二次創作小説(新・総合)

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ご都合血鬼術 ~水・恋の入れ替わり~ 2
日時: 2022/07/08 23:04
名前: ハル (ID: EDXcI6jL)

「……おい、これは一体どういうことだ」 
「あっ、伊黒さあ~ん!!」 
産屋敷邸に到着した伊黒に、満面の笑みで手を振ってくる者がいる。このこと自体は毎回のことだ。いつもその笑顔に癒される。だが、今回は少し事情が違う。その顔と声に納得がいかない。その声の主は冨岡、正確には、冨岡の外見をした甘露寺である。 
「……。」 
思考が停止している伊黒にこっちへ来いと言わんばかりに手招きをしてくる。伊黒はしばしば柱の輪の中に入った。 
「……えっと、か、甘露寺でいいん…だよな?」 
胡蝶から説明を受けた伊黒が内心パニックになりながら確認する。 
「そうなのぉ~。血鬼術で入れ替わっちゃったのお!!」 
甘露寺が泣きそうになりながら言う。もちろんその表情は冨岡のものだ。後ろで胡蝶が死にもの狂いで笑いをこらえている。 
「よもや!!!二人が入れ替わるとはな!!何か困ったことがあったらいつでも言ってくれっ!!」 
「嗚呼、なんということだ。可哀想に…」 
「ガハハハッ!!お前ら、派手にヤったみてーだな!まあなんかあったらこの俺様を頼るんだな!」 
「…ところで、甘露寺の体の方はどこにあるんだ」 
そういいながらあたりを見回すと、庭の隅で銅像のようにつっ立っている甘露寺(in冨岡)を見つけた。 
「……!?かっ、か、甘露寺!?」
いつも可愛らしい笑顔を見せてくれるその顔に表情はない。こういうのを「顔が死んでいる」というのだろう。普段との違いがあまりにも大きいせいで戸惑う。もちろん彼女が立っている場所は、普段冨岡が立っている場所だ。もうあまりの出来事にめまいがしてくる。
「オイ、こりゃどうなってやがる…。誰か説明しろォ…」
最後に風柱ー不死川が到着した。困惑している不死川に胡蝶が説明する。
「オイオイ、そりゃあ、えらい事になっちまったなァ…」
そう言いながら離れたところにいる甘露寺の様子をチラッと確認する。そして、本当にえらい事になったんだと改めて思う。
「と、とりあえず、そんなとこに立ってないでこっちへ…」
とうとう見ていられなくなった伊黒が呼びかけた。普段冨岡に対して絶対に言わない言葉である。しかし、中身が冨岡と分かっていても、外見が甘露寺なのでどうしても放っておけない。
「(俺は嫌われてない)…ムフフ」
ムフフ顔の甘露寺がてちてちと歩いていく。
(……甘露寺のムフフも、悪くない)
「っテメー冨岡ァア!!!ムフフすんじゃねぇええええ~~~~!!!」
「…!おい不死川、甘露寺に怒鳴るな」
「アア?中身は冨岡だァ!」
「甘露寺の体に怒鳴るな」
『お館様の御成りです』
その声とともに、9人の柱達は一斉に整列し、ひざまずいた。
「…おはよう、私の可愛い子供たち。今回も無事に柱合会議を迎えられて嬉しく思うよ」
いつものようにお館様の優しい声が、柱のみんなを落ち着かせる。
「お館様におかれましてもご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」
(やった~!!久々に言えたわ、お館様にご挨拶!)
「おや、この声は、…義勇かな。珍しいね、義勇から挨拶してくれるのは。とっても嬉しいよ」
そこで甘露寺は、自分の行動はすべて冨岡の行動であることに気が付いた。
(あ、そっかあ~。私、今は冨岡さんなんだ…)
「…どうしたんだい?何だかいつもと何かが少し違う気がするけど…」
「お館様、私から説明致します。」
そう言って胡蝶が挙手をし、皆の前でお館様に説明をした。
「……そうだったんだね。ということは…、今のあいさつは蜜璃からだったんだね。ありがとう。」
(キャ~!!気づいてもらえたわ。お礼まで言われたわ!)
「フフッ、いつか義勇からの挨拶も聞いてみたいよ」
その後、柱合会議は順調に進み、無事に終えることができた。
『本日はお忙しい中お集りいただき、ありがとうございました。気を付けてお帰りください。』

