二次創作小説(新・総合)
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.517 )
- 日時: 2022/07/21 21:15
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: k30LHxXc)
やっとできるね!歓迎会
※毎度のことカオス
※毎度のこと、セリフの前に名前が付く
※今回は柊のメタ的事情から残念ながら各ジャンル代表挨拶はなし
さて。明治の日本からハザマセカイに飛ばされてきた六人は客間に通されていた。軽い説明などはすでにされ、数日この本丸にて寝食を共にしていたのである。
祢々切丸に抱えられ、六人の前のソファに腰掛けた女、柊が頭を下げた。
柊「このような格好でのご挨拶となること、ご容赦ください」
鯉登「いいや、気にしないでほしい。聞いたところ、そちらも大変だったようだからな。それに……どちらかと言えば気になるのはその三人なんだが」
鯉登が指したのは、びっっっったりと柊にくっついた小狐丸、白形、黒形である。小狐丸はソファの後ろからがっちり抱きついているし白形は逆に前からがっちり腰に抱きついているし黒形は抱きつきはしないものの、ぴったりとくっ付いて膝を抱えて座っていた。
心なしか、小狐丸は「きゅーん、きゅーん……」と泣いている(鳴いている?)ようにも聞こえた。
白形「主ぃ、主ぃ……!!(´;ω;`)」
小狐丸「ぬしさま、ぬしさま……!!(´;ω;`)」
黒形「…………」(ぴったり)
柊「とりあえず今はお気になさらず」
白石「気にするよぉ???」
白石由竹がそう言うもまあまあ、と言って流されてしまう。(白石はクーン、と呟いていた)
柊「前日に、鯰尾藤四郎からある程度の事情は聞かされているかと思います」
杉元「ああ。……信じ切れないが」
柊「ごもっともですが、事実です。この『ハザマセカイ』はありとあらゆる世界の狭間にある、一つの世界。時空の狭間に吸い込まれたものは、多少時間は前後してもここに辿り着くよう、マスターハンド様がお創りになったのです。
そして、あなたたちはその時空の狭間に吸い込まれ、ここに辿り着いた。無論、あなたたちと元の世界の縁を辿り、その間の道を安全に渡れるようにするまで時間はかかりますが、元の世界へお帰しすることを約束いたします。それが、我々『統治人』の義務の一つですので」
柊がそう言えば全員が少し、ホッと息を吐いた。無理もないだろう。
しかし、まだ柊がどこか固い表情であることに気が付いたアシリパが口を開く。
アシリパ「まだ、何かあるのか?」
柊「……はい。まず、あなたたちの世界で何が起こっていたのか、こちらは把握済みです」
アシリパ「……」
谷垣「ということは……」
柊「金塊を巡った争いがあったことも、存じております。それがどのように終わったのかも。
とは言え、問題はそこではなく……その争いによって生きていた方、そして亡くなった方の何人かがこちらへ流れ着いてしまったという情報が入りました」
全員「「「!!」」」
杉元「死んだ奴が……?」
当然だが、とても信じられる話ではない。生きていた者はともかく、死んだ者が何故ここに。屍が発見されたとでも言うのだろうか。
杉元がそれを聞こうと口を開く前に、客間にトントン、と軽いノックの音が転がってきた。柊がどうぞ、と返せば失礼します、と言ってから鳳翔とこの本丸で保護されている春雨が入ってきた。二人はそれぞれお茶と饅頭の乗った盆を持っている。
鳳翔「提督、お茶とお饅頭をお持ちしました」
柊「ありがとう、二人とも」
二人がそれぞれの前にお茶と饅頭を出していく。その際、白石が鳳翔に「白石由竹です、付き合ったら一途です」と口説いていたが柊の「鳳翔さん付き合ってる人いるから」の一言に撃沈していた。
お茶を一口飲み、ふぅと一息吐く。
柊「本来であれば……ありとあらゆる世界で基本的には死者が蘇ることはありません。あったとしてもそれは『禁忌』とされ、成功したとしても大きな代償があったり、そもそも忌避されていたりと、とにかく『あり得ないこと』として考えられています」
谷垣「それはそうだ。死んだ人間が蘇るだなんて……」
鯉登「……待て。私はそれが『死んだ者の遺体』がこちらで発見されたものと考えていた。しかし、その言い方からして……」
鯉登の言葉に谷垣がハッとする。
柊「……はい。以前キーラ側の人間が人間を生き返らせていたというマイクたちの証言から考えるに、それによって影響が出た可能性が高い。
……人間が『生き返って』います」
全員が息を呑んだ。生き返るなど、あり得るはずがないのだから。
柊「こちらに関しては我々の方で調査を進めております。ただ、場合によっては皆様にも協力を仰ぐやもしれません。無論、その際に何かしらの報酬は用意させていただくつもりですし、断っていただいても構いません」
全員が固い表情のままだ。無理もない。柊がふう、と息を吐いて微笑みながら軽く手を叩き、まあ、と続けた。
柊「堅苦しい話はここで終いにしましょう。本日は学生の子たちがパーティー……宴を用意してくれていますから、皆さまもどうぞ楽しまれてくださ……」
鯉登「一つ、いいか」
柊「はい?」
鯉登「その、例えば、だが。この中の誰かの家族が亡くなっていたとして。……その家族がこちらに来ているかどうか、現段階で確かめることは可能なのだろうか」
月島「鯉登少尉……」
鯉登の言葉に全員が顔を硬らせた。特に、アシリパが。
そうですね、と柊が口を開く。
柊「確実、とは言えませんが。血が繋がっているとマスターハンド様、クレイジーハンド様には『気』のようなもので分かるそうなのです。
ですが、現段階で確認されている方々にあなた方と似た『気』は存在しないそうです」
鯉登「……そうか」
ほ、と鯉登が息を吐く。それを月島だけが見ていた。
外からパタパタパタ、という音がする。再び客間にノックの音が転がるが、それは叩く音ではなく「こんこんこーん」と幼い少年の声だった。
柊「ふふ、どうぞー」
ひょっこりと顔を覗かせたのは、白い髪と赤い髪の少年──蛍丸と愛染国俊だ。
蛍丸「あーるじさんっ」
愛染「ふぃるくればーと士官学校の三人と貴銃士さんたちは先に会場に案内したぜ!」
柊「ありがとう。じゃあ私たちも向かいましょうか。祢々切丸、お願い」
祢々切丸「任せよ」
小狐丸「ぬしさまぁああこの小狐丸めが、小狐丸めがぬしさまをお運びします! お姫様抱っことやらで!!」
柊「祢々切丸の方が隠れるから……ごめんな……」
小狐丸「ぬしさまぁあああ(´;ω;`)」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.518 )
- 日時: 2022/07/21 21:19
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: k30LHxXc)
そして、空中宴会場。簡単な挨拶などを終わらせ、パーティーが始まった。
オリヴァーは貴銃士たちが次々と持ってくる料理を少しずつ摘んでいた。中にはケンカが勃発しそうなメンバーがいるが、そちらはそれとなく嗜め、時には話を思い切り逸らしてみたりして。
