二次創作小説(新・総合)

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.480 )
日時: 2022/03/21 19:34
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: cXmcbA9E)

※前回よりはマシですがまだまだシリアスが継続中です。
※今回もネタバレとねつ造が含まれます。

※※※注意!!※※※
今回、『古手羽入』について核心的なネタバレが含まれております。ご注意ください。

決戦前〜庭師の想い〜

「じゃあ、もう少ししたらダイアー先生が来るから。おやすみ、ウッズさん」
「うん、おやすみなさい、ノートンさん」
 すっかり暗くなった部屋をノートンが出て行く。たった一人きりの部屋は、小さい頃を思い出させる。
 ベッドの上で膝を抱え、顔を埋め、目を閉じる。ほんの少しだけ、風が木の葉を揺らして遊ぶ音が聞こえた。
「…………」
 あの手紙を読んでから、何だか少しだけ落ち着いた気がする。売られたとばかり思い込んでいた。実際は、彼のほんの少しの優しさだった。……その結果、自分は酷い治療を受けさせられ続けたのだが、それでも、ほんの少しだけ救われたような気がした。
 でも、何故か気持ちは暗く沈んだまま。エマも眠ったままだ。彼女エマにはたくさん守ってもらった。だからせめて、今は……。
 うと、うとと舟を漕ぐ。自分はそれに逆らうことなく、ゆっくりと落ちていった。


















「リサ・ベイカー」
「……え?」
 顔を上げる。そこにいたのは、改造された巫女服に身を包んだ古手羽入であった。ドアを開ける音は聞こえなかったのに。
 彼女は優しく微笑んでいる。
「羽入、さん?」
「はい。突然ごめんなさい」
「大丈夫……どうしたの?」
「リサ……少しだけ、お話ししませんか?」
「お話?」
「……どうしても、気になったのです。リサ。いいえ……エマ・ウッズにも、聞きたい。
どうして、あなたたちはフレディたちを恨み切れないのですか?」
「……」
「レオ・ベイカー、マーシャ・ベイカーはまだ分かります。家族として楽しい記憶があるからこそ。家族としての気持ちがまだあるからこそ恨み切れない。
だけど、他の三人はそうじゃない。あなたが恨み切れなくなる理由なんてないのです。
どうして、あなたは……」
「恨み切れなく、なる理由……」
 きゅ、と羽入の手が自分の手に重なる。そして大丈夫、と彼女は言った。
「ゆっくり、僕とお話しして、思い出していきましょう」


















 それは彼女たちがハザマセカイへ飛ばされる前、そしてそこから更に時を遡る。エウリュディケ荘園に招かれたエマたちは、初めてのゲームに参加することになった。結局、そのゲームは互いの欲望、思惑等が絡み合い、負けてしまったのだが。
 ハンター……復讐者に抱えられた時に気付いてしまったのだ。彼が、父親であるレオだと。何度叫ぶように声をかけても彼は聞こえていないのか少しも反応を返すことはなくて。エミリーが救助してくれたが容赦なく鈍器で殴り付けられて。
 ゲームが終わった後、ひどく泣き喚いたのだ。パパ、パパと。
 それまで嫌味ったらしいことばかり言っていたライリーも、異常な執着心を見せていたピアソンも、優しいエミリーも全員が困惑していた。ライリーが膝をついて「どうした、何があった」と聞いてきても「どうしたんだいウッズさん」とピアソンが聞いてきても、「落ち着いて、エマ」とエミリーが宥めてもその日は泣き止むことはなかった。
 そして、その日からしばらく割り当てられた部屋へ篭りきりになった。またゲームに参加して、レオに殴られたくなかった。部屋に入れられるのはエミリーだけになって、ゲームは幸運児として招かれていたラックが代わりに出ていた。
 だが、エウリュディケ荘園の主はそれを許さず。しばらくしてエウリュディケ荘園にいたナイチンゲールと名乗る女性から手紙を渡された。ゲームに参加しなければエウリュディケ荘園からの追放、報酬もなく、今後は路頭に迷うだろう、と。脅し同然のそれに絶望した。また、レオに殴られるのかもしれないと。
 あんなに優しかった父が、母がいなくなって酒に溺れても、宝物を売っ払っても手を出さなかった父が。そう考えれば考えるほど、悲しくなって、出たくなくなって。でも出なければ生きられない。
 渋々、サバイバーの集まる待機部屋に行けばいたのはライリー、ピアソン、エミリーの三人だった。
「エマさん、大丈夫?」
「はい……心配してくれて、ありがとうなの、ダイアー先生……」
「いいのよ。でも、無理だけはしないでね」
 エミリーが頭を撫でてくれてホッとする。ピアソンは何やら懐中電灯のチェックを、ライリーは穴が開きそうな程、地図を見ていた。
 意識が遠くなる。これはあの時と同じ。
「(やだなぁ)」
 パリン、と何かが割れる音がして。彼女の意識は沈んでいった。

