二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.324 )
- 日時: 2020/12/31 19:33
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
ちびノブのお仕事!
これは、柊サイドが夏旅行をしていた間のお話。え? 前回で終わったんじゃないのかって? 作者も何が起こってるのかよく分かってないんだなこれが。
全体夏旅行、と言っても本当に全員が行っていたわけではなかった。辞退したのは三人、いや、二人と一体。
バルク、ガードNo.26ことボンボン、そしてベインである。バルクはそんなことより機械の開発や建築などに力を注ぐと断り、ボンボンは「サビチャウ」と断った。ベインはその過去からか、あまり人の多いところへは行きたくないようだ。(これでも軟化した方である)
ならばと二人と一体は本丸の留守を頼まれた。が、バルクもベインもあまり来客の対応はしない。故にとあるナマモノが本丸の留守を共に守ることになった。それこそが『ちびノブ』。信長(FGO)にそっくりな謎のナマモノである。基本「ノブ」とか「ノッブ」とかしか話せない。なのにある程度の意思疎通ができるのだ。
ちびノブにも色々な種類がいる。ノーマルなちびノブ、それのでかい版のでかノブ、ノブ戦車、メカノッブ、ノッブUFO、ノブ選組、かぶきノッブ、埴輪ノッブ……何を言っているのか分からない? 大丈夫、多分誰も分からない。なんだ埴輪ノッブって。しかしこれら全てぐだぐだ系イベで生まれた存在故に深く突っ込んではならない。
形はいい加減だが戦闘力はわりと高く、並のサーヴァントが若干面倒に感じるほど。元が織田信長だからか武器の扱いもそこそこ上手い。そして雰囲気で自己増殖、自己再生、自己進化するというわりと本気で訳の分からないナマモノだ。なお、CVは釘宮理恵さんである。
ちびノブたちは基本的に大広間と空き部屋で寝起きしている。起床は六時。一部ちびノブたちはそれより早く起きるが、起床したら恋しいオフトゥンを出てからしまい出す。中にはオフトゥンに囚われたままの仲間もいるので同じ気持ちでありながらも起こしつつ。
食事当番であるちびノブたちが作った朝食を食べる。基本的にノブ選組のちびノブが一体おり、そのちびノブが漬けた沢庵と白米、そして味噌汁だ。たまに塩鮭が付く。
数体の食事当番のちびノブは先に食べ終え、サンドイッチとスープ、コーヒーをトレイに乗せて運ぶ。その最中、外で先に待機しているボンボンに「ノッブー」と声をかければ「オハヨウ、ノブ」と返ってくる。
進んだ先にあるのはバルクが本丸に滞在する間、住んでいる部屋だ。中からはガチャガチャ、という音が聞こえてくるのはいつものこと。どうせ聞こえないのでノックせず、トレイを頭に乗せて器用に扉を開ける。和風な建物からは想像も付かないほど殺風景な部屋にはちびノブたちには到底使い途は分からない機械が置いてあった。
「ノッブー!」
「……ん? なんじゃもう朝か。それは適当にそこらにでも置いておけ」
「ノブブ、ノノブノ」
「ワシはお前らの言葉なんぞ分からんからの、大方説教でもしとるんじゃろうが無駄じゃ、ほれ出てけ」
しっしっと犬でも追い払うように手を振った彼にノブ、とため息を吐いてちびノブ一体でも届く小さなテーブルに朝食を置いて部屋を出る。……これをわざわざ置いておく辺り、バルクも素直ではない。
次はベインなのだが彼はあまり本丸に居たがらない。故に初日に指摘された場所に置いておく。が、今日は珍しくベインがそこにいた。
「ノッブ!」
「ああ、おはよう。……食事を運んでもらっているのに、いつも顔を見せないのは不躾だと思ってな」
ベインはちびノブたちの言葉が通じる数少ない人物である。また、人型ではあるが人とは似て非なる? 存在ということからかちびノブたちにはとても友好的だ。
ちびノブたちは少しベインと話してからその場を後にした。この後の朝礼に遅れてしまう。
