二次創作小説(新・総合)
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- 【twst二次創作】リドル・ローズハートと監督生の忠告談
- 日時: 2022/01/22 21:49
- 名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)
<初めに>
こちらの二次創作小説を目に留めて下さって本当にありがとうございます。
処女作シリーズを人知れず書いている途中の筆休めですが、以下の注意事項が平気だよ! という人であればどうぞ楽しんでいって貰いたいです。どうか生温い瞳で見届けて頂ければ幸いです。
<前提>
主な登場人物:リドル・ローズハート率いるハーツラビュル軍
オリジナル監督生 ユウ(性別不明・本名 水風藺雨)
オリジナルキャラクター 華お婆ちゃん
ディズニー・ツイステッドワンダーランドの二次創作となっております。
ちょっと無理って人は今直ぐ此処でブラウザバックを推奨し、後々何かを不快思われてもその全てが自己責任となりますのでご留意下さい。
1、2が前座、3が本編で4がおまけです。4のおまけはレオナ・キングスカラー身代わり説を仄めかしているので嫌な人は其処だけ読まないのもアリです。
<注意>
ジャンル:二次創作
腐、姫、恋愛要素、夢要素などは含みませんが人の感性は人それぞれですので、ここ注意事項と違うじゃん!という人も居らっしゃるかもしれません。それら全てを含み自己責任です。書きたい所だけなのでどっから始まってんだよ…って思う人やここで終わる!? って思う人も居らっしゃるかも。筆休みなのでねしょうがないね。
また、圧倒的語彙力の無さと中二病感、深夜テンションで書き上げた筆休めである事を頭の片隅に置いておいて下さい。
そして7000文字じゃ入りません。writening.net/page?jfeZbXに飛ぶのをお勧めします。
続編としても良いかも知れませんが、絶対↑で見た方が早いです。登録とか要らないですよ。
また、雑談スレの方でツイステの雑談スレを開設しています。興味のある人は飛んでみて下さいね。
では、以上がOKな方のみスクロールをお願い申し上げます。
1.暴君が子供に戻るまで
事の発端は、リドル・ローズハートがオーバーブロットした後の事だ。なった者となられた者、どちらの死にも繋がる危険な修羅場を乗り越えた時、待ち受けていたのは彼の本音と号泣の声。ハートの女王の法律に則らない本当の思いを告げられた時にエースが発したのは、冷酷とも優しいとも取れる赦しの言葉である。約束を取り付けた後で声を発するのは、再び込み上げてきたしゃくり上げを必死に止めようとするリドルだ。聞き取り辛くも意味を成すそれは、ユウ・ミズカゼ——こちらで言う水風 藺雨に向けられた、たった一つの疑問の言葉だった。
「……ねえ、どうして」
その一言に、ユウは沈黙と共に笑みを残す。目を伏せリドルの首元に手をやると、母子のような雰囲気を纏わせて、衣擦れの音一つさせず、静かにその身を抱き寄せた。
「っ?」
驚きに身を固めるリドルだったが、次第に人の体温に安心して微睡んでいく。彼は最後の意識を、オーバーブロットした後の、元の寮服姿に戻り気絶する寸前の僅かな合間に起こった出来事に向けるのだった。
「リドル先輩」
オンボロ寮の寮長、及びグリムの監督生役を担う、彼か彼女かも知れぬユウの声。その声は高くもなく低くもなく、かと言って聞き取り辛い訳でもない。先まで物陰から援助をしていたユウは、背後の化物が崩れ瘴気が薄まると同時に、誰よりも早くリドルに駆け寄ったのだった。厭に響き渡るその声は、何故だか周りをしんとさせる空気を纏っている。
「疲れたでしょう」
オーバーブロット特有の、当人の魔力に対応したブロットの装飾が、段々と宙へ消えていく。ベルドレスは寮服へ、段々と。大輪に咲くモノクロの薔薇が、風の吹く度揺れるトランプが。腕に伝い、黒手袋のようになったブロットが、右目の覆われた網目と炎が。頭に乗る、闇色の王冠が、徐々に宙に溶け、消えてゆくのだ。
「休んで良いんです」
