二次創作小説(新・総合)
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- かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜
- 日時: 2020/07/11 18:06
- 名前: 顎髭様 (ID: CVAOp98G)
アニメと原作の方を見て、石上の同級生達が凄く胸糞悪かったので、その憂さ晴らしと言った形で、この小説を書くことに。
と思っていましたが、本編が面白かったため、しばらく小説を書いていこうと思っています。
オリジナルキャラクターも出す予定です。
*なお、本編とは全く関係の無い物まで勝手に出してしまうのですが、そこはご了承下さい。
- 石上優は頼りたくない ( No.1 )
- 日時: 2020/06/15 22:08
- 名前: 顎髭様 (ID: CVAOp98G)
全生徒が盛り上がった、秀知院学園体育祭から、二週間程経った。
いつもと変わらない日常が続くと思っていた。だが、少なくとも、その様な事は無かった。
石上は校舎内に入り、自身の教室へと向かう途中で、いつもとは違う日常が待っていた。
「お、石上じゃないか!」
「あ、先輩。おはようございます。」
石上に元気よく声を掛けてきた筋肉質の男子、体育祭でお世話になった団長だった。
「石上くん!俺も忘れんでよぉ〜。」
さらに、他の団員の人達も声を掛けてきた。今までそんな事は絶対に無かった。でも、体育祭が終わってから、石上の世界はガラリと変わった。
「おはようございます。昨日のグループ通話楽しかったです。」
「応援団全員でグループ通話なんて初めてだったしな!しかも石上めっちゃ正論でズバズバ言ってくるから、まぁ面白かったよ!」
「初めは話すの苦手なのかなと思ったけど、石上くん結構面白い話持ってんだね!」
「いえいえそんな…。」
昨日の夜、突然赤組応援団のグループで始まったグループ通話。5時間ぶっ通しで話し続け、大いに盛り上がった。石上も、何と無くの感じで通話に参加したものの、自分についての話題で3時間も話が続くとは思ってもいなかった。その時初めて、石上は心から、話すことが楽しいと思えた。まあ、その代償として、応援団全員寝不足なのだが。
「そうだ!まだ打ち上げみたいなのしてなかったよな。いつにする?」
「確かに。一応全員の予定聞いてからにするか!あ、勿論石上も参加だぞ!」
「はい。考えておきます。」
「じゃあな!」
そう言い、団長は手を振りながら去っていった。
「……………。」
石上は笑みが溢れていた。
楽しい。
高校生活でずっとこのような感じを持つのは、生まれて初めてだからである。
体育祭によって、石上に対する2、3年生の評判は超が付くほど良い。先程の様に、先輩達から話をされる事が多くなった為、楽しく学校へ来れる様にな………
「…………。」
石上が教室の扉を開けると、ある一つの机に目が止まった。その机には、乱雑に書かれた落書き、そして、一輪の花が入っている細長い花瓶がその机には置かれていた。
「来たなあいつ……。」
「体育祭でちょっと活躍したからっていい気になって……。」
現実はそう甘くなかった。
あの体育祭によって、確かに石上の世界は変わった。だがそれは、いい意味でも悪い意味でもだ。
あれから石上は、クラスメイトから、陰湿な嫌がらせを受けていた。おそらく、石上の体育祭での活躍で、先輩達から声を掛けられる様になった事に対し「何調子に乗ってんの」的な感じを抱いていたのだろう。元々、あの件があってから石上は同学年ほとんどから嫌われていたが、体育祭でさらに拍車が掛かってしまったのだろう。
「……はぁ………。」
石上は深々とため息をついた。しかしこれは、嫌がらせをされた事に傷付いたことからではなく、「こんな小学生みたいな事して何が楽しいんだが」といった呆れからであった。この嫌がらせが始まってから一週間、もう石上は彼らに対し呆れを感じていた。
「(僕を見下して楽しいなら、どうぞお好きに)」
そう思いながら、石上は花瓶を教卓に置き、落書きを放置して、席に付いた。クラスメイト達がこちらを見てクスクス笑っている事は、振り向かなくても分かっていた。
放課後……。
「それじゃ、最終チェック終わったんでお先に失礼しまーす。」
「おう。気を付けろよ。」
石上は生徒会会計としての仕事を終え、帰宅しようとしていた。
明後日は一日がかりで行われる生徒総会。予算案をまとめたり、準備をしたり等、ここ何日か忙しい思いをしていた。