七時半、バルク、ベイン、そして非番のちびノブたちを除いた面々で朝礼を行う。『りーだー』と書かれたバッチを着けたちびノブが仕事を割り振っていく。仕事は本丸の掃除などを主に担当する本丸家事班と本丸見回り班、赤海町見回り班の三つだ。本丸家事班のみそこからさらに分かれるので多めに割り振られていく。なお、ボンボンだけは基本的に本丸に見回りが中心である。ちなみに馬の世話はするが畑の仕事は頻繁に戻ってくる桑名が行なっている。
「ノノノブブ、ノブブー(訳:今日も一日ご安全にー)」
「「「ノブブー(訳:ご安心にー)」」」
「ゴアンゼンニ!」
何か違う気もするが朝礼は短めに。それこそ無駄話をする社長さんとか、校長先生のような長さになってはいけない。適度に短くしないとだれてしまう。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.325 )
- 日時: 2020/12/31 19:42
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
赤海町の見回りは複数のちびノブが一グループ、ノブ選組が中心になって行う。なんだかんだ愛らしいその見目からか赤海町では人気だ。
「あらちびちゃんたち! 今日も見回りかい?」
「ノブ!」
「精が出るねぇ、ほら、これ飴だよ。持っておいき」
「ノブっ!!」
女性に飴を貰う。たまに甘味を貰えるこの仕事は意外とちびノブたちの間では人気だ。一部ちびノブに関しては「ノブノブノブ、ノノーブ(訳:正直、信長の元にいた時より待遇いいので戻りたくないですね)」と語る。
飴をころころと口の中で転がしていたちびノブたちの視界の端に、見慣れない少年たちが映った。一人は柔らかそうな金髪で、一人は紫の髪をしており、よく見るとほんの一部が水色である。一人は同じく金髪だが少し気弱そうな顔をしている。一人は焦茶色の髪だ。四人はちびノブたちが声をかける前に足早にどこかへ行ってしまった。
「ああ、あの子たちかい? どうも山の中にいるみたいなんだけど、迷惑はかけられないからって……子どもがそんなこと考えなくていいってのにねぇ」
「ノッブ……」
「ノブ! ノブノブブ!」
「ノッブ!」
一体のちびノブが声をあげ、他のちびノブが同意するように声を上げていく。そして一斉に四人の少年を追いかけ始めた。
山中の洞窟。そこでは何人もの少女たちがいて一人の少女──星乃一歌は外を不安そうに見ていた。中では二人の少女が息を荒くしてなるべく平坦な場所で寝かされている。そのうちの一人、天馬咲希は幼なじみの一人で、もう一人は北条沙都子という。二人の顔は赤く、汗もひどい。時折咳が聞こえると側にいる少女がすぐに様子を見る。
「おーい!!」
「!!」
四人の少年たち……天馬司、神代類、北条悟史、前原圭一が洞窟に駆け寄っていく。少女たちはほっと息を吐いた。
彼女らはある日突然、変な裂け目に飲み込まれた。別々の場所で。気が付けば全く知らない山中。混乱している最中に、この辺を荒らし回っていると言う盗賊を名乗る男たちに追いかけ回されて何とか振り切り、この洞窟に身を隠していた。
周辺の探索は圭一たちが行い、一歌たちはいつでも逃げられるように周囲に注意していた。山を降りた先に町があったのは幸いだが、もし自分たちを匿って盗賊たちに襲われては申し訳ない。それでも食料や水を分けてもらっていた。
しかしそんな緊張や無理が祟ったのか、二日前に沙都子と咲希が熱を出して倒れてしまったのだ。兄である悟史と司は大慌てで、その日はほとんど何もできなかったことを覚えている。
元気だったはずの鳳えむもすっかり元気を無くし、出会った頃にはえむだけでなく草薙寧々を可愛いと、お持ち帰りぃ、とテンションが上がっていた竜宮レナも元気がない。沙都子と親友である古手梨花はずっと心配そうに沙都子の手を握ったままだ。
「あの、沙都子は……」
「咲希も、どうだ?」
「……あまり、良くなってないんです……」
「……そう、だろうな。くそっ、もっときちんと寝かせてやれれば!」
司が顔を歪める。生まれつき体の弱い咲希の側にいたのは司だ。こんな場所でなければきっちりと対応ができるはずなのに、できないことが悔しいに違いない。
悟史も悔しそうな顔をしている。
