二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.469 )
- 日時: 2022/03/02 20:49
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Xza5vGOz)
※前回に引き続き、シリアスが継続しております。
※同じく前回に引き続き、各キャラの背景推理、日記ストーリー、誕生日タスクによる手紙等のネタバレが含まれます。
決戦前〜泥棒の偽善〜
ライリーのやけ酒が止まったと思えば、今度はピアソンの調子が優れていない。ある日の晩、急に大声を上げて部屋で暴れた挙句、その日からずっと部屋に引きこもっていた。ドアには鍵がかけられ、誰が声をかけても「うるさい」「黙れ」「来るな」そればかりだ。
そばにいれば比較的落ち着いていたハバネロですらも拒絶する始末。エマならまた話は変わってくるかもしれないが、今のエマを、今のピアソンに会わせたらどうなるか分からない。全員が悩んだ結果、出した答えは『落ち着くまで様子を見ること』だけだった。
とは言え、それも悠長に構えてはいられない。食事を持っていってもまともに手をつけた様子が見られないのだ。酷い時には水を一口飲んだ程度しか減っていない。
どうしたものか、とサバイバー全員が顔を見合わせてしまうくらいには、今のピアソンには悩まされていた。(何故かラックだけ大丈夫ですよと言っていたが……)
「困ったねぇ」
カートがはぁとついため息を吐く。よくピアソンに食事を持っていく一人で、彼にドア越しと言えど声をかける一人でもあった。
「一体何があったんだか、誰も知らないもんな」
ウィリアムもはぁ、とため息を吐いた。唯一心当たりのありそうなエミリーに聞いてみても、その時点では到底引きこもるようには見えなかったらしい。こういう時、あえて煽って外に出てくるように仕向けてくれるライリーもやけ酒自体は止まったもののまだ心ここに在らず、な状態が続いている。
本当にどうしたものか、そう思っていると誰かがエントランスホールから入ってきた。見れば、花騎士のウサギゴケとハバネロだ。
「あれ? どうしたのハバネロさんにウサギゴケちゃん?」
「ああ、実は……」
「ウーちゃん、ピアソンさんに借りた絵本を返しに来たの」
「え!? 今!?」
「? ダメなの?」
「えーと、ダメじゃないけど、なんていうか……」
「分かるよ、カートさん。私も同じ反応をしてしまってね……」
聞けば、ウサギゴケが借りたのは孤児院所有となっている絵本なのだと言う。彼女が一度、ボランティアという形で遊びに行った時につい読み込んでしまったのを見たピアソンがあまり読む子どももいないから少しの間なら、と貸してくれたらしい。
今日はピアソン以外の職員と子どもたちで外へ出かけているらしく、こちらへ来たのだそうだ。ハバネロはその付き添いだ。言う名のいざという時のための。
「とりあえず、部屋までは案内するけど、今日はやめておいた方がいいと思うぜ……?」
「んーん、今日返すの。最近、ピアソンさんの調子が良くないってメモリーちゃんも言ってたの。だから、ウーちゃんピアソンさんを励ましたいの」
その言葉に全員つい頭を抱えそうになる。メモリー、というのは先日荘園に『小説家』オルフェウスと共にやって来た少女のことでウサギゴケとも仲が良い。
メモリーはあくまで呼び名であり、名前は別にあるのだが、どういうわけか全員が聞き取れず、どうすればと悩んでいた時、彼女が言ったのだ。私の名前を呼ぶと考えながらメモリーと呼んでくれれば私の名前を呼んでくれている、と。実際、そう考えながら呼べば彼女にはメモリーの部分が自分の名前に聞こえるらしい。以来、オルフェウス以外の誰もが彼女をメモリーと呼んでいた。