そんな風にパーティーを楽しんでいく。
飾り付けはシンプルながらも煌びやかだ。だが、料理は混沌を極めていると言っても過言ではない。
ラウレンツ「クリスマスケーキに……」
玖龍「おせちまであるぞ……。あっちには雑煮コーナーとかあるし」
オリヴァー「あ、あはは……」
ライク・ツー「季節感ねえな」
十手「まあまあ、これはこれで賑やかで俺はいいと思うよ!」
ジョージ「俺も! いろんな物が食べられて、Happyだ!」
マークス「ん、これは美味いな。マスター、食べてみてくれ」
そう。料理だけは『今までできなかったパーティーを取り戻す!』と言わんばかりにありとあらゆるイベントに関する料理が並んでいるのである。
クリスマスケーキ、おせちに雑煮。節分の豆は升に入れられ、隣には恵方巻きですと言わんばかりの太巻き。
さらには手作り感溢れるチョコレート菓子、春らしい料理まで。
美味しいには美味しいが、季節感が全くない分、カオスと言ってしまいそうだ。
この世界に元からいたり先にいたメンバーは特に気にせず料理に舌鼓を打っていたがオリヴァーたちよりも後に、それも唐突にこちらに来てしまった六人は平野、前田、謙信、厚に付き添われている。
そうだ、とオリヴァーは彼らに歩み寄っていく。その後ろをマークスはすかさず着いてきた。
オリヴァー「あの」
杉元「? なんだ?」
杉元がオリヴァーを見たのをきっかけに、彼らもオリヴァーを見た。
オリヴァー「初めまして、僕はオリヴァー・ウェッジウッドと申します。あなたたちとは違う世界にある、フィルクレヴァート士官学校に在籍している士官候補生です。
是非、お話を聞かせていただきたいと思い、お声をかけさせていただきました」
杉元「……話?」
オリヴァー「はい。八九や邑田から、おそらく、着ている服装からして明治頃の方だと。
軍に所属するにあたり必要な心構えなどがあればお聞きしたいと思いまして」
オリヴァーの言葉に杉元、月島、谷垣が顔を曇らせる。だが、鯉登だけは良い心掛けだ、と笑いながらその話をし始める。
それにオリヴァーが真剣に耳を傾け、マークスは「何を偉そうにマスターに話をしているんだコイツ」と言わんばかりの目を鯉登に向けていた。が、鯉登は全く気にしていない。
それどころか少し離れていた玖龍とラウレンツが同じく士官候補生と聞くと彼らも呼んで話を聞いていくといい、と笑っていた。
鯉登「そういえば名乗っていなかったな。私は鯉登音之進。こっちは私の補佐の月島基軍曹だ。あの毛深い男は元々部下だったがまあ今は事情があってな。谷垣源次郎という」
月島「月島だ」
谷垣「谷垣源次郎だ、よろしく」
オリヴァー「はい、よろしくお願いします!
そちらの三人は……?」
杉元「ああ、俺は杉元佐一だ。この子が俺の相棒のアシリパさん。で、そいつが白石由竹」
アシリパ「よろしく、オリヴァーと……シノアメと、ラウレンツ」
玖龍「あ、ああ……」
ラウレンツ「よろしく頼む」
オリヴァー「そうだ、マークスも紹介しないと……あの、貴銃士のことはお聞きしています、よね?」
少し不安げに聞くオリヴァーに全員が頷くと今度はほっとしたように微笑み、では、とマークスを見た。
オリヴァー「彼はマークス。正式名称はUL96A1。僕の愛銃で、相棒です」
マークス「マスター……!!」
アシリパ「ゆー、える……」
マークス「……別にマークスでいいぞ。マスターがくれた名前だから」
アシリパ「そうか、ならマークス」
マークスを筆頭に貴銃士の紹介をするオリヴァー。とは言え、やはり大半以上が日本以外の銃だから少し覚えるのは大変そうだった。
特に見た目が結構似ているシャスポーとグラースはどっちがどっちなの、と白石が思わずこぼした。
オリヴァー「あはは……次は皆さんには馴染み深い銃かもしれませんね」
邑田「ほほほ、であろうな。儂は邑田。手にして戦った者も居よう?」
谷垣「! まさか……『村田銃』、なのか?」
邑田が頷く。その隣に在坂が立つが、在坂は意図的に目を合わせないように口を開いた。
在坂「在坂は、在坂だ。『在坂銃』、『アリサカ・ライフル』と言った方が、馴染みは深いかもしれない。
ちょうど在坂が使われていた時代、もしくはそれより少し後だと、在坂は考える」
鯉登「む、確か月島がかつて使っていた銃が在坂閣下が作られたものだったはず。そうだろう月島?」
月島「ええ」
在坂「やはり。……八九、どうして離れている?」
八九「げっ」
邑田「げっ、とは何じゃ、げっとは」
八九「いや……俺はいいだろ。時代違いすぎんだよ」
在坂「それは関係ない。挨拶も、自己紹介も必要だと、在坂は思う」
在坂は八九の服を掴み、近くまで引っ張ると今度は八九の紹介を始めた。
在坂「八九だ。八九式小銃。在坂と邑田の後輩の貴銃士だ」
八九「あー……ども」
背を伸ばさんか、と邑田が八九の背を叩く。なかなか痛そうな音で、八九は思わずなのかんぎ、と変な声を出している。
それから全員で歓談などをしていると、ふと白石が玖龍を見ながら口を開いた。
白石「篠雨ちゃんはずいぶんと綺麗に食べるんだなぁ」
玖龍「……え。そう、ですか?」
杉元「確かに、箸の使い方とか綺麗だな」
鯉登「きっと育ちが良いのだろうな、杉元とは違って!」
杉元「うるせえよボンボン」
ラウレンツ「篠雨候補生は、一部の生徒の間では『所作が綺麗だ』と評判ですので」
玖龍「なにそれ初耳」
オリヴァー「あ、僕も聞いたことがありますし、常に思ってますよ篠雨さん」
玖龍「……ん、そっか」
玖龍は嬉しそうで……どこか寂しそうに笑った。それに気が付いたのは白石だけで。だが白石もそこまで深入りしなくてもいいだろう、と考えて他の話題を振った。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.519 )
- 日時: 2022/07/21 21:22
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: l.tG8vXt)
司「全員っ! ステージに注目!」
類「今回のパーティーでもちょっとした出し物をするんだ。飛び入りも歓迎だけれど、順番は後の方になってしまうので注意してほしいな。
さて、今回の司会進行は僕、神代類と」
司「未来のスーパースター、天馬司が務めるぞ! ではまずは、オレと類、そしてレンによる『ブリキノダンス』だ!」
♪ブリキノダンス
前奏が流れている間にレンがステージに出てくる。
『ブリキノダンス』
『さあ 憐れんで 血統書
持ち寄って反教典
沈んだ唱導 腹這い幻聴
謁見 席巻 盲信症』
三人は歌い、踊り始める。
『さあ 皆舞いな 空洞で
サンスクリット 求道系
抉り抜いた鼓動 咲かせ 咲かせ』
歌も踊りも見事なもので、一切噛むことも、ミスすることもない。会場は盛り上がり始めた。それだけでなく、歌が終わると間髪入れずに他の曲の前奏が流れ始める。
♪スイートマジック
『甘くて 幸せなこと
隠し味 何にしよう
純粋な乙女心 甘い恋も絡めなくちゃ』
『切なさ 重ねてミルフィーユ
酸味も 積み上げタルト
苦味も チョコレートケーキ?