「みぃつけたぁ!!」
「!!」
「なっ!?」
「……つけられていた、のかな」
類が冷静に言うが明らかに現れた盗賊たちを警戒している。四人が少女たちを庇うように立つ。しかしあちらは武器を多数所持しており、対するこちらは何もない。どちらかが有利か、火を見るよりも明らかだった。
その後ろでは園崎魅音と園崎詩音が少女たちと四人の中間に立つ。二人は望月穂波と共に特に狙われているのに、まだ自分たちの方が慣れているからと守ろうとしているのだ。それだって武器があれば、という話なのに。少女たちの中で唯一、日野森志歩も盗賊たちを睨んではいるが顔色が悪い。
「そんなに警戒するなよぉ、ちょぉっとおかしな趣味のおじさんたちに売られてくれりゃあいいんだ、ひひひ!」
「ふざけんな! そんなのはい分かりましたって頷くと思うのか!?」
圭一が言えば盗賊たちは下卑た笑いを一層深める。
「思ってねえよ。ただ俺たち、お前みたいなガキをいじめるのも好きでねぇ……」
「お前たち四人を押さえつけた後に何人かで楽しむのもアリだな」
「そこの金髪のガキ二人で楽しんだらより面白そうだな!」
「この下衆め……!!」
司の顔が怒りに歪み、悟史の顔は蒼白になる。
「さぁってそろそろ、覚悟しやがっ」
「ノブー!!」
パカァン、と音がして、一人がうぉ!? と叫びながら前に倒れる。盗賊を含めて全員がそちらを見れば、ちびノブたちが来ていた。口元は変わらないが眉は吊り上がっている。
「な、なんだぁ?」
「ノブノブノブブ、ノブノブ、ノブ!(訳:武器を持たぬ少年少女によって集り、挙句に売ろうとするとは、許せぬ!)」
「なんて???」
「ノブノブノノブ、ノブノブノブァ!(訳:貴様らのような悪者、このちびノブたちが成敗してくれる!)」
「ノブノブノブノーブ、ノッブノブノブノーブ(訳:冷静に考えたら、この盗賊たちこっちの言うこと分かってなさそうだしその前にボコっても良さそう)」
「ノブ(訳:それな)」
「な、なんかよく分かんねえが邪魔するなら、やっちまえ!!」
盗賊たちがちびノブたちに襲いかかる。思わず一歌は目を瞑ってしまう。
さてここでちびノブたちの戦闘力を思い出そう。並の『サーヴァント』が若干面倒に感じるほど。そう、『サーヴァント』が、である。つまり、普通の人間相手なら。
「ノッブー!!」
「ノブー!!」
「ぎゃあああああ!?」
「つ、強えぇぇぇえ!?」
当然、圧勝であった。べちべち、という間抜けな音に対して威力は二度見するレベルだ。
「く、くそっ、覚えてろぉおおおおお!?」
「ノブノブー(訳:やられ役御用達のセリフー)」
「ノーノブノブ(訳:プークスクス)」
「なんかよく分かんねえけど馬鹿にされてる気はするぞチクショォオオオオオオ!!」
盗賊たちは逃げ出し、ちびノブたちは各々武器をしまって一歌たちに歩み寄った。
「ノブノブ?(訳:無事でしたか?)」
「え、ええと……助けてくれてありがとう」
一歌がしゃがみ込み、頭を撫でる。髪はさらさらとしていて心地いい。
「ノッブー♪」
「わぁ……さらさらしてて気持ちいい」
「あ、あたしも撫でるっ!」
横にえむが来て他のちびノブを撫でる。するとみるみる顔が明るくなり、一気に元気を取り戻したようだ。それにほっと息を吐く。
「しかし……どうするか。ここを知られた以上、他に移動するしかないが……」
「やっぱり、あの町の人たちに助けてもらいませんか? 僕らだけじゃ、もう……」
「悟史、気持ちは分かるけど……もしわたしたちを狙ってきたら町の人たちまで巻き込んで……」
「でもお姉、もう私たちだけでどうにかできる問題じゃないですよ」
全員が話し合う。けれど町の人たちに助けてもらおうというメンバーと町の人たちを巻き込めない、というメンバーに分かれている。一歌はどちらの気持ちも分かってしまって、ちらりと見れば穂波も同じようだ。
「……何者だ」
「!!」
低い声にちびノブたち以外は思わずびくりと体を震わせた。そちらを見れば、筋骨隆々とした体を持ち、鹿のような頭をした男、ベインがこちらを睨みつけている。
「っ!!」
「……こんなところに、子ども……?」
「ノッブー!」
「! お前たちか……」