「帰ったらゲームのつづ……ヤッベ。教室だ。」
毎日学校に持ち歩いて、暇さえあれば手にはゲーム機。そんな石上の命と同等の価値があるゲーム機を教室に置いてきてしまった。
小走りで教室へと向かうと、自分の席に誰かがいるのが目に見えた。
「………小野寺……?」
「…石上…。」
小野寺麗。体育祭で石上と共に応援団として活動していたクラスメイトの一人である。でも、何故彼女が自分の席に。
「…何してんだよ…?」
「見りゃ分かるじゃん。綺麗にしてるんだよ。」
濡れ雑巾片手に、落書きだらけの石上の机を拭いていた。
「……何で小野寺が…。関係無いだろ。これは僕だけの問題であって……。」
ぶっきらぼうな感じで、石上は自分の机の中にあるゲーム機を取り、立ち去ろうとした。だが、突然小野寺が声をかけた。
「あのさ。」
「?」
「………今更な感じがするけど、この際だから言っとく……。」
「…………。」
「…………ごめん。」
しばらく沈黙が続いた。
「………何かと思えば……。別にいいよ。結果的に僕が悪いんだし。ていうか、もういちいち気にするのはやめた。」
「………私、あんたと応援団やって、あんたが本当にあんな事する奴だとは思えなくなって……。というか、そもそもあんな事起こしたら、普通学校になんて行きたいと思わないじゃん……。よくよく考えたらおかしい点は一杯あるし……。」
「……正直な事言うけど、今でも怖いとは思ってるよ。」
「えっ?」
小野寺は石上を見た。
「もし中学の事が先輩達に知られて、幻滅されたらどうしよう。その不安は少なくともあるよ。でも、例えそうなったとしても、僕の事を思ってくれる人達が数人いる。それだけでいいんだよ。」
小野寺は生徒会の面々の顔がすぐに浮かんだ。
「だから、いつまでも僕に対して申し訳ない気持ちを持たないで欲しい。もういいんだよ。」
「…………罪滅ぼし…って訳じゃ無いけどさ、一応石上の机は……いつも私が…。」
「ありがと。別に罪滅ぼしでもいいよ。」
「………。」
石上は小野寺が持っていた雑巾を取り、落書きを拭き取り始めた。
「よくよく考えりゃ、この落書きベトベトするから結構イライラする……。」
「………ねぇ。あんたこのままでいいの?」
「は?何がだよ?」
「何がって……!こんな事されて何とも思わないの!?」
「……呆れてはいるけど……。」
「じゃあどうして!?確かにあんたはあんな事起こしたから、あれに関してはあんたが悪いかもしれない!だけど!今回に関してはあんた何にもしてないじゃん!全部あいつらのせいじゃん!!」
声を荒げて小野寺はそう言った。
「石上さぁ、何でもかんでも全部自分が悪いと思う癖直した方がいいよ。どんどんエスカレートしてるじゃん。昨日だって、下駄箱にゴミ入れられてさ…!それなのに、まだ自分が悪いって思えるの!?」
「……………。」
「……それに、何で会長やミコに話さないのさ?ミコなら風紀委員だし、この事は絶対に見過ごさないはずだよ。生徒会だって、何かしらの対処はしてくれるはずだよ。なのにあんた、誰にも相談しないなんて……。もしかして、信用してないの…?」
「………誰にも相談しないのには理由がある。」
「理由……?」
「明後日、生徒総会だろ?それを利用して、あいつらに気付かせる為だよ。自分達のやってる事は小学生、いや幼稚園児がやる事だって。
もう、毎朝呆れるのに飽きたよ。エスカレートしようがどうでもいい。ただ、自分達のやってる事が、周りの連中からすればどれほど馬鹿でクソみたいな事かって。社会に出たら間違い無く痛い目見るぞってのを教えてやる。
それに……、体育祭のリレーの時だって、僕を助けてくれたのは会長さ。あの時、アンカーになるってなったら周りの陰口はするわ、挙げ句の果てには大友来るわで、もうパニックだったよ。結局、僕は何も変われないんだって。そう思ってた。でも、会長が僕を引き戻してくれた。それのおかげで僕は……。」
「…………。」
「体育祭だけじゃないさ。四宮先輩だって、僕を赤点の窮地から救ってくれたしで、僕は生徒会のみんなから助けられてばかりだ…。でも、いつも助けられてばかりじゃ駄目だ。結局、自分で何かをしない限り、僕は本当の意味で変われないんじゃないかって……。だから、僕は誰にも相談しなかったんだよ…。」
「………何する気なの……?」
「……誰にも言うなよ?会長にも四宮先輩にも藤原先輩にも、伊井野にも。」
「………分かった。」
そして明後日ーーー
「これより、生徒総会を開始致します。」
生徒総会スタート!