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.481 )
日時: 2022/03/21 19:42
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: cXmcbA9E)

 目を覚ましたのは【赤の教会】であった。レッドカーペットが敷かれ、壊れたベンチが立ち並ぶそこにエマは立っていた。
 ちょうど目の前に暗号機がある。これを解読しなくては、通電すらしない。怯えながら彼女はそれに手をつけ始めた。
『聞こえるか、全員簡易メッセージで位置を知らせろ』
 渡されている通信機からライリーの声が聞こえる。簡易メッセージとはなんだろうか。
『……おいエマ・ウッズ。聞こえてるのか?』
「っあ……ご、ごめんなさい。簡易メッセージって……?」
『……あ。そういやそうか、最初のゲームの時は誰も……くそ、忘れてた』
『は、ははっ、弁護士先生が忘れてたと! はは、こいつは傑作だな!』
『黙ってろゴキブリ。エマ・ウッズ、通信機を見てみろ』
 そう言われて腰から通信機を外して見る。小さな画面といくつかのボタンがある。それらには『解読に集中して!』『ハンターが近くにいる!』等文字が書かれていた。
『で、そうだな……解読に集中して、を押してみろ』
 言われるままに押せば、小さな画面の中心に白い点が浮かんだ。
「こ、これで、位置が分かるの?」
『ああ。何なら今言い当ててやる。レッドカーペットと壊れたベンチのところにいるな? で、後ろにはゲートがある。どうだ?』
「あ、当たってるの! でも、これ……は、ハンター、には」
『安心しろ、これは俺たちにしか見えてない。ただそろそろ誰かが……』
 ぞわりと嫌な感覚がする。心音がどくどくと強く早くなる。
「あ、う」
『どうした? ……まさか! ……エマ・ウッズ、すぐに墓場の方面へ向かえ!』
 その言葉に足をもつれさせながらも墓場へ向かう。何とか背後を見て、ハンターの姿を目に入れる。
「パパじゃ……ない……?」
 追ってきているのは、まさしく『道化師』であった。その手にあるロケットが武器だろうか、あんなので殴られたら……。
 ゾッとしながら足を進める。だが何とか墓場まで辿り着こうとした時には、道化師はすぐ後ろにいて。殴られる。痛くて痛くて、今にも泣き崩れてしまいそうで。
『そのまま奥まで行って隠れろ』
「え……」
『大丈夫だ、お前はハンターに追われない』
 ライリーの言葉に、奥まで逃げる。どうやらここにも暗号機があったらしく……。
「う、ウッズさん!? ど、どうしたんだい、も、もしかしておおお、俺に会いに!?」
 ピアソンがいた。思わぬ再会に彼はテンションが上がりきりらしい。先程のハンターとは違う意味でゾッとした。
 通信機からそいつは無視して隠れろと指示があったので隠れればピアソンはかくれんぼかい? と息荒くしている。
「ウッズさ……え?」
 と、ピアソンがやっとハンターに気付いたらしい。
「うぎゃああああああああああああああ!?」
 悲鳴を上げながらピアソンは墓場を後にした。ハンターもそれを追いかける。
「……い、行っちゃった?」
『よし、なすりつけ成功だな。そこの暗号機をお前が引き継げ』
「え、ええ!? い、いいの!?」
『適材適所ってものがあるんだよ。俺たちの中で最も追われ慣れてるのがあいつだ。お前が追われるのは慣れてからだ。
さて解読と……』
『こっちはもう上がるわ』
『ダイアーは教会か。……なら、そこからあいつがチェイスしているところを避けてウッズと合流、治療をしてやってくれ』
『ええ』
『ウッズはダイアーが来るまで解読、到着次第治療を受けるように』
「は、はい」