「ノブノブノブノブ、ノブノブ」
「……なるほど。盗賊に……お前たち」
「はっ、はい!」
「着いてこい」
ベインが背中を向けて歩き出す。それに全員で迷っているととことことえむとちびノブたちが着いて行く。
「っておいえむ!?」
「大丈夫だよ! この子たちと鹿さん仲良しだから!」
「いや仲良しだからって信頼できるとは……!」
「ノブー」
「この子たちも大丈夫って言ってるよ!」
「分かるのか!?」
「なんとなく!」
「なんとなく!?」
えむと司の、まるでコントのようなやりとりにベインは振り返って待っていた。その目は明らかに「着いてこないなら置いて行くが」と語っている。
「……でも、私たちにはこれしか残されてないよ」
「レナ」
「私は着いていくんだよ、だよ! それに……鹿さんもこの子たちもかぁいいからぁ〜〜〜〜〜〜!!
はうぅ、もう我慢できないっ、お持ち帰りぃいいい!!」
「うぉっ!? っ、離れろっ!!」
ベインの首元に抱きつくレナ。引き剥がそうとしているがその細い腕のどこにそんな力があるのか全く離れる気配はない。
「待てレナ! それはお持ち帰りじゃなくて誘拐だ!!」
「はぅうう〜!!」
「ぐっ、ぬ、離、れ、なんで離れないんだっ!?」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.326 )
- 日時: 2020/12/31 19:47
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
やりとりからしばらく。一歌たちが着いたのは立派な和風の屋敷だった。門が開かれ、中も立派な庭が広がっている。しかし、ちびノブのような生き物は何体もいるが人の気配が全くない気がする。
途中から咲希を抱えてくれたベインが口を開いた。
「ここの主たちは、今旅行に行っている。好きに使えば良い。残りはバルクが説明してくれるだろう」
「えっ、す、好きに、って」
「ここ、園崎本家より大きくないですか……?」
詩音の言葉に魅音が頷く。それに、好きにして良いと言われてもどうしたらいいのか分からない。そんな一歌たちの戸惑いを感じたのか少しだけ考える素振りを見せたベインははぁとため息を吐く。
「……少し待っていろ」
そう言って咲希を下ろし、司に任せると中へ入っていった。
しばらくして、ベインは一人の老人とロボットを連れてきた。
「こっちはバルク、ボンボ」
「ガードNo.26じゃ」
「……ガードNo.26だ。後は彼らに聞いてくれ」
「ヨロシクネ、ボンボン」
「ガードNo.26じゃお前は! ……ったく、お前さんも面倒なもん拾ってきたもんじゃのう。放っておいてもいいじゃろうが」
「……頼んだぞ」
「はいはい」
心底面倒くさそうに返事をするバルクにベインはまたため息を吐いてその場を後にしようとする。
「あっ、ありがとうございました!」
一歌がそう叫ぶように言えば、全員が口々に彼に礼を言い始めた。それにベインは振り向くことはなかった。
「気にすることはないぞ、あいつはいろいろ遭ってああじゃからな」
「バルクノコトモアマリ気ニシナイデクダサイ! 機械イジリヲ邪魔サレテ不機嫌ナダケデス!」
「余計なことを言うな。その機能取ってやろうか?」
そんなやりとりに苦笑いしているとレナがぷるぷると震えている。それに圭一たちはあっ、と声を出していた。
「はぅうう、ボンボンちゃんかぁいいよぉ!! おっもちかえりぃい〜!!」
「うぉ!?」
「ボンボン、カワイイ、記録シマス」
「せんでいい! 離れんか! ぐぬ、力強いなこの小娘!?」
「やめろレナー!!」
全員で時間をかけてレナをボンボンから引き剥がし、少し息を整える。その間もレナはボンボンを緩み切った顔で見ていた。
「ま、ここにいるのは構わん。どうせここに本来住んどるやつらも何も言わんしの。ただし、ワシの部屋に勝手に出入りするな。するとしても何も触るな」
「そ、それは構わないんですけど、なんで」
「下手に触って爆発でもしたいんなら別じゃ、勝手にせい」
「触りません!!」
「それでいい。……そこの小娘二人は布団でも敷いて寝かせてやった方がいいか。布団は持ってきてやろう、ボ、ガードNo.26、大広間にでも案内してやれ」
