二次創作小説(新・総合)
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- 遊戯王 七つの輝きと光の守り人
- 日時: 2021/06/06 20:50
- 名前: 咲夜 ◆14iGaWqIZs (ID: 6d9hTZRD)
はじめまして、咲夜と申します。
こちらは、何年か前に書いていた遊戯王の二次創作のリメイク作品になります。
注意事項
・主人公はオリキャラ。他の登場人物もオリキャラです。
・咲夜はアークファイブ中盤辺りに遊戯王を一度引退しているので、ルールやカードプールが基本的にその辺りのものになっています(タッグフォースSPが出ていた頃です)
・ルールはマスタールール2です。リンク召喚、ペンデュラム召喚未登場です。
・アニメのオリカが登場します
以上、楽しんで頂けると嬉しいです。
0章 「異界からの決闘者」
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り人 ( No.1 )
- 日時: 2021/06/06 20:52
- 名前: 咲夜 ◆14iGaWqIZs (ID: 6d9hTZRD)
その世界は全て闇、だった。上下を見ても、左右を見ても。
どこも、黒く塗りつぶされていている。暗い空を見上げた時のような、或いは夜の海をのぞき込んだ時のような。
終わりの見えない暗闇が永遠と続くだけの空間。
その中を一匹の生き物が駆けていく。
見えない道があるのか、その生き物は短い四肢で暗闇を蹴り懸命に前へと進んでいった。
大きさは人の頭ほどで、見た目から言えば紫の猫に見えるかもしれない。が、この猫には耳の下に同じ色の半月状の耳があり、尻尾の先端には赤い球体が顔を覗かせ、灯りのように淡く光っていた。そして円な赤い瞳は、この暗闇でも輝きを放つ。
暗闇でも光を失わない尻尾と尾は、ルビーを思わせる。現にこの生き物の名は、ルビー・カーバンクルと言った。名に相応しい見た目だ。
ルビーは時折背後の闇を気にしながら、懸命に走り続けていた。長く走っているのか、息は既に荒く走るペースも徐々に落ちてくる。
それでもダメだ、とルビーは自分の身体に鞭打って手足を動かしつづける。
残された自分が捕まってしまえば、仲間は二度と帰ってこない。頼りになるのは、名前も顔も知らない決闘者(デュエリスト)のみ。ただ、会えば分かると仲間は言っていた。
仲間曰く、その決闘者は自分たち宝玉獣とは運命の絆とやらで結ばれている。一目会えば、必ず分かるらしい。顔も名前も知らないのにおかしな話だと思うが、これに頼るしかないのだ。僅かな希望にすがり、ルビーは走り続ける。
と、そこへ突然高笑いが空間を震わせた。穴の底から響くような不気味な声音にルビーは身体を震わせ、思わず立ち止まってしまう。
すると、目の前に奇妙なモノが現れた。背丈は人間程だが、その両手に握られるは背丈より高い鎌。闇の中で鈍く光っていた。口がない真っ白な仮面、包帯の巻かれた手。ボロボロの鎧を纏い、黒い翼は垂れ下がりマントのようだった。このモノはガーディアン・デスサイスと言う。
デスサイスは不気味に笑いながら、ルビーに手を伸ばしてくる。一方、ルビーは逃げられずにいた。デスサイスと目を合わせた瞬間、金縛りにあい身体が動かなくなった。動かそうとしても、動かない。包帯が巻かれた手が近づく中、ルビーはごめんと言った。
- Re: 遊戯王 七つの輝きと光の守り人 ( No.2 )
- 日時: 2021/06/10 21:19
- 名前: 咲夜 ◆14iGaWqIZs (ID: 66mBmKu6)
いつからそんな話が存在するのか、誰もが忘れる程昔から。その王国には言い伝えがあった。
王国が壊滅した時、世界の崩壊が始まる。しかし憂うことはない。別の世界から一人の人間が訪れる。その人間はこの国を救った勇者の生まれ変わり。その者が必ずや王国を救う、と。しかしながら、言い伝えは形を変える。ある時を境に、この言い伝えは書き換えられた。王国が壊滅した時、王や女王が必ずや国を救うであろう、と。書き換えられた言い伝えは数百年を得て、こちらが本当のものだと思われるようにかりかつての言い伝えは歴史の闇に葬り去られた。
世の中には、言葉を失う出来事と言う物が確かに存在する。そういう時、人間は言葉を失うものだと少女——七宝 水葵(しっぽう みなき)は思った。
