二次創作小説(新・総合)
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- スマブラ戦記 サテラビュー(完結)
- 日時: 2023/05/26 16:18
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【スマブラ戦記 パーストシリーズ開幕】
新・メイドウィン小説で最初に書いたスマブラ戦記の『任天堂世界』を、桜井彩月や虎伏天夢が来る以前の歴史で多数見ていくシリーズを始めました。
第2弾は、1人で知恵を振り絞って仮想空間と共に安全に生き延びようとする男の物語。
他にも2、3本くらい投稿予定です
- Re: スマブラ戦記 サテラビュー ( No.1 )
- 日時: 2023/05/21 12:31
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第1話】
『任天堂世界』に招かれた人間はいつも最初は同じだ。
地面が雲で出来た未知の空間に、いつの間にか倒れている。
前後の記憶は無い、そして……必ず自分の前に長蛇の列が出来ている。
不思議とその列に自分達も並び、そこで任天堂戦士という肩書きと能力を与えられ、驚異と戦うために選ばれたと言われる。必ずそこから始まる。
この世界に来たばかりの人間は誰しも混乱し、困惑する。それはここに来るまでの過程の記憶がないからだと言われている。だがその内に「そういうものだ」と認識していく。
そうしているうちに他の任天堂世界から人間が集まってきて合流することになるのだが……中には特殊な人間もいるのだ。
「……コスモ、今は何時だ?」
『現在11時です』
「そうか、ありがとう」
このソラ・テンドウも任天堂世界に招かれた人間の1人だ。
しかし、彼は既に他の人間が辿ったような道を歩いていない。なぜなら……。
「……」
彼の視界にある光景は普通の空ではなかった。そこには色があったのだ。青空があり雲があって大地もある。ただそこに普通ではない。
「任天堂戦士の能力……こんな事も出来るのか、いや、あるいは俺だけなのか…?とにかく、便利ではあるが。」
任天堂戦士は皆、特定のゲームソフトを能力として与えられ、そのゲームの設定や力を自由に扱える。
ただしソラは通常とは異なり、得られた能力は『サテラビュー』だった。
「サテラビューといえば…ゲームソフトじゃなくて周辺機器じゃないか」
サテラビューとは、スーパーファミコンに外付けするアイテムで、衛星から受信されるゲームのデータと電波を受信するという当時で見ればあまりにも時代が早すぎたゲームとして有名だ。ソラが持つ能力によりその常識は覆され、サテラビューの世界に入ることが出来るのだ!
任天堂世界は異様な不思議な空間だったが、そこから更に入ったこのサテラビューの世界は『BS-X ~それは名前を盗まれた街の物語~』という同梱ソフトを完全に再現されていた。
既にサテラビューはサービス終了している為、住民はソラ以外誰もいないが、街並みは本物となんら変わりなく存在する。
ただ、違う所と言えば住人達の姿が見えず気配も無いことだ。住民どころか生き物すら存在しない。
「どうしたものかな……誰かいないのは分かってたけど」
とりあえずソラはこの世界を散策することにした。まずはこの街の事を詳しく知る為に、中央の大きな広場を目指して歩き出すことにした。
道にはレンガが敷かれており歩く度に音が鳴る、まるで現実のように感じられる程、精巧に作られた作りをしている。ただ……それだけである。何か変わった様子はない。本当に現実のようで少し不気味にも思えた。
(それにしても……)
しばらく歩いている内に気付いた事がある。
このゲーム機器は衛星の電波からゲームを受信する、しかし衛星はもう動いてないのでゲームとしてはもう何も出来ない。
だが、上手くやれば能力としては復旧出来るのではないか?と考えた。
「よし、やってみるか」
…………
「……駄目だな、やり方がよく分からない」
しかし、そんな簡単にいくわけもなく失敗に終わる。まぁそうだろうと思っていた。
ソラは何か私物が無いか確認する、鞄の中には水の入った小さなボトルとラジオがあった。ラジオはまだ使えそうだが水がもうすぐ無くなりそうなので一度休憩を挟むことにする。近くのベンチに座って休む事にした。
「これから俺はどうすればいいんだ……」
長い間1人でいるせいか独り言が多くなってる気がしたが、それを気に留めること無く呟いた。
今までは1人の時間も悪くはなかった、特に問題は無かった。
この広い世界で自分だけが取り残されてしまった感覚に陥りそうになりそうになるのを抑えながら、空を見上げる。青い絵の具で塗ったかのような綺麗な空だ、だがやはりここは異質だと再認識するだけだった。
1人でいることに苦痛はないが寂しさを感じないわけではない。むしろ感じて当然なのだが、ソラはそれを押し殺し、平静を装うようにしていた。
歩いてて問題がもう1つ出来た、食糧だ……
この世界はゲームを完全に再現した電子空間、換金機能はあるのでゲーム内のコンビニを利用することは出来るが、サ終した以上、商品は何も置いていない。
「………1度、任天堂世界に戻るしかないのか」
ソラが1人で行動してサテラビューワールドから出なかったのにも理由がある。
任天堂世界は……初日に降り立ってすぐ危険な場所と判断したからだ。
ルールも法律も通用せず、何をするか分かったものではないと……
だが、そんな事を言っている場合でもない。
一度能力を解除して、再び任天堂世界へと戻る……
任天堂世界は1つで独立したものではなく、任天堂作品のゲームをそっくり再現したような空間が
食べ物がありそうなゲーム世界といえば星のカービィだが、そんなことは誰もが考える。ただ……その先を考えろと言われても答えられる人間はなかなかいない。
「とりあえず、ゲームはその辺りに料理が落ちているから……危険そうな事が起きる前に急いで見つけてサテラビューワールドに入り直さないと」
この世界の仕組みをよく知らないまま、迂闊に出歩くことは出来ない。ソラはとにかくこの場を離れようとした時だ……
「待って!」
声をかけられた、ソラはすぐに警戒するがそこに現れたのは自分の知っている人物だ。
「あれ、君は……確か……?」
そこにいたのは山吹だった。
初めて任天堂世界に来た時、『ア・カウント・バーン』という自警組織とやらに出会い、ソラ達を案内してくれたのが彼女だ。ソラとは面識があるのだが、彼女の名前はソラには分からなかったので聞き返す形になった。
彼女は少し照れくさそうにして名乗る。
「わ、わたしは『山吹桜』。その……お久しぶりです」
「ああ……どうも……どうしてここに」
「この辺りは食糧を求める人達が多くて危険ですので巡回を…」
確かにこの世界は安全とは言い難いが、ソラは山吹の話を聞いて少し不安になった。
それはここへ来るまでの記憶が無いソラにとっては、自分のいる場所も分からないのだから、もしや全員自分と同じ境遇ではないか?と思い始めていたからだ。しかし……それを聞く勇気はなかった。
「えっと……食事はどうすれば……」
「食糧を分けることは出来ませんが、なにか私に力になれることがあれば……」
「あ、じゃあえっと……」
………
山吹桜の任天堂戦士としての能力は『ニンテンドーLABO』
同じく周辺機器が元になった能力で、ダンボールを組みたててバイクやロボットのコントローラーを工作してそれがゲーム内に反映されるというものだ、この世界でもその力は十分に発揮されるだろう。
「あの……これで大丈夫ですか?結局ダンボールですから簡単に壊れちゃいますけど……」
「ありがとう、助かるよ」
ソラは、早速サテラビューの世界へ戻ることにした。
サテラビューの世界から戻ってきたソラは一旦能力を使い、山吹が作ってくれたものを使う。
それは………ダンボールで出来た人工衛星。
サテラビューの電波を発信する物がないなら新しく用意すればいいのだ。
ダンボール製で壊れやすいと言っても、サテラビューに居るのは人間だとソラのみなので問題は無い。しかし、まだ完成はしていないのでソラは別の準備に入る。
「まずは……
「よし、こんなもんかな……」
ソラは作業を終えると完成した衛星を起動させる、まだここから電波も用意しなくてはならない。
「サウンドリンクゲーム……ラジオ音声に合わせた特別なゲームがあるとも聞いたことがあるな、アレのような物を作るには……」
そう思いながら探すと……見つけたのがカセット型のラジカセ、これはもう持っているアイテムだ。これならば使えるかもしれない。
電源を入れてみると普通に動くのでそのままラジオ機能の再生ボタンを押す。すると、中からゲームミュージックが流れる……が、その曲は普通の曲ではなくて、ゲームと連動してタレントやキャラクターが喋っている、ラジオ番組に近いものだった。
「いつの間にテープがこんなものに……!