「了解シマシタ、コチラデス」
バルクがガチャ、ガチャと杖をついて戻っていく。ボンボンに案内されて中に入り、廊下を歩く。中から見る庭も素晴らしいもので、池の水面はキラキラと輝いていた。
「良い人たちで良かったね」
「うん。それに、咲希と沙都子ちゃんもきちんと休ませてあげられそうで良かった」
穂波とそう笑い合う。
「梨花ちゃん、もう安心して良いからね」
梨花にもそう話しかければ、はい、と初めて会った時以降見られなくなった、にぱー☆という笑顔を見せてくれた。それを見て一歌はホッと息を吐き、初めて自分が、未だに気を張っていたことに気が付く。
安心したのは、私もなんだ。そう考えながら大広間に着く。
外観から相当広い場所だと考えていたが実際に見てもとても広い。多分、ここで全員が寝ることになっても充分なスペースを確保できそうだ。
「持ってきたぞ」
障子を足で開ける。その手には二組の布団があり、よく持ってこられたな、と圭一の呟きが耳に入った。
「ノッブー!」
「バルク、行儀ガ悪イデス」
「どうだっていいじゃろが。それとガードNo.26、この後街の男女どもがここに来る。いくつか服を持たせてな。対応するように」
「了解シマシタ」
「えっ、服……?」
「お前らドロドロの服のまま、ここに居座るつもりか?」
「で、でも、私たちお金なくて」
そう。突然飲み込まれたせいで金なんてほとんど持っていなかった。町の人たちの善意で食べ物や水は分けてもらっていたが、さすがに服なんて。
「は? そんなんここの本来の主にツケとくから気にすることないぞ」
「え!?」
「さ、さすがに悪すぎますよ!」
思わず詩音が言うがバルクはどこ吹く風。知るかと言わんばかりに口を開いた。
「どうせあいつは気にせんわ。むしろ何もせん方がぐちぐち言われる、黙って受け取っておけ」
「で、でも」
「気にするならここにいる間、なんか手伝いでもしておけ。ワシは部屋に戻る。そうそう、チビども、このことはあいつに報告しておけ」
「ノブノブー(訳:ノブ使いが荒ーい)」
「ノブ使イガ荒イト言ッテマス!」
「聞こえんなー、年寄りじゃし耳が遠くて敵わんわい」
「ノーノブノブー!(訳:都合のいい時だけ年寄りになるなー!)」
ちびノブの文句をボンボンが訳する前に、バルクは大広間を出て行った。
「迷惑、だったのかな」
悟史がそう呟く。全員が黙り込んでしまう。
「ノブノブノブノブノノブ」
「え、な、なんて?」
「本当ニ迷惑ナラバルクハ追イ出シテル、ベインモ連レテ来ナイ。ソウ言ッテマス。ボンボンモソウ思イマス」
「そう、なの?」
「ノッブ!」
ちびノブが力強く頷く。それに、全員がやっと笑顔になれた。
町の人たちもやって来て、いろいろな服を見せてもらう。その最中に誰もが「気にしなくていいのに」「遠慮なく頼りな」と声をかけてくれて、一歌は……いいや、一歌だけでなく、全員温かな気持ちになっていた。
「あーいいです!! この大正時代の女学生服似合うと思っていましたぁああ!!」
「あ、あの……」
一人、やたらテンションが高い女性が女子勢を着せ替え人形にしていたのは、また別の話である。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.327 )
- 日時: 2020/12/31 19:53
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
深夜。何人もの男たちは和風の屋敷の前に来ていた。その男たちは、一歌たちを追いかけていた盗賊だった。
「立派な屋敷だが、あまり見張りもいねえなら問題ねえ、あのガキども攫って金目の物を頂戴するぞ!」
「「「「おお!!」」」」
下っ端らしき男たちがせーの、と門に手をかける。扉は難なくと開き……。
「ノブー!!(訳:構えー!!)」
──ガシャコンッ。
「「「「「えっ」」」」」
盗賊たちの目に入ったのは、火縄銃を構えるちびノブたち。一体だけ刀のような何かを掲げている。
「ノッブー!!(訳:放てー!!)」
──パパパパパパァン!!
