせる。
こうして集めたのは、一人ずつ捕まえていく途中で気付かれて逃げ出すのを防ぐためだ。この島からはまだ出られず他の島からも来られないとは言え、島自体が広い。逃げられて、万が一その時に出入りができるようになってしまえば取り逃す。それだけは許してはならない。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。すでに集めた理由はお聞きでしょう」
「ふん、どうせそいつらが犯人だったから土下座でもしてくれるんでしょ?」
「……相変わらずですね。残念ながら、全ての事件において彼女たちは犯人ではなかったことが判明しましたよ」
「なっ……!?」
「そもそもあの写真。あの写真を見て貴女は彼女たちが彼らと恋人だと言いましたね。
となれば殺した理由は言い争ったということと『恋人を知られ、それを理由に言い寄られた』からだと思ったのではありませんか?」
直斗がそう言えば女性はぐっと黙り込んだ。どうやら図星か。
「あの写真は、松井さんと星空さんの写真はそのように撮られたものです。その犯人も分かっています。
聞き込みの際に不審な動きをしていたと、情報を得ましたからね。
……だからこそ、少し残念なんです。貴女たちは、μ'sの皆さんを庇ってくれたから。
AroNaの皆さん、貴女たちがこの写真を撮り、ネットに流した犯人です」
「っ!!」
全員の目がAroNaに向く。顔を真っ青にして震えていた。
しん、と静まり返る。穂乃果の、どうして? という声だけがその場に響いた。
「上にいたのは、佐伯まりなさん。下にいたのは相良瑠美さんと中崎サナエさん。おそらく、先に誰かが星空さんに声をかけていたのではありませんか? 『スタッフの人があの階段まで来てと呼んでいるから』と」
「そういえば……」
「そして待ち伏せていた三人は、階段下に誰かが来るまで様子を見て、相良さんがずっと通話を繋いでいたという様子から貴女がタイミングを見ていたのでしょう。
誰かが階段に近寄った時に、階段上付近で様子を伺っていた佐伯さんが星空さんを落とした。そしてその誰か、というのが」
「……僕だった」
「はい。……松井さんが抱き止めた瞬間を中崎さんが写真に収めた後、お二人は少し様子を見て、佐伯さんはすぐに部屋に戻ったのでしょうね。
ただ予想外だったのが綾瀬さんと山鳥毛さんの写真。写真のブレ方からふと見かけて慌てて撮りに行ったのでしょう。
念のため、写真に詳しい友人に確認したところ、松井さんと星空さんの写真は明らかに待ち伏せて撮られた物だと断言されましたよ」
「そんな……どうして……」
「……私たちだって、μ'sがいなければきっとラブライブに近づけてた」
「えっ?」
「私たちより後にスクールアイドルを始めたのに、私たちより人気になって。羨ましかった。妬ましかった!
だから、だからあの写真を載せて人気を下げてやろうと、思って……」
まりなは徐々に言葉に力を無くしていく。瑠美とサナエも顔を俯かせる。μ'sの誰もが何も言えない中、でも、とまりなが再度口を開いた。
「あんなことになるって分かってたら、写真なんか撮らなかったし、載せなかった。私たちのせいで、貴女たちが疑われた。
……それは、本当にごめんなさい」
「佐伯さん……」
「貴女たちが謝るのは、それだけですか?」
「え?」
まりなたちが顔を上げる。直斗は言葉を続けた。彼女たちにとっては『残酷で恐ろしい事実』を教えるために。
「貴女たちがしたことは、少しでもボタンを掛け違えていたら『殺人』になっていたかもしれないんですよ」
「!?」
「貴女たちは、元々怪我をさせるつもりはなかったのでしょう。突き落としたのが低い階段であったこと、そして下に誰か来たタイミングを見計らっていたことから分かります。スキャンダルを捏造して人気を落とすだけ。そのつもりだった。
ですが、例え低い階段であってももし、松井さんが受け止めなかったら? 間に合わなかったら? タイミングが少しでもずれていたら?