魔法かけた 甘い奇跡』
とてもスムーズに三人と、えむ、寧々、リンが入れ替わると可愛らしい歌に合わせて、えむたちもこれまた可愛らしい踊りを踊り始めた。
『ねぇあげようか 甘い罠
ほら虜にしてあげる
そんな魔法 かけるから
ちょっとだけ 待たせたげるわ』
寧々は少し緊張していたようだが、目立ったミスはなく、それどころかその歌唱力で魅了していく。
えむとリンも非常に楽しそうに踊っているからか、つられて笑顔になるメンバーも少なくなかった。
連続して二曲が終わると拍手の音が鳴り響く。
司「拍手喝采……まあ当然だな! さて、次はMORE MORE JUMP!によるステージだ!」
類「それぞれ二人に分かれて歌う彼女たちの歌をどうぞご堪能あれ。曲は『地球最後の告白を』と『恋愛裁判』」
司と類が下がると、そのまま雫と遥が壇上に上がる。
♪地球最後の告白を
『そしてキミが知らずに
幸せな灰になった後で
僕は今更 キミが好きだって』
ほんの少しの歌詞で、二人は持ち前の歌唱力で惹き込んでいく。それだけではない。歌う中でも表情を変えることで聞いているだけでも一層歌の世界に惹かれていく。
『いつか見た夕焼けは
あんなにキレイだったのに
恋なんて呼ぶには 穢れすぎてしまったね』
切ない歌詞、切なくもはっきりと聞こえてくる声、そして、切ない表情。全てが完璧なそれらが終われば、歓声と拍手に繋がっていった。
二人が頭を下げたり手を振って壇上を後にする。そのまま上がってきたのは愛莉とみのりだった。
ふと、みのりはオリヴァーと目が合う。するとみのりはパァア、と顔を明るくして満面の笑みでオリヴァーに手を振った。
オリヴァー「っ!?」
ドキリと心臓が高鳴る。少し遅れて何とか平静を装って手を振り返した。マークスはみのりとオリヴァーを交互に見て首を傾げていたが、その反応に貴銃士のほとんどがへえ、だの、ふぅん、だのとニヤニヤと笑っている。
当のみのりは気付くことなく、前奏に合わせて息を少し吸った。
♪恋愛裁判
『Oh! No!No!No!
ちょっと魔が差したんだ
そう、僕は君だけが全てさ
ねえ、情状酌量をください
僕独りじゃ生きてけない』
『Oh! Jesus!
そんな眼で見ないで
もう、金輪際 心入れ替えるよ
ねえ、だから執行猶予で
一度だけ見逃して』
愛莉は元々アイドルだったこともあり、ステップはとても軽やかで笑顔を絶やさない。
みのりは時々危ういところがあるものの、それでもその明るい笑顔で見ている方も元気になれた。
『まさに恋愛裁判
君は僕に どれくらいの罪を問う?
最終弁論 涙の後に君から告げられた
僕は「有罪(Guilty)」』
二人の歌が終われば、また司と類が壇上に上がる。
司「素晴らしい歌だったな!」
類「ふふ、そうだね司くん。では、次はLeo/needによる『ステラ』だよ」
司「このオレの妹、天馬咲希がいるバンドだ!! 大盛り上がりは間違いないな!!」
咲希「もー、お兄ちゃんってばー!」
司と咲希のやりとりの微笑ましさに少し笑いが起こる。それぞれの楽器などの軽い確認が終わり、位置に付く。
鯉登「!! あのお嬢さんは……!!」
厚「うん? 望月さんのことか?」
鯉登「ああ。ずいぶんと大きい楽器の前にいるが、大丈夫なのだろうか」
そう話していると、壇上の咲希がすぅ、と息を吸う音が聞こえた。
♪ステラ
『涙が 夜に溶けて
空が今日も 遠くなる
未来が 綴じたように
暗闇が 満ちている
あぁ、醜い心も 掠れそうな言葉も
すべて 見透かしたように
星が輝いていた』
咲希のソロから始まった歌は、とても良い歌だった。特に鯉登はいつもとは違って力強くドラムを叩く穂波に見惚れていた。
『これはそう
今日を諦めなかった故の物語
風切羽 響かせて 空を目指して
惨めになって 嫌になったって
輝いている夢を
叶える羽は 疾っくの疾うに
生えていた』
真っ直ぐな歌詞に一歌やLeo/needメンバーの歌唱力、そして演奏に司の言う通り、大いに盛り上がりを見せたのだった。
みのり「オリヴァーさん!」
オリヴァー「っ、あ、は、花里さん! それに……」
MORE MORE JUMP!の出番から少しして、みのりたちはオリヴァーの元に来ていた。そろそろ慣れた頃だからか、貴銃士も杉元たちもそれぞれ自由に動いている。ただし、マークスはオリヴァーにくっついているがもはやマークスが彼から離れた方が驚く者は多かろう。
マークス以外にもライク・ツー、十手、ジョージ、玖龍、ラウレンツがおり、彼らの視線もみのりたちに向いた。四人は彼らに一つ小さくお辞儀をする。
オリヴァー「あ、あの、先程のステージ、とても素敵でした」
みのり「わぁ、ありがとうございます! 楽しんでもらえて、嬉しいです!」
とても嬉しそうにそう言うみのり。それにオリヴァーはほんの少し頬を染めながら見惚れている。
マークス「なあ、あんたマスターに何かしたのか?」
みのり「へっ?」
マークス「さっきから、マスターがあんたを見てるとぼーっとしていて」
オリヴァー「わーっ!! ま、マークス、これ美味しいよ、食べてみて!!」
マークス「! ああ、もちろんだマスター!」
みのり「?」
唐突な話題変更にみのりは首を傾げるがマークスは何も気にしていない。マークスにとってはマスターであるオリヴァーが一番だからだ。
そこから、遥がオリヴァーさんは知っていますけどと前置きして自己紹介を始める。
遥「桐谷遥です、よろしくお願いします」
雫「日野森雫と言います」
愛莉「桃井愛莉です。えっと、オリヴァーさんがみのりと遥にパーティーを提案してくれたんですよね?