「サテラビューワールドが……作り変わって、いや…発展していく!」
衛生、番組、そしてそれらを繋げる擬似的な環境。
それら全てが揃ったことにより、サテラビューワールドは数十年越しの復活を果たした。
「や…やった!凄い、大昔のゲームが復活した上に、俺だけがその世界に居る!」
サテラビューワールドの景色はまるで現実のようでいてどこか非現実的な光景が広がっていた。
「これなら……入れる、入れるぞ!!」
コンビニが、バーガーショップが……サテラビューを起動するまでは見えない壁のように扉に触れることも出来なかったのが、今はすんなりと通り抜けれるようになっている。
「中に……行ける」
しかし、すぐにサテラビューワールドに行くのは止めて、ソラはひとまず現実世界の情報を仕入れる事にした。
その辺りの事は山吹に教えてもらった。
自分たち『任天堂戦士』になった人間は皆、なんの脈略もなく気がついたら任天堂世界に飛ばされていた。
日本人が多いが性別や年齢、経歴は一切問わないので犯罪者もそれなりに多いことが任天堂世界が危険であると判断した理由だ。
現実世界への脱出方法は……現状見つかっていかい。
脅威に立ち向かうと最初に言われたが、その脅威はソラを含めた全員が分かっていない。
今はまだ安全だろう、しかし油断は禁物である。
1番危険視すべき相手は……おそらく、世界に住んでいる動物やモンスターなど。
ゲーム世界といえどその力は本物。
「俺の能力はサテラビューを元にした仮想空間を作るだけ…自分で言うことでもないが便利ではある、でも戦う力は無い」
「とても任天堂世界で生きていけるような物じゃない」
「………そうだ」
「この任天堂世界には『ア・カウント・バーン』という自警組織が存在する、この世界のルールに則って生きていくには彼らの指示に従って行動すべきだ」
「彼らは、俺たちを歓迎してくれるだろうか?」
「それは分からない、だが……この能力が知られたら、誰か悪用するものが居るかもしれないのが事実だ」
「この能力を隠して如何にこの空間で立ち向かうか……そんな事を考えなくていいようにはしたいな……」
………………
数日後。
ソラは再びサテラビューの世界に入り、ゲームの中の様子をうかがう事に。
サテラビューワールドは以前よりも更に発展を遂げていて様々な物が作られていた、もちろん現実にはない物もあるのだが。
「現実のシャイニーマートと同じものが売られているから食料問題は解決だな」
と言っても現実の紙幣は使えないので、サテラビュー内で稼いだコインで支払っている。
常にラジオ番組が流れており、サウンドリンクという連動したゲームもあるのでサテラビュー内で過ごすことは出来る、この能力を使ってサテラビューの環境を改善していこうと思ったのだ。
「ラジオ番組のデータをどんどん受信しよう、もっと沢山のチャンネルを登録すれば、色々できるはずだ」
これは、自分だけの世界を構築し、任天堂世界に一切関わらずに、何より快適に過ごすことを目指す男の物語。
- Re: スマブラ戦記 サテラビュー ( No.2 )
- 日時: 2023/05/21 23:17
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第2話】
サテラビューワールドのラジオが目まぐるしく流れる。
18時になるとサウンドリンクゲーム『スーパーマリオブラザーズ3』からマリオとルイージ、そしてクッパが登場して番組が始まる。
「はい! こんばんはー!」
「こんばんは~」
「……ふぅ……」
マリオが元気よく挨拶すると、続いてルイージも笑顔で挨拶し、クッパは不機嫌そうに受け答えをしている。
キャストとしてマリオ達と共に芸能人によるラジオトークや話を盛り上げる音読と共にゲームを楽しめるというのがサテラビューの魅力だった。
ソラはその音声をバックにゲームをプレイしながら、今後のことを考える。
「現実世界へ帰る…….にしても、その方法は分からない」
「なら、どうにかしてこの俺だけの電子空間で平和に永久移住する方がいいのかな」
いつまで任天堂世界で過ごすことになるのか分からない、命の危険性もあるのなら安定した供給があるここに居座っていた方がいい。
「しかし、どうやったら元の世界に戻れるんだ?」
「それに、俺はなぜここに来て、選ばれてしまったんだ?」
「…………分からないなぁ」
彼は頭を抱えながら悩む。
今、悩んでいることはそれだけじゃない。
「……サテラビューワールドにいる間は向こうでは完全に存在が消えている」
「死んだならまだしも、生きて何回も目撃されているとなると怪しまれる……なるべくこの世界と能力は誰にも知られたくない、どうすれば……」
「……ん?……あれってなんだ?」
考え事をしながら歩いていたその時、目の前に何かが落ちていた。それは小さな箱だ。
ソラは拾い上げる。
「これは……ゲームソフトか?」
「パッケージには『エキサイトバイク ぶんぶんマリオバトル』と書かれているぞ」
マリオがバイクに乗ってレースをする、サテラビューのサウンドリンクゲームの一つだ。
「………そうだ!」
ソラは一度、能力を解除する……任天堂世界でソラがいるのは、狭くてボロい一軒家。
任天堂世界の『どうぶつの森』は戦いをしない任天堂戦士達の居住区となっており、そこで平凡に一日を過ごしている。
女性だけで構成された傭兵組織の『マスターアマゾネス』と治安を守る中規模な自警組織『ア・カウント・バーン』の2つの組織によって規律を保たれており、平和そのものでこの辺りに争いごとはない。
そんな彼らの住む森の奥深くにある古びた洋館にて、彼らは生活していた。
ア・カウント・バーンのメンバーである山吹桜に連絡を入れた。
「え!?これからは自分が移住区に食べ物を提供する……ですか!?」
「はい、移住区や組織の皆には世話になっていますし、何か役に立てることがあれば……と」
「そ、それでも……前はアテも無くさまよっていたのに、どうやって……」
「大丈夫です、任せてください」
危険を犯さず平穏に生きる秘訣、それは周囲や組織に対するコネと恩を作ることだ。
これさえあれば万事上手くいく。
ソラは笑顔で答えた。
「わ、分かりました!すぐに用意しますね」
「ありがとうございます」
電話を切ると、すぐさま必要な道具の準備に取り掛かる。
「さて、あとは」
マリオぶんぶんバトルのラジオ放送が始まり、ゲームが始まる。
サテラビューの任天堂戦士としての能力はもうひとつあることが分かった、それはラジオで配信されている間だけそのゲームの力を使えるのだ。
これによってソラの傍には赤いバイクが出てくる。
「よし、これに乗って……」
ソラは移住区からバイクに乗り、飛ばして果まで一気に飛んでいく。
……そして、ここで止めて周りを見る。
バイクの能力は自身を『エキサイトバイク』の任天堂戦士と思わせるためのブラフ、何より自分がちゃんと手伝っていると思わせるためだ。