打ちどころによっては、彼女は命を落とすことだってあり得ました」
「そ、そん、な……」
「わ、私たち、そんなつもり……」
「そんなつもりがなくても、結果的にそうなっていたかもしれないんです。もちろん、可能性は低かったでしょうし、怪我をする方があり得ました。
でも、可能性はゼロじゃなかった」
三人は今にも倒れそうなくらいに顔を青くし、ガタガタと震えて涙を浮かべている。軽い気持ちでやったことが、もしかしたら人の命を奪っていたかもしれない可能性が恐ろしかったのだろう。
三人は震えた声でごめんなさい、ごめんなさいと泣きながら謝り始めた。それに穂乃果が駆け寄ろうとしたが、南泉が止めた。
「簡単に許すんじゃねぇ、にゃ。……あいつらを思うなら、な」
「……はい」
そんな空気も、またあの女性によって壊された。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.301 )
- 日時: 2020/11/14 22:29
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PyqyMePO)
「じゃあ、全部アンタたちがやったってこと!? そのために人殺しまでするなんて最低よ!!」
「なっ……ち、が! それは本当に何も知らないの!!」
「嘘吐かないで!! 殺人犯がよく私を悪く言えたものね!!」
「違う、違う!! 私たちはしてないの!!」
「そんなんだから人気ないんじゃないの? 人を殺さなきゃ人気を得られないなんて大変ねぇ〜」
明らかに嘲笑うような表情を浮かべる。それに流石に全員が不快感を示した。
罵倒はヒートアップしていく。誰が止めようが女性は止まらない。あまりの勢いにまた泣き出したまりなを見て被害者ヅラするなと女性はとうとう手を振り上げた。
──パンッ!!
乾いた音がする。けれど頬を叩かれたのはまりなではなかった。
「な」
「いい加減にしなさいよ。私たちのこと散々殺人犯呼ばわりして、今度はこの子たち?」
「にこちゃん!」
咄嗟にまりなの前に出たにこの頬は赤くなっていた。だが、彼女はそれを気にすらしない。その赤い瞳でキッと女性を睨みつけた。
「ずいぶんと調子が良いのね」
「っ、あ、あれは……そう! 勘違いしただけじゃない! そんなに怒らないでちょうだい」
「ふざけないで!! たったあれだけの写真で、やってもないことをやったって何度も何度も何度も言われていざあれが捏造だったら勘違い? そんなの許せるわけないでしょ!!」
「な、何よ、勘違いなんだから許してくれたっていいじゃない! それに元々はそいつらが悪いんでしょ!?」
「そうね、だから私は彼女たちをしばらく許すつもりはない」
にこの言葉に女性は三人を鼻で笑い、三人は顔を俯かせた。
「だけどね。それとこれとは別! それにあなたはわざわざ部屋に怒鳴り込んできてるでしょ。あなたと彼女たち、どちらか許さなきゃいけないなら彼女たちを許すわ」
「〜っ!!」
にこの言葉に女性は黙り込んだ。そこでパン、と手を叩けば注目はこちらへ移った。
「僕は、一度たりとも全ての犯人が彼女たちだなんて言ってませんよ。
そろそろ、次の話をしても?」
「遮ってごめんなさい、いいわよ」
「……どうぞ」
にこはあっさりと、女性は渋々そう言う。篭手切が濡れたタオルをにこに差し出したのを見てから直斗は一度息を吐き、続きを話し出す。
「先に結論から言ってしまいましょうか。この一連の事件は、全て『それぞれ別の人物』によるものだったんです」
「別の!?」
「ええ。では、まず谷林さんの事件から話しましょうか。
谷林さんの死因は窒息、あるいは首の骨が折れたことによるものです。現場には『二つ』証拠が残っていました」
直斗が言えば、篭手切が見つけたボタンが入った袋と、悠が見つけたネクタイを悠が持ち上げてみせる。
それに犯人が動揺したのを、直斗は見逃さなかった。
「ネクタイはおそらく、谷林さんの物だと思わせるために置いていったのでしょう。しかし、犯人は他のスタッフに『よく見ないと分からない柄』を覚えられていたことに気付かず、また、テーブルの様子から首を締められていた時に相当暴れたのでしょうね。その際にボタンがちぎれ、犯人は気付かずに戻っていった。
気付いたのは遺体が発見された後だったんじゃないですか? だから回収しにも行けなくなった。そうでしょう?