ありがとうございます」
オリヴァー「いえいえ、そんなお礼を言われるようなことじゃありませんよ。
あ、ところで……この『未成年は長ズボン着用』って、何かあるんですか?」
遥「えっ?」
玖龍「ああ、そういえば確かにあったな」
ほら、と玖龍が招待状を模した手紙を見せる。その中の、指された一文を四人が読んで本当だ、と声を上げた。
『未成年(外見年齢含む)は長ズボン着用を義務とする』と書かれた一文は四人にも心当たりはないらしく、首を傾げていた。
ラウレンツ「行間なども何やらおかしいから、緊急で付け足したものだとは分かったのですが……」
愛莉「うーん、誰かが付け足したのかしら?」
雫「でも、どうしてこんな文章を?」
遥「確かに……」
話していると、突然聞こえていたのは悲鳴であった。何事かとそちらに振り向いて──。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.520 )
- 日時: 2022/07/21 21:25
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: WmpS5rDY)
鯉登「お嬢さん!!」
穂波「? あっ、鯉登さんに月島さん」
出番の終わったLeo/needの四人がゆっくりと話していたところに、鯉登が駆け寄ってきた。穂波に咲希が「ほなちゃん、知ってる人?」と聞けば「前に話した、助けてくれた人たちだよ」と返す。
それを聞いた咲希、志歩、一歌は二人に向き直って頭を下げた。
咲希「ほなちゃんを助けてくれてありがとうございますっ!」
鯉登「何、当然のことをしたまでだ。どうか頭を上げてほしい」
志歩「それでも、お二人がいなかったら穂波は……本当にありがとうございます」
月島「……望月穂波さんと会って助かったのは私たちもですから。お気になさらず」
そんな風なやりとりが続く。
ふと、月島が何かを思い出したのかそういえば、と鯉登を見た。
月島「鯉登少尉、彼女に会えたら何か伝えたいことがあると仰っていませんでしたか」
鯉登「おお、そうだった! ……んんっ」
一つ咳払いをした鯉登は穂波と真正面から向き合う。それに穂波や一歌たちが首を傾げた。
しばらく意味もなく髪を弄ったり視線が忙しなく動いたりしていたが、もう一度咳払いをしてやっと彼は口を開く。
鯉登「おいとっ」
だがそれは、突然響いた悲鳴によってかき消されてしまった──。
─────────────
アシリパは謙信、杉元、白石、谷垣と共にいろんな料理を口にしていた。この会場で知り合った菜々子、いたる、心も一緒だ。
アシリパ「ヒンナ、ヒンナ」
謙信「ねえ、そのひんな、ってなぁに?」
アシリパ「これは食事に感謝する言葉なんだ」
菜々子「そうなんだ! えーと、ヒンナ!」
謙信「ひんな、ひんな、だね!」
いたる「ひんなっ、ひんなー」
心「ヒンナっ」
菜々子が真似をすると謙信、いたる、心も真似をし始める。それにアシリパが微笑みながらそうだな、ヒンナだ、と答えた。
それを杉元たちはほっこりしながら眺めていた。
アシリパ「ところで」
と、アシリパが目を向けたのは巨大なチョコレートファウンテンだ。上から噴水のように液状のチョコレートが流れている、と今はいないが先ほどまで一緒だった厚が教えてくれた。
アシリパ「……あの流れるオソマ、甘い香りがする」
謙信「おそま?」
アシリパ「オソマとはな」
杉元「あーっ!! あーっ!! アシリパさんこれ美味しいよ食べてみてぇ!?」
アシリパ「もぐっ、ヒンナ!」
謙信「???」
杉元のある意味ファインプレーにより、謙信は首を傾げるにとどまった。
ここから何か話題を逸らせないかと慌てて周りを見渡し、ちょうど目に入ったのは栗松、壁山、宍戸、少林寺、ルカ(第五)、ラックと話しているエルゼだった。
杉元「そ、そういやなんか柊にエルゼって女神さん? に小さい子ども……特に男は近づくなって言われてたな。謙信は何か知ってるか?」
それを言われた時、何故かと返したが柊は何故か目を逸らしながら「とにかく近付かないでくださいいやほんと、お願いだから。エルゼ様だから」としか言われなかったのである。
謙信ならば何か知っているだろうか、そう思って聞いたものの彼も首を横に振った。
謙信「ううん。ぼくもしらないんだ。どうしてってきいても、おしえてくれなかったのだぞ」
杉元「ええ?」
謙信「でも、エルゼさまはレオさんをたすけるときにたすけてくれたから、おれいをいわないと!
いってくるね!」
杉元「あ、ちょ、ちょっと待て! 俺も一緒に行くよ」
謙信「うん!」
何やら心配になったのか、なんだかんだ全員でエルゼに近付いていく。
どうやらあちらも気付いたらしく、まあ、と微笑みながら振り向いた。……心なしか、妙に顔が強張り、頬が赤い気がする。
謙信「エルゼさまっ」
エルゼ「あなたは確か、謙信景光くんですね?