兄にその気質があるのは確かだ。いい歳して、自室に日曜の朝に放送されている魔法少女アニメのポスターやフィギュアがあった。カードスリーブは、某弾幕ゲーの紅白巫女だった。今やってるゲームは妹を攻略するゲームだと知っていた。そう、そんな人間だと十年以上の付き合いで理解している。しかし。部屋のドアが開く音で振り返ると、コスプレした人間がいた。それを見た時水葵は言葉を失った。
「…………」
「くく、デュエリスト発見。デュエル、デュエル」
まさかコスプレに走るとは思わなかったのだ。寄りにもよって、女キャラをチョイスする兄のセンスに水葵は唖然とした。しかも恐ろしい再現度。何か機械を使っているのか、人のものとは思えないおぞましい声を出している。他人と思いたいが今、この家には自分と兄しかいないはず。コスプレする人間は兄以外にいない。
「お兄ちゃん〈ガーディアン・デスサイス〉のコスプレなんかして。どうしたの?」
ようやく現実を受け入れた水葵は、まず理由を尋ねる。人間誰しも衝動的に何かをしたくなることはある。多分、大学の友達のせいだろうと水葵は考える。
尚、兄がしているコスプレは〈ガーディアン・デスサイス〉と言うキャラクターのものだ。世界的に有名な〈遊戯王デュエルモンスターズ〉と言うカードゲームに出てくるモンスター。口がなく、切れ長の赤い瞳だけが見える仮面。身体を白い包帯で包み、黒い鎧、背には黒い羽をマントのように纏う。地の底から這い出る亡者を思わせる不気味なモンスターである。正直、水葵が好きなモンスターでない。どうせコスプレするなら、例えば可愛いモンスターなら〈ブラック・マジシャン・ガール〉、〈霊使い〉のような人気のあるモンスターにすればいいのに、と思う。
「私、コスプレ違う。デュエルモンスターズの精霊。デュエル、デュエル」
デスサイス(コスプレ)は、水葵の問に意味不明な答えを返し、『デュエル』なる単語を繰り返す。どうやら、『デュエル』をしたいようだ。
それだけで水葵には何のことか分かる。兄が言う『デュエル』とは、『遊戯王デュエルモンスターズ』の対戦のことを言う。水葵も兄とは『遊戯王』でよく対戦しているので、何の疑問もなく了承してしまう。
「あー新しいデッキを作ったからデュエルしたいのね。分かった、いいよ」
別にコスプレしてまでやる必要はないと思うが、デュエルは水葵も大好きなもの。挑戦は受けるのが義務だ。
机の上に広がっていた参考書とノートを一度閉じると、その脇にあった水色のカードケースを二つを手にした。そして、床に正座する。
いつもなら兄は少し離れた場所に座るのだが。
「お兄ちゃん、なんで突っ立ってるの?」
デスサイス(コスプレ)は、正座した水葵を見下ろすだけ。仮面のせいで表情は窺えないが、困惑しているらしい。不思議そうに首を傾げている。
「デュエルディスクのデュエル、する」
その言葉に水葵は吹き出す。デュエルディスクは、『遊戯王』のアニメや漫画の中に存在する道具である。腕に付けられる程の軽い機械で、カードのイラストを実体化——とは言っても映像でだが、させることができる夢のような技術を内蔵している。
水葵の世界にもデュエルディスクはあるが、アニメのそれを再現したおもちゃに過ぎない。水葵も幼い頃に買ってもらったがカードのイラストは実体化しない、そもそもデッキ——遊戯王カードの束、が入らないので使い道はない。一応部屋の隅に飾ってあるが、あくまで観賞用だ。
「あのカードが付いてただけで実用性のないおもちゃで?」
「デュエル、どうやる?」
真面目に聞き返され、水葵は戸惑いながらも答える。
「どう、ってテーブルデュエルだよ。いつも通り、床で向き合ってやろうよ」
「…………デュエルディスク」
「それは諦めて」
未だにデュエルディスクにこだわる兄を水葵は切り捨てる。兄のことなど無視しカードケースからデッキを取り出し、着々とデュエルの準備を進める。
デスサイス(コスプレ)は立ったまま水葵を無言で見つめていたが、しばらくすると諦めたように床に座る。そして羽のようなマントの中からデッキを二つ取り出し、地面に置いた。それを確認すると、水葵はデスサイス(コスプレ)を見やる。
「ルールはどうする?」
「LP4000、する」
遊戯王にはLP(ライフポイント)と呼ばれるものがある。基本的にはこれを0にした者が勝者となるのだ。
「いつもの半分でやるの? 面白そうね」
通常なら8000から始まるが、今回は兄の希望により半分とする。身内とのデュエルでは色々できるのが楽しい。
その後お互いにデッキを交換してシャッフルする。シャッフルしたデッキを返し、いよいよデュエルは開始される。
「よろしくね、デュエル」
「デュエルっ……!」
二人の掛け声が響いた。
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