二次創作小説(新・総合)
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- Deemo-それはまた違う道の物語-(ネタばれ注意)
- 日時: 2022/02/22 00:18
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
音楽謎解きゲームDeemoの二次創作です。
作品を知らない方には薄い話に思われるかもしれません。
作品を知っている方にはもし、彼等に違う未来があったならと優しく見守って戴けると幸いです。
ネタばれするならば、このゲームを以前プレイした私がゲーム中の曲Red Storm Sentimentを久し振りに聴いて「彼等があの運命にならなければ、このゲームは存在しなかっただろう。だが、それでもゲームの外の世界では優しい幸福を手にしても赦されるのでは?」と思って綴る事にしました。
ちなみ私、普段は年齢制限のある大人カキコに住みつき、ゆっくり大人向けの物語を綴っています。
もし15歳以上で、大人なお話にも興味がおありの方々が居ましたら、ぜひ会いに来て下さいね。
たくさんお話しましょう!
では、Deemo事お兄さんとアリスの別選択のお話始めていきます。
注意:解釈は私個人の物なので、その辺ご了承ください。
- Re: Deemo-それはまた違う道の物語-(ネタばれ注意) ( No.1 )
- 日時: 2022/02/22 00:27
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
プロローグ
あの日の事はきっと夢だったんだ。
あの日私が何も気づかず道路に出て、猛スピードで走り迫ってきたトラックに轢かれそうになった私を、兄さんが庇って命を落としたなんてきっと夢だ。
大好きな兄さん。ピアノがとても上手な兄さん。
ねえ、兄さん。これは、夢だよね。
だってほら、ぼやけた視界の向こう。
隣で真っ赤な水溜まりに寝沈んでいる兄さんは、温度を感じないもの。
- Re: Deemo-それはまた違う道の物語-(ネタばれ注意) ( No.2 )
- 日時: 2022/02/22 01:09
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
一話 夢
「……す…っ、あ…り…」
真っ暗な海のような深い眠りの底。誰かの声が聴こえる。
貴方は誰?良く聴こえないわ。
声の元を指すように空から光りの水が注ぎ降りてくる。
貴方が誰かはわからない。でも、優しくて温かそうなその光りに触れたくて、私は重い体を引き摺るように光へと近づいた。
触れたい。触れて感じたい。そう、この温もりは私の大切な…。
「おはようアリス。今日もお寝坊さんだね」
眠りか目覚めると、アリスはゆっくりと瞳を開きベッドの端に座る青年の姿に気づいた。
「兄さん、おはよう。兄さんは早起きね」
白と桜色に控えめなレースとフリルの付いたダブルベッド。傍らには一緒に寝ていた白黒の猫ちゃんのぬいぐるみ。
八畳程のこのフローリングの部屋は、私、アリスの部屋だ。
そして目を覚ましたアリスの髪を優しく撫でるのは、共働きで忙しい両親の代わりにいつも私を思ってくれる大好きな兄さん。
「母さんはもう仕事に行ったよ。朝御飯できてるから、一緒に食べよう」
僅かにベッドを軋ませると兄さんがベッドを降りて部屋を立ち去っていく。
ああ、本当に兄さんは優しい。
仕事で海外に単身赴任の父さん。仕事でほとんど家にいない母さん。
二人から貰えない温もりを、兄さんはいつもたくさんくれる。
真っ白なワンピースタイプの寝間着を脱ぎ、クローゼットから桜色のエプロンドレスを取り出して着替える。
ドレッサーの前で黒く長い髪を丁寧に整えると真っ白な靴下を履き、黒いスリッパを履いて脱いだ寝間着を片手に部屋を後にした。
- Re: Deemo-それはまた違う道の物語-(ネタばれ注意) ( No.3 )
- 日時: 2022/02/22 02:26
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
四月の水道水はまだまだ冷たい。
洗面所で歯を磨き、顔を洗いながら眠りの微睡みをも拭うように冷水で顔を清めると、リビングで待つ兄のもとへ小走りで向かう。
「兄さん、お待たせ」
リビングのテーブルには向かい合わせに朝食が並べられていた。
焼き立てのトーストに苺のジャムと常温で軟らかくなったバター。半熟の目玉焼きに一口サイズに切られた焼きベーコンが数枚。
いつものブロッコリーとポテトサラダ。そこまでは兄さんも私も同じ物を食べる。
違うのは、兄さんの席には温かい紅茶が、私の席にはホットミルクがあるくらいだ。
「来たね。温かいうちに朝御飯食べようか」
紅茶の硝子ポットを持つ兄さんは、リビングの大きな窓から溢れる陽光に照らされ、金色の髪がきらきらと輝いて綺麗だった。
「私も兄さんと同じ紅茶が飲みたいわ」
どちらかともなく席に座り、トーストを一口咀嚼して飲み終えると、アリスが不満そうに自身の側にあるホットミルクを恨めしそうに見つめた。
すると兄は苦笑混じりに紅茶を一口飲んで、小さく首を横に振るのだ。
「アリスには紅茶はまだ早いよ。それにミルクはアリスくらいの年の頃に必要な栄養がたくさんあるんだ。もう少し大きくなるまでお預けだよ」
そうやって緩やかに朝食を進める兄を、アリスは小さく唸り諦めたようにホットミルクを口にした。
兄さんはいつも私を子供扱いするのだ。
年上の兄さんから見れば、いまだに兄がプレゼントしてくれた猫のぬいぐるみがないと眠れない、そんなアリスは子供なのだろう。
だが、紅茶に関しては砂糖とミルクをたっぷり入れれば飲めるのに。
兄さんは『紅茶はストレートで素材の味を楽しむもの』だというけれど、私はただ兄さんと紅茶を楽しむ時間を共有したい。それだけの事なのだ。
「アリス、付いてるよ」
不満を僅かに滲ませた表情で食事をしていると、兄さんがテーブルから身を僅かに乗り出しアリスの口許を白いハンカチで拭う。
拭き終え元の姿勢に戻る兄さんのハンカチには、僅かに苺ジャムが滲みついていた。
おそらく、兄さんから見た私はこういうところがまだ幼いと思えるのだろう。
「ありがとう」
一言礼を呟くと、兄さんは優しく微笑んでくれた。
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