わたくしはエルゼ、柊から聞いていらっしゃるのでしょうか?」
謙信「はいっ。あの、エルゼさま。レオさんをたすけるおてつだいをしてくださって、ありがとうございます!」
ふにゃ、と謙信が笑う。と同時に。どこからぷつん、と音が聞こえた気がした。
表情が消えたようなエルゼ。はぁ、はあ、という彼女の少し荒い息が妙に耳に届く。
エルゼ「も、もう……我慢、できない……!!」
エルゼが取り出したのは一つの棒。純白の棒の周りにはふわふわと、いくつもの真珠が浮いている。
エルゼはそれを高々と掲げる。
栗松「エルゼさん?」
宍戸「えっ、な、何を……」
エルゼ「みんな……わたくし……いいえ……ハァ……ハァ……
あたし好みの男、全員半ズボンになってしまえぇええええーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
瞬間。パァン!! という音がして。長いズボンだった謙信のズボンは、かなりギリギリな丈の物になってしまっていた。
いいや、謙信だけではない。未成年(見た目含む)、そして一部成人済みのはずの男性メンバーのズボンは、似たようなものに変貌してしまっている。杉元と谷垣もその一人だ!
「「「「うわぁあああああ!!!!?」」」」
あまりの状況に誰もが悲鳴を上げた。謙信は呆然としている。
そんな中、歓喜していたのはエルゼであった。可愛らしいその顔を大いに歪ませ、鼻から血を、口からは涎を存分に垂らして息を荒げている。
エルゼ「っはぁああああん!! やっぱいいわぁ、半ズボンのショタ!! 一生懸命清楚装ってあわよくばどっか連れ込んでぺろっと食べちゃう(意味深)つもりだったけどもうあんなの無理よ無理!! は??? 何あのかわいい笑顔??? あんなのもはや合意よね??? いいや合意よ合意!! そうじゃなかったら何なのよ!!
ねえねえねえねえ栗松くん壁山くん宍戸くん少林寺くん??? あなたたちの膝小僧をぺろぺろさせて??? ほんのちょっとでいいの、そう、一秒、一秒でいいからぺろぺろさせて??? 先端だけでいいからぺろっとさせて??? そのまま太ももとか×××までぺろぺろする可能性大だけど大丈夫だから合意があれば合法だから!!!! 後生だからもうぺろぺろさせてあわよくば[自主規制]させてお願いハァハァハァハァ」
今まで可憐で清楚なエルゼはどこへ行ったのか。彼女に懐いていた四人も思い切りドン引きしている。当たり前である。
すると突然、「やっぱりかぁああ!!」と柊の叫ぶ声が聞こえてきた。だいぶ際どい丈になったズボンのまま車椅子を押す亀甲と共に柊がエルゼたちの前に来る。
柊「エルゼ様ぁ!? 自重してください、って何度も何度も始まる前に言いましたよね!?
あんたそれで「はい分かりましたわ」って言いましたよねぇ!?」
エルゼ「はぁああ〜? そんなの嘘に決まってんじゃない! 大体ねぇ、あたし好みのショタがたくさんいる時点で、自重なんてできませーん」
柊「こんのダ女神が!!!」
エルゼ「だーれがダ女神よ誰が!! あたしの村じゃこれでも『神の怒りである雷を一身に受け止め、村を守った聖女』なのよ!!」
柊「うっせえわダ女神!!
大体あれ、本当は生前から毎日のようにショタ追っかけてたらたまたま雷に打たれて死んだ挙句、霊になっても追いかけ回すからマスターハンド様とクレイジーハンド様が人形に封印してやっと暴走収まって村人も「なんかこのままにしとくとまた暴走しそうだし、こんな話伝わるのはちょっと……」ってなって一応女神として扱って神格得ただけじゃねーか!!」
とんでもない話に全員が思わず言葉を無くす。なんだその経緯。酷すぎる。いろんな意味で。
しかしエルゼはそれがどうしたと言わんばかりに鼻で笑った。
エルゼ「うっさいわねえ、本当も何もクソもないっての!! 人形に封印されて毎日退屈で仕方ないわ!!」
柊「だからって不定期に脱走してんじゃねえええええ!!!!」
少林寺「脱走!?」
宍戸「え、盗まれた挙句、売られたんじゃ……」
柊「そんなのこのダ女神が脱走した先で吐く嘘だよ!! いつも違う封印かけても内側から解除しやがるんだよこの神は!!」
ルカ(第五)「いろいろダメすぎないかこの女神様」
ラック「スペックが無駄に高いせいで周りが苦労するタイプですか???」
柊「それ」
エルゼ「つか、なんであんたがもう脱走したって情報得てるのよ!」
柊「クレイジーハンド様から情報を頂いたからだが!?」
エルゼ「ちっ、余計なことを!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.521 )
- 日時: 2022/07/21 21:33
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: bh1qG02E)
十手「あ、あのー、なんで俺もずぼんの丈を短くされたんだろうか!?」
エルゼ「童顔だからイケるわ!! 以上!!」
十手「えええ!?」
誠「お、俺も好みってことか!?」
エルゼ「年齢だけ。ギリギリ」
誠「ギリギリ!?」
杉元「え、というかまさか」
エルゼ「あんたは見た目がいいからイケるかなーと思ったけど無理。その足細くしてこい」
杉元「理不尽すぎない???」
もし、エルゼが見た目だけとは言えど少女でなかったら。杉元は遠慮なくぶん殴っていただろう。
谷垣「あの、俺は……」
エルゼ「間違えた。とっととその汚い足隠しなさいよこの雌牛」
谷垣「ブヒィッ」
あまりの物言いに涙を流す谷垣。谷垣をたまたまそばにいたきよと大和が涙目で慰めた。なお、この二振も半ズボン+袴で短くなりもはやミニスカ状態である。
きよ「な、泣かないでゲンジロちゃん……!(´;ω;`)」
大和「ゲンジロちゃん……!(´;ω;`)」
加州「つかなんで俺たちが餌食になってないのに二振り目のこいつらは餌食になってんの!?」
エルゼ「誰も突っ込んでなかったけどこの子たちあんたたちより少し小さいでしょ」
安定「気付いちゃったか( ˙-˙ )」スンッ
柊「とにかく、拘束させてもらうからな!!