遠くまで来たら再度サテラビューの世界へ行き…コンビニで多数の弁当を自費で購入。
むろん、いくらゲーム世界が多くてもコンビニ弁当のパッケージが付いたまま運ぶのは不自然…
そこで、中身を一度出し…空っぽにして別の皿の乗せて持って行く。
こうして、ソラはサテラビューワールドでマリオぶんぶんバトルのラジオを聴きながら運転しているように見せかけつつ、料理を持って移住区の人達の元へやって来た。
「おまたせしました!」
「ほ…本当に来た!しかも、沢山持ってきた!!」
「はい、いつものお礼です」
「こ、こんなにいいんですか!?」
「もちろん」
ソラが微笑みかけると、移民達は喜んでくれた。
「うぉー!ありがてぇ!」
「これで、明日も生きられる!」
「す、凄い…一体どこでこんなに…」
「それはまぁ……秘密で、それでお願いが…」
……
ソラは移住区の組織と話を付ける。
「定期的に食事を提供する代わりに俺の身の安全を…」
「うむ…分かった、君を守る、約束しよう」
「ありがとうございます」
「この移住区は住むことは容易だが常に食料問題がある、フルーツや釣った魚にも限度はあるし、かといって他所の世界から取りに行くのはリスクが高い」
「そんな中…ここまで料理といえるものをここまで回収してきたのは非常に素晴らしい成果と言えよう」
組織の長らしき男が言う。
彼は、ソラに感謝した。
組織のリーダーである男の名は……
リーダーの男の名=オダ・ノブナガ……だった。
彼は、自分の名前を偽名として名乗る事で、何かから身を隠しているらしい。
しかし、その名前を聞かないことが自分に深堀しないことの約束であった。
「それで頼みがあるんですが、共同スペースじゃなくて自分一人だけのマイホームが欲しいのですが…」
「住居か?それならウチよりマスターアマゾネスのイツメンの所に行った方がいい、奴が能力で家を作っている」
そう言われ、ソラはイツメンの元へ向かう。
マスターアマゾネスの拠点は、巨大な洞窟だ。
その奥深くには、大きな屋敷が建てられている。
そこにソラがやってきた。
その家の玄関で見張りをしている女性がいた。
ソラは彼女に話しかけ、自分だけの家を作るように伝えて、マイホームを手に入れた。
「よし……ここまで外堀を深めておけば、安全は保障された」
「後は……この移住区にいる限り、この能力は極力見られないようにしないとな」
「サテラビューワールドを知られれば、必ず面倒なことに巻き込まれるだろう」
「……ふぅ、疲れた」
今日も色々あった、ソラはベッドで横になる。
この世界に来て約1ヶ月、ようやくこの世界に順応してきていた。
最初は不安だったが、今は大分慣れてきた。
仕事を終えた後の疲労感と共に、心地よい眠気が襲ってくる。
「…明日から大変だが、まあ仕方ない」
それから数日経った頃。
ソラがバイクで遠くに行って、こっそりサテラビューワールドから食材を回収して、それを移住区に運ぶ、それを繰り返していた。
山吹は釣竿を構えて、魚を釣っている……これも食材になる。
「貴方の能力、ダンボールがあればなんでも作れるんですね」
「便利じゃないですよ、そもそも任天堂世界にダンボールがそんなにありませんから……」
「あれ」
大きな家…オダが住むところに見慣れない男性が居た、ア・カウント・バーンのメンバーでもなさそうだ。
「あれは?」
「知りませんか?あの方は祖父江四柳さん…私たちよりもずっと規模が大きい『灯火』という組織で……」
「私も詳しくはありませんが、リーダーのオダさんは彼と親しいらしくて定期的に会いに来ているみたいです」
ア・カウント・バーンの山吹桜と話をしていたその時だ。
「……えっ!?」
山吹は驚きの声を上げると、その場で硬直してしまう。
それは……その四柳が、扉から出てこちらに向かってきていた。
「ソラ・テンドウはそこの男か」
「えっ、ああ……はい、そうですけど」
「俺は祖父江四柳、この任天堂世界全ての監視、及び治安維持をしている『灯火』という組織を経営している」
「そ、そんな人が………何か?」
「危険を顧みずに……移住区にわざわざ大量の食糧を回収しているようだが………」
「まあ、はい、色々ありまして」
「………」
「来るか、灯火」
「え!?」
「AKB(アカウントバーンの略)には所属していないのだろう」
「は、はい……彼はここで住んでるだけのフリーですけど……」
ソラは、祖父江の言葉に戸惑うしかなかった。
目の前にいる男は、ただ者ではない。
そう感じさせるオーラがあった。
祖父江はソラに尋ねる。
しかし、ソラはその問いに答えられなかった。
「………」
「何かあるのか」
「ひとつ聞きたいのですが、灯火に行くとなるとここから出るしかないのですか」
「………そうだな、確かに移住区には住めなくなるぞ」
「すみません、なら無理です」
「……」
「この移住区が大事なところなので……何より俺戦えませんし、ここにずっと居たいかなって……」
「最後に聞くが脱出をする気はあるのか?」
「脱出……脱出?んん、どうだろう……今の所は快適だし……」
「……………」
「ならいい、無理強要はしない」
「………快適なのか?ここが」
「え?ああ、まあ他と比べて平和だし……」
「………」
祖父江はソラを見たあと、世界を抜けて去っていった。
「灯火もですけど……貴方、あんなに頑張っているのに組織に入らないなんて……」
「俺、そういうの苦手なので……自分だけの空間では1人で居たいんですよ」
「…………」
………
「脱出か……サテラビューワールドは現実並、いやそれ以上に快適な俺だけの世界、現実でもここに居られるならいいけど、そうなるかも分からないしな」
ソラはサテラビューワールドで今日起きた事を考えていた。
「それに……なんだかんだ言って、こっちの世界も悪くはないからなぁ」
……
翌日、ソラ今日もマリオぶんぶんバトルを聴きながら、バイクを走らせる。
しかし、今日は様子が違った。
「……誰かに見られている?」
最近食糧を運んでいるせいで目を付けられたのだろうか、視線を感じることが多くなった
。
「おい!待て!」
「……やっぱりバレたか」
追ってきたのは、黒い服を着た男たちだ。
彼らは、恐らく現実でアウトローな立場の危険人物だろう。
「こっちはバイク乗っているから最悪……待てよ?」
「こんな時こそ能力だ!」
ソラはバイクを飛ばし、視界が悪い場所まで向かった瞬間に能力を使用してサテラビューワールドに飛ぶ。
サテラビューワールドはサウンドリンクゲームの放送が開始されている時、そのゲームに連動したイベントのあるエリアが自動的に開通される、そこからソラはサテラビューワールドへ侵入していた。
サテラビューワールドは一応任天堂世界のゲーム世界と繋がっていて、そこを経由して何とか追っ手を撒くことが出来た。
「す、すみません、ちょっと危ない人に追われかけたので遅れてしまって………」
「……し、問題無しだ」
「え?」
