二次創作小説(新・総合)

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赤ずきん -ダークサイド-(完) 【感想募集中!!】
日時: 2018/03/13 21:30
名前: 全州明 (ID: CJrJiUcR)

はい、二年ぶりでしょうか。全州です。
今回は、【原作者:CHARON様 原題:赤ずきんダークサイド】における六つのエンドをすべてつなげるという暴挙に出ました。
上記フリーゲームの二次創作政策には許可も報告も必要ないとのことですので、記載させていただきます。

(参照:○ttp://nekocharon.web.fc2.com/)○の部分をhに変えて検索してください。
何らかの問題が発生した場合、直ちに削除します。
以上です。どうぞよろしく。


※一部話が飛んでいたので直しました。ナンバー3だったと思います。ごめんなさい。

Re: 赤ずきん -ダークサイド- ( No.1 )
日時: 2018/02/19 22:20
名前: 全州明 (ID: CJrJiUcR)


――――昔々、ある森の中に、〝赤ずきん〟という、小さな女の子が住んでいました。
 煙突えんとつのついた赤い屋根のおうちで、赤ずきんは、お母さんと一緒に暮らしています。
 そんな、ある日のことでした――――


「――――いいですか、赤ずきん」
 台所のほうから、お母さんの声がしました。
 赤ずきんは、視線だけで答えながら、飲みかけのミルクをテーブルの上に置きます。腰かけた丸い椅子の上で、小さな足がふりこのように揺ゆれていました。
「おばあさまがご病気になられたの。お見舞いに行ってあげなさい」
 言いながら、ゆっくりと近づいてきたお母さんの手には、大きなカゴがにぎられています。受け取ろうと椅子からおりた赤ずきんに、お母さんは静かに言い添えました。
「あぁ、オオカミには気をつけてね。