 しばらく解読を進める。大体80%ほどになった頃だろうか、エミリーが来て治療をしてくれた。
「ありがとう、ダイアー先生……でも、ピアソンさん、大丈夫かな……」
「ああ、平気よ? 通信機を見てみて?」
 言われてまた見れば別の方向から白い丸と『ハンターが近くにいる!』というメッセージが書かれていた。他の方向からは『解読に集中して!』というメッセージが。
「あの人、とても器用みたいで。チェイス中、頻繁にメッセージが送られてくるのよ」
「え……」
「私やライリーさんはもちろん、ラックさんも難しくて出来ないのに。あ、板も当てたのねあの人……懐中電灯でも動き止めていそうね」
「あ、そ、そういえば……」
 確かに健康状態を確認すると彼は一回も殴られていないことが分かる。怖くは、ないのだろうか。
 頭が優しく撫でられる。見上げれば、エミリーは優しく微笑んでくれていて。
「貴女は二回目なんだもの。怖いのも仕方ないわ。私もね、まだ怖いの。多分、ライリーさんも、ピアソンさんも、今日はいないけど、ラックさんも。
だから、ライリーさんもあえてピアソンさんになすりつけるように仕向けたのよ。
あの人、本当に逃げるのが上手いの。先日のゲームだと、暗号機を五台上げるまで捕まらなかったのよ?」
「えっ……!?」
「ふふ、後でラックさんに聞いてみるといいわ」
『おい、治療が終わったなら解読に回れ。こっちももう上がり切る。そこと俺、ダイアーで五台だ。一番最初に上がるのはそこになるだろうから、ダイアーがウッズのいたところに言って引き継ぎ、ウッズはそこが上がったらダイアーと再び合流、二人で一台上げ切れ』
「ええ、分かったわ。じゃあ、後でねエマさん」
「……うん」
 エミリーと別れて暗号機に触れる。不思議と、心は落ち着いていた。
 一台が上がり、エミリーと合流して一台、そして、ライリーが別のところでラスト一台を上げた。そのままエミリーとゲートを開けて、一応中で待機していた。
『よし、俺ももうす……は? お、おいちょっと待ておま……!! ハンター連れて来るなぁあああああああ!!』
『し、仕方ないだろ、というかなんでまだ開いてないんだよぉ!?』
『距離あったからに決まってるだろ!! くそっ、お前やられろ!!』
『は、はあ!? ふ、ふふ、ふざけるなよっ!? あんたこそやられろ!!』
 通信機から二人の言い争う声が聞こえる。それにエミリーは頭を抱えてはぁ、とため息を吐いた。
 それから程なくして、二人はダウンさせられて、ロケットチェアに拘束された。
『お、おい! あのゴキブリはともかく俺は助けに来い! 一人でも助かれば勝ちになる!』
『ふざけるなぁ!? お、おおお、俺を助けてくれっ! なっ!? お、俺は、暗号機全部上がるまで逃げ切ってたんだぞ!? なあ!!』
 またも通信機越しに言い争う声。エミリーが再び大きくため息を吐く。
「行きましょう、エマさん」
「えっ、い、いいの?」
「いいわよ、ゲートの近くに来られても二人が別々に逃げればよかったんだもの。……まあピアソンさんがわざわざライリーさんを追ったのかもしれないけど。
それにさっきの様子からして、ハンターは『引き留める』という能力を使っているわ。ここからロケットチェアの距離も考えれば私と貴女が行っても捕まるだけだから、堅実に引き分けにしましょうね」
『おい!?』
『ままま、待ってくれ!? 頼む、頼むから助けて!!』
「それに逃げてる途中ですら言い争いしてたのだから、少しくらい頭を冷やせばいいのよ。というわけで、行きましょう。少し心音も激しくなってきたし、もう近くに来ているわ」
「う、うん……?」
『『待てぇえええええええ!!』』
 ゲートから脱出するとほぼ同時に、後ろから二人の悲鳴が聞こえる。これでよかったのだろうか、そう思いながらも足は止めなかった。