- 石上優は動き出した ( No.2 )
- 日時: 2020/06/21 22:40
- 名前: 顎髭様 (ID: CVAOp98G)
生徒総会、それはどの学校にもある生徒会の最高審議機関。
部活動およびクラブ、そして学校行事の予算・決算の決議、「生徒模範の手引き」の改定および破棄、基本的事項の承認など、全学年で行われる今後の学園についての大討論会である。
秀知院学園では、毎度の様に激しい闘争が勃発してしまうため、中等部の教員も駆り出され、生徒達を抑制するといった、普通の学校では有り得ない事態が起きてしまう。
さらに他校とは違い、一日がかりで行われるこの生徒総会、準備のほうも生徒会と教員が当日三日前から始まっていた。そのため‥‥‥‥。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
生徒会メンバーは疲労で今にも果てそうであった。
「いよいよ生徒総会だなぁ‥‥‥。」
「そうですねぇ‥。」
「‥‥‥寝てもいいですかぁ‥‥?」
「‥かまわないと思いますよ。永久に。」
生気の無い四人の会話を、伊井野ミコは困った顔で見ていた。
「皆さん本当に申し訳ございません!私が風邪で休んだばかりに‥‥。」
実は伊井野は、一週間程前から風邪をこじらせてしまっていたため、準備に参加していなかったのである。何とか生徒総会当日に復帰できたものの、先輩たちが自分の分の仕事をしてくれたことに、負い目を感じている。
「別にミコちゃんは悪くないよぉ~。悪いのはこんな無駄に大がかりなのに退屈極まりない生徒総会のせいだよぉ~‥‥。」
「藤原先輩クスリでもかましてるんじゃないかって位目がラリってますよ。」
「ふぅー‥‥。俺たちがこんなだらだらしててもしょうがない。お前たち、気ぃ引き締めていくぞ。これから先はもっと疲労が蓄積するような闘いが始まるんだから。」
「それもそうですね‥‥。」
「それに、今回の生徒総会は今までとは違うしな。そうだろ石上?」
「まぁそうですね。珍しく伊井野が僕の案に賛同してくれましたしね。今回の生徒総会は大荒れになりますよ。」
「あの石上がまさかあんな案出すなんて‥。」
「あのってどういう意味だよ。」
小喧嘩をしながら、議長の伊井野と副議長の石上は準備に取り掛かった。
そして、司会を務めるかぐやがマイクを手に取り、
「これより、生徒総会を開始致します。まず、議長および副議長の登壇。」
かぐやがそう言うと、伊井野と石上がステージに現れ、ステージ上の議長席に着席して礼をした。
「今回の生徒総会の議長を務めさせていただきます、伊井野です。」
「副議長の石上です。スムーズな進行を行えるよう、尽力致します。」
そして、熾烈な生徒総会が幕を開けた。
現在の「生徒模範の手引き」の改定を求める声、一部事項の破棄を求める声、今後の部の予算に不満不平を抱く声。時間が経つにつれ、さらにヒートアップする「生徒総会」。いや、これはもうもはや、生徒同士の「戦」なのである。その「戦」は昼休憩など初めから無かったかの様に、絶え間なく続いた。
普通の学生ならば、「だるい」「生徒総会なんていらない」「面倒」といった感情を抱きながら、静かに眠りに就くのが、一般的である。
だが秀知院は違う。そのような感情を抱かない。いや、抱けないのである。時が経つにつれ、さらに過激の一途を辿る。こんなピリピリした環境の下、そのような感情など抱けない。ましてや眠ることなど不可能に近かった。
「ぐぅ~~‥‥‥。えへへへ‥‥。」
「(‥‥‥藤原に関しては、終わっても起こさないどこ。)」
まぁ、一部例外はいるが。
そんなこんなで、戦は段々終息へと近づいて行き、時刻は13時半。当初の予定では昼休憩は12時ちょうど。1時間半振りの安堵の時間である。
そして昼食中の生徒会室では‥‥‥。
「あぁぁ~‥‥‥。もう寝たいぃぃ‥‥‥。」
