二次創作小説(新・総合)

第2話 スイートホームを探しに ( No.19 )
日時: 2019/03/16 14:07
名前: 内倉水火 (ID: apTS.Dj.)

その日、松田名作は公園にて、友人のウインドウズノキオ、団栗林むすびと共に談笑していた。

「まさか音羽館のリビングで爆発があって、良い年した大人が怒られるのを見るだなんて思わなかったよ」

名作は、御尻川スウィーツと共に音羽館へ行った時の事を思い出す。

「な? だから言ったんだよ、俺は行かないってさ」
「煩いな、ノキオは只だらだらしたかっただけだろ?」

呆れ半分の名作に切り返されたのは、スウィーツからの誘いを断り、音羽館へ来なかったノキオ。
自分の事をロボットと言って聞かないが、クラスの大半は彼を人間と確信している。名作からしてみれば、このクズな一面が更に彼を人間たらしめているのでは、と時折思う。

「でも、ムジークは見たかったですね。また今度連れてって欲しいです!」
「そうだね。むすびの委員会の仕事がない時に、また行こうよ」

対して好意的な様子なのは、同じく誘いを断ったむすび。彼は飼育委員の仕事があったのだ。
一応言っておくが、むすびは人間等ではなく、自我を持ち、人間並みの生活を送るおむすびである。

「まぁ、今度はちゃんと行くよ。俺もムジーク見たいし」
「じゃあスウィーツもボルトも一緒に、5人で行こうです」
「あっ、つる公にも声掛けた方が良いんじゃない?」

3人の話が、今度の音羽館への訪問で盛り上がった時だった。
彼等がいる公園に、2人の人物が新たに入って来たのだ。その2人の姿に気付いた名作は、思いがけず声をかける。

「戦兎さんに万丈さん!」

その声に、2人の人物_桐生きりゅう戦兎せんと万丈ばんじょう龍我りゅうがが振り向いた。
大振りなバックパックを各々背負った2人の顔は_げっそりとやつれていた。

「何てやつれた顔!」
「あの2人あんな顔だったか?」
「そんな訳ない!」

第2話 スイートホームを探しに ( No.20 )
日時: 2019/03/16 18:21
名前: 内倉水火 (ID: apTS.Dj.)

弱った2人を放っておく訳にいかない名作達は、一先ず名作の家へと2人を担ぎ込んだ。
丁度家にあった、2人前のカップラーメンを渡すと、やはり腹が減っていたのか、戦兎と万丈は勢い良く麺を啜り始める。そして食べ終わった頃には、顔色はすっかり改善していた。

「「ご馳走さま!」」
「いやぁ、生き返ったぜ!」
「有り難うな、お前ら」

感謝の言葉を述べる2人に、名作は尋ねる。

「大丈夫ですよ。それより、何であんな風になってたんですか?」
「いや、実はな…」

戦兎は再び項垂れたような表情で、事の経緯を話し出した。
聞けば彼等、実験と筋トレを繰り返した結果、泊まっていたネットカフェを追い出され、新居を探していたようだ。
名作も思い当たる所はあった。戦兎が泊まり先で実験を繰り返し、万丈からの電話に至っては、追い出されたとはっきり言われたのだ。

「それで、見つからなかったのか?」

戦兎が言う前に、ばっさりと結果を言ってしまうノキオ。
2人のやつれた顔からして、結果は言わなくても分かったのだ。
頬を指先で掻きながら、万丈はそれを肯定した。

「まぁ…そんな感じだ。この辺りの家を探してぇんだけどな」

その時、むすびが何かを閃いて叫ぶ。

「良い事思い付いたです!」
「え…むすび。どうかしたの?」
「この辺りなら僕達の方が詳しいです。僕達が手伝えば、きっと直ぐ見つかるですよ!」

むすびの案には、名作も同意する。ノキオも目を瞬かせながら頷いた。

「むすび、それ良いね! 僕も手伝うよ」
「え? あぁ…俺も手伝うぜ?」

その台詞に感動したのか、戦兎達は口を半開きにしながら言う。

「良いか? 頼めるか?」
「そんなら宜しく頼む! もうあんな思いはしたくねぇ!」

という訳で、満場一致で戦兎達の家を探す事になった。

第2話 スイートホームを探しに ( No.21 )
日時: 2019/03/17 13:24
名前: 内倉水火 (ID: apTS.Dj.)