放心気味に虚空を見つめたまま、ただ自らが間違っていたのかと、朧気な意識の中自問自答し涙を流すリドルに、ユウは優しく語り掛ける。頬を撫で、乱れた髪を梳いて。グリムを抱きかかえる時のような手付きではなく、腫物を扱うように、繊細に。
「目を閉じれば、貴方の何かが見えるでしょう」
休んで良いんです、と繰り返すユウは、その諦観した落ち着いた口調の中、微かに、僅かに、絶念と絶望が混じっていた。だがそれが声音や口調に現れる事は無く、ただ雰囲気として感じられるだけだった。
彼が完全に気絶し、ユウが声を発さなくなった時、彼らは何かに引っ張られるように動かなかった足が動くのに気が付く。先ずはトレイが、次にそれぞれの寮生とグリムが二人の周りを取り囲む。その時のユウは彼の口元に手をやっており、どうやら呼吸を確かめているようだ。次は額に手を乗せ、少し経ったら血管の近い首筋に手をやるユウの手付きは、場慣れした医師のようにも見えた。
「……意識はありませんし血圧は測れませんが、一応バイタルは安定しているようですね。呼吸は浅く、心拍は少し速いですが、問題は無さそうですよ。体温も通常の範囲内です」
周りに向かって呟く言葉は、何時もヘラヘラして如何にも弱そうで、何事にも熱心だが時には恐ろしく雰囲気の変わる、いつものユウだとは到底思えなかった。エースとデュース、グリムは信じられないというようにユウを見つめるが、当の本人はそれを物ともせず、ただリドルを見つめている。
「止められなかった無力な私を、どうか許して下さい」
—―こうなると分かっていても尚 無力な私に、どうか天罰を。
2.ただの子供と監督生の忠告
「先ず! 頭痛と目眩はありますか?」
どよ、と保健室に微妙な空気が流れる。人差し指を立て、ベッドに上半身を起こして座るリドルに向かって問う声は他ならぬユウの声で、それはエーデュースやグリムの言う“いつも通り”のユウだった。だがさっきまでとのギャップが凄まじく、どうにもそれに馴染めないのである。
「え、あ、ああ……いや、頭痛は少しあるけれど、目眩はそこまでじゃ」
「舌と口の開閉、発声・発語も問題無し。じゃあアレ何て読みますか?」
「消毒え」
「ではあの戸棚の上に置いてあるのは?」
「……石鹸が入った籠と、トイレットペーパー………」
「はい! 文字も読めて外からの刺激に適切な反応を示す、“Con s(意識)”には何ら問題が無さそうです」
ニコニコといつも通りの声音、表情を見せるユウに、周りは驚きと困惑を隠せない。だが“いつも通り”の中に医術系の専門用語が挟まれてくるものだから、要領の悪いデュースやグリムなどは本当にユウかと疑い始める始末だ。リドルはあの母親が魔法医術師だから、これくらいの初歩的な専門用語は理解出来る。
「“BP(血圧)”や“HR(脈拍)”は後で測らせてくれる筈です。“RR(呼吸数)”も会話が可能なら大丈夫そうですかね。手足は動かせますね?」
「……」
首を縦に振り肯定の意を示すリドルの額には汗が浮き、周りを囲むハーツラビュル寮生も同様だった。
「よし、では測定終了です。後は一時間にコップ一杯の水を飲んで排泄を促す事と、ブロットを確認する事くらいですかねぇ、注意する事は。あ、あと激し過ぎる糖分の摂取は一週間は控えて下さいね。パーティを開くなら最低二週間後です」
何平然と終わらせようとしてるんだと全員が思ったが、意外にもユウを引き留めたのはリドルであった。
「ま、待って!」
「——……はい?」
一秒。一秒の沈黙の後にニパッと笑って振り返るいつものユウは、何かを隠す様に、何かを遮る様に笑っているようにも見えた。
「その、え…えと……」
どもって目線を右往左往させるリドルに、ユウは一つ息を吐き、足音を立ててベッドに近付く。その顔は明るく周りを照らす笑顔とは打って変わって、目は何を映す事もない漆の黒に、眉は平坦に、口は真一文字に引き結ばれ、その変容の仕様に、雰囲気の代わり様に、この場に居る全員は息を呑んだ。
「言わんとしている事は分かります。貴方は私に疑問を持っているのですね」
疑問符を付けずに問われた言葉に、リドルは声を詰まらせ何も答えられずに口をパクパクさせる。