「(あらあら藤原さん。ちゃんとぐっすり寝てたのに、何『私が一番大変だった』アピールをしているんでしょうか。伊井野さんと石上君を見習っては?というか、あなたには生徒総会の結果をまとめる『記録係』という立派な仕事があるはずでは‥‥‥?泣いて『助けて』と言ってきても、私は知りませんよ?)」
憐れんだ目で、かぐやは藤原を見続けた。
「それにしても、今回も熾烈だったな。」
「はい。『スムーズな進行を行えるよう、尽力致します。』とか言ったけど、あれじゃスムーズに行える訳ないじゃないですか。一向にこっちの話は聞かないしで、もう副議長は勘弁です。」
昼食を食べながら、石上はぼやいた。
「まぁ、今回の本題はそこじゃないんでいいんですけど。」
石上は立ち上がり、机の上に置かれていた赤い箱の様なものを手に取った。箱には、「モラル上昇ボックス」と大きく書かれていた。
「まさかこれが、本当に何かの役に立つとは思ってもいませんでしたよ‥‥‥。」
すると、午後の部の開催10分前を知らせるチャイムが鳴った。
「いよいよ午後の部だな‥‥‥。頼んだぞ、議長、副議長。最後の仕事だ。」
生徒会五人は立ち上がり、生徒会室を後にした。そして石上は赤い箱と手にし、何か一枚の紙の様なものをこっそりと箱の中に入れた。
そして午後の部‥‥‥。
「例年なら、いつもこれで生徒総会は終了となるのですが、今回は全校生徒の皆様、そして先生方にお伝えしたいことがあり、この時間を設けさせて頂きました。お時間を取らせますが、何卒宜しくお願い致します。」
伊井野がそう言い終わると、石上にマイクを渡した。
「えー、まず、このグラフをご覧ください。」
すると石上は、あらかじめ準備しておいたスクリーンから、あるグラフを映し出した。そのグラフは、過去五年間の『何か』を表している折れ線グラフだった。
「まず皆さん、この折れ線グラフが何を表しているか分かるでしょうか?これは、『過去五年間の秀知院学園生が起こした問題行動の推移』を表しております。見ての通り、年々増えていることが分かると思われます。
つまり私たちは何を言いたいのか。今現在の秀知院学園のモラルは大幅に低くなっているということです。特に‥‥‥。」
石上は新しいグラフを映し出した。次に出されたグラフは、一つの円グラフだった。
「今年の一年生のモラルは過去最低と言っても過言ではありません。この円グラフの通り、今年の問題行動の大半が、一年生によるものなのです。」
これを見た二、三年生は騒然とした。元々、今年の一年生に対する評判はそこまで良くはなかったため、まさかそこまでだったとは思っていなかったのだろう。
「やっぱり今年の一年生ヤバいよね‥‥‥。」
「好き勝手やりすぎだろ‥‥‥。」
徐々に会場がざわめきだした。
「皆様、静粛にお願いします。」
かぐやの一声で、ざわめきは静まった。
「これ以上野放しにしておいては、名誉ある秀知院学園の評判が下がってしまう恐れがあります。そこで私達生徒会と風紀委員会で、このようなものを設置いたしました。」
石上が言い終わると、伊井野があの赤い箱を取り出した。
「皆様、これは『モラル上昇ボックス』です。我々生徒会と風紀委員会が、モラル低下を防ぐために共同で作ったものです。匿名で相談事および自身が見た生徒の問題行動を専用用紙に書き、このボックスに投函する。そして解決策を風紀委員会と共に考えるといった活動を行っていました。これを作ってから、もうすぐ半年が経とうとしていますが、集まった件数は何と、全体で52件。その内49件が、一年生に関する事案です。」
再び会場は騒然とした。
「今年の一年生どうなってんだよ‥‥‥。」
「ありえないって‥‥‥。」
「何考えてんだよ‥‥‥。」
二、三年生だけでなく、教員たちも騒然としていた。まさか入学してからたった半年なのに、これだけの問題を起こしているのは知らなかったようだ。