少し話は逸れたが、メモリー自身もちょっとした悩み事程度の話だったのだろうがまさかこんなことになるとは。かと言ってウサギゴケはこのまま帰りそうもない。仕方なく、全員がピアソンの部屋まで着いていくことになった。
しばらく歩き、彼の部屋の前に立ち止まる。
「あー、と。少し、いやだいぶピアソンさん荒れてるから気を付けてくれよ?」
「はいなの」
てて、とドアに駆け寄り小さな手でノックする。ガタ、と部屋の中から音がして全員がつい身構える。
「だれ、だ!」
「ピアソンさん、ウーちゃんなの」
「……は、う、ウサギゴケ、か?」
「そうなの、ウーちゃんなの。借りた絵本、返しに来ましたなの」
「……す、少し、待ってろ」
思っていた以上に穏やかな対応にウサギゴケ以外が呆気に取られる。少しして鍵が開く音がして、ほんの少しだけ開けられたドアから手がひょこりと出てきた。
ん、とピアソンが言えばはいなの、とウサギゴケが絵本を手渡す。それを受け取ったと思えばすぐにドアが閉められてしまった。
「ピアソンさん、少しだけ言っておきたいことがあるの」
「……なんだ」
「あのね、ウーちゃんには、今のピアソンさんがどうしてそうなっちゃったのか、分からないの」
「は、話す、つもりは、ないぞ」
「うん。大丈夫なの。でもね、ウーちゃんはピアソンさんがいた孤児院のこと、嘘でもなくて冗談でもなくて、大袈裟に言ってるわけじゃないっていうのは、分かってるの。分かるの。
だから、ピアソンさんの言うことを少しでも信じる人がいるって言うのは、分かってほしいの」
「……帰れ」
「うん、お邪魔しましたなの。あ、あとご飯はちゃんと食べなくちゃダメなの。それはウーちゃんも、ピアソンさんも分かってることだから。またね、なの」
終始声を荒げないのは初めてだった。呆気に取られる三人を後目にウサギゴケは部屋の前を去っていく。少し距離が空いてハッと我に返った三人はウサギゴケを追うように部屋の前を去った。
「す、すげえな。ピアソンさん、怒鳴りもしなかったぞ」
「うーん、やっぱり小さい子相手だと怒鳴りづらいとかかな?」
「多分、ここがピアソンさんにとって安心できる場所になったからなの」
「え?」
「ピアソンさんがいた孤児院のこと、三人は聞いたことあるの?」
「えーと、聞いたことはあるけど……あれ、少し大袈裟な気もするぜ?」
「大袈裟じゃないの」
きっぱりと言うウサギゴケに、ウィリアムが思わずえ、と声をこぼした。
くるりと振り返った彼女は、ただいつもの表情に少しだけ悲しみを滲ませていた。
「ピアソンさんとウーちゃんたちの世界は違うの。でも、どこかは似てるの。だからきっと、あれは大袈裟でも嘘でもなくて……本当のこと、なの」
「……そう、だねえ。一概に嘘とも大袈裟とも言い切れないね」
「カートさんまで」
「人間は、自分で見た物しか信じられないってところあるから」
「!!」
「どこかでは、自分の信じられないようなことが平然と起こっているかもしれない。そう! 僕の冒険みたくね!」
そうニコッと笑いながらいつの間にか持っていた冒険記を見せる。これに書かれていることはあまりに不可思議でフィクションとして読んだ方がいいのではないかと思うくらいだ。実際、ハバネロも一度読ませてもらったが現実とは信じられない、それでも引き込まれる何かが確かにあり、『芸術』として好きではあった。
……自分の見た物しか信じられない。確かにそうかもしれない。ハバネロもよく彼と話すようにはなったが彼の境遇は一部を除きあまり信じていなかったようにも思う。それこそ、ウィリアムの言うように『大袈裟にしている』とどこかで思っていた。
彼の話を、もう少ししっかりと聞くべきなのかもしれない。ハバネロはそう思い直し、ウィリアムとカートに一つ頼み事をした。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.470 )