弁当を運んで移住区に帰ってくると、自分のマイホームから祖父江と知らない男が出てくる。
「あの………」
「ああ、悪い……連日で来ることになったが」
「そいつが最近移住区に来たやつか」
「あの……ウチに何か?」
「お前を怪しんでるわけじゃない、実はア・カウント・バーンから移住区に違法な薬物売買を目撃したとタレコミがあった」
「家のアチコチにそれっぽいのが無いのかガサ入れしてたんだよ、灯火でヒマなのは俺と四柳くらいだからな」
「七夜、一言余計だ」
「えっ、それは物騒な……いや、本当に困るな折角……」
「……ん?それ飯か、そういや四柳がお前が食糧を配達してるとか言ってたが」
「………へえ」
「何か?」
「いや、なんかやべーもんあったらお前もその移住区の自治組織に話しとけよ、じゃ俺らはコレで」
「はあ………」
そう言って、祖父江と相方の男はまた何処かへと向かっていった………
「…………どうだ、七夜」
「信じらんねえことに今まで以上に黒だ、まさか……有り得んのか?こんなことが」
- Re: スマブラ戦記 サテラビュー ( No.3 )
- 日時: 2023/05/23 16:16
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第3話】
ソラはサテラビューワールドに篭ってても先程移住区で言われていたことが気がかりだった。
「ウチの移住区で違法な薬物……苦労して安心の環境を手に入れたのに、迷惑な話だなぁ……」
「俺だけの問題じゃないことも確かだが、どうにかして特定出来ないだろうか……」
「………そういえば、ぶんぶんマリオバトル以外のBS放送は何があったかな、使える能力があるかもしれない。」
ソラのサテラビューの能力は、衛星から受信される仮想空間の作成と、放送されるラジオとコラボしたゲームの能力の一時的な使用。
その時放送されている番組が違えば、使える能力も違う。
小型ラジオを弄りながら、番組表を見ていると……
「!こ、これは………」
『BSシムシティ』あの空から見上げて都市を開発して発展させていくという、あの名作だ。
それが明日放送される。
「そうか……サテラビューはゲーム機に繋げる周辺機器だから、任天堂作品以外のゲームが流れてくることもあるのか!」
「これなら………!!」
早速サテラビューの本体に繋げて起動すると、すぐにゲームが始まった。
基本的なゲームの説明。
『サウンドリンク・ゲームはBS放送と連動しています。BS放送で放送されている番組の内容がゲーム内に反映されて盛り上げます。』
「おお!これで……」
そして、BSシムシティが始まる時間。
ソラは移住区周りを集中させる。
サテラビューの弱点として番組である為終わる時間がある、およそ1時間。
言うなれば18時から19時までしか特定の能力を使えないのと同じである。
「……シムシティということは、今俺は街を作り変えられる能力」
「移住区であるどうぶつの森の世界も、元々村作りとかDIYの要素もあるし……上手くいってくれ!」
街を作るための画面が現れる。
ソラはとりあえず街の形を確認することにした。
そして、この能力の特徴を見て改めて理解する。
それは、任天堂世界がただゲームキャラがいる世界ではなく、ゲームそのものが今見えている現実となっていることだ。
つまり、ゲームのキャラクター達にも生活があり、そのキャラクター達はゲームの世界で生きている。
「えっと………これで村全体を見渡せる、これで何か怪しいものが無いか手当り次第探って………」
村のあちこちを見ていると、大きな家の地下に更に隠し階段があった。
そこを探っていくと……
「これ……毒キノコか?」
スーパーマリオの世界の毒キノコが栽培されていた、その他にも様々な……分かることは、触れたら危険そうなアイテムが大量に置いてある部屋があり、その近くにはすり潰すのに使う器具だ。
「薬そのものは無いが………十中八九ここで作られているんだよな」
「え……じゃあこれって、マスターアマゾネスの……」
そもそも移住区の家を作っているのはそういう能力を持つマスターアマゾネスのリーダーのイツメン、自分だって功績を作ってマイホームを作ってもらったというのに、理由もなく隠し階段なんてものを作るわけがない、イツメンも把握している、あるいは……
「イツメンが主犯……?どうするんだよそれ、なんて言えば……」
自分からそれを報告しようとしても立場的にはまだ危うい、揉み消されるどころか周囲の空気がより険悪になる可能性もある、そうなると安定した空間を求めるソラにとっては致命的だ。
「……まだ、黙っていた方が良さそうだな」
「でも……ゆくゆくはこの移住区から逃げることも考えないとダメだな」
「あと、こんな物が出回るのも嫌だな……見える分だけでも削除しておこう」
後は毒キノコなどを消去して、……
「よし、これで大丈夫かな」
しかし、これで完全に解決したわけではない。
むしろ問題はここからだった。
「ソラさん、こんにちわ」
「あ、ああ……こんちには、山吹さん」
「……最近、何かありましたか?」
「いや、最近物騒だから警戒していて……あ、そうだ」
……
「我々ア・カウント・バーンとマスターアマゾネスについて?」
「うん、この2組織が移住区を守ってるってことしか聞いてないから、例えばどっちが先にここに居たのかとか知らなくて」
「最初に移住区になりそうな世界を見つけたのは我々です、その後イツメンさんが来て、女性をかきあつめてマスターアマゾネスが結成されました」
「へえ……」
「ただ……仲が悪いというわけではありませんが、我々のリーダーであるオダさんはマスターアマゾネスを良く思っていませんね」
「やっぱり、そうなんだ」
「はい、私も正直あまり好きではないですね、大事な移住区を自分の楽園にしようとしてるとか……」
「…………」
「あ、流石にこれは内密に……皆、生き残ることに必死で変になってる人も居ますから」
「………」
「そういえば、ソラさんは日本ではどんな暮らしをしてたんですか?」
「え?」
唐突に聞かれて困惑するが、なんとか答える。
「デカいビルに住んでるよ、食べるものにも困ってないし、好きなだけ遊んで暮らせるお金がある」
嘘は言っていない、現実世界ではなくサテラビューワールドにおいての自分だ。
大きなビルのような所に住み、食べ物などはゲームで手に入るコインで購入している、街一個分の広さしかないとはいえ満足度は段違いだ。
任天堂世界に来る前の本当の現実では無職の引きこもり、仕事を辞めてからはゲーム三昧の日々、金が尽きたころコンビニのゴミ箱を漁ったり公園の水だけで生き延びていた時期もある。
「凄いですね……」
「え、そ、そうかな……」
「だって、それだけの事を出来る人なんて中々居ませんよ」
「そうかな……」
「…………ええ、本当に」
「……あ、自分また食糧探してくるので!失礼します!」
ソラは山吹の所から離れて、去っていった。
「………」