「我々生徒会と風紀委員会は話し合いました。生徒総会には全校生徒が揃う。先生方も揃う。これは滅多に無い機会だ。なら、今まで溜まった問題行動を、全て晒してしまおうと。全ての全校生徒に、先生方に、これが今の秀知院学園の実態だと、教えてやろうと。」
「マジかよ‥‥‥!」
「えぐいことするな‥‥‥。」
「やっぱ風紀委員頭おかしいって‥‥‥!」
全生徒および全教員は、石上の言葉に驚きを隠せなかった。
「‥‥‥これより、モラル上昇ボックスの公開紹介を行います。」
- 一年生は晒された ( No.3 )
- 日時: 2020/07/11 20:59
- 名前: 顎髭様 (ID: CVAOp98G)
遡ること一週間前---
「‥‥‥‥‥‥マジか石上‥‥‥。お前がまさかそんな事を‥‥‥。」
「一応僕も生徒会の一員ですよ?」
白銀は驚いた。
石上が『モラル上昇ボックスの公開紹介』を提案した。しかもその理由が、秀知院学園のモラル低下を防ぐためだということ。
とても失礼になるが、石上が秀知院学園のモラルを気にしていたなど、思っていなかった。というか現に、石上は校則破りの常習犯。いつも伊井野に怒られては揉め事になるのに。そんな石上が何故突然‥‥‥。
だが、この案はとてもいい案だ。年々、モラルの低下が問題視されているのは事実だ。しかしながら、正直白銀はどうなのかと思っていた。その訳は、藤原が話してくれた。
「ですが、ただ公開するだけなんですよね?それに一体何の意味があるんですか?ただ自身の悪行が晒されても、何も反省しないと思うんですけど‥‥‥。」
というか、現に藤原。悪行を晒されても何も反省しないのはお前だろ。
白銀は憐れんだ目で藤原を見た。だが確かにそうだ。
人間はそう簡単には変われない。白銀もそう考えている。
そもそも、一体石上は何が目的なんだ?何が狙いなんだ?
すると、遅れてやってきたかぐやが、生徒会室に入ってきた。
「話は聞きましたよ。石上君、貴方結構腹黒いところがあるんですね。」
うっすらと笑みを浮かべて、かぐやはそう言った。
「もし公開紹介が行われたとしましょう。今まで秀知院学園生がやってきた悪行が全生徒および全教員に晒される訳です。これら全てが、中等部に、校外に知れ渡ったらどうなりますか?」
「‥‥‥そういうことか‥‥‥。なかなかえぐいことだな‥‥‥。」
「(‥‥‥え?どゆこと?)」
藤原はまだ理解していない。
「つまり、秀知院学園の名に泥が塗られるということ。
『200年の歴史を持つ由緒正しい名門校』のイメージが一転。『ろくでもないボンボンが集う低レベルな学校』というレッテルが貼られる可能性がある。秀知院学園の評判は右肩下がりですよ。当然、今後の入学者数にも影響が出る。
そうなると、一番困るのは誰でしょう。教員たちです。これだけは防がないと。どうにかして対策を講じないと。必ずそう思うと思います。彼らは私達生徒の事などどうでもいいくせして、いざ学校の名誉の為ならば、必ず行動を起こしてくれる。石上君は、そういった教員たちの心理を利用しようとしているんです。違いますか?」
「参ったなぁ‥‥‥。やっぱ四宮先輩には敵わないや‥‥。」
「なかなかえぐいことを考えましたね、石上君♡」
「いえいえ、四宮先輩ほどではないですよアハハハハ‥‥‥!」
「(‥‥‥何だろう‥‥‥段々四宮と石上が似てきているように見えるんだが‥‥‥。)」
笑顔とは程遠いような笑顔を浮かべている2人を見て、白銀は少し恐怖を抱いた。
「‥‥まぁ、影響は先生だけじゃなく、先輩達にも及ぶと思います。」
「それは、一体何故?」
「そうですねぇ‥‥もうじき、サッカー部が二泊三日の遠征に行くことになってますよね。その遠征には、補欠だろうが、二・三年生全員が行く予定になっています。その際、残った一年生は学校で部活動をする訳ですが‥‥‥。
そんな陰で問題行動ばかり起こすような連中に、部の全体を任せたいと思いますか?
