二次創作小説(新・総合)

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.449 )
日時: 2021/12/10 00:57
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: bD140njr)

雪の別離わかれ
 ──レオの思い出。第五人格内にて複数あるマップの一つだ。
 燃える前の工場、いくつか飾り付けられたモミの木に、プレゼント。その名前の通り、レオの思い出を元に作られたらしいここは、一年中雪が降り積もっていた。不思議なことに、その雪はずっと一定の量しか積もらないが。
 そのマップに、レオはいた。一つの石に腰掛けて。時々考え事や頭を冷やしたい時には、ここは彼にとって最適な場所だ。しんと静まり、刺すような寒さが、燃えた彼にとっては心地よく感じられる。それに……確かにあった美しく楽しい日々が、少しだけ心を落ち着かせてくれる。
 あと数週間後に迫った、愛娘、リサの誕生日。親である自分たちが振り回し、不幸にしてしまったリサ。そのリサと奇跡的に再会できた時は本当に嬉しかった。……ただ、最初の頃は彼女をリサと認識できずにハンターとして殴ってしまったことが本当に苦しかったが。
 それでも、今までの分、レオは今更でも構わない。リサに愛情を注ぐと決めた。
 誕生日もその一つ。クリスマスに近いために毎年クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントを用意して。今年もそうするつもりだ。
 何をあげよう。去年はいい香りのするハンドクリームと、花束をプレゼントした。花はプレゼントするつもりではいるが、来年の春に向けて新しい麦わら帽子をいくつか用意しようか。
 いいや、最近リサはノートン・キャンベルという青年と仲睦まじい。父親として思うところはあるが、それでもクリーチャー・ピアソンだとか、ライリーのような男に引っ掛かるよりは余程いい。ともかく、そうとなればもっとファッションやメイクにも興味が出ていてもおかしくはない。
 ならばメイク道具だろうかと思ったが、レオには縁の無いもので、良し悪しなど分かるはずもなく。
 ウィラ・ナイエルやマルガレータ・ツェレ、ハンターならばマリーや美智子が詳しいだろうか。一度話を聞いてみるのも悪くないだろう。
 ……こんなに悩んでいるのに、体が冷え始めているのに、心は穏やかで温かい。
 このまま、復讐心を忘れられたら、どれだけ。
「復讐心を忘れるなど、してはいけませんよ」
「!?」
 咄嗟に振り向く。そこには緑の髪をした優男と暗い顔をした黒い猫耳と猫のしっぽが生えた少年がいる。
 一体いつの間にいたのだろうか。いや、そもそも何故ここに。
 困惑しながらも警戒を怠らないレオに優男はくすくす、と笑う。
「初めまして、レオ・ベイカー様。私はクリフォード・レイノルズと申します。
こちらは黒猫。以後お見知りおきを」
 クリフォード・レイノルズと名乗った優男は恭しく、そしてどこか芝居掛かったようにお辞儀をする。
「私は、『ダーズ』様の元で畏れ多くも様々な仕事をさせていただいております」
「!! ダーズだと……?」
 ダーズ。それは今、柊たちが敵対している者の一人の名前。だとすれば彼らは敵ということになる。
 念のためにとそばに置いてあったサメを象った武器を手に取った。
「さて、話を戻しますが……復讐心を忘れてはいけません。
だって、そうでしょう?
『貴方の家族は、一人の男の手によってズタズタに引き裂かれた』」
 その瞬間、頭に鋭い痛みが走った。思わず呻き、膝をついてしまう。
「『貴方はそんな男が憎くて、そして自分よりもその男を選び、娘をも捨てた元妻が憎くて、酒に溺れた』」
 クリフォードが言葉を紡ぐ。脳内に、惨めでどうしようもない、過去が蘇ってくる。
「『そう、家の物も、娘の宝物まで売っ払って酒に溺れて、結局は焼身自殺を図り』」
「が、ぁあ!!」
「『ああ、実際は放火でしたか? 何にせよ、貴方は死に損ねた』」
「ぐぁ、あ゛」