宮代さん……」
「……参ったな」
宮代に注目が集まる。彼は言い訳することも、そして無様に暴れることもなく微笑んだ。それはどことなく悲しそうで。
星野がどうして、と思わず口からこぼす。
「星野、お前なら分かるだろう?」
「まさか……お前……」
「……俺の妹は、五年前アイドルを夢見てた」
そう宮代が切り出せば、原がぴくりと動く。目が泳ぎ始めた。
「いくつもオーディションを受けて、何度も落ちて。それでも諦めないで夢を追い求めてた。
そんな努力が実ったのか、妹はやっとオーディションに合格したんだ。本当に嬉しかった……。
あの日までは……。
妹がレッスンのための合宿に行った時のことだったよ。三日目くらいに妹から俺に電話がかかってした。出たらさ、すごく必死な声で助けてって、お兄ちゃんって。
その向こうからさ、ビリ、ビリ、って。布が、破ける音がしてた。『お兄ちゃんが来られるわけないだろ』って、耳障りな声がした。
そこから、聞きたくもなかったよ。妹の悲鳴と苦痛の声、耳障りな妹への嘲笑……。途中で繋がってることに気付いたのか、切られて、その後妹は行方不明になった。
妹は、その体目当てで合格させられたんだ。
……谷林たちにな!!」
宮代は原を睨みつけた。原がひぃいっ、と情けない悲鳴をあげる。
宮代の拳からは、血が滴っていた。
「今でも覚えてる!! 今でも、耳から離れないんだ!! 妹が俺に助けてって!! お前らの汚い笑い声が!! 今でもっ……!!
だから俺はスタッフになって谷林たちに近づいた。変わってないもんだな、セクハラに強制的な枕に……ああ、虫唾が走るっ!!」
「宮代っ……」
「俺だって最初は殺すつもりはなかった。わざわざ好きなワインを持っていって酔わせて、妹の居場所を吐かせようとしたんだ。
ただ、妹の居場所を聞き出したかった。妹や被害者に謝って欲しかった……なのに……」
─────────────
「谷林さん、五年前に宮代って子をオーディションで合格させましたよね?」
「あ? 宮代……ああ、あの胸がデカいガキか。お前の妹だったのか」
「……ええ。あの合宿の後、妹はどこへ行ったんですか。教えてください」
「あー……そうだ思い出した。○○県××市……のアパート……」
「!! そこに、妹が」
「で、しばらく玩具にしてたらよ、一ヶ月くらいに死んでやがった」
「え……?」
「そういや思い出した、あの日の前に全員で殴って蹴ってヤったんだった。だから死んでたのか。はた迷惑なもんだよ。
そんで○○山に埋めたんだった」
「……は……?」
「だけどよぉ、あのガキ泣き喚くだけでちっとも良くしようとしてこねえんだよ! お兄ちゃんお兄ちゃんってうるせえしよ、そりゃ殴りも蹴りもするわな」
─────────────
「気付いたら、ネクタイであいつの首を絞めてた。……あんなやつに、妹は……!!
だから、本当なら原、お前も殺すつもりだった。けど、小賀さんの事件があってそれどころじゃなくなったんだよ!!」
「っあ、し、仕方ないだろ、俺だって逆らえなくてっ」
「嘘をつけ!! お前、お零れを狙っていただろ。お前も気に入ったスタッフやアイドルにセクハラしているのなんて知ってるんだよ!!」
「ぐっ!!」
「……宮代さん」
直斗が名前を呼べば、宮代は涙を流したまま直斗を見る。けれどその顔は穏やかで。
「一つだけ、分からないことがあります。どうしてあなたはμ'sの皆さんが疑われた時、無実を証明してくれと僕に頼んで来たんですか?