「はい、山吹です……ええ、恐らくは」
「もうしばらく隙を見たら、アクションを起こします……」
………
「ノブナガ殿、お呼びでござるか」
「よくぞまいった、そなたにしか頼めぬ依頼がある」
「ははっ、ノブナガ殿のご命令とあらば……隻腕となった拙者を拾ってくれた恩、必ずや果たすでござるよ」
「期待しているぞ………剣丸よ」
……
「あ、そういえばまだマリオのぶんぶんバトルの放送始まってなかった………しかも番組表見るに2時間はかかる……」
「仕方ない……1時間ちょっとウロウロして、見つかりませんでしたすみませんって頭を下げれば1日くらいは許してもらえるだろう」
ソラはサテラビューワールドに入り、しばらく家に入ることにした。
「村雨忍法、絡繰雀!」
そこに何かが入ってきたことにも気付かず……
「今、咄嗟に頼んだでござるが……山吹殿、これは」
「…………うん、これは………」
………
「高層マンションで、食べるに困らなくて、毎日遊んで暮らしてられる……か」
「本当に現実と大違いだな、サテラビューワールドでの生活は」
名前を忘れた街でソラは1人だけ。
ただし、この街で生きていく上の全てが揃っている。
NPCとはいえ人も沢山いる、ラジオも朝から晩まで世界から発信されて、電気も水道もガスも通っているし、店は何でも揃う。
そんな世界にソラは適応していた。
「ふぅ……今日も良い天気だな」
「……ん?」
「なんだこれ……鳥?」
空から何かが飛んでいた、スズメのように見えたが……
「まあ……空だから鳥のようなものが飛んでいてもおかしくはないか」
すると、その鳥はソラに向かって急降下してきた。
それはまるで猛禽類が獲物を狙うかのように。
そしてソラは気付く。
この鳥は……自分を狙っていることに。
ソラは逃げようとするが、それよりも速く鳥は迫ってくる。
「なんでこんな事に……仕方ない、1回サテラビューワールドから出ないと!」
ソラは能力を解除して、任天堂世界に再び戻っていく………
「今だ、見えた」
「え………?」
その瞬間、何かが通り過ぎていくのが見えたが……あまりにも早くて見えなかった。
だが、それを考えてる暇はなかった。
突如首の後ろを強く叩かれてソラは既に失神していた。
「よし、とりあえず作戦は成功した」
「すまぬな四柳、そなたもここに構ってる暇は無いというのに」
「気にするな、俺とお前の仲だ……俺達では目の届かないところを管理してくれる事は本当に助かっている」
「お前もいい仲間持ったみてえだな、どうだ?忍者」
「絡繰雀の見た通りでござる、しかしまさかこのような奇っ怪な能力が………」
「数年生きてきて任天堂戦士は何でもアリとは思っていたが、俺もここまでの奴は初めて見たな……ソラ・テンドウ……」
「七夜殿、これからどうするのでござるか」
「決まってんだろ、今あの空間に入った山吹が帰ってきてから……全部問いただす」
「なら、それまでに言っておきたいことがある……」
「どうした、ノブナガ」
「…………我らア・カウント・バーンは、近い内にある程度の住民を連れて別の移住区を探そうと考えている」
「そうか、お前も奴らが怪しいと踏んでるか」
「マスターアマゾネスはもう駄目だ、このままでは全員死ぬ」
「確かに……あいつらは最近変だとは思ってたが」
「ああ、最近の騒ぎはいつも奴らの周りで起こっている……このままでは無関係な住民にも被害が及ぶだろうと考えた」
「……分かった、お前の事だ、考え無しには動いていない」
「今はノブナガって呼べばいいんだったか、アテはあるのか?」
「ああ、少し長い度になるかもしれんが責任をもって守り抜く」
「なら、いいか……問題はこっちだな」
四柳と呼ばれた男は地面を指さして言った。
そこにはソラが倒れている。
………………
ソラは目を覚ました。
そこは先程までいた場所とは違い、薄暗い洞窟のようなところにいた。
壁は岩肌むき出しで天井からは水滴が落ちてくる。
手足を動かそうとするが、何かで拘束されている。
それは鎖のようで、ソラは両手両足を広げて磔にされていた。
そして目の前にいるのは、山吹と四柳、そして前に四柳のそばに居た男。
「こ……ここは?」
「俺達の一時的なアジトだ」
「よう、ソラ・テンドウ……あん時以来だな、俺の方から自己紹介が遅れていたが、俺の名前は城之内七夜……いや」
「こっちでは桜井七夜の方が良かったな」
「桜井……?アジトって、ここは灯火の…」
「『灯火』ってのはウソだ、俺達の本当の組織名は『F.D.X』……この任天堂世界で、全てを支配して管理する存在……って言うとワルっぽいだろ?」
「一体なんなんだ、これは……なんで山吹さんが」
「ノブナガしか話していないが、山吹な……元々F.D.Xのメンバーだ、移住区に問題があった時すぐ俺らに報告出来るようにな」
「簡潔に簡単に言い渡せば、スパイだ」
ソラは何も言わずにただ、山吹を見る。
山吹は下を向いていて表情は見えない。
だが、震えていた。
ソラは理解していた。
山吹は自分を殺そうとしている……そんな気がした。
「あの……ちょっと聞きたいんですが、何か勘違いしてません?俺は、何も皆に酷いことした覚えは……」
「覚えはない、か……まあ確かに俺達がそう思ってるだけで、お前からすればそうじゃないと思うだろ、誰だって」
「だからわざわざ、俺達が時間を割いて一から説明してやるんだぞ?お前がこの任天堂世界においてとんでもない事をしたのかってのをな」
………………
- Re: スマブラ戦記 サテラビュー ( No.4 )
- 日時: 2023/05/24 23:53
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
ソラは両手両足を拘束され、尋問をされている………
「まず、お前の能力について聞きたいだが」
「え、えっと………エキサイトバイクの任天堂戦士です、移住区から遠くまでバイク飛ばして、食糧を運んできたりとか………」
「……………」
七夜と四柳は神妙な表情でその話を聞いていた。
「お前は任天堂世界全体を知らないから無理はねえが……残念なことにエキサイトバイクの任天堂戦士はもう見てるんだよ」
「え……」
「基本、同じゲーム、つまり同じ能力のの任天堂戦士はいない、人口こそ開発された任天堂ゲーム以上に見えるが、案外なんとかなっている」
「エキサイトバイクシリーズはおよそ4種類、4人とも俺らはもう目撃してる」
「だからお前の能力はもっと『別』にあるってわけだ」
「…………」
「今度はこっちから答えてやる、俺達や山吹がおつからお前を疑っていたのか……だが」
「あいつは移住区に来てからずっとお前が妙だと思ってたらしいぞ」
「!?」
「ま、お前も隠蔽工作とかはよくやれてたよ、わざわざマイホーム作ってまで人混みを外れて……」
「家具にある程度痕跡や汚れを残して、いかにも生活していた風を装っていたが俺には偽装って分かる、これに関しては俺も経験があるからだがな……」
