二次創作小説(新・総合)
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- 落ちたボーマンダ
- 日時: 2021/05/04 13:25
- 名前: AGF (ID: 3c0JYUg8)
注意 ボーマンダとクリムガンの小説です
若干のグロ要素があります
一匹の竜が人間に打ち落とされた。
叫び、喚き、鮮血を流しながら悲痛の中大地に落ちていった。
彼を知るものは、きっと驚くだろう。
つい先刻まで森の頂点であった暴君は、一瞬にして地面に伏してしまった。
見ていたのは、己のみ。
果敢に立ち向かった暴竜は、人間の策に嵌り、あっという間に取り押さえられた。
羽をもがれ、鱗を剥がれながら、つらつらと流す涙。
湧き出る悲鳴はこの世のものとは思えなかった。
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「なぜ助けた」
青い暴竜は、己を睨みながらそう言った。
「お前の断末魔が聞くに耐えなかったからだ」
「降ろせ。俺は死にたい」
「今降ろせば、俺が危ない」
人間が去った後、己は彼の身体を担いで巣穴へ向かう。
彼は息絶えていると思ったが、かろうじて意識のあるようだった。
森のみんなに恨まれている彼。暴竜を助けたと知られたら、己は惨殺されるだろうか。
「羽を失った。生きる望みがない」
「飛べない羽であればくれようか」
「それでもいい。俺は空へ帰りたい」
「空の良さが俺には分からん」
「帰りたい。帰りたい。あの空へ戻りたい」
彼は己の背中をドンと蹴ると、黙り込んだ。そして暫くするとメソメソと泣き出してしまった。
「人間は脅威だと思っていたが、あんなに恐ろしいとは思わなかった」
捕らえられた足を、刃物で刺された。赦しを乞おうとも、人間に声が届くはずもなく、羽の付け根からバッサリと切られてしまった。残ったのは傷だらけの身体だけ。
「たった少しの人間のせいで、どうしてこんな目に」
涙をポロポロこぼしながら、彼は唸った。
「こんな気持ちになったのは、コモルー以来だ」
そう呟くと、暴竜は意識を失ってしまう。彼の心情は推し量れないが、今は巣に急ぐことにした。