自分の罪まで暴かれるかもしれないのに」
「……確かに、それは怖かったです。だから今まで自供もしなかった。だけど。
俺のせいで、無実の少女たちが疑われるのは、本当に心苦しかったから。だから、暴いて欲しかった」
「宮代っ」
「星野、ごめん。……こんな幼なじみでごめんな」
「馬鹿野郎っ……!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.302 )
- 日時: 2020/11/14 22:35
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: 4pC6k30f)
またしんとする。中には今の話で泣き出した者もいて、時折ぐす、と聞こえた。
「……次の、小賀さんの事件についてお話しします」
「そ、そうだ! 小賀、あいつは誰に殺されたんだ!!」
原の言葉に全員が彼に対して軽蔑の目を向けながらも確かに気になっていたのだろう。また直斗に注目が集まる。
「小賀さんの事件は難解でした。部屋は密室のようなもの。何故なら部屋の前にはある宿泊客がいらっしゃって、防犯カメラの映像からその方が朝の四時までいたことが証明されています。また、その日は小賀さんの部屋に訪ねた人はいません。
窓から侵入した痕跡もありませんでした。
これでは『殺人』は不可能です」
そう言い切る直斗に全員がざわつく。どういうこと? という声も聞こえた。
「直斗、殺人ならって」
「ええ。そうですよ鳴上先輩。小賀さんを殺すことは不可能です。
小賀さん本人以外であれば、ですが」
それに一層ざわめきが大きくなる。それではまるで……小賀が、自殺したと言っているようなものだ。
しかし状況的には殺されたようにも思える。いや、そうとしか思えなかった。何せ、包丁は背中から刺されていたのだから。
「小賀さんは自殺したってことですか!?」
「そう、小賀さんの事件は、彼の自殺だったんです」
「で、でもどうやって背中に包丁を?」
秋本と宇治の問いに直斗は推理を交えながら答えていく。
「ドライアイス、ですよ」
「ドライアイス!?」
「小賀さんは箱を運んでいたと、そう仰いましたね? そして宇治さんに関しては『後悔させてやる』と言っていたと」
秋本と宇治が頷く。確かに二人は見ていたのだ。
「まず、その箱が『布に包まれたドライアイス』だったんです。厨房から盗んだのでしょう。包丁は自分で調達したと思われます。
小賀さんはドライアイスを自室に運び、削るか何かで包丁を固定できる穴を作り、夏であるにも関わらず暖房を付け、椅子をドライアイスで固定した包丁の近くまで持っていった。
そして背中を包丁を向け、思い切り……背中から落ちたんです。椅子はその際に倒れたのでしょう。
深々と刺さった包丁は何も知らなければ背中から刺され、殺されたと考えられるはず。最後の力を振り絞って横向きに寝転がり、他殺に見せかけて自殺したんです。暖房を付けていたのはドライアイスを少しでも早く溶かすためでしょうね。ドライアイスは溶ければ気体になりますから。削った際の破片などは外か洗面所に捨てたのかと。
しかしドライアイスの重みで包丁が下がり、傷口が広がってしまったのは計算外だったでしょうね」
「でも……なんで自殺なんか……しかも、わざわざ殺されたように見せかけてまで……」
「……これは僕の憶測でしかありませんが。もしかすると、東條さんを殺人の犯人に仕立て上げるためだったのかもしれません」
「うちを?」
「はい。後悔させてやる、というのは……『自分を拒んだことを、殺人犯としてのレッテルを貼る事によって後悔させる』という意味だと思います」
「……酷い」
「……ええ。本当に。
……最後は、園田さんに対する殺人未遂と小泉さんの誘拐事件です。これもまた、犯人は別の人物になります」
直斗は一息置くとまた話し始める。海未と花陽を襲った犯人たちを暴くために。
「まず、犯人は強力な液体状の睡眠薬……ああ、実際は違う薬物かもしれませんが今この場では睡眠薬と仮定させてもらいます。これを小型のスプレーボトルに入れて持ち出したのでしょう。大きければ大きいほど見つかった際に怪しまれますから。