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.482 )
日時: 2022/03/21 19:47
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: cXmcbA9E)

 いつの間にか荘園に戻っていた二人はぐったりしているライリーとピアソンを見つけた。その側には苦笑いしているラックが人数分のマグカップを乗せたトレーを持っている。マグカップからは緩やかな湯気と紅茶の良い香りがしていた。
「あっ、も、戻ってきたぞ!」
「おいダイアー! こいつはともかく俺を救助に来ないのはどういう了見だ! 俺は完全に巻き込まれただけの被害者だろう!!」
「はぁ!? そ、それならあんた、わざとウッズさんにお、俺を巻き込ませたじゃないか! 自業自得だ!!」
「適材適所だ、お前が追われるのに慣れているんだから変わらせたまでだ!!」
「なんだとぉ!?」
「やるか!?」
「や、やってやろうじゃないか!!」
「まあまあまあ! お二人とも落ち着いてください! はい、紅茶淹れましたから! あっ、ウッズさんとダイアー先生にも淹れましたからね!」
「ありがとう、ラックさん」
「あ、ありがとう、なの。……あの、ピアソンさん」
 おずおずと話しかければさっきまで一触即発な空気だったピアソンは一気に機嫌を良くした。
「な、なんだいウッズさん!?」
「あの……ご、ごめんなさい、ハンターを連れて行って……」
「あ、ああ気にしないで! そ、それならこっちの弁護士先生の方が悪いんだからな!」
「おいこら」
「じ、事実だろ」
 それがきっかけでまた口喧嘩を始めた二人にエミリーは呆れを、ラックは苦笑いを浮かべていた。

──────────────

「そんなことがあったのですね」
「……うん」
「まだ、ありますか?」
「……うん、あるの。
あのね、ライリーさんって、よくゲームのアドバイスをしてくれるの。それでね、私が初めてデコードマスターって言うものを取れた時ね、よくやったな、って褒めてくれたの。まるで、自分のことみたいに」
「フレディは優しいのですね」
「うん……分かりづらいけど、話もちゃんと聞いてくれる、優しい、人。
ピアソンさんには、たくさん困らされたの。だけどね、たまに夜にキッチンに行くと、何か食べてたりしてること、あって。それを、分けてくれるの。みんなには、内緒って。
それでバレても、私のこと、話さないの」
「あうあう、お夜食は怒られることも多いですが……ふふ、背徳のお味なのです。それを分けて内緒なんて、少しワクワクしてしまいますね」
「……うん……っ。エミリーも、エミリーも、ね……」
 次から次へと、溢れ出す。荘園に来てからの、三人との優しい思い出が。それと共に、涙も溢れた。言葉が詰まっても、羽入は優しく微笑みながら待ってくれる。
 ああ、でも、こんなに優しい思い出なのに……。
「思い出せば思い出すほど、つらいのっ……」
「……」
「恨もうとしても、思い出が邪魔するのっ、恨みきれない、憎いはずなのにっ……!」
 こんなに苦しむなら、最初から優しくしないでほしかった。こんなことになるなら、最初から──。
 ふわり、と温かなものに包まれる。よしよし、と穏やかな声と温かな掌が頭を撫でてくれて。
「とっても、苦しいですね。エマ、リサ」
「っ……! 苦しい、よ、苦しいの……! どうすればいいの!? 恨みたいのに、どうすれば……!!」
「……大丈夫。今の彼らは、それを受け止めてくれます」
「え……」
「あなたが彼らを恨むのは当然のこと。無理もない。でも、温かな記憶がその気持ちを和らげてしまう。だからこそ苦しい。
ならば、それを全部彼らにぶつけてしまえばいい。今の彼らなら、それを受け止めてくれるはずだから。勇気が出ないなら、出るまで待とう。
他ならぬこの私が、その時間を許そう。だから、リサ、エマ。