 痛い、いたい、あたまがわれそうなほどに

 にくい、にくい、あいつが

「『そんな貴方を奮い立たせていたのは』」

 にくい

「『復讐心そのものなのだから』」

 憎い

 憎い

 憎い

「ぎっ、ガ、ァ!!」

 やめて、く

 憎、い

 いや、だ

 にく、い

 り、

 にくい、憎いぃいいいい

 さ

 憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて

「り、さ、ぎ、ァ゛」
「なるほど……貴方を繋ぎ止めてしまっているのはその存在ですか……。
ちょうどいいみたいですし、その『楔』は、
















壊してしまいましょうか」

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.450 )
日時: 2022/02/03 17:59
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: VhCiudjX)

「パパー!」
 エマはレオを探しに、このマップまでやって来ていた。クリスマスに飾るリース、それの飾り付けを相談したいと思っていたのだが見当たらず、近くにいたエミリーに聞けばレオはここに行ったと聞いたのだ。
 どの辺にいるかは分かっている。モミの木の近くに彼は必ずいる。
 その予想通り、レオはモミの木の近くに立っていた。
「あっ、パパ!」
 彼に走り寄る。しかし……彼がこちらを見た瞬間、その足は止まってしまう。
 何だか、おかしい。
 目が、どこかおかしい。武器を手に、ゆらりゆらりと歩み寄ってくる。
 思わず一歩、二歩と後ずさるがレオも一歩、二歩と歩み寄って。
「リ、サ」
「パパ……?」
 ぐらり、ゆらり、ぐらり、ゆらり。距離は縮まっていく。
「リ、サァ」
「パ、パ」
「に、ゲ」
 武器が、振り上げられる。それを、見ていることしかできなくて。
「にゲ、ろ」
 ひゅ、と、音がして。
「ニげ、ろ、リ、サァア……!!」
 もう、避けられなくて。



「パパ」



──ゴッ……!!










 気が付けば、娘は倒れていた。彼女の周りの雪はリサの血で汚れていて。
 じわりじわりと白にが滲んで、広がって。
「これは、貴方がやったことですよ」
「あ、ア……!!」
「可哀想に。彼女、叫んでいましたよ。パパ、パパと」
「ああ、あ、アア゛……!!」
「ふふふ、これで父親? 笑えますね」
「アアア゛!!」
 何故。何故!!
 ああ、ああ!!
 なぜどうしてなんでいやだこんなのうそだリサすまないああやりたかったわけじゃないなのにどうしててがとまらなくていやだうそだリサごめんこんなこんなこんなあ、ああ、あああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああありああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああありあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああさあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

「ア゛、ア゛ア゛ア゛」
「さて、いい具合になりましたね。黒猫。近くに置いておいた瑠璃溝隠を回収しなさい」
「……はい」
 くろい、やみ。そこへ、おしこまれ、た。


















「……おい、おい。聞こえてるか」
「……」
 ほんの少し聞こえる、知らない声。ぼやけた視界で誰か分からないが、なんとか答えようと、できる限りで頷いてみせる。
「いいか、お前の親父はこれから、ダーズの力を強化するために、殺戮の道具として使われる。
……そんなの嫌だろ。だから、止める方法を教える。手に握らせておくから、絶対に離すな」
 手が開かれ、何か紙を握らされる。それを何とか強く握ればよし、と声が聞こえた。
「決行日は…………。シューニリアショッピングモールで行われる……だ。人が集まりやすい場所で大暴れさせるつもりだ。
……俺ができんのはここまでだから、しくじるなよ」
 そう言って声が、足音が離れていく。それとほぼ同時に、聞き慣れた声が聞こえた気がした。

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.451 )
日時: 2021/12/10 01:10
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: bD140njr)