監視していたのか、あるいはたまたまか。いずれにせよ部屋から園田さんと小泉さんが出てきて、その後に誰も着いていかなかったのを見て、犯人も着いて行った。そして、周りに人がいないタイミングを見計らい……犯人は、スプレーで睡眠薬を吹きかけ、すっかり油断していたお二人はそれをもろに吸い込んでしまい、眠ってしまった。
そして犯人は、先に園田さんだけを滝の上まで連れて行ったんです」
「どうして犯人は二人を同時に連れて行かなかったんだ?」
花村の疑問に直斗はすぐに返した。
「連れて行かなかったのではなく、連れて行けなかったんですよ、花村先輩。
犯人は、単独犯です」
「だろうな。そもそも園田さんと小泉さんの状況が違いすぎる」
悠が頷きながら言う。確かに海未は両手足を拘束され、口にも猿轡を噛まされた状態で逃げることも助けを求めることもできないようにされていた。
対して花陽は蔵に閉じ込められていたとは言え、拘束は一切されておらず、それどころか蔵の鍵も開いていた。これでは逃げられて、花陽の口から犯人の名前が出る可能性だってあった。(二人とも覚えていなかったが)
そしてその後、直斗が聞いたある言葉が花陽を閉じ込めた犯人を確定させるきっかけになったのだ。
「まず、小泉さんを閉じ込めた犯人ですが……いいえ、犯人、というのは間違っていますね。
星野さん」
「……」
「あなたが、小泉さんを『匿った』人物なんですね」
「え!?」
「匿った……?」
「あなたは見ていたのではありませんか? 犯人が二人を眠らせる所か、その後を。
けれどあなたにとって犯人は逆らうことを躊躇わせる人物だった。その後ろ盾を使える人物が死んでも、後ろ盾自体が恐ろしくて。
だからある程度、園田さんが連れて行かれる先を監視して滝の上だと確信した時に戻って眠らされていた小泉さんを近くの蔵に隠し、何でもないかのような顔で、僕たちを探した。僕たちが見つけられなくても、彼女自身で戻れるようにしておいて。
日光さんたちに会ったあなたは別の人物から預かったと言って園田さんが滝の上へ連れて行かれたことを知らせるメモを渡したんです」
「……どうして、俺だと思ったんですか?」
「あなたは、僕らと会って従業員の方が来た時にどこにいたのかという従業員の質問に『蔵にいた』と答えましたね。僕らはあの時、誰もあなたに蔵にいたなんて言っていなかったんですよ。
ただ、その時点ではあなたが園田さんたちを襲った犯人ではないかと疑っていました。そうではないと分かったのは、日光さんたちの話を聞いてからです。
犯人ならば、わざわざそんなことをする必要がありませんから」
「……すごい、ですね……」
「さて。そして園田さんを連れ去った犯人ですが……犯人は苛立っていたのでしょうね。『体目当てで呼び出したスクールアイドたちを好き放題にできないこと』が」
「!!」
その一言に、全員の視線が一人に向く。その男は、顔面を青くし汗を流して目を泳がせている。
「だからあなたは、園田さんを汚すよりも殺してやると思ったんでしょう?
原さん」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.303 )
- 日時: 2020/11/14 22:49
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: 4pC6k30f)
「ぐっ……!! だ、だが!! 星野が見たのが俺だって確実には言えないだろう!? それこそ星野が嘘をついてる可能性だってある!!
証拠を見せてみろ!!」
往生際悪くそう喚く原に、直斗は冷たい目を向ける。
「証拠も、そろそろ来ますよ」
「へ……?」
「こんなに人がいるんです。いくら目立つ容姿をしていても、一人いなくなっても気づかれないと思いましたよ」
「ナオチャーン!!」
「ああ、ほら、来ましたよ。ありがとうございます、クマくん」
金髪青眼の美少年こと、クマが小さなジッパー付きの袋をぶんぶんと振り回している。
よく見ればそこにあるのは、小さなスプレーボトル。中身は透明な液体が入っていた。
「なっ……!!」
「ナオチャンの言うとーり! その人のお荷物ガサガサしてたらあったクマ! 褒めてほしい、な?」
「後で褒めますよ。本当にありがとう。
これが動かぬ証拠ですよ。急いでいて処分を忘れてくれていて助かりました。
さて……もし貴方が犯人でないというならば、警察が来た後、これを提出し、成分を調べてもらっても構いませんね?