彼らを、信じて良い」
「!! あ……ぁ……!!」
 ああ。きっと自分が欲しかったのは……この言葉なんだ。彼らを、信じていいと言うその言葉が、欲しかったんだ。
「長年、よく耐えましたね……」
 優しい声に、子どものように泣きじゃくった。そんな自分の背を、頭を、羽入はただただ、母のように撫で続けてくれた。

















 翌朝。久々に髪をきちんと整える。毎日エミリーが髪を解いてくれていたが、こうして整えはしなかった。そんな気力もなかったから。
 ノックの音がする。どうぞなの、と返事をすればノートンが入ってきた。
「ウッズさん、もう大丈夫なの?」
「うん、ありがとうノートンさん。今まで、ありがとう。大変だったでしょ?」
「そんなに大変じゃなかったよ」
「ふふ。……みんなにも迷惑かけちゃったの。早く、勘を取り戻さなくちゃ!」
 行こう、とノートンと共に部屋を出る。全員が会議をしている部屋まで歩き、中へ入って行く。
 みんな集まっていて、みんな自分を見て名前を呼んでくれたり、笑顔を見せてくれた。マーサやパトリシアは心配していたが大丈夫! と元気よく答えれば二人も笑顔を見せてくれる。
「みんな、心配も迷惑もかけてごめんなさい。もう大丈夫! どうか、パパを取り戻す協力をお願いしますなの!」
 頭を下げれば当然だよ! と、このために会議をしていたんだからな! と返してくれる。それがどうしようもなく嬉しい。
 ただ、エミリーたちに先に話したいことがある、と三人を連れながら部屋を出て三人と向き直る。……全員、真っ直ぐに自分を見てくれる。
「三人とも、まずは迷惑と心配をかけてごめんなさい」
「いいのよ。回復してくれて、本当に良かった」
「……そうだな」
「……」
「……あのね。私。三人がしたこと、許せはしないの。
でも、今はどうしたらいいのか分からない。だから、答えを時間をかけて出したいの。それが……三人を、恨み続ける結果になるかもしれない。
それはごめんなさい。でも……」
「……当然だろ、そんなの。とっくに覚悟はした」
「そう、ね……。リサ、貴女がどんな答えを出しても……私たちはそれを受け入れるわ」
「……そ、う、だな……うん……」
 三人の言葉に、ふっと心が軽くなる。ああ、羽入の言う通りだった。良かったと思わず呟いてしまうが、彼らは特に気にしなかった。
 四人で部屋に戻り、会議が始まる。ノートンとエマはエミリーに今までの会議の内容を掻い摘んで説明してもらってそれを聞く。
 が、ノートンがウッズさん、と声をかけてきた。
「なぁに?」
「……あのさ。頑張ったね」
「! ……うん」
「どんな結果になっても、僕はウッズさんを肯定するよ」
「うん」
 手を取られ、見えないところで手を繋ぐ。
「……焦らないでいいから」
「うん……ありがとう、ノートンさん」
 手袋越しのゴツゴツしたその手を少しだけ握り返す。大丈夫だと、はっきり思える。
「(絶対に、パパを取り戻すんだ。……エマを守ってくれた、リサのためにも)」
 決意を改めて固め、エマは真っ直ぐに前を見据えた。

Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.483 )
日時: 2022/03/21 19:53
名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: cXmcbA9E)

 とある場所。羽入はホッと息を吐いていた。良かった、エマが立ち上がれて。
「羽入」
「あ……マスターハンドに、クレイジーハンド」
 くるりと振り返った羽入。その視線の先には白い巨大な手。ここは、神々の空間だ。
「エマ・ウッズはもう大丈夫だな」
「はい。これからも、きっと」
「……まさか直接お前が介入するとは思わなかった」
「と、言ってもボクがしたことはほんの少し背中を押しただけなのです。クレイジーハンド」
 小さく羽入は笑う。
「人間は、きっと誰もが立ち上がれる力を持っている。だけど、誰もが一人でその力を出せるわけじゃない。
だからこそ、支え合わなくてはならない。そうして、人は立ち上がれる。
……彼女『たち』は、支えてくれる人はいてもまだ力を出せなかった。一歩を、踏み出せなかった。だから、ボクがほんの少し背中を押しただけ。
あとは、彼女たち次第なのです」
「そうだな。人間は、脆く儚くとも強いものだから」
「我々は、それをよく知っている」
 そう言うマスターハンドとクレイジーハンドに頷き、羽入は両手を祈るように握り、目を閉じる。……微笑みは、そのままに。
「レオのことも、大丈夫。信じて行動を起こせば、奇跡は起きる。ボクは、それを知っているから」















「ねえラック、一つ聞いていい?」
「はい?」
 会議が終わった後。ノートンはゲーム中にゲートを開けるラックに話しかけた。今、ハンターはピアソンが引きつけている。ハッチの場所も、ビクターが『希望の手紙』で共有してあるはずだし、先ほど送られてきた進捗なら殆ど差もなく開くだろう。ハンターは神出鬼没を使ったから瞬間移動でこちらに来ることもできない。
 そんな余裕のある状況だった。一つ気になったことがあったのだ。
「ラックは、いつエウリュディケ荘園に来てたの?」
「……やだなぁ! ライリーさんたちとほとんど変わりませんよー?」
「そう。その『何番目』に来たわけ?」
「……」
 言葉が止まる。けれど、ゲートを開ける音は止まらない。
「今考えてみればさ。みんなラックを最初の方からいるって認識はあるのに誰の後に来て、誰の前に来たとは誰も言わないんだよ。
で、気になってライリーさんに思わず聞いた。そしたらなんて言ったと思う?」

──そういえばあいつ、何時来た……?

「……へえ。うっかり忘れちゃったんじゃないですか?」
「そうかな。ピアソンさんや……まあウッズさんなら分からなくもないよ。だけどあのライリーさんが忘れるとは思わない。
なら本人は? 忘れてるはずないよね?
それに、ラックはずっと本名を明かしてないだろ?」
「ふふ。そんなこと『どうだっていいじゃないですか』」
 ゲートが開く。彼は一足先にゲート内へ行き、くるりと振り向く。その顔は、笑み。何故かホッとするはずのそれに、ゾッとする。
「僕は、強いて言えば探偵さんの推理をお手伝いする、『推理アシスタント』の幸運児、ラックです。
それ以上も、以下もありません」
 さ、行きましょう。そう言った彼は『先に行くよ!』と簡易チャットを打ってからゲートを出た。
 ……とにかく出よう。ノートンも簡易チャットを打ってからゲートを出ていった。


─────
柊「ラックをただ単に意味深にしてみたかっただけです( ˘ω˘ )←」

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