「……で、これからどうするんだ。俺は甘露寺と食事に行きたかったのだが……」
「私は、伊黒さんが嫌じゃなければ予定通り行きたいけど……」
柱合会議が終わり、柱たちはこの後どうするかについて話し合っていた。
「それよりも甘露寺、今のお前の外見は俺なんだ。言葉遣いを何とかしてくれ」
冨岡に指摘され、甘露寺は今まで自分が何も考えずに話してきたことを思い出した。
「あ~っ!ほ、ほんとだわ!ヤダ、ごめんなさいっ!!」
焦った甘露寺は大きな声でそう叫んだ。そして、
(これはもうどうにもならんな…。そして冨岡、お前の表情筋も何とかせい…)
と、その場にいた全員が思った。
「まあ、柱の皆さんはもう分かってますから、ここではわざわざ演じなくてもいいと思いますよ」
「ありがと~、しのぶちゃん!」
(……!!)←柱一同
「か、甘露寺さん、さすがにその呼び方はちょっと……//」
胡蝶が顔を赤くして照れたように言う。その横では、冨岡も甘露寺の顔を赤くしていた。
「あっ、ゴメンナサイ……// そ、それにしても、冨岡さんの体、がっちりしててとても動きやすいわ~」
甘露寺は空気を和ませようと、話題を変えた。
「そうか、お前の体は…」
そう言って冨岡が視線を下げようとしたとき、隣から殺気を感じた。見ると、鬼のように形相を変えた伊黒が睨みつけている。冨岡は命の危機を感じた。
「それよりも、冨岡さんはこの後何か用事でも?」
伊黒をネチネチ言わせる前に、胡蝶が話しかける。
「ない。(それにもしあったとしても、この外見で行くのはまずいだろう)」
「だったら、私と食事に行きませんか?あなたを一人で放っておくのは心配ですし」
「そうしてくれると安心だな。頼むぞ胡蝶。大切な甘露寺の体を傷づけたりすることは万死に値するからな…。ならば行こうか、甘露寺」
「うん。あ、冨岡さん」
「何だ」
「私、たくさん食べないとすぐお腹すいちゃうから、たくさん食べてね」
「承知した。……ならば甘露寺、鮭大根を食べてくれないか」
「鮭大根?」
「ああ、俺の大好物だが最近口にできていない」
「分かったわ!!」
こうして、二人組になって行動することになったのである。

~伊黒・冨岡(in甘露寺)~
「きゃ~~!!何これっ!鮭大根ってこんなにおいしかったかしら!?」
伊黒と甘露寺は行きつけのお店で昼食を取っていた。その店のメニューに鮭大根があることは知っていたが、今まで注文したことがなかったので、今回初めて食べることになった。
「そんなに旨いのか?」
「ええ、ほんっとうに美味しいの!!今まで食べた鮭大根の中で一番よ!」
伊黒は冨岡のこんなに輝いた笑顔を初めて見た。こんなにもおいしいと感じるのは、冨岡の体で食べているからだろう。
(冨岡はそんなに鮭大根が好きなのか……)
その後もいつもの調子でたくさん食べる甘露寺だったが、白ご飯大盛を五杯食べたところで、彼女の箸は進まなくなった。
「…どうしたんだ、具合でも悪いのか?」
「ううん、平気よ」
「おかずもいつもはもっと注文するし、ご飯だって七杯は食べているだろう?」
「……うん、だけどね」
実は甘露寺は少し前から満腹感を感じていた。冨岡の体だから当たり前だ。このまま食べ続けて、彼の体を壊さないかが心配になっていたのだ。
「なるほどな…。ならば、もうそろそろここを出るとするか」
このことを伊黒に話すと、彼はそう言ってくれた。