もちろん保管は従業員の方々に任せましょう」
「ぐ、く……クソガキィイイイイイっ!!」
原が直斗に突進していく。しかしそれはあっさりと完二と花村に押さえ込まれた。
犯人たちの中でも原は暴れることは間違いない。原はそのまま縄で縛り、解いた後も宮代と共に刀剣男士たちの監視の元で行動させられることになる。宮代はそれを受け入れていた。
事件は解決、それに全員がほっと胸を撫で下ろした。
「……今回は、目撃証言があまりに少ない事件でした。ですが……従業員の方々に聞きます。
貴方たち、本当は
宮代さんの犯行を、目撃していたのではありませんか?」
「えっ……?」
「……気付くのは遅かったですが。よくよく考えてみると、谷林さんと原さんに対して全員、どこか恨んだような目を向けていたことを思い出したんです。それに宮代さんは突発的な犯行。夜だと言えど全くのゼロというのは違和感がありました。……何人かは監視カメラの映像を見ていても不思議じゃない。
ならば……従業員の一部、あるいは……全員が、示し合わせて犯行を見なかったふりをしたのではありませんか?」
「……あはっ。あははは!!」
従業員の一人が笑い出す。それはどこか歪んでいて。何人かは短い悲鳴を上げた。
「流石ですね、探偵さん」
「……」
「はい。その通りです。我々従業員一同は、犯行を知っていながら見て見ぬふりをしたのです。だって、
我々も、その男たちに恨みを抱いていたのですから」
その言葉を合図とするかのように全員が、全くタイミングもずれずに原を見た。原は悲鳴すら上げられないようだ。
「私は娘を」
「私は妹を」
「私は恋人を」
「私は婚約者を」
「私は妻を」
「私は姉を」
「「「「汚され、死に追いやられた」」」」
「だからその青年に、肩入れしても不思議ではないでしょう?
でも、全員逮捕される覚悟はできております。その男が、生きていることだけは心残りですが……我々の代わりに、あの方々が仇をとってくれることでしょう」
「あの方々……?」
「それは些細なことですよ、探偵さん。まだ、あの女性に聞きたいことがあるのでしょう?」
従業員が指差したのは、μ'sを散々犯人扱いした女性だった。確かに気になるが、彼女に聞きたいことがあったのも事実。
直斗は彼女の前まで歩いて行った。
「さて、μ'sの皆さんが犯人ではないと判明しましたよ」
「……わ、私は謝らないわ!! 大体っ、誤解される方にも問題があるでしょ!? 本当にやってないならもっとちゃんと否定すれば良かったのよ!!」
「言うに事欠いてそれですか。本当に呆れますね。……とは言え、貴女が謝らないことなんて想像済みでしたよ。
後で必ず謝ってもらいますが、聞きたいことがあります。
……何故、貴女はμ'sを執拗に犯人にしたがったのですか? 犯人でもなく、かと言って庇うこともなかった。ならば貴女がμ'sが『犯人であってほしい』理由なんてないんです。
思い込みが激しいことを除いても、その理由は見当たらない。何故ですか?」
「…………」
女性は俯き、ボソボソと話し出す。直斗が聞き返してもまたボソボソとしか答えない。
「聞こえないです。なんて……」
「そいつらがっ、そいつらが人間のくせに付喪神である『刀剣男士』と恋愛ごっこなんかしてるって聞いたからよ!!
刀剣男士は戦うために下されたのに、恋愛ごっこなんかに付き合わせるから悪いの!!
ああでも、『あの女』のところの刀剣男士なら仕方ないのかしらね? 擬きなんだもの!!」
「!?」
「ちょっと待て。お前……なんで『刀剣男士』のことを知ってるんだ?」
豊前がそう聞く。女性はしらばっくれるつもり!? とヒステリックに叫んで豊前を睨んだ。
「あんたたちの審神者が私の本丸から刀剣男士を奪ったこと、今でも許してないわ!!」
「奪った……? 一体、何の話を……」
「惚けないで!! 返して、返してよ、彼らだって私のところに帰って来たいと思ってるはずなの!!
彼らがいれば私は、私の本丸は元の形に戻せるのよぉっ!!
返して、返しなさいよ!!