「ぎゃあぁああああああ!?」
「いててててて!?」
「やはり来たか」
何とか見れば、そこにはベインとボンボンが立っている。ボンボンは釘を打ちつけたバットのような棒を持っていた。
「く、くそっ、てめえら何者だ!?」
「俺たちが誰かなどどうでもいいだろう」
「ハジメマシテ、ボンボン」
「……答えなくてもいいぞ」
「挨拶、大事デス」
「まあ、いいか……」
「おい無視してんじゃねえ!!」
「……あの子ども達は、全くの丸腰だった」
「は?」
「木の枝を折ったりして動物たちを追いかけ回すこともしなかった。殺すなんてもっての外だった。
……完全に無力で、必要以上に傷つけることを良しとしない子どもたちだ」
「だから何だってんだ!」
「あの子ども達は、動物たちを傷つけようとしなかった。仮にその発想がなかったのだとしても俺にはそれで充分だ。
対してお前たちは無力な子ども達を追いかけ回し、傷つけ、時に暇潰しと称して動物たちにも危害を加えようとした」
そこでベインは言葉を切り、チェーンを回し始める。その先には巨大な鋏が付いていた。
「俺がお前達を許さない理由なんぞ、それで充分だ」
投げられたチェーンが一人の腰を挟む。ベインはそれを引き寄せれば盗賊の一人はベインの元へ引き寄せられた。
「うわぁあああっ!?」
「無力な者に危害を加える輩は、消え失せろ」
チェーンとは反対の手に持っていた武器で盗賊を殴りつければ盗賊は一発で気絶した。盗賊たちは少し尻込みしたものの、人数はこちらの方が多いと一斉に襲いかかっていった。
しかし、ベインだけを見ていて他を忘れていた。
「リモート爆弾、設置完了」
機械的な声に、ようやく盗賊たちは気付いた。周りが爆弾で囲まれていることに。
「なっ」
「慌てんな! あと二十秒はある、その間にっ」
「リモート爆弾、起動」
瞬間。一つの爆弾が爆発し、その爆風によって他の爆弾も誘爆される。
「ひぃいいい!?」
「あっぢ、あぢっ!!」
威力はだいぶ弱いのか大怪我する者はいないが混乱している間にちびノブやベインがどんどん盗賊たちを捕らえていく。ボンボンも爆弾を設置しつつ捕らえ、手が空けばまた爆弾を爆発させている。
そんな中でも一人だけ隙を見つけ、屋敷の方へ向かっていく。だが、壁が迫り上がってくる。その鋭利な柵に擦った際の痛みに動揺して尻餅を付いた。
「残念じゃったなぁ」
見上げれば、人であると分かるのに人だとは思えない老人。肌から直接伸びている機械。それが盗賊には恐ろしく思えて仕方ない。老人、バルクは杖を振り上げる。
「ま、恨むなら自分の運の悪さでも恨んどれ、莫迦者が」
ひゅ、という音とほぼ同時に盗賊は意識を手放した。
翌朝。
「ノブー!!」
「ノブァー!!」
パタパタパタ、ではなくデケデケデケと廊下を走るちびノブたち。食事当番だったのだが昨夜の盗賊確保に参加してしまったが故に寝坊してしまった。これでは他のちびノブたちからブーイングが来かねない。それだけならまだいいが、暴徒と化されても困る。
厨に近付いていくとふんわりと香る、味噌汁の匂いに首を傾げた。入ればそこには、エプロンを付けた一歌たちが食事を準備していた。
「ノ、ノブァ?」
「あ、おはようちびノブちゃん!」
えむがにっこりと笑って挨拶してくる。それで全員が気付いたらしく、それぞれ口々に挨拶をしてきた。
「ノブノブノブ?(訳:何で食事を作っているの?)」
「あのね、お世話になるからみんなで家事とか分担してやろうって話になったんだ!」
「ノブッ!?」
「聞けば、お前たちは町の見回りやこの屋敷の見回りをしていると。それで家事までは大変だろう」
「だから、僕たちが少しでも手伝おうと思ってね」
司と類の言葉にちびノブたちはジィンと心が温かくなる。