「………あとは、あとは何がおかしかったんですか?」
「お前がそのバイクで運んできていたっていう食糧」
「え!?」
七夜の質問に驚くソラ、それはまさに図星だったからだ。
確かにソラはバイクで食糧を運んでいたのだ。
しかし、それの何が怪しいのか? まさか、そんなことはありえない! と、思っていた。
「あの移住区はどうぶつの森の世界を元に作ってる……となると食糧は自然由来のものだ」
「具体的にはフルーツや魚…あそこは『とびだせ どうぶつの森』だからマリンスーツを着ればカニやホタテなんかも得られる」
「もちろん別世界でちゃんとした料理も命懸けで回収している」
「だからよ、見た目で分かんなくても……それがコンビニ弁当だって分かるんだよ、味だけで」
「!!?」
「味に関しては好みの問題だが、添加物は多いし濃い……山吹からの弁だが、お前が持ってきた食糧を口につけていたのは最初の内だけだ」
「そんなもんを毎日食う訳にもいかねえんだよ、こっちは」
「そんな……まさか分かることは……」
「………こいつは気にしてないのか?」
「恐らく毎日食ってる側だな、彼は」
ソラの目の前に立っている七夜と四柳は深刻な顔をする。
彼らはある可能性を危惧しているようだ……。
「決定的になったのは、初めて俺と会った時のお前の発言だ」
「え?」
「お前は俺が灯火に誘った時にこう言ったな、今の所は快適と」
「快適ですよ……のんびりできるし、戦わなくていいし、仕事もしなくていいなら……」
「二日三日ならそんな態度も取れるだろう、だがお前は移住区にも来て1ヶ月」
「俺達は何の脈略もなくここに運ばれ、いつ日本に帰れるかも分からない状況になる、いつ死んでもおかしくない過酷な場所だ」
「だから、移住区に居る奴らは必ずこう考えるんだ」
「早く帰りたい」
「何日も経った上でここが快適だ、なんて本気じゃなくても思うはずがねえんだよ、それが任天堂世界だ」
そう言うと七夜はソラの拘束を解く。
そして四柳はソラに話しかけた。
どうやら彼の目的はソラの拘束ではなく、この場に居させることにあったらしい。
七夜は2人を背にして洞窟の入り口に向かう。
ソラは恐る恐る、四柳に聞いてみた。
「一体何が目的で……?」
「分からないのか、ある意味ではおめでたい男だな」
「これまでの話から推測して俺達が何を考えたのか分かるか?」
「さあ………」
「度々消えて、任天堂世界には無いはずのコンビニ弁当を提供し、更に快適と言うくらいには不便のない生活を送ってると見える」
「山吹はこう考えたんだよ……お前は本当は現実世界と任天堂世界を行き来出来るんじゃないのかって」
「!?」
「仕事だから当たり前だが、山吹はお前に対して内心憎悪を抱いていたぞ、自分達を連れ出すことも出来るのにそれをせず、神様気取りでもしてるかのようにとあんなものを提供……」
「ま、待って!!待ってくださいよ!」
「正直に言いますけど俺の能力はサテラビューといって、仮想世界を作ってそこに住んでいたのであって、そんな……」
「ああ、それは知っている、見たからな」
「見た……?」
「ノブナガも随分優秀な仲間を得たようでな、お前が世界に入る瞬間、カラクリを入れてそこからお前の仮想空間を見させてもらった」
「そして、お前がカラクリに襲われ逃げる瞬間に山吹が入れ違いでサテラビューワールドに入った」
「………ああ、もしかしたらと思ったんだがな」
「もしかしたらって……現実に帰る方法?そんなの脅威とやらを倒せばいいんじゃないんです?俺は能力的に無理で……」
「簡単に言ってくれるな……」
四柳は呆れたようにため息をつく。
そして帰ってきた七夜は話し始めた。
それは七夜と四柳が初めて出会った時のこと。
そして……その僅かな時のこと。
「脅威……簡単な表現だな、脅威!!そんなもんをぶっ潰せば帰れると思ってた!!誰だってそう思う!!」
「けどな……そいつは想像の遥か上を言っていた、どんな奴でも指一本で虫けらのように散っていく……それが任天堂世界の『脅威』だった」
「俺と四柳、途中で抜けたがノブナガもかつては脱出を夢みていたがそれは不可能という結論に達して……」
「こうやって!!!何十年も自営組織という名の世界への共存……いや、服従をして必死に生きてきた!!」
「え、ちょっと……服従……何十年!?まさか、貴方達まだ俺と同じくらいの歳……」
「……任天堂世界には、寿命はない」
「若いやつは一生若いままだし、死にはするが天寿を全うする事は絶対にない」
「試しに山吹桜がいつから任天堂世界にいたか教えてやろうか……?」
七夜はソラに語りかける。
七夜はその言葉を聞いて少しだけ考える素振りを見せる。
しかし、すぐに答えは出た。
「18年6ヶ月4ヶ月16日7時間50分42秒」
「今この質問をした直後のタイムだ」
「っ……!?」
「当然、俺や四柳なんかはその二倍近くは生きている、俺ら以上だって居る」
「あいつらも奥底で考えてんだ、このまま永遠にここで生きるしかないのか、あるいは数百年はここに居たままなのか」
「だが移住区の奴らは任天堂世界に無いモノを見た瞬間、希望が湧いたんだ…もしかしたらいけるんじゃないか、他に帰る方法があったんじゃないのかと」
「移住区どころか任天堂世界の全てがそう思ってたんだ」
「ぬか喜びさせやがって!!」
七夜はソラに怒りをぶつける。
それは今までずっと溜め込んでいたものなのだろう。
彼はソラに近づき胸ぐらを掴む。
そしてソラの顔面に拳を入れようとするが……
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」
「現実に帰れるかもしれないとか、それは向こうが勝手にそう思っただけじゃないですか!!」
「俺としてはただ、サテラビューワールドでずっと暮らしていたいと思って安全の為に色々手を尽くしただけなのに!ア・カウント・バーンの為になることもちゃんとやって助けてもらおうと……」
「………」
「確かに俺達が勝手に勘違いしただけというのは正しい考えだ」
「だが……これだけは言っておく、自分1人だけが楽に過ごしていればいいものを、その立場で誰かに助けてもらい甘い汁を吸って生きようとするなんて……都合のいい事があると思うな」
「………どうするよ、こいつ」
「別に俺達もそこまで頭にきている訳でもない、それ以上に失望とガッカリ感が半端ない」
「……た、助かる?」
「ポジティブに考えるな、血と命と人生を懸けて、明日も生きられるか分からない世界でそれぞれの希望と帰りたい理由のために足掻いている……それが任天堂戦士だ」
「もうあそこにはお前の居場所は無い」
七夜は冷たく言い放つ。
ソラは七夜の言ったことがショックで何も言えない。
すると七夜は洞窟の奥に歩き始めた。
四柳もそれに続く。
七夜は振り返りながらソラに言う。
「一応言っとくが、ノブナガの組織はあの移住区から出ていくつもりらしい、まあそれに関してはお前の件とは無関係とだけ言っておくよ」