僕の見た感じ、今年の先輩方はとても規律の良い人たちばかりなんで、こういった不祥事にはとても敏感だと思います。一部を除いて。」
「ちょっと石上くーん。今ちらっと私の方見ませんでしたかー?」
そんな藤原を無視して、石上は話を続けた。
「ただでさえそこまで評判の高くない一年生なのに、こんな悪行晒されれば、さらに下がるのは目に見えてます。
どうですか会長?これでもまだ、この案に納得がいきませんか?」
まさか、ここまで徹底的な案だとは思っていなかった。確かに何かしらの大きな影響は出る。これは非常にいい。
「‥‥分かった。お前の意見を承諾しよう。」
「ありがとうございます‥!」
「けれど石上君、その件について伊井野さんは?それに、風紀委員は?」
「風紀委員長は二つ返事でオーケーしてくれましたよ。珍しく伊井野も僕の案に賛成してくれましたしね。ていうか、こんな忙しい時期に、なんで風邪なんか‥‥‥。」
伊井野は今日、風邪をこじらせて学校を休んでいる。現在、熊のぬいぐるみの上で熟睡中である。
「でも、とてもいい機会じゃないですか。言い方は悪いですが、今年の一年生はかなり調子に乗っていましたし。ここらで一度、お灸を据えるのが一番ですね。」
「相変わらず怖い事言いますねアハハハハ‥‥‥。」
「こんな事考える石上君ほどではないですよフフフ‥‥‥。」
「(怖ぇよぉ‥‥!やっぱり似てきてるよ‥‥!)」
そして現在---
石上が数々の不祥事を言い続ける。そして、石上の狙い通り、全生徒、さらに全教員も騒ぎ出した。
「お。おい!あいつら一体何やってるんだ!もし校外に知られたら‥‥!」
「今すぐやめさせ」
「その必要はありまセン。」
後ろから声が聞こえた。
「こ、校長先生‥‥‥。」
「秀知院学園の現状を知るいい機会デス。生徒総会後、緊急職員会議を開きマス。今後の対策について、話しまショウ。」
そう言い、校長はその場を去り、ポケ〇ンG〇を再開した。
その様子を見ていた、かぐやと白銀は‥‥‥。
「狙い通りだな。教員側も動揺している。」
「校長の言動から、おそらく緊急職員会議が開かれると思われます。
ですが、私からすれば、この案の狙いは教員や先輩方だけではないんですよ。」
「奇遇だな。俺もだ。」
そう言い、かぐやと白銀は、ある生徒達へと視線を向けた。
VIP枠である。
『エグい事を平気でする』でお馴染みのVIP枠。学園追放など、お茶の子さいさいである。ましてや、これだけの問題が晒されているのだ。黙っていないわけがないだろう。
特にかぐやが目を付けているのが、警視庁警視総監の息子で、剣道部部長の一年・小島である。親の職業柄上、規律の乱れを極端に嫌う人間であるため、今回の件については、間違いなく行動を起こすだろう。
「(さて、今回の件で、一体どれだけの人が、荻野コウと同じ末路を辿るのでしょうね‥‥‥。)」
かぐやはうっすらと笑みを浮かべた。
さらに石上が不祥事を公開し続け、騒ぎが収まらないまま、最後の49件目を読み終えた。
「ちょっとヤバくねぇか‥‥‥?」
「普通に幻滅したわ‥‥‥。」
「自覚ってのが無い訳‥‥‥?」
「部活こいつらに任せたくねぇよ‥‥‥。」
周りから数々の批判が聞こえてくる。そして、一年が全員気まずそうな顔をしている。全部狙い通りだ。これで分かったはずだ。お前達がどれほど調子に乗っていたか。でも、これで終わりじゃない。
全ての案件を読み終わり、伊井野が終了の挨拶をしようとすると、石上が突然、マイクを取り上げた。
「え、ちょ、ちょっと‥‥!」
「皆さん。大変申し訳ございません。先程、一年生に対する案件49件を公開すると言いましたが、こちらの手違いで、もう一件ありました。」
「!?」
これに関しては、全校生徒だけでない。白銀やかぐやも驚きを隠せなかった。
しっかり49件だったはず。数え間違いは無かったはず。
「え、ちょっと石上‥‥‥。」
伊井野も突然だったため、戸惑った。
「お時間を取るようですが、今から50件目を公開させていただきます。」
伊井野を無視し、石上は箱から、紙を取り出した。そして、公開を開始した。
『一年です。
最近の私のクラスの雰囲気は最悪です。
ある一人の生徒に対する嫌がらせおよび中傷が日に日に酷くなっているのです。』
その一文を聞いた途端、再び会場は騒然とした。
「え、嘘でしょ?」
