二次創作小説(新・総合)
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- 言の葉
- 日時: 2022/04/05 23:28
- 名前: 一般のEveさんファン (ID: D.48ZWS.)
Eveさんの曲、「言の葉」を一般ピーポーが小説化しました。
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第1話 曖昧な距離感
『この想いが届くなら、君に伝えたい』
これは、俺の高校最後の年の出来事だ。
○
俺、「夕霧 廻人」は恋をしている。
相手は、幼馴染の「一之瀬 言葉」だ。
一之瀬はコミュ力が高く、文武両道、おまけに美人ときた。
それに比べて俺は、勉強も運動も人並み程度、コミュ力は高い訳でもなく、顔だって良くもなければ悪くもない普通な顔だ。
俺では一之瀬と釣り合う訳がない。
そう思っているのだけれど、簡単には諦められないのが現実。
頬杖をついて今日も遠くから一之瀬を見つめていると、不意に誰かから話しかけられた。
「よす、廻人。また一之瀬さんを見てたのか?」
「よすじゃねぇよ、お前また遅刻かよ...」
こいつは俺の数少ない友達の1人、「笑原
零央」だ。
こいつは学年に1人はいる遅刻の常習犯だ。
しかし、テストは毎回学年1位だからなのか、ここまで留年せずにきている。
「お前も懲りないな、幼馴染じゃなきゃこんな事許されねぇぞ。」
「うるさいな、俺だってそれくらい分かってるさ」
ウザいな...
人の気も知らないくせに...
俺だってそこを気にしてるんだぞ。
でも、俺と仲良くしてくれているだけありがたい。
なぜなら、俺は高校に入ってなかなか友達ができなかったからだ。
1人で座っている俺に話しかけてくれたのが零央だったのだ。
あの時は嬉しかったが、今はウザいまである。
「しっかし、良いなお前は」
「何がだよ」
「何ってお前、一之瀬さんと毎日帰ってる事だよ。羨ましいぜ」
そうだ。
俺は毎日一之瀬と帰っている。
家が隣という事もあって帰り道が同じだから、小学校の時からそうしている。
中2の時、俺が恥ずかしいからと、一之瀬に帰りは別々に帰ろうと言ったのだが、嫌だとハッキリ断られてしまった為、今も一緒に帰っている。
「はーい、時間だよー。席に着いてー」
先生の声が響く。
もう授業の時間なのだと思った。
前までは、休み時間は1人だったから、前よりも時間が非常に短く感じる。
ウザいけど、零央には感謝しなくちゃな。
○
4限目が終わった。
今日は親が忙しく、弁当が作れないとの事だったので、学食で済ませようと思い、食堂へ向かっていた。
すると、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、そこには一之瀬がいた。
俺は緊張からなのか分からないが、顔を反らしてしまった。
「廻人、どうしたの?顔赤いけど...」
「いや、大丈夫だ。それより、どうした?」
少し吃りつつも答える。
昔はそんな事はなかったんだけどな...
「あっ、そうそう。今日おばさんから聞いたよ。今日お弁当ないんだってね。だから、私のお弁当を廻人にお裾分けしようかなって思って。」
その言葉で俺は固まってしまった。
そんな訳ない、夢だと俺は思う事にした。
第一、幼馴染といえど、俺達ももう高校3年だ。
中学生ならギリギリ分かるが、さすがにもう、そのような年じゃない。
気持ちは嬉しいが、断ろう。
「気持ちは嬉しいけど、それじゃあ一之瀬の分が少なくなるだろ?」
「大丈夫だよ、私は。それに廻人と一緒に食べるの楽しいし。」
そんな事を言われてしまったら、断ろうにも断りづらくなってしまう。
でも、俺と一之瀬が付き合っているなんて噂されたら、一之瀬も迷惑だろう。
だけど、一之瀬の気持ちも無下にはできない。
暫く考え込んでいたら、一之瀬が口を開いた。
「なんで黙ってんの?そんなに私と食べたくないんだ」
「違う。ほら、俺が一之瀬の弁当を少し貰うとさ、一之瀬の分が少なくなるだろ?」
「だから、私は大丈夫だって言ってるじゃん」
このままでは一之瀬を怒らせてしまうかもしれない。
しかし、好きな人の弁当を貰うのは恥ずかしい。
少し心苦しいが、嘘をついて何とかするしかない。
「今、誤魔化そうとしてるでしょ」
「な、何で分かった...?」
「あれ~、適当に言ったんだけどな。当たっちゃった?」
さすがにもう誤魔化すのは無理そうだ。
ここは一之瀬が納得できる代案を出すしかない。
しかし、何が良いのか全く見当がつかない。
そういえば、この間一之瀬が何処かへ行きたいと言っていたような気がする。
...あぁ、彼処か。
それを俺は代案として出す事にした。
「一之瀬、今日の放課後って空いてるか?」
「空いてるけど、何?」
「この前、駅前のクレープ屋行きたいって言ってただろ?今日そこで奢るから、な?」
「代わりに、お昼ご飯は別々で食べようって事?」
「そ、そうだ」
黙ってしまった。
怒らせてしまったのかもしれない。
そこまで、俺と食べかったのか?
いや、それは無いだろう。
一ノ瀬は誰にでも優しいから、俺にもそのような優しさを向けられているだけだろう。
一ノ瀬は顔を上げてまじまじと俺の顔を見つめる。
「まぁ、良いよ」
「そうか――」
「プレミアムのやつ買って貰うからね」
俺の心臓が喉から今にも出そうだった。
しかし、すぐ我に返った。
俺達はあくまでも「幼馴染」というだけの関係、この曖昧な距離感は変わらないままなのではないか。
俺は少し考える事にした。
いつかは、この関係にも終止符を打つ日が来るのだろうか。
それとも、この関係がずっと続くのだろうか。
「平行線のまま、か」
俺はため息をついた。
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どうも、Eveさんのファンです。
今回の小説の裏話を載せときます。
夕霧 廻人の由来
Eveには夕方という意味があるので、夕方っぽい名前を探した結果、苗字は「夕霧」に、廻人はアルバムの「廻人」の読み方を変えました。
一之瀬 言葉の由来
一之瀬は完全に思いつきです。
言葉は今回の題材でもある「言の葉」から取りました。
笑原 零央の由来
苗字はアルバムの「smile」から、「笑」を使う苗字を探した結果、「笑原」に、零央は「Leo」という曲を自分なりに漢字にしたらこうなりました。