亀甲!!」
亀甲「ああ、ご主人様!!」
カルダミネ・リラタ「助太刀しましょう」
アークロイヤル(アズレン)「私もだ」
柊「ありがとうとりあえずその鼻血拭け!!」
亀甲、カルダミネ・リラタ、アークロイヤル(アズレン)がエルゼを囲む。しかし、エルゼは未だ余裕綽々、と言ったところだ。
亀甲は素手だが、カルダミネ・リラタは武器を構えた。だが。
エルゼ「ショタ化」
カルダミネ・リラタ「!?」
エルゼ「ご希望があれば、ロリ化も可能よ?」
アークロイヤル(アズレン)「なっ……」
エルゼ「いるでしょう? 『この子がショタなら、ロリなら……いいのになぁ』と思った奴らが」
カルダミネ・リラタ「っ……!! い、いいえ、それだけではっ」
エルゼ「おねショタ、おにロリ、おねロリ、おにショタ合法化!! あたしは女神だもの、それくらい余裕だわ!!
どう? 味方になってくれるなら……あなたたちにその恩恵を惜しむことなく与えてあげる」
亀甲「ずいぶんと甘く見られたものだね、だが僕はっ」
カルダミネ・リラタ「団長さん、皆さん」
カルダミネ・リラタ、アークロイヤル(アズレン)、そしていつの間にか黒髭がエルゼの前に立った。
三人は顔を上げる。
アークロイヤル(アズレン)「時に、諦めというのも肝心ではないだろうか!!」
黒髭「うん!! 拙者、めちゃくちゃ肝心だと思う!!」
柊「寝返ってんじゃねぇぇええええええ!!!!!!!!!!!」
???「全く、相変わらずだなエルゼは」
エルゼが振り向く前に金色の鎖が彼女を拘束する。その先を見ると、左手に白い手袋を付け、純白の短髪に鋭い緑の目を持つ青年と、複数の聖職者と思わしき男たちがいた。その中の一人で、クリーム色の少し長い髪をして、深い藍色の瞳を持つメガネをかけた男性が前に出る。
彼らを見たエルゼは「んげ」とまたもその愛らしい容姿にそぐわない声を出す。
エルゼ「アレクシス……!」
アレクシス、と呼ばれたメガネをかけた男性は頭を下げた。
アレクシス「皆さま、大変お騒がせしました。私はエルゼ様を崇拝する『エルゼー聖教』の司祭、アレクシス・エルゼー・デイモン、と申します」
柊「アレクシスさん、お久しぶりです」
アレクシス「ええ、お久しぶりですね」
柊「それに……このような場所までご足労いただき、感謝致します。クレイジーハンド様」
???→クレイジーハンド「気にするな」
純白の髪を持つ青年はそう言ってエルゼの前に立った。
エルゼ「なーんでクレイジーハンドまで来てんのよ!!」
クレイジーハンド「お前が脱走したと、アレクシスたちから聞いたからだ。さすがに神の相手は神でないと務まらないことが多いからな」
エルゼ「ちぃいっ……。今回は完璧に誤魔化せたと思ったのに!!」
クレイジーハンド「なら、たまたま遊びに行ってお前の身代わり人形を見抜いたミズチに文句を言うんだな」
エルゼ「あんの蛇女!! タイミング悪すぎじゃない!!」
柊「私らはむしろミズチ様に感謝しかねえよ」
エルゼ「あーもう!! 存分にショタをぺろぺろできると思ったのにぃいい!!
あたしを大人しくさせたいなら、村にショタ増やしなさいよショタを!! 人間ってのはすぐ成長しちゃうんだから!!」
アレクシス「近いうちに孤児院が建てられますが、どうか眺めるだけでご勘弁くださいね。
では、帰りましょうかエルゼ様」
エルゼ「いーやーだー!! まだ堪能しーてーなーいー!!」
アレクシス「ダメですよ」
駄々をこねるエルゼを何人かが抱え上げる。アレクシスは何度か頭を下げて帰っていく。
クレイジーハンド「では、邪魔をしたな」
柊「はい、ありがとうございましたクレイジーハンド様」
一悶着あったものの、エルゼは外に停めてあった空飛ぶ馬車に乗せられて帰されていく。クレイジーハンドもパチン、と指を鳴らすとそこから消えてしまった。
と、同時に半ズボンにされたメンバーのズボンの丈が元に戻る。おそらく、事前にマスターハンドの力を預かっていたのだろう。
混乱も次第に収まり、元の賑やかさが戻ってくる。
穂波「あ、そうだ。鯉登さん、さっき何か言いかけてませんでしたか?」
穂波が聞けば鯉登も思い出したらしい。
鯉登「はっ、そ、そうだった。んんっ。お嬢さん……いいや、望月穂波さん」
鯉登が穂波の前で片膝をつく。そうして右手を胸の前に、左手は穂波に差し出して意を決したように表情を引き締める。分かりづらいが、ほんの少し顔を赤くしているようにも見える。鯉登はほぼ叫ぶように言った。
鯉登「おっ、おいと!! といえしたもんせ!!」
穂波「といえ……?」
鯉登の叫びは周りにも聞こえていた。大半は首を傾げていたが何人かは意味が分かったらしい。呆然と鯉登を見ていたり、吹き出していた。
在坂「邑田、笑っているが意味が分かるのだろうか」
邑田「ほほほ、要するに『結婚してほしい』とのことじゃ」
在坂「結婚」
邑田「結婚じゃ」
それが聞こえていた穂波や一歌たちも一瞬、呆けた。そして。
穂波「え……えええ!?」
さすがに突然の告白すっ飛ばしてのプロポーズに穂波は顔を赤くしていた。
志歩「な、何を言って」
鯉登「おいは本気じゃ!! あたん微笑みに一目惚れした!!」
志歩「いや、本気とかそういう意味じゃ……それ以前の問題です!」
鯉登「?」
在坂「……年代による価値観の違いだ。在坂が仲介に入ろう」
邑田「ならばわしも入るとするかのぅ。まず、この男がいた時代は明治。明治には親の歳ほどの男と政略結婚する女子も少なくはなかった」
志歩「あ、そ、そうだった……鯉登さん、明治時代の人だった……!」
在坂「よって、彼と望月穂波の年齢差ではまだ普通であったはず。……では次に。
鯉登音之進。現代では二十を越えた男と女学生の恋愛、それも結婚はあまり良い顔はされない。少なからず、男の方は稚児趣味として捉えられることもある」
鯉登「? 彼女は稚児ではなかろう」
在坂「それでもだ。二十を越えない男女、あるいは女の結婚も少なくはないが、あまり良い顔をされないことも少なくはない」
鯉登「ふむ……多少理解はできんが、何故驚かれたのかは理解できた。だが、私は諦めるつもりはない!!
