二次創作小説(新・総合)
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- 赤い果実は甘えたがり。
- 日時: 2021/09/18 01:33
- 名前: 狐鑠 (ID: Vc0EJv9e)
✳︎初投稿 ✳︎語彙力皆無 ✳︎学パロ
✳︎mo4のカップリング(太ざく)
それでもよろしかったら↓
後輩にアナウンスの指導をし、新たな原稿を配り終え、太陽は放送部の部室を出た。夕日の光が彼の目を刺激し、元々苛立っていた彼の心情をさらにイライラさせた。
それもそのはず、本当なら今日は、もっと早い時間に部室を出れるはずだった。
今年の新入部員は熱心で、覚えも早い。機材の扱い方を、たったの一ヶ月で完璧にマスターしたのだ。
2年生も先輩としての意識が芽生えたのか、太陽が命じなくても、一年生の面倒を見るようになった。
なので、太陽は部長としての責務をこなしたら、あとは後輩に任せ、すぐに部室を出ることが出来た。
しかし、今日はいつもよりも部室を出る時間が遅い。短気な太陽は、イライラを隠すことなく、大きく足音を鳴らしながら、廊下を進んだ。
『…クソが…あいつらのせいだ…毎回毎回、しつこいんだよマジで…』
苛立った声で、小さく呟く。
放送部部長である太陽の放送は、一部の女子にすごく人気で、学校には太陽のファンクラブが存在する。
大抵のファンは、遠巻きに太陽を眺め、はしゃぐだけなのだが、中には過激なファンが存在する。
太陽に強いアピールをし、どれだけ拒絶しても引き下がることなく、どんどん距離を詰めていくのだ。太陽は、それが大嫌いだった。
今日は、放課後太陽はその過激ファンに捕まってしまい、時間がつぶれ、部活に行くのが遅れてしまったのだ。
『はぁぁうっざ…こちとらあいつらに付き合ってる時間はねぇんだよ…』
足早に廊下を進む。彼が向かっているのは、ダンス部の部室だ。
太陽の彼女兼ダンス部部長であるざくろは、誰もが認める可愛さを持っている。
太陽は、いつもダンス部に寄ってはざくろを迎えに行き、一緒に帰っている。
太陽のファンたちも、太陽がざくろと付き合ってるということは知っている。
しかし、過激ファンはざくろを快く思っていない。太陽とざくろが2人でいるときは、遠巻きに見つめ、ざくろを睨んだりするのである。
だからこそ、ざくろに危害が加わらないようにする為にも、太陽はいつもざくろを迎えにいくのだ。
ふと、ざくろのクラスの教室前を通りかかった。鍵が開いている。
『不用心だな、まったく…』
そう呟きながら、教室を覗く。泥棒が入っていたら、とっちめてやる、と思いながら。
しかし、教室にいたのは泥棒ではなかった。太陽が今から会おうとしていた少女、ざくろである。
『ざくろ?なんでここにいるんだよ。部活は?』
話しかけると、ざくろは肩を震わせ、太陽を見つめた。
『…なんで見つかっちゃうかな…太陽に会いたくなくてここにいたのに』
ざくろの一言にショックを受ける太陽。こんな言葉を彼女から聞くのは初めてだ。いつも『たいよーたいよー』と言って寄ってくるのはざくろなのに。
『はぁ?なんで俺に会いたくないんだよ。訳わかんねぇ』
ざくろは、迷うように目を伏せたあと、太陽を見て頬を膨らませた。
『…だって…だって太陽、放課後、女の子たちとおしゃべりしてたじゃん…!腕も組まれてたし…』
そう言って、ざくろは項垂れる。
『太陽の彼女は、ざくろなのに…』
ひどい、と呟く彼女の大きな目には、涙がうっすら浮かんでいる。
太陽は、しばらくざくろを見つめて黙っていたが、やがてゆっくりとざくろに歩み寄ると、そっと彼女を抱きしめた。
白くて丸い彼女の頬を、愛おしそうにゆっくり撫でる。
『あいつらとは…俺の意思で話してた訳じゃない。本当なら、暴言吐き捨ててでもすぐにその場を離れて、お前のところに行きたかったさ』
『………』
『でもな、俺が暴言吐いたり暴力振るうのやめてんのは、お前のためなんだよ』
すると、ざくろは太陽を上目遣いでじっと見つめる。
太陽が、もし暴力を振るったら。その腹いせの矛先が、ざくろに向けられるかもしれない。それだけは嫌だったのだ。
そう伝えると、ざくろは泣きそうな顔になって、太陽の胸に顔を埋めた。
『……たいよー、ざくろのこと嫌いになった?ざくろ、たいよーの気持ち全然知らなかったのに…』
『嫌いだったら、こんなことするかよ』
そう言いながら、ざくろを抱く腕に力を込める。
『……ん、ごめんなさい』
ざくろは、ようやく太陽の背中に腕を回した。
『…ざくろ、今日は部活サボる』
『…そうか、帰るか?』
『うぅん、このまんま。ぎゅーってして。久しぶりに甘えたい』
『…お前いつも甘えてるだろーが』
そう言葉を漏らしながらも、太陽は自身の頭を、ざくろの頭に引っ付け、はぁ、と幸せそうなため息を付いた。