そこに穂波が玉子焼きを持ってきた。
「味見してくれる? 口に合えばいいんだけど」
一切れつまんで口に入れる。そして、ピシャン、と衝撃が走った。
「ノブァー!!!!!(訳:美味しいー!!!!!)」
「美味しいって!」
「良かったぁ」
世話になるとは言え、こんな美味しい物を毎日食べられるのだろうか。役得。
玉子焼きを始めとする料理はどれもこれも美味しく、あまり手の回っていなかった掃除も手を回せるようになった。ちびノブたちは仕事が楽になった上に仕事の質の向上ができた、と大喜びであった。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.328 )
- 日時: 2020/12/31 20:12
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: PF4eFA6h)
そして、ある日。門の方で音がする。もしかするとお客さんかもしれない、と掃除をしていた一歌が門の方へ向かう。それに気付いたのかちびノブと、たまたま外に出ていたバルク、ボンボンが共に向かっていった。
一歌が開ける前に、門が開く。
「たっだいまー!」
そこにいたのは黒いショートヘアの女性を筆頭とした何人もの男たちだった。一歌がきょとりとしていると女性……柊も一歌を見てきょとりとした。
「「どちら様ですか……?」」
「は?」
「エ?」
「え、ちょ、バルク爺、この子誰? バルク爺の隠し子?」
「バカ言うな。……おい、チビどもから連絡来とらんのか?」
「え? 連絡?」
「いや、連絡なんて来とらんけんど……誰か聞いちょるかー?」
陸奥守が後ろにいる面々に聞けば誰もが首を横に振り、戸惑った声が聞こえる。
「ノッブ……(訳:やっべ……)」
「ノブ、ヤッベ、トハ?」
「お前か!! 連絡しとらんかったのか!!」
「ノブブー!!(訳:逃げろー!!)」
「このっ、待たんかチビ!!」
「ありゃま……」
そんなちょっとした騒動がありながらも一歌が説明すれば全員納得しつつ、元の世界へ戻れるようなるまで居るといいと言われ、一歌たちもそれに甘えた。
「そんなこともあったねぇ」
しみじみと柊は言う。遠くから聞こえるどんちゃん騒ぎを耳にしながら甘め酒を飲み(炭酸入りだったが一生懸命かき混ぜて炭酸を飛ばした)を飲み、和室の窓から一望できる月明かりを反射する海を眺めていた。側には陸奥守がおり、足元にはジウがいる。
あの後、一ヶ月ほど時間はかかったがそれぞれの世界に無事繋げられて一歌たちは元の世界へと帰っていった。
行き来できるようになるまでも相当かかったものの、それぞれの世界からも行き来できるようになって。どの世界でも年末を迎えていた。
年末年始のためにマスターハンドとクレイジーハンドの力を借りて作った空中宴会場は宙に浮く島となっており、その中央に大きな宴会場がある。また、その二神の力を借りれば宴会場をある程度改造できる。年始の宴兼新ジャンル歓迎会の際には少しではあるが内装を変える予定だ。
ちなみに、裸族なのだが今回は花村が料理担当に回されているため年末年始の宴での裸族活動は断念していた。……小説外では分からないが。
柊と陸奥守はひんやりとした風に体を震わせる。パチ、パチと火鉢の火が爆ぜる音がした。
「そろそろ閉めるか」
「ほうじゃのぅ」
「わにゃ!」
窓を閉める。けれどその海の美しさは変わらない。
「むっちゃん」
「おん?」
「ジウ」
「わにゃ?」
「去年はまともに言えなかったけど」
グラスを彼の前に差し出す。それに何か気付いたのか陸奥守も猪口を差し出した。
「来年もよろしく」
「おう、こちらこそ、ぜよ」
「わにゃー!!」
キン、という音が、和室に優しく響いた。