彼女も私に惚れてくれれば問題はなかろう、ということでまずは名前で呼んでいいだろうか!」
穂波「えっ、あ、は、はい……?」
鯉登「うむ! では、これからもよろしく頼むぞ穂波!!」
なお、このやりとりの間ずっと月島は鯉登の突拍子もないプロポーズに呆然としていたとか何とか……。
─────────────
【こんな一幕もあったらしい】
月島は穂波にべったりくっ付き始めた鯉登を見て呆れながら料理を口にしていた。よもやこんな公衆の面前で、叫ぶように求婚するやつがあるか、と。
響「вкусный……」
月島「?」
ふと近くにいたらしい少女──響を見る。幸せそうにピロシキを食べている彼女は今、確かにロシア語を話さなかっただろうか。
もしかすると、彼女はロシア人なのだろうか。だとすると周りが日本語を話す中、不安ではないのだろうか。
そう考えた月島は口を開いた。
月島「привет(こんにちは)
響「!? привет(こんにちは)……」
月島「Это вкусно?(それは美味しいですか?)」
響「да(はい)」
かつて必要に駆られ、死ぬ気になって会得したロシア語だったがこんな風に役立つとは思いもよらなかった。いや、そもそも異世界に行くなんて誰が考えつこうか。
ぽつぽつと月島は響とロシア語で話している。だが、月島は知らない。
響「(思い切り日本人なのに、どうしてロシア語で話しているんだろう……もしかして、長い間ロシアで過ごしていたのかも。なら、今まで頑張ってきたんだろうな。……あ、絵里さんって確かロシア語話せたっけ)」
響は、普通に日本語が話せるということに。
気を遣った響がたまたま近くを通った絵里を呼び止め、今度は三人で話していた。
暁「あっ、響ー!」
希「えりち、ここにおったんね」
鯉登「月島ぁ! どこだ月島ぁ!」
響「どうしたんだい暁」
絵里「あら、希どうしたの?」
月島「ここです、どうしたんです鯉登少尉」
三人「……えっ」
響「……えっ、ロシア語しか、話せ、な……?」
月島「いや……それは、こちらのセリフだ……」
絵里「……全員で勘違いしていたみたいね……」
お互いに苦笑いをしていると、それぞれを呼んでいた三人は首を傾げていた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.522 )
- 日時: 2022/07/21 21:37
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: bh1qG02E)
エルゼ「あーもう、ほんと最悪。あのままぺろぺろできたのに。あわよくば[自主規制]できたのに」
明らかに不機嫌ですと言わんばかりにむくれた顔をしているエルゼは頬杖を付きながら外を眺めていた。外は月明かりが反射するだけの、暗い海が広がっている。
アレクシス「おやめくださいね、エルゼ様。それにしても……相変わらずお優しいですね、エルゼ様は。さすがは、私たちの祖先であり、『魔族と人間のハーフ』であった【クレイグ・エルゼー・デイモン】様を大司祭にまで押し上げた方です」
エルゼ「はぁっ!?」
突然の褒め言葉にエルゼは素っ頓狂な声を上げる。しかしアレクシスはニコニコと微笑みながら言葉を続けた。
アレクシス「あなたが助けた方々……確かに、あなたの好みである少年たちがいました。ですが、危なかったのはその中でも最も好みから外れていた方だと。
それに、少年たちを助けるだけならレオ・ベイカーさんを助けるために力を貸す必要はなかったはずです。なのにあなたはそれをして、失敗に終わりそうであれば悲しげにしていたと聞きます」
エルゼ「べ、別に、あんなの片手間よ片手間!
やろうがやるまいが変わらないの! だからまあ? 少し気が乗ってたし? ……ちょっと、何ニヤニヤしてんのよ!」
アレクシス「ニヤニヤではなく、ニコニコです」
エルゼ「同じよ!!」
アレクシス「ふふふ……。ですが、一つだけ気になったことがございます。エルキドゥ……彼には冷たかったと。それは、何故?」
エルゼ「あー、それね」
エルゼは手を頭の後ろに回してぼす、と背もたれに体を投げた。
エルゼ「あいつ、キャラ被ってんのよ」
アレクシス「え?」
エルゼ「まず名前の頭文字がエル! 人形! あと容姿端麗なとこ! ほら被りまくりじゃない!!」
アレクシス「……ふふふ」
エルゼ「笑って誤魔化されないわよ!!」
アレクシス「ああ、それよりもエルゼ様。……こちらに迷い込んでしまわれた方々は、どうなさいましょう」
エルゼ「……どうするも何も。近場に来ていたら保護してもよかったけれど、そうでないならどうしようもないわ。別の世界にまで落ちているんだもの。協力は、するつもりだけど。
それにしても、死にかけの人間が『歴史上必要なくなった生者』として来ることは珍しくないけれど、死者が生きた人間として来るとはね……」
『歴史上必要なくなった生者』。それはその名の通り、元の世界にて役目を終えたが、何らかの事情で死ぬことなく時空の狭間に飲まれた生者のことだ。この生者たちの受け皿として存在するのがこの『ハザマセカイ』である。
歴史上必要なくなった生者たちはこの世界で生きることができる。元の世界に戻ることもできるが……元の世界は彼ら彼女らを『異物』と見做し、超長期間滞在していた場合、排除しにかかる。よって、実際には帰ることはできないのだ。
今回、完全にその生を終えたはずの人間が息を吹き返してこの世界や別の世界に落ちてしまった。その人間たちは一応歴史上必要なくなった生者として扱われるだろう。
エルゼ「やっぱり、あのキーラの影響かしら」
アレクシス「おそらくは」
エルゼ「っはぁ。あいつ、厄介なことしてくれたわね。生を終えた人間を……」
心なしかギラリと光るエルゼの目。アレクシスがエルゼ様、と声をかければそれはすぐに落ち着いたが。
エルゼ「……どうなっちゃうのかしらね、生者たちは」
アレクシス「……せめて、これ以上踏み躙られないよう、祈るしかありません」
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千銃士Rの世界、フランス。暗くなった道を一台の車が走っていた。後部座席に座っているハニーブラウンのショートヘアの少女──ポーラ・グリニーはすっかり遅くなってしまったわ、と呟いた。
グリニー家の運転手であるハインリヒ・ライマンはそうですね、と微笑んだ。
ハインリヒ「カトリーヌ様とのお話が、それほど楽しかったのですねお嬢様」
ポーラ「もちろんよ! カトリーヌお姉様、お元気になられて本当に良かった……それに、テオドール様との結婚も良い方向へ進んでいらっしゃるそうで……ふふ、わたくしも招待してくださるのですって!