山姥切国広たちを!!」
「!!」
その名前に日光以外の刀剣男士が目を見開いた。
そして、ようやく目の前の『女』について思い出したのだ。
「キミ、まさか……『瑠璃溝隠』!?」
桑名が言えば女……瑠璃溝隠は笑った。
「そうよ、あんたたちの審神者に、山姥切国広たちを奪われた、瑠璃溝隠よ」
「……奪った? あれはお前が言った賭けだろうが」
「最初は私が勝てば山姥切長義を私の本丸で保護して、他の刀剣男士は『治療』してあげるってだけの条件だったのにあんたたちの審神者が無理やり……!!」
「まだ自分が被害者だと思ってるんだね。主に石をぶつけさせたくせに。いっそ尊敬すら覚えそうだよ」
「ああ、ここで山姥切長義に会えたのはきっと運命よ……あいつの元からあなたを救えって神様が言ってるんだわ!!」
「そのついでに妄想癖までとは。本当に救えないな、逃亡までしているというのに」
「妄想? 逃亡? 違うわ! 私は選ばれたの、あのダーズに!!」
「ダーズだと!?」
その名前を聞いて、柊サイドのメンバーは全員警戒態勢に入る。まさか瑠璃溝隠がダーズの元へ招かれていたとは。
彼女の周りを黒いモヤが覆い尽くす。
「さあ、来て頂戴! 私の刀剣男士を取り戻すために!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.304 )
- 日時: 2020/11/14 22:54
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: 4pC6k30f)
とある山中。そこで成海頼人は鼻歌を歌いながら旅館を見下ろしていた。
「ふふ、まさか結界を小さくとは言え破ってくるなんて。少し驚いたよ」
「黙れ」
成海の背後には、ハスターがいる。ハスターの目は全て成海を睨んでいた。
成海は振り向く。しかしそんなハスターを見てもなおにやにやと楽しそうに、愉しそうに嗤っている。
「元の世界の貴様は別段、敵対せねば気にすることもなかった。しかし、貴様は違う。同じ存在でありながらこうも違うものか」
「そうさ。キミの世界のボクとこのボクは違うんだ。キミの世界のボクはそこそこつまらない性格みたいだけどね。
ボクはとにかく遊びたいんだよ。暇で、面白そうな気配があればすぐに飛んでいっちゃう。そして、邪魔もされたくない」
「故に結界を張ったか」
「そうだよ? 結構すごい結界だったでしょ?」
成海はころりと表情を変える。それはまるで子どもが自慢するかのようなきらきらとした笑顔で。
しかし次の瞬間にはそれは歪んだ愉悦を浮かべていた。
「とっても楽しかったよ、『人間』たちが感情なんかに振り回されてるのは!」
「……」
「ある者は嘆き、ある者は笑い、ある者は殺し、あはっ、思い出しても笑えてきちゃう!!」
「貴様」
「壊れちゃったのは悲しいけど、まだまだ人間はあるからね! もっと、もっとボクを楽しませてほしいよ!!」
「ああ、何たる外道か」
「……自分は優しいカミサマだとでも? それこそ笑えるね。お前もイドーラも、サバイバーってやつらを嬲って愉しむそうじゃないか。
ひどいなぁ、ボクだけ悪いカミサマみたいに言ってさ。ボクはいつだってボクが楽しめればそれでいい、ボクはボクの味方なの!
あ、そっかお前、ハスターの本体から切り離された雀の涙程度の良心なんだっけ。邪魔だって言われて切り離された。あー、なら仕方ないのかぁ……もったいないっ。こんなに楽しいことを楽しめないなんて」
ころころと変わる表情には全て邪悪なものを感じさせる。
「でも、もう今回は終わり。満足したしね!」
「……この世界の貴様を、我は好かん」
「いいよ? 別に好かれたいと思ってないもん」
「そうか、成海頼人。いいや。
ニャルラトホテプ」
成海……否、ニャルラトホテプは一層歪んだ笑みを浮かべる。その背後には、薄らとしていながらも何とも形容し難い何かが浮かんでいた。
「じゃ、そろそろボクは帰るよ。結界も解いておく。まあ……今回ばかりはキミも戻った方がいいんじゃない?
相手が悪いよ」
「どういう事だ」
「ああ、ちょうど出てきたよ」
ニャルラトホテプが指す方を見る。そこにはあの旅館。それに黒いモヤが巻き付いていた。
よく見ればあのモヤは何やら虫をモチーフにしているらしい。あまりはっきりとはしていないが、あれは……。
「多分、あれは神らにとって厄介な相手だよ。その上神らじゃ倒せないと来た。よくまあ人間が神らに対してマウント取ろうと思うよね。
じゃ、ボクは忠告したから」
じゃねー☆と軽い口調で言いながらニャルラトホテプは消えた。
旅館に巻き付く、巨大なムカデと化したモヤなど一切無視して。
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