「分かって欲しいのは、“この”私が本当の、素の自分ではないという事はないと言う事。“あの”私も今の私も、紛れもない私です」
そう前置きをして、ユウはベッドに腰かけた。そのまま数秒リドルを見つめ、優雅な所作で彼の顔に貼られたガーゼをするりと撫でる。
「今までの貴方は、狂暴で、直ぐ癇癪を起こす質の悪い暴君でした」
ユウがそう言うと、微かにリドルの眉が寄る。
「でもその根底に眠っていたのは、友達と遊びたいとか、好きな物を食べたいとか、好きな事をしたいとか、そういう人間が当たり前に持つ欲求だった」
目を伏せながらそっと彼の手を取ると、ユウはもう片方の手で彼の手を包み込み、彼の瞳と自らの目を合わせた。
「その欲求を、貴方は、決して持ってはならないものだと信じていたのです。だから無意識に、好きな物を食べて好きな事をする彼らへ、言いようのない嫌悪感を示していた」
“いた”という確定的な文章に、周りの数名は違和感を覚える。そんな中、儚げに微笑むユウの目に、リドルは何かを見た。瞬間、彼の左目から一滴、大粒の涙が頬を伝う。自分でも何故泣いているのか分からない涙だった。冷たくも温かく、感動的であり悲劇的で、何の感情も籠っていないかと思いきやあらゆる感情が詰まっている。しっちゃかめっちゃかで何処か不思議、そんな涙だった。その後二粒目の涙が流れる事は無く、再び言葉を紡ぎ始めるユウに、彼は薄く手応えのない違和感を覚える。
「嫌悪感、と言うより、羨望と妬みが混ざったナニカだったのでしょうけど。その嫌悪感の成れの果てが、貴方の“癇癪”。そして、自由に生きられる彼らに向かった僅かな嫉妬や恨み辛みの成れの果てが、貴方の“暴君”」
全てを見通しているかのような口振りを見せるユウは、皆を包む慈父のようにも、皆を安心させる慈母のようにも見えた。ガーゼを撫でていた手はこめかみに移り、すっと髪を梳くようにリドルを撫ぜる。
「……気付いていましたか?」
ユウの頬にふっと赤が差す。リドルはそんなユウを、ただ茫然と見つめていた。困惑も混乱も、猜疑や疑問も全てを飲み込んで、まるで聖母のような慈悲差す瞳と目を合わせる内、やがて彼は零れんばかりに目を見開く。眉は垂れ、大きな瞳はグレーの中にユウを映した。何処かずれている、何処かが可笑しいと違和感を飲み込めないでいながら。だって、こんな事を言っておいて微笑んでいる。だって、あんな事を言っておいて頬には赤が差している。
「全てが貴方の所為だとは言いません。でも、全てが貴方の所為でないとも言いません。言えませんし、言いません」
ユウは包んでいた彼の手ごと両手を上げ、そっとリドルの頬に当てる。
「これだけは分かって。ただ、自分を責めないで。振り返らないで。後悔したって、嘆いたって良いから——」
包んでいた手をすっと離す。外気が手を撫で、リドルの手は行き場も無く空虚に浮かんだ。ユウはベッドから立ち上がり、一、二歩、後ろ歩きでリドルから離れる。
「——無駄に自分を呵責して、過去を追憶するのはお辞めなさい」
———ジュッ、と、リドルの瞼に、今のユウの表情が焼き付いた。
「前ばかり見てもいけません。後ろばかり振り返ってもいけません。いつも通り過ごしても、何かを変革しようとしても、上手くいかない事ばかり起きるでしょう。ですがその中に、淡く光る希望を見付ける事。そんな直ぐには見つかりません。長い時間をかけて、今まで失っていた物を取り戻すのです」
貴方には助けてくれる仲間が、既に居るのだから。
そう残して、ユウはこの場から去った。
(お母様)
そんなユウに、リドルは確かに母を見たのだ。自らがまだ大分幼かった頃の、母を。優しく微笑む、己の全て。そんな母とユウを何故重ねたのかは分からない。それでも今、リドルは母と自分を明確に各別したのだ。
「似た者同士、だったのかな」
自分と母を“似た者同士”と形容したリドルは、両手で目を隠す様に前髪を梳いた。
―――【twst二次創作】続 リドル・ローズハートと監督生の忠告談
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