~胡蝶・甘露寺(in冨岡)~
「私たちはこの辺りをブラブラ歩いて、気になるお店があれば入りましょう」
「ああ」
甘露寺の暗い顔は変わることなく、無表情のままだった。冨岡は表情を動かすことを知らないのだろう。
「…冨岡さん、もう少し笑ってください」
「俺はあまり上手く笑えない」
「あなたと違って甘露寺さんの表情筋はしっかりしているので大丈夫ですよ」
「……。」
冨岡は、少しだけ歩くスピードを緩め、胡蝶のやや後ろを歩いた。そして、試しに口角をあげてみた。そうすると、いつもなら引きつったような作り笑いになるのが、今回は自然な笑みとなった。冨岡はこんなにも簡単に笑顔になれるのかと驚いた。
「……!冨岡さん、炭治郎君です」
胡蝶に言われてハッと顔をあげると、前方から炭治郎が一人で歩いてくるのが見えた。
「いいですか、あなたは甘露寺さんです。思っている以上に元気にしてください。」
「分かった」
「……あ、甘露寺さーん!しのぶさーん!」
二人に気付いた炭治郎は駆け寄った。
「あら、竈門君。こんにちは」
「あ、あ~!炭治郎君!!こんにちわ~」
冨岡は自分が思う精一杯の笑顔で、大きな声を出した。
「こんにちは!二人でお出かけですか?」
「はい。お昼ご飯を食べようと思いまして。竈門君は?」
「俺はこれから任務です」
「そうですか。頑張ってくださいね」
「はいっ!!!」
「た、炭治郎君は、お昼食べたの?」
冨岡は、できるだけ声を高くすることにも意識して聞いた。
「俺もまだなんです。任務までにまだ時間があるのでどこかで食べようかと考えてて……」
甘露寺の質問に炭治郎がそう答えたとき、胡蝶の頭にある考えが浮かんだ。
胡蝶はこれからこの血鬼術に対する薬を作りたいと考えていた。冨岡を一人にするのは心配だったが、今は炭治郎がいる。冨岡の表情や会話はまだぎこちないが、おそらく問題はないだろう…。
「…甘露寺さん、私、急用を思い出しまして。申し訳ないんですが、お二人が嫌でなければ、二人で食事をしてくれませんか?」
「こちょっ、あっ、し、しのぶちゃん!?」
「俺は全然かまいませんよ。」
「炭治郎君!?あ、わわわ私も良いわよ!!」
冨岡は、炭治郎は鼻が利くのでバレないかが心配になっていた。
「本当にごめんなさいね。それでは…」
そう言って、胡蝶は消えた。残された二人は立ち並んでいるお店を見回った。
「あっ、甘露寺さん!!ここはどうですか?」
炭治郎が指したのは、甘味処だった。
「この前二人で任務に行った帰りに、甘露寺さんが奢ってくださったの覚えてますか?」
「え、あ、うんうん!!美味しかったわよね」
もちろん、そんな記憶は一切ない。だが、炭治郎が言うのだからそうなんだろう。結局二人はその店に入った。
「それじゃあ、俺はおはぎとみたらし団子にしようかな。甘露寺さんはどうしますか?」
「…三色団子にしようかしら」
「いいですね!甘露寺さん、この前も三色団子たくさん食べてましたもんね」
二人の食べたいものが決まり、店員を呼んだ。先に炭治郎が注文した。
「……おはぎと、みたらし団子ね。次は?」
(甘露寺はたくさん食べるんだったよな。三色団子だけなら30、40、いや、50はいけるだろうか…)
「三色団子を、…ご、50本ください!」
「か、甘露寺さん!?」
冨岡が注文しようとしたときに、急に炭治郎が声をあげた。
(ハッ、まずい…。甘露寺は女だ。さすがに50本は言い過ぎたか…)
「どうしたんですかっ!具合でも悪いんですか!?」
(………?)
「この前は100本以上食べてたのにっ!!!」
(あっ、そっちいぃぃぃ~~~~!?)
「あ、あ~、だ、大丈夫よ。何でもない……あ、ひゃ、100本くださいっ!!!」
「あいよっ」
「…甘露寺さん、気にせずにたくさん食べてくださいね。俺、甘露寺さんがたくさん食べてくれると安心します」
炭治郎はそう言って、優しく笑った。
(お前のその笑顔で、今までどれだけの人が救われてきたか……)
しばらく待っていると、冨岡の前に大量の団子が運ばれてきた。一緒に炭治郎のも運ばれてくる。
(団子が沢山乗せられている……、いや、積まれていると言ったほうが正しいか)
「うわあ、美味しそう。いただきまーす」
「い、いただきます…」
こんなにも食べれるわけがないと思いつつ、とりあえず1本口に入れてみる。
「……!おいしい。」
あまりのおいしさに、思わず言葉に出てしまった。冨岡はこんなにもおいしい団子を食べたことがなかった。
「良かったですね、甘露寺さん」
冨岡はすごい勢いで団子を食べた。
(何故だ、どうしてお腹がいっぱいにならないんだ…)
炭治郎が食べ終わるころには半分以上の団子がなくなっていた。食べれなくなったら炭治郎に食べてもらえばいいと考えていたが、その必要はなさそうだった。

~蝶屋敷~
「…しのぶ様、お茶でもどうですか?」
「あら、ありがとう、アオイ。そこに置いておいてくれる?」
その頃、胡蝶は二人がかかった血鬼術について調べていた。彼女が過去に研究したことはきっちり本にまとめてあり、薬を作るときにはいつもそれを参考にしている。今回もそれを読みながらどのような治療をすればいいのか考えていた。しばらくすると、ある結論にたどり着いた。
(……?この血鬼術、もしかして、薬を作らなくても時間が過ぎれば治るんじゃないかしら…)


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