- 日時: 2022/03/02 20:54
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Xza5vGOz)
夜。ピアソンの部屋の前にいるのはハバネロと、くるくると鍵を回しているラックであった。昼にハバネロがウィリアムたちに頼んだのはピアソンとしっかり話をするために、周りの部屋の人を少し離れた部屋に移動させてほしいというものだった。
暴れないとは限らない。そうなれば睡眠の妨げにもなるし、臆病なメンバーは怯える。そう考えてのことだった。
最初は開けてくれるまで根気強く待つつもりだったのだが、来た時にラックがマスターキーだと言う鍵を持って待っていたのである。
「それにしても、マスターキーをラックさんが持っているなんて思いもしなかったよ」
「あはは、みんながマスターキーの存在を知っていたら良からぬことに使っちゃう人も出てくるでしょうしね!」
「……うん、まあ、そうだね」
「それにしても、大丈夫ですか? 最近ピアソンさんあまり食べてないから力出ないと思いますけど、怪我とかしたら」
「大丈夫さ。私は花騎士として、憲兵隊の隊長として鍛えているからね。さあ、開けてくれるかい?」
「分かりました!」
ラックが鍵穴に鍵を差し込んで回せばあっさりと鍵は開き、ドアノブを掴んでドアを開ける。
中は酷い有様だった。どうやらピアソンは中にある家具や服などを手当たり次第にぶち撒けたらしく、もはや床が見えていない。ただウサギゴケが来た時にドア周りは少し片付けた……というかとりあえず退かしたらしい。ドアは問題なく開いた。
ベッドの上には布団に包まったピアソンがドアを背に寝転がっていたようだが、さすがに今ので気が付いたらしい。勢いよくこちらを見ながら起き上がった。
髪はボサボサで、目の下には深いくまが刻まれており、まともに食べていないせいか顔色も悪く、いつも以上に窶れている。
「ピアソンさん」
「な、んで、く、来るな!! 出て行けっ!!」
「ピアソンさん、どうか話を」
「黙れっ!! 黙れよ黙れ黙れ黙れぇっ!! この、くそ、」
起き上がって無理やりにでも追い出そうとしたのだろう。だが力が入らずにがくりとベッドから落ちそうになったのをハバネロが駆け寄って支えた。
離せ、帰れ、と叫びながらハバネロを引っ掻いたり力の入らない手で殴りつける。引っ掻かれるのはともかく、殴られるのはそこまで痛くもない。それに心がずきりと痛んだ。
「ハバネロさん」
「大丈夫。ラックさんは戻ってくれるかな?」
「はい、分かりました……」
ラックがドアを閉めて部屋から去っていく。未だ暴れるピアソンを無理やりベッドに戻し、落ち着いて、と声を掛け続ける。
追い出せないと分かったのか、ピアソンは蹲ってクソ、クソと言い続けた。しかし、それもやがて少しずつ収まっていく。
「ピアソンさん、貴方に何があったのか分からないよ。でもね、私は貴方を責めに来たんじゃない。話を聞きに来たんだよ。それだけは、分かってほしい」
「……」
「どうか、何でもいい。少しでも話してくれないかい?」
「……ど、どうせ、お前も。俺の話を、大袈裟だって、思うに、決まってる。今までだって、そうだった」
「!! ……そう、だね。それは、否定しない。だけど、今はちゃんと話を聞きたいと思ってる」
そう真っ直ぐ彼を見て言う。彼から自分は見えなくても、本当だと分かって欲しかったから。
しばらくしてピアソンはほんの少しだけ視線をこちらへ寄越した。……すぐに逸らしてしまったが。
「……俺は」
「うん」
「前にも、い、言ったが、孤児、だ」
「うん」
「だからこそ、孤児院の、やり方は、な、なんとなく、分かって、た」
「……うん」
「み、みんな、知っちゃいない。だから、俺を非道だ、なんて、ひ、非難できる。