「……ん」
「リサ、気が付いた?」
「……エミリー……?」
「戻ってこないのを心配して、ノートンさんが様子を見に行ったら倒れてたって……良かったわ、目を覚まして」
「……あ……パパ!!」
 勢いよく起き上がる。バランスを崩してしまったが、エミリーに支えられる。けれどそんな場合ではない。
「ねえエミリー、パパ、パパは!?」
「レオさん? 見てないわ……どうしたの?」
「……パパ……パパ、パパが!!」
「ど、どうしたの? 落ち着いて、リサ」
「ぐすっ、嘘、パパ、パパぁっ!!」
「リサ、リサ!?」
 嘘だ。だってパパは、優しいパパに戻ってくれた。だから、だから!
 自分を殴っただなんて、そんなの、悪い夢だ!!
「パパ、パパァッ!!」
「リサ、落ち着いて、リサっ!」
「どうしたの……ウッズさん?」
「ひっく、ぐす、やだぁ、パパぁ……!!」
「どうしたの、落ち着いてウッズさん。ダイアー先生、一体何が?」
「それが、急に混乱してしまって……レオさんに何かあったみたいなんだけれど……」
 手が誰かに握られる。見れば、ノートンがいて。
「ウッズさん、落ち着いて話せる?」
「の、とん、さ……」
「ゆっくりでいいから」
 その声に少し落ち着いて、話し出す。でも、思い出すとどうしても悲しくて、どうして、と問わずにはいられなくて。
 すぐに涙がボロボロ溢れる。
「そんな、レオさんが……?」
「エマも、エマも、信じ、たく、ない、でも、でもぉ……!」
「……なら、あの紙は」
「紙?」
「……少し、外に出ようダイアー先生。ウッズさん、誰かに紅茶持ってきてもらうように頼むから、少し待てる?」
 頷けば、ノートンはエミリーと部屋を出て行った。
 静かな部屋に一人。そうしていると涙がまた溢れてくる。
 どうして、どうしてあんなことになってしまったんだろう。……パパも、泣いていた。
「パパ……どうして……?」

















 気まずい、そう思いながらも湯気が緩やかに立ち、良い香りを漂わせている紅茶を片手にある部屋に入る。
 そこにいたのはエマ。……レオ関連で混乱していたらしい。無理もない。ある程度元に戻っていた彼に殴られ、気絶させられたのだから。正直、それで自分に来させるのはどうかと思ったがまあ仕方ないとして。
「おい、エマ・ウッズ」
「……ライリーさん」
「紅茶を持ってきてやったぞ」
 サイドテーブルに置く。けれどエマはありがとう、と小さく言うだけで紅茶に手を付けようとはしない。
 ……沈黙が、その場を支配する。
「……なんだ、その……」
「……」
「……こ、今回は……災難だったとして、考えておけばいい」
 そうだ、災難。そう考えればいいのだ。……レオは復讐者としてハンターとなった。そのせいで、彼女は無用な被害を被ったのだ。
「……災難?」
「そう、そうだ。何せあいつは『復讐者』なんだからな。そのせいで意識が……」
「……わね……」
「?」
「よくも……よくもそんなことが言えるわね!!」
 エマがベッドから飛び起きて、自分に飛びかかってくる。咄嗟に下がっても避け切れず、そのまま床に押し倒された。ガシャン、とカップが割れた音がした。
 頭をぶつけて思わず呻くが、頬に落ちた冷たい何かに目を開く。
 怒りで顔を染めたエマが、涙を溢しながら自分を睨みつけ、平手で頬を叩いた。
「ぐっ!!」
「パパを、私たちを狂わせた張本人のくせに!! パパを復讐者にしたのは貴方じゃない!!」
「っ!? お前、まさか」
「なんで、なんでママだったの!? なんでママを奪ったの!? ねえっ!!
なんで、なんで私たちを壊したの!? ねえ!!
なんで、なんでよ!!」
 そう問いながらも何度も頬を叩いてくる。メガネは吹っ飛び、口の中に鉄の味が広がり始めた。
「が、あっ」
「許せないのに、許せないのに!!
貴方も!! 『ジョーンズ先生』も!! ひどいおじさんも!! ママも、パパも!! みんなみんな、心の底から恨めればいいのにっ!!
……どうして。どうして、優しくしてくれたの!! どうして、優しくしたの!?
どうして……! そのせいで、そのせいで……恨みたくても、恨み切れなくて……!!
いつまでも苦しいの!! 救われないのに!!
優しく、なんて、してほしくなかった……!!
恨ませてよ、恨ませてよ貴方たちのこと、ううぅ……!!」
「……リサ、なのか……」
「なんでよぉ……なんでぇ……返して、返してよ……うわぁあん……!」
「……」
「ねえ、すごい音し……えっ、ど、どうしたの!?」
 トレイシーの声をきっかけに、サバイバーたちが集まってくる。女性サバイバーたちがエマを支えながら彼女をベッドへ戻す。自分には男性サバイバーが寄ってきて支えられ、部屋を出ていく。
 そのまま別の部屋で手当てをされた。だが、脳内にはずっとエマの泣き顔がこびりついていた。