「完全にいじめじゃねぇか‥‥!」
「いよいよもう洒落になんねぇぞ‥‥!」
「マジでどうなってんだよ‥‥‥!」
「今年の一年マジで有り得ない‥‥‥。」
更なる批判が一年生へと向けられた。かぐやが静粛にと呼びかけても、ざわめきは全く静まらなかった。
『はじめはそこまでではありませんでした。ですが、段々オープンになっていくにつれ、もうこれ以上エスカレートしたらマズい、と思い、書かせていただきました。
私一人ではどうすることも出来ません。生徒会および風紀委員会の力をお借りしたいです。私は一体どうすればいいのでしょうか。』
「‥‥‥。」
白銀とかぐやはある一点に目を向けていた。
今石上が持っている用紙である。
その瞬間、何を思ったのか、白銀とかぐやの表情が一変した。
離れた場所に着席しているかぐやの近侍・早坂愛は、二人の表情を見ると、何を感じたのか、すぐに顔を背けた。
「(かぐや様‥‥‥。)」
すると、再び石上が口を開いた。
『まず、その嫌がらせを受けている人は、おそらくとても心の強い人間なのでしょう。
そのような仕打ちを受けているのにも関わらず、自分の足で学校へ行き、授業を受ける。普通の人間なら、心が折れていてもいい位です。でも、この先の未来のために、前を向いて必死に生きている。頑張って生きている。僕達生徒会はあなたを応援しています。
そして、この件を教えてくれた貴方。あとは我々に任せて下さい。しっかりとした調査を経て、然るべき処罰を下します。彼を救うために行動した。我々に助けを求めた。その勇気に私達生徒会と風紀委員会は、敬意を表します。』
「‥‥‥。」
小野寺は石上を見続けた。
二日前、石上から、生徒総会でやる事を聞いた。
「‥‥‥あんた、結構エグいこと考えるね。ちょっと引いたよ。」
「こっちから聞いてきたくせして、何てこと言ってんだよ。
まあ、元々モラル上昇ボックスの公開紹介については、やろうと思ってたけどさ。せっかくの機会だから、やらせてもらうよって感じだよ。」
「そんな軽いノリであんなエグいこと考えつくのが凄いよ。」
「皮肉を言ってんのさっきから?」
「‥‥‥まあ、確かにいい機会かもしんないね。」
「どういう意味だよ?」
「‥‥‥伊井野が風邪で休んでから、あんたの嫌がらせがオープンになったのを見てさ、『あ、こいつら調子に乗ってんな。伊井野が休んだことをいいことに、どんどん酷くなってる。』と思ったよ。実際、その前から、伊井野が知らない所で、あんたに色々してたのもそうだしさ。
なんていうか‥‥‥胸糞悪くなるんだよね。あいつらのそういう卑怯な所を見ると。あんたはあんな事したけど、だからといって嫌がらせをしてもいい理由にはなんないじゃん。
だからさ、自分らがどれ程まずい事してるかっていう知らしめにもなる、どれ程天狗になってるかってのを知るいい機会なんじゃないかな、って思ったわけ。」
「‥‥‥小野寺‥‥。」
「そんな訳だよ。あいつらにギャフンと言わせてやんな。」
「‥‥‥おう。」
「‥‥‥。」
小野寺は首を横に向けた。
気まずそうな感じを出しているクラスメイトの顔がよく分かる。
普段は陰で好き放題やってるくせして、表沙汰になった途端引っ込む。私の父親が一番嫌いな人間の種類だ。
ざまぁみろ。卑怯者共め。
小野寺はそう思いながら、鼻で笑った。
『最後に、嫌がらせを行った人達、そして、それを見て見ぬふりをしてきた人達。
覚悟しておいて下さい。我々はどんな手を使ってでも、貴方達を見つけ出します。逃げられると思わないように。』
石上は伊井野にマイクを渡した。
会場の空気は信じられない位重かった。
「‥‥‥い、以上で、モラル上昇ボックスの公開紹介を終了致します。」
伊井野と石上は礼をした。
「‥‥‥議長、副議長降壇。」
かぐやがそう言い、伊井野と石上はステージから降りた。
「先生方、何かご連絡はありますか?」
いつ戻ってきたのか、校長がマイクを手に取った。
「全教員に連絡シマス。この後、緊急職員会議を開きマス。会議室まで来て下サイ。」
校長は去っていった。
「‥‥‥全ての項目が終了したため、今年度の生徒総会を終了させていただきます。」
重い空気のまま、生徒総会は幕を閉じた。
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