……あれが、普通、なんだよ。孤児に、稼がせたり、殴ったり、蹴ったり、する。それが、普通だったのに。
俺は、ただ、もっと、か、稼げる方法、し、知ってた、だけ、だ」
……孤児に、ハンディを『負わせる』こと。それが、ピアソンの言う『稼げる方法』なのだろう。しかし、どうしてそんな方法に辿り着いてしまったのだろう。おそらく、今までは大袈裟と捉えられていると分かったから何も言わなかったのだろうけど。
少しだけピアソンがまたこちらを見る。
「……」
「どうしたんだい?」
「……本当に、聞いて、くれてる、ん、だな……。
……稼げる方法、なんで、知ったと思う?」
「……」
「……俺たちもそうされたから」
「!!」
「この目だって、そうだ」
そっと、手で目を塞ぐように触れる。
「抉られた」
「なっ……」
「はは、でも、ひ、人ってのは『可哀想』なやつに、て、手を差し伸べる、のが、好きなんだ。しばらく、誰より、稼いだ。
そ、そうすれば、殴られも、蹴られも、しなかった。
それが、当たり前でっ……」
やっと、顔を上げる。その目には、涙が溜まっていた。
「こ、この、世界は、変、なんだ、よ。大金が、入るわけじゃ、な、ない、のに。孤児に、優しくて。
……ぐ……」
「ピアソンさん」
「なん、で、だろ、なぁ。俺、なんで、この世界で、うまれなかった、んだ、ろ」
「ピアソンさんっ」
思わず彼を抱きしめる。びくりと体が震えていたが恐る恐る、背に手が回る。
「……俺、俺は」
「うん」
「っ、違う、違うんだ、ウッズさん、の、こと、売ったわけじゃ、なかったんだ!!」
とうとう、彼は涙を零した。ハバネロは彼の頭ををそっと撫でた。
「うん」
「確かに、確かに、あ、あの子を、精神病院の、警備員に、つ、伝えたのは、俺、だ。それの、礼って、い、言われて、金を、受け取ったのも、じ、事実、だ!!
でも!! でも売った、わけじゃ、ない!!
だって、だって、そうだろ!? あんな、あんな弱そうな子が、一人で、外で生きられるわけがない!!」
「!! ああ……」
「だからっ、だから、あんな、あんなとこでも、っぐ、あんな、とこで、も、まだ、マシだと、思って、だから、だからっ……!!」
……彼にとっては、本当の本当に善意のつもりだったのか。けれど周りにとってはそれが『金目当て』の行動だと勘違いされたのだろうか。そうして、彼は礼だと言われた金を受け取ってしまい、善意が『金目当ての行動』になってしまった。
ある意味では、ハバネロと似たようなものだ。ハバネロは周りから勝手な期待をされ、過剰なまでに持ち上げられ続けた。ピアソンはその逆で、周りから勝手に思い込まれて蔑まれ続けた。期待や好意的な感情であろうと、勝手に押しつけられるそれらは昔のハバネロにとっては恐怖と苦痛でしかなかったのに、その逆となればどれほどの恐怖や苦痛を味わったのだろう。
「ピアソンさん、話してくれてありがとう。そうだね、貴方のその行為は本当に善意だった」
「っぅ、ぐ……ぅ」
「誰もが信じなくても、私は信じるよ」
「!!」
「……つらかったね」
そう言えば、ピアソンは声を上げて叫ぶように泣いた。
彼が、まるで子どものようだと感じたことは少なくない。しかし今の話を聞いて不思議と納得した。彼の周りの環境のせいで、歪んで成長してしまったのだ。悪いことすら、当たり前の世界だったから。
だが周りから見れば彼のことを理解し切れなかったのだろう。その結果、彼をただの悪人と断ずる人ばかりだった。間違ってはいない。けれど、こうして話を聞いてしまえば真正面から彼をただの悪人だなんて言えない。
もちろん、彼がしたことはどうしようもなく悪いことだ。『彼も被害者だから』『彼以外もしていた』なんて、言い訳にすらならない。それでも。
私一人くらいは。彼を赦して、支えてもいいじゃないか。