戦兎と万丈は、新居を構えるのは竜宮町かハママツにしたい、と言う。
むすびが思った通り、名作達3人は普段生活している竜宮町とその隣町のハママツには詳しい。
早速、勧められそうな物件を探す事に。

一番に彼等は、ハママツの音羽館へと向かった。
シェアハウス形式で、住民達が自由気ままに暮らす此処なら、2人共問題なく住めるであろう、とノキオが発案したのだ。

「というか此処しか思い付かないしな」

ともこぼしていたが、読者諸君が感じた通り、此処はハズレである。
何故なら_。

「館の中で実験と筋トレなんて、つい最近禁止したばっかりですよ」

大家である歌苗がきっぱりと断った。
そう、名作とスウィーツが見た、あの爆発事故が原因だった。

「えぇ? そんなケチ臭い事言うなよー」
「ケチ臭い? 爆発を防止して何がケチなのよ! もう帰って!」

ノキオはもう一押し、と食い下がったが、案の定歌苗に激怒されてしまった。

続いて彼等は、むすびの家へ連れられた。
地面にぽっかりと空いた穴が入口のようだが、身体の大きい戦兎達、特に万丈は通りにくくて仕方がない。

「そもそも人が入るような穴じゃないからね、これ」

一度来た事のある名作は、軽くツッコミながら、穴の奥にある、旅館に似た団栗林家に足を踏み入れる。
内装や広さには問題なく、入りにくいが此処にしようか、と決めかけた時だった。
家の住人であるむすびが、電卓を片手に転がって来た。彼は電卓のボタンを押しながら告げる。

「家賃は実験代と筋トレ代込みで…この位です」

見せられた額は、今の彼等には払えそうもない大金。2人の表情筋はみるみるひきつっていった。

「むすび、本当に家探す気ある!? こんなのぼったくりだよ!」

名作がその場でツッコんだが、結局、団栗林家も却下となった。

第2話 スイートホームを探しに ( No.22 )
日時: 2019/03/17 14:25
名前: 内倉水火 (ID: apTS.Dj.)

2連敗となった一同が次に向かうのは、ノキオの家だった。

「おぉ、此処なら実験も出来そうだな!」

家に入るや否や、戦兎はそう言った。何しろ、全体的に白っぽい部屋の中には、ハイテクな機械や薬品が多くあったのだから。
ノキオは得意気になって、自らの保護者的存在について触れる。

「俺の面倒見てくれてんの、パペットじいさんっていうんだ。パペットじいさんも発明家でさ、ゲームとか、最新の薬とか造れるんだぜ!」
「成る程…」

もしかしたら、発明に関してアドバイスが貰える日々が来るのだろうか。此処で暮らした時の事を想像しながら、戦兎はうろうろと歩き回る。

…パリーン!

「うわぁ!」

歩き回っている内に机の上の薬品を落としたようで、ガラスが割れる音がした直後、戦兎の足元には緑色の液体がこぼれ、広がっていた。
戦兎が側にあった布巾を取り、薬品を拭き取ろうとすると、ノキオが止める。

「待て! それ触ったら熔けるぞ!」

驚いて動きを止めた戦兎の前で、薬品に濡れた床が、煙を上げて熔け出していた。
青ざめた顔で、名作が呟く。

「此処は止めた方が…」
「…そうだな。おっかなくて筋トレも出来ねぇし」

万丈が同意した事で、3連敗を喫した。

数時間後、彼等は一度、3人と2人が出会った公園に戻る事にした。
このまま連敗を重ねて疲れ果てるより、ベンチに座っていた方が楽な気がしてきたのだ。

「「はぁ…」」

全員で大きな溜め息を吐いてしまう。
名作は肩を落としたまま、今までの出来事を思い返した。

「人の家に泊まるのは駄目だからって、近くのアパート物件は筋トレとかで苦情が来そうだし、近くの一戸建て物件は家賃が払えないし…惨敗だったなぁ」
「全部言うなよ…名作…」
「余計凹むです…」

同級生達がツッコミを入れるが、どちらも気だるげな声であった。やる気は微塵も感じられない。

「「はぁ…家探しって難しい…」」

再び、揃って溜め息を吐く名作達だった。

第2話 スイートホームを探しに ( No.23 )
日時: 2019/03/18 18:01
名前: 内倉水火 (ID: e.VqsKX6)