……
七夜の言った通り、移住区に戻っていくと大半が出ていく準備を始めていた。
近付こうとしたが、誰もが自分を見向きもしなかった。
裏に見てみると、自分が今まで移住区に渡していたコンビニ弁当の残骸が散らばっている。
恐らく、これからは自分達だけでどうにかしろということなのだろう、本当に居場所が無くなりつつあった。
ソラは絶望的な気分になりながらも、マイホームに戻ろうとする、すると山吹にまた会った。
「山吹さん」
「…………」
「貴方は自分勝手な人です、こんなことならずっと閉じこもっていれば良かったのに、私たちに助けてもらいたいなんて烏滸がましいです」
「どうしてそんな………」
「じゃあなんで、貴方は自分の能力を我々に打ち明けなかったのですか?」
「剣丸さんの絡繰雀も入れましたし、何より私は貴方と入れ違いでサテラビューワールドとやらに入れました、街1つ分を再現した、ひとりで住むにはだだっ広すぎる大きな空間」
「移住区の1つとして運用できるレベルです、これさえあればもっと戦えない人達が助かった……私達だって本当はカツカツなんですよ?」
「それは……俺以外に入れると思わなかったからで………」
「卑怯なウソです、ここでも自分一人しかいないマイホームを作ってもらったくせに何を言ってるんですか、そこまでしてサテラビューワールドの存在を私達に隠したかった、独り占めするために」
「……私、子供の頃は小さい家暮しで、自分の部屋も無く我慢して生きてきました」
「大人になったら、おっきい自分の家を建てて、そこで家族と楽しく生きることが小さいことからの夢でした」
「正直言うと貴方がどんな人か?って聞いた時からもう軽蔑してました、あれが嘘でも本当でももう知ったことはありません」
「何にせよ貴方はそういう人でした、自分の事しか考えられない、自分だけが良ければそれでいい」
「ち、違う……」
「貴方みたいな人は……ずっと独りで生きててください、せめてもの情けで私の作った人工衛星は壊さないでおきましたので」
山吹はそう言い残し、去って行った。
ソラはその場に座り込む。
「………今は、サテラビューワールドに行こう」
………
あの移住区からア・カウント・バーンの面々は戦えない人々を連れてあの場所から全員出ていってしまった。
マスターアマゾネスが残ってはいるが、リーダーのイツメン以外は誰一人として見たことがないし、イツメンは危険人物候補。
ソラは守ってもらうツテが完全に無くなってしまった……
「何が……まずかったんだろうか……」
「……」
「俺はただ……幸せになりたいだけなのに……それだけだったのに……」
「……」
「……とりあえず、帰ろう」
ソラは立ち上がりマイホームに歩いていく。
すると……
足が…動かない、それどころかお腹に違和感が感じる、何かが乗っかっているような……
確認する暇もなく……ソラは目を大きく開き、恐怖で震えて地に付した。
- Re: スマブラ戦記 サテラビュー ( No.5 )
- 日時: 2023/05/26 16:18
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第5話】
「う……」
ソラは気が付くと、黒くて雰囲気が重い謎の場所にいた。
見渡す限りの闇に、壁や天井があるのかも分からない。
「ここは……どこだ?」
「目が覚めたようだね」
突然の声に驚き、思わず手を伸ばす。
その声は、目の前にある黒い箱から聞こえてきた。
声は加工されていて、誰のものなのか分からない。
「これは一体……」
「僕の名前は戸北ユカ、このファミリーでは一応1番上の存在だ」
「ファミリー……?」
「そう」
「コレクターズファミリー、まあ現実世界で言えばヤクザとかマフィアになるかも、どの世界にも表と裏があり、その裏の全てがこのファミリーにある」
「………!!」
ソラは危険を感じようとして逃げ出そうと手を伸ばすが、体が動かない。
「やめておいた方がいい、君は分かってないと思うが信じられないくらいボロボロ」
「任天堂世界に連れていかれた人間に寿命は無く、永遠に歳を取らないが病気にはなるし普通に死ぬ」
「とは言っても我々は何もしていない、君は前々からコンビニ弁当を毎日食べていたようだから、そのツケが今になって来たんだろう」
「………」
「言いたいことは分かる、何が目的か……だよね」
「移住区からア・カウント・バーンが出ていった、ファミリーとしては都合がいい事だ、表沙汰にはしていないがマスターアマゾネスとはちょっとした縁もある。」
「今君の事で任天堂世界は持ちきりだよ、街一個分の仮想空間を作れるそうだね、しかも現実世界に繋がるものも何かしらある……」
ユカは言った。まるでゲームでも楽しむかのように。
顔が見えなくても分かる、それは純粋な悪意だった。それは純粋すぎる殺意だった。
その笑顔のまま、日常会話をするかのような声で続ける。
「表も裏もそうだが、人が住む所ってのはそんなに無いんだよ、任天堂世界は」
「実際どんな感じなのかな、入ってみせてよ、そのサテラビューワールドっていうの」
そう言うと、ユカは指を鳴らすような動作をした。すると、黒い箱の上に渦が現れる。
そこに入ってみると……なんと、サテラビューワールドに通じていた。
「なんで……まだ能力は発動していないのに……」
「ふむ……なるほど、街1個分の広さはあるけど入れるところはそんなにない、対応してるのはコンビニくらいで他はほぼハリボテみたいなもの」
「まあ使えなくは無いけど、もっと面白い使い方がある」
ユカは再び指を鳴らした。今度は黒い箱の下に渦が現れた。
そしてその中に入ると……なんと、さっきの場所に戻ってきていた。
「えっ!?どうして……」
「君の能力は特定の場所に移動するんだろう?これが現実に繋がってると勘違いされてたんだから不思議なものだ、何があったの?」
「………現実世界じゃあまり上手くいかなかった、就職は失敗するし、家事も出来ない、そんな中急にこの力を得て、現実よりずっと快適で…」
「一生ここで過ごせたら幸せじゃないかと思って、安全を維持するために守ってもらおうとしたら……上手くいかなくてこの結果に」
「ふむ……」
ユカは興味無さそうな返事をして話を聞いている。しかしソラの方は、自分がやった事に後悔していた。
あの時、ちゃんと上手く能力を使っていればこんなことにはならなかったはずだ。
自分の意志が弱かったせいでこうなった……。
「愚問だね…自分自身に力もないのに理想の生活なんて出来るわけが無い、外付けバッテリーが便利でも充電対象がゴミ性能じゃ豚に真珠だ」
「まあいいや、今度は僕の方から仮想空間に案内するよ」
「え……まさか同じ能力を?」
「元になったゲームこそ違うが、仮想空間に入れる能力はもう1つある……さあ、入りなよ」
ソラとユカは同じタイミングで指を鳴らす。
すると、2人は仮想空間へと転送された。