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.452 )
日時: 2021/12/10 01:21
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: bD140njr)

「大変だったみたいだね」
「……ノートン・キャンベルか」
 夜。眠れずに水を飲みに出たライリーの後ろから話しかけてきたのはノートンだった。
 頬すごいねなんて何でもないように言う彼に少しばかり苛立ちを覚える。
「何の用だ」
「ちょっとね。たまたま近くにいたもんだから、少しウッズさんが叫んでたの聞こえたんだ」
「……」
「何があったの?」
「……それ、は」
 言うのを躊躇ってしまう。自分でも分かっているのだ。あれは、とても誉められたことではない。むしろ軽蔑されても仕方ないとさえ思う。
 だが。どうにも自分も冷静ではないらしい。ぽつり、ぽつりと口から溢れてしまう。
 エマ・ウッズ……否、リサ・ベイカーから母を、レオ・ベイカーから妻を奪い、彼にほぼ未来のない投資をさせたことを。
 ふぅん、とノートンから声が漏れる。目を見なくても分かる。どうせ、自分を軽蔑しているのだ。
「そんなことしてまで、他人の妻が欲しかったんだ」
「っ……仕方、なかったんだ……!!」
「何が仕方なかったわけ?」
 言葉に詰まる。仕方ないとは思うのだ。だって。



 あれほどまでに、燃えるような恋をしたのは初めてだった。
 レオと知り合い、初めてマーシャ・ベイカーと会った時。微笑みながら初めまして、と挨拶してくれた彼女に、一目惚れした。そんなのは初めてだった。いや、もしかするとあれが初恋だったのかもしれないとすら思う。
 既婚者の、それも子どもがいる女性に恋をして。どうしようもなく、彼女を欲した。どうしてもその隣にいるのが、自分でありたいと願った。
 夫婦仲が悪化していたのもあって、ライリーがマーシャと距離を縮めるのは容易だった。当時、リサには少し嫌われていたがそれでもマーシャと距離を縮められれば問題などなくて。
 結果的に、ライリーはマーシャと駆け落ちすることに成功したのだ。その時に、リサを連れて来たかったら連れて来てもいいとは言った。
 けれど、マーシャは一人で来て。驚きはしたが、ライリーは『あれほど大切にしていた娘にも勝ったのだ』という仄暗い喜びしか見出していなくて。
 仕方なかった、仕方なかったと言い訳しながらも、ここに来てからずっと、ずっと。
「その罪が自分を苛ませてたと?」
「……」
「本当は誰かに責めて欲しかったの? それを」
「……」
 そう、だったのかもしれない。こうして話したのは、彼に責めて欲しかったのかもしれない。
 そうすれば、少しは。
「ああ、図星かな。だとしたら……良かったよ、あんたのその望みを、僕が叶える形にならなくてさ」
「は?」
 やっと顔を上げる。
 そこにいるノートンは、無表情で自分を見ていて。
「それを、ウッズさんが怒るならまだしも、他の奴が責めてあんたの救いになってしまうなら、責めてなんかやらない。
正直、今にでもあんたを殺してやりたいくらいだけど、そうしてやらない」
 滲む怒りに、思わず後ずさる。
「あんたを、救ってなんかやらない」
「っ……」
「……じゃあね。今まで通りにはするから、安心してよ。ライリーさん」
 ノートンが去っていく。行き場のない手はしばし止まって……そして、だらりと垂れ下がった。
「……はは」
 乾いた笑いが溢れる。
 後悔なんかしないと思っていたのに。……いいや、今でも、マーシャを手に入れたのは間違いではないと思っている。マーシャを殺したエミリーを、許してもない。
 だが……どうしようもない感情が、渦巻いて。
 どうすれば良かったんだ、そんな弱音が、廊下に虚しく消えていった。

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