ハインリヒも行きましょう!」
ハインリヒ「ははは、私の分の招待状が届けば良いのですが」
ポーラ「カトリーヌお姉様ですもの、きっとハインリヒも招待してくださるわ!」
そう言って、満面の笑みを浮かべるポーラ。その右目のそばにある泣きぼくろも、愛らしい。
ふと、ポーラが外へ視線を移す。そして鋭い声で停めて! と言った。慌ててブレーキを踏めばキキィ、と耳障りな高い音が二人の耳に届く。しかしポーラはそれを気にすることもなく、急いで車の外へ飛び出すと、膨らんだ腹を押さえて疼くまる女性と、その女性に大丈夫か、と声をかける男性に駆け寄った。
ポーラ「どうなさったの!?」
男「つ、妻が、妻が産気づいて! 予定日はもっと後なのに!」
女「う、うぅ……! 痛いっ……あなたっ……!」
男「ああ、大丈夫、大丈夫だ、すぐ、すぐ病院に運んでやるからっ……!!」
しかし男は混乱していて上手く行動ができていない。そうしている間にも女性は呻き、苦しそうに息を吐いている。
ポーラはすぐにハインリヒを呼んだ。
ポーラ「ハインリヒ、この方たちを病院まで送って差し上げて!」
男「えっ!?」
ハインリヒ「で、ですがお嬢様、もう道は暗く……それに、最近は通り魔が」
ポーラ「わたくしよりこの方を優先なさい! きっと一分一秒を争うわ! それにこのまま放置して、それこそお二人が通り魔に襲われたらどうするつもりなの!
わたくしなら大丈夫、もう歩いて数分ですもの。それに、わたくし足は速いのよ! 通り魔なんて振り切ってみせるわ!
だから、お願い! お父様やお母様にはわたくしからお願いしたときちんと説明します!」
ハインリヒ「お、お嬢様……承知、しました。
さ、こちらへどうぞ」
男「あ、ありがとうございます、ありがとうございます……!」
夫とハインリヒが妻を支えて車に乗せる。ドアを閉じ、夫が窓を開ける。
男「本当に、本当にありがとうございます」
女「ごめん、なさい……ありがとう、ううっ」
ポーラ「お気になさらないで。どうか、元気な子を産んでくださいませ」
ポーラが笑顔でそう言うと二人は涙を滲ませる。そしてハインリヒに行って、と言えば車にはその場を後にした。
さて、とポーラが家の方を向く。数分、とは言え、まだ見えてこず、不気味に静まり返った街にぶるりと身を震わせた。通り魔は未だ捕まっていない。そのせいでフランス中が通り魔に怯えて暮らしていた。聞く話では、黒い甲冑を身に付けているらしいその通り魔はそのまま『黒甲冑』と呼ばれている。
どうか黒甲冑に会いませんように。そう願いながらポーラは足を進めた。
少しして、ポーラは体を震わせた。足音は一つ。そのはずだった。だが、今。
確かに、一つ増えた。
ポーラ「っ……」
自然と足は速くなる。それと共に、もう一つの足音が聞こえて、確実にこちらに走ってきている!
思わず振り向く。そこにいたのは、黒い甲冑を身に纏った何者かだった。
ポーラ「っは、あ!」
走ろうとした。とにかく、逃げなくては。しかし足がもつれ、硬いレンガの道に体を叩きつけてしまう。
ポーラ「きゃあっ!」
起き上がろうにも、どうやら足を捻ったらしい。痛くて立ち上がれない。そうしている間にも黒甲冑との距離は縮まっていく。
ポーラ「い、いや! 来ないで!! 誰かっ、誰か助けてぇ!!」
ポーラは涙を流して叫んだ。誰も来やしない。ずりずり、となんとか下がってもそんなの気休めにもならない。
ポーラ「ひ、いや、誰か、誰かぁあ……!!」
ガシャ、と目の前に黒甲冑。黒甲冑の剣が、振り上げられる。
ポーラ「いやぁああああああっ!!」
ポーラは叫び、目をキツく瞑った。が、痛みはなく、代わりに聞こえたのは金属がぶつかり合う音だった。
目を開ければ、白い髪をした誰かが黒甲冑の持つ剣よりも細く、鋭い不可思議な剣で受け止めている。その誰かは剣を弾き、再び構え直す。黒甲冑も剣を構え直す。
しかし、その後ろからまた誰かが黒甲冑に斬りかかる。黒甲冑はすぐさま飛び退く。
??「やはり、この程度は避けられるか」
その誰か、は老人であった。黒甲冑は不利と感じたのか、近くの家の屋根に一飛びで乗り、そのまま走り去っていった。
??「そこのお嬢さん、無事ですかな?」
ポーラ「っは、い……う、うぅ……こわ、かった……!!」
??「無理もない。武器も持たぬ少女であれば尚更だ。永倉、立たせてやれ」
黒甲冑の剣を受け止めた誰かが振り向く。その人もまた、鋭い目をした老人であった。
??「こんな夜に、一人は危険だ。時にお嬢さん」
ポーラ「は、はい……」
??「腕の立つ用心棒は、いらんかね?」
そう言い……『土方歳三』は目を細めた。
─────────────
とある本丸、離れ。
そこで、一振の刀剣男士が一人の老人が倒れているのを見つけた。
はて、ほぼ自分の神域と化してしまったここに迷い込むとは。そう思い、近付けば、老人は少し変わった飾りを付けている。
彼は老人を抱え、離れへ入っていく。刀剣男士──蜂須賀虎徹と老人──都丹庵士。二人の出会いは、ちょっとばかり厄介な方向へと進むことを、今はまだ、誰も知らない。
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