流石にいつまでも公園に入り浸る訳にもいかないと思い、彼等は竜宮町の名も無き道を歩きだした。
と言っても、狙った物件は全て外れ、最早狙う物件等ない。当てもなく、とぼとぼと歩くだけであった。
お陰で、すれ違う人々はただならぬ負のオーラを感じ、この集団を避けていった。

これではいけないと思ったのか、空気を変える為に、戦兎は1つ話を始めた。

「俺と万丈は、此処に来るまで東京に住んでたんだ。色んな仲間と出会って、色んな奴等と対峙して。現実に打ちのめされそうな時もあった。でもその度に仲間に元気付けられてきたんだ。楽しい思い出もたっくさんある。な、万丈?」
「お、おう…そうだな」

戦兎に釣られて、万丈も東京の記憶を思い出したらしい。先程とは一転、柔らかく微笑んだ。
一方、話を聞かされ、ノキオとむすびは尋ねた。

「何で、東京からこんな所に来たんだよ?」
「そうですよ。何をする為なんですか?」

戦兎達は顔を見合わせると、こう答える。

「何で来たかって、この天才物理学者が音羽博士の発明品とムジークの謎を解明する為に決まってるだろ? 万丈はその助手な」
「誰がいつお前の助手になったよ! …理由なら他にもあるんだぜ。お前等トラブルメーカーを放っておけねぇ!」
「誰がトラブルメーカーだよ!」
「住所不定無職に言われたくないですー!」

ノキオとむすびが万丈にツッコんだ直後、全員吹き出して、その場は爆笑となった。

「確かにそうだな、俺達が言える立場じゃない」
「色々やらかしちまったからな」

でも、名作は思う。
ムジークを見る前から、戦兎達は竜宮町付近に来ていた。それに、名作達が東京で彼等に会った過去も存在しない。

「他に理由があるんじゃないですか?」

そう訊いてみたかったが、2人がどんな顔をするのかと思うと、怖くて訊けなかった。
先程言っていた、仲間が関係するんじゃないかな。
そんな事を考えつつも、結局、名作は再び吹き出して笑う。
もう、気にしていた事も笑い飛ばしてしまった。

第2話 スイートホームを探しに ( No.24 )
日時: 2019/03/19 16:33
名前: 内倉水火 (ID: e.VqsKX6)

「…それにしても、家見つからないなぁ…」

しかし、和気藹々としていたのも束の間、ノキオの一言で、再び場の空気は沈んでしまった。

「「はぁ…」」
「なんて事言うんだ、ノキオ…」

3度目の溜め息を吐く一同。
彼等を満遍なく照らしていた太陽は傾き、街中を橙色に染め上げていた。その内沈んで、辺りは夜を迎えるのだろう。
そうしたら、戦兎達は宿無しで一夜を明かす事になる。
名作達は、彼等の力になれなかったのが不甲斐なかった。

そんな時だ。

「あれ? パイセーン、何してんすか?」

声のした方角を振り向くと、其処には、鶴の頭部に似た帽子を被った、幼い少年の姿があった。
少年は、名作達と同じく竜宮小に通う1年生_上井うえいつるこうだった。

「つる公…実は…」

名作はつる公に、事の経緯を全て話した。
すると、つる公は顔色1つ変えずに言う。

「じゃあ自分ん家来るっすか?」
「「…えぇ!?」」

あまりにあっさりと言うもので、お陰で一同は耳を疑った。

「いや、家見つかんないんすよね? だったら家に来て良いすよ」

彼等の驚きは、次第に喜びへと変貌していく。
感動のあまり涙目になりながら、戦兎と万丈はつる公の元へ駆け寄る。

「い、良いのか? 実験も、筋トレもして良いのか?」
「あぁ有り難うつる公!」

聞けば、つる公の家は昔話によくある物件を多く所持しているらしく、2件位人を住まわせても、何の問題もないらしい。
勿論、可燃性の物を使わなければ、実験も筋トレもして良いのである。
つまり、彼等にとって最優良物件なのだ。

「「ばんざーい! ばんざーい!!」」

一同は感涙に帰して、日が満ちるまで万歳を続けていた。
其処で、名作はつる公に訊いてみる。

「ところで、何で住ませようと思ったの?」
「え? そりゃAIとかアプリ作るヘルパーになって貰う為っすよ。万丈さんは用心棒で」
「計算高いな!」

思わず感心した名作だった。

めでたしめでたし!