「どうしてもつらかったら、私もいるからね、ピアソンさん」
そう言い、頭を再び撫でる。しばらく、ピアソンは泣き続けていた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.471 )
- 日時: 2022/03/02 20:59
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: Xza5vGOz)
翌朝、ピアソンはエマの部屋の前にいた。しかし以前とは違い、赤く腫れた目で、そして落ち着いていて。その隣にはハバネロがいる。
数回の深呼吸。ハバネロと目を見合わせて頷く。手をそっと上げてドアをノックしようとした。
が。ノックする前にドアが開く。そこにいたのはノートンだった。
「……何か用?」
「あ、あの。その」
「言っておくけど、今のウッズさんには会わせないからね?」
「だ、大丈夫、だ」
その一言にノートンは目を丸くした。今までの行動を見ていれば、ありえない一言だったから。何か悪い物でも食べたの? と聞かれて食べてない! と返す。
しばらく目を泳がせた彼はようやく決心したように、一通の手紙をノートンに手渡した。
「何これ」
「う、ウッズさんに、渡して、くれ。わ、悪い、内容じゃ、な、ない」
「私も確認しているよ。決して彼女を悪い意味で刺激するものではない」
「……そう。分かったよ。渡しておく」
「ありがとう、ノートンさん」
「……あ、りが、とう、それから、わ、悪かった、な。いろいろと……」
「……え? 本当に大丈夫? 本当に何も悪い物食べてないの? それとも中身違う人?」
「し、失礼だなお前っ!!」
「ふふふ……」
「は、ハバネロも、笑うな!!」
「すまないね、ピアソンさん」
少しだけ話して、二人はエマの部屋の前を去っていく。ノートンはすぐに手紙を渡しに部屋へ入っていった。
それを陰で見ていた者がいた。
「……なんで、なんだ」
そう呟いて、ライリーはその場を去った。
「……」
「ウッズさん、どう?」
手紙を開いてから数十分。エマはベッドの上で何度も何度もその手紙を読み直していた。何も言わずに。
唐突に口を開いたかと思えば何も言わなくなる、なんてここ最近はいつものことだったから気にはしていないが、手紙を何度も読み直しているのは気になった。
ハバネロが気付かなかっただけで、何か大変なことが書いてあるのではないだろうか。そう考えるがあのハバネロに限ってそれはない。なら、と考えているとふふ、とエマが『笑った』。
「ウッズさん?」
「ねえ、これはあの『ひどいおじさん』からだわ」
「え……」
「でも、私もちょっと勘違いしていたみたい。……許せるわけじゃ、ないけど」
読む? と聞かれ、つい頷く。手紙を渡され、目を通す。
綴られていたのはエマの言う『ひどいおじさん』は自分であること、脱走した彼女を精神病院に戻したこと、そして今までの執着への謝罪と、精神病院に戻したのは決して売ったわけではなく、幼い彼女が外の世界でたった一人で生きてはいけないと思ったからだという理由が書かれていた。その際に受け取った金は『礼』だと言われたのだとも。
それだけならまだ嘘だと断じてもいいかもしれない。ただ、『嘘だと思うのであれば、キミが私に危害を加えても構わない。私はそれを受け入れる。執着はどうしてもしばらくしてしまうだろうが、出来うる限り自分でも抑えていく。
どうか、キミに謝ることだけを赦してほしい』という一文。以前のピアソンなら考えられない。
「ノートンさん」
「……何?」
「信じても、いいのかな。そのお手紙。
私も、私も」
「!! ……そうだね。信じて、いいんだよ」
そう告げ、数秒。彼女の目からぽろりと涙が溢れた。ただ、泣き叫ぶのではなく。どこか嬉しそうに、少しだけ解放されたように、静かに涙を流し続けた。
コメントOK