「ここが……君の能力で入れる仮想空間?」
「そう……名前は『ともだち島』、僕が作った能力だ」
そこに入って、ソラは思い知らされる。
自分の能力で一生快適に過ごすなんて、所詮思い上がりだったのだと。
ここまでやらないといけない、ユカほどの力が……
「君の能力が作る空間が街一個分なら、僕は島1つ分、住処はマンション一択だけど最大100部屋は住める、飲食店はもちろん服屋もインテリアショップもあるし、娯楽も喫茶店に遊園地、擬似的なカラオケショップまであるんだ」
「50年はここで過ごしてるけどイベントも充実してるし、中々飽きないんだよ」
「あ……あああ……」
圧倒的な差を思い知らされる、逃げ出したかった。しかし体が動かない。
「どうしたの?」
「……動かない、一体何をしたんですか……助けてください」
「ああ、そういえば任天堂戦士としての僕の能力名を言ってなかったね」
「僕の能力の元になったゲームは『トモダチコレクション』、この通り舞台になった島に仮想空間として入れる……だけじゃない」
「僕がトモダチになった任天堂戦士をマンションに1度でも招いて部屋を貸すことで能力をコピー出来る」
「つまり管理人の僕を除いて99部屋、99種類の能力をコピー出来るんだよ、あっ、君の部屋は結構高いけどごめんね」
ソラの震えが止まらない、友達なんて言うと響はいいかもしれないが相手は裏社会のトップのようなもの、命がいくつあっても足りない。
その怯えを見透かしたようにユカが笑う。
そして、手を伸ばした。
すると、ソラは一瞬にしてどこかへ飛ばされてしまう。
「助けて欲しいって思ってるね?悪いけど僕は最後に倒されるのがセオリーのアニメな悪役とは違う、生き延びるために最善手を1秒足りとも油断せず打つ、これが快適に一生生きるというコツだ」
「もう全部終わってるよ」
………
任天堂世界では、ユカが巨大な氷山を眺めていた、その中にはソラを含めた数人の任天堂戦士がいる。
「トモダチの判断は僕の独断だ、いいなと思えばそばに置いとけばマンションの部屋を与えるだけでコピー出来る」
「君はここに来る前からコンビニ弁当を食べてて体がボロボロだったからね……能力自体は便利だし、死んでもらっちゃ困る」
「君に会うまでにトモダチは沢山作っておいたんだ、【ドリームアドベンチャー】で君の夢を操作して、その間に【アイスクライマー】で君を冷凍保存させた」
ユカは言った。まるでゲームでも楽しむかのように。
顔が見えなくても分かる、それは純粋な悪意であり、純粋すぎる殺意だった。
『戸北ユカ』という人間の実態を知るものは誰一人いない、初めて任天堂世界に降り立った時は齢僅か7歳。
そのまま数十年…あるいは百年以上、精神だけがすり減り、永遠に子供のまま裏の世界を支配した彼の姿は、まさに魔王と呼ぶに相応しいものだった。
そんな彼が今何をしているのかと言うと……
「ふむ……」
マンションの一室でのんびりと過ごしていた。
「……」
彼は常に孤独だ、他の誰にも心を開かない。
脱出なんて興味が無い、もう既に帰れるかどうかは諦めている。
「サテラビュー……周辺機器の任天堂戦士もいるとは、まだ情報が足りなかったな……」
「ラジオと連動してゲームを配信……これで僕は、ラジオ内のサウンドリンクゲームも全部コピーできるようになった」
「と言っても……ラジオ番組だし使える機会はそんなに無いんだけど」
「……いや、これは……なるほど、テンドウ・ソラは気付いてなかったんだ、この能力の真意に……」
………
これから決まりきっていることを話す必要も無い。
ソラ・テンドウは氷山の中で死ぬことも許されずユカのトモダチとして世界も能力も利用され続けた。
遠い未来に神にも等しい存在やある救世主達の登場によって任天堂世界が崩壊して、遂に訪れる脱出の機会まで……
………
「あ……」
「あーーー」
ソラ・テンドウもずっと氷の中に居た為、生きて日本に帰還した。
しかしソラは何もする気が起きなかった。
サテラビューワールドにまた入ることは出来たが、今更帰ってきたところでどうしようもならない。
文明でも進んでくれれば良かったのだが、残念なことに任天堂世界では何十年も経っていないのに現実世界ではたった数ヶ月程度。しかし、それでもソラは満足していた。
「あの時の俺は……馬鹿だったなぁ」
「……」
「……俺、なんでこんなところにいるんだっけ?」
「……」
「あ……そうだ、思い出した」
「俺、コンビニに行こうとしたんだった、新しい弁当食べたいな」
「でもここどこだ?なんか見覚えのある場所だけど……こんなとこあったかな?」
「まあいいか、腹減ったし、早くコンビニ探さないと」
ソラがひたすら、ひたすら歩いていて
すれ違いざまに何かにぶつかる。
「うっ……!?」
その拍子に、腹部に包丁が突き刺さって……
意識が途切れる。
そこにいたのが、ユカとも知らずに。
ーーーー
「意外とあっさりだった、本当に夢でも強いショックを与えたら亡くなったりするんだ」
「不思議だね、もう任天堂世界はまだ残ってないのに僕らに能力は残されたままなんだ」
「だから僕もまだトモダチが持っている99個の能力が未だに使える」
「…………感謝するよ、ソラ・テンドウ」
もう動かないソラを前にして、ユカは呟く。
そして、ソラの死体を眺めながら、少し考えた。
ソラは死んだ。
このまま放置するのは勿体無い、せっかくなら有効活用したいものだ。
過去の経験上、コピー元であるトモダチが死ぬと自分も能力を使えなくなるので、最大限生かす必要があった、それ故に過去にあれだけの事をした。
だが実の所それも必要なくなった。
「ソラは気付いてないよね……サテラビュー専用のゲームカセット」
「電波を受信して、ダウンロードしたものを入れるなら入れ口が必要になる……メモリーパックがある」
「凄いね、僕自身や能力含めて全部人工衛星の電波にバックアップを残せた」
「君のおかげで僕は死んでもメモリーから復活出来たし、任天堂世界においても死人として扱われたから後はともだち島で悠々と脱出まで過ごせた」
「分かるかい、何事にも邪魔されず、誰かに守られて一生平穏に快適に生きるっていうのは………こういうことなんだよ」
「と言ってももう聞こえないか」
「じゃあ、僕は君を反面教師にしてまた第2の人生を歩むよ」
「ソラ・テンドウ、君から学んだことは、1人では決して生きていけないこと、欲をかくと却って面倒になること、そしてコンビニ弁当は毎日食うものじゃないってこと、それだけだよ」
ユカはそう言ってその場を後にする。
その足取りは軽く、心の底から幸せを感じているようだった。
こうして、ソラ・テンドウという人間は結局、生き延びたことも死んだことも知られず、ただの有象無象として忘れられていくのだった。
【スマブラ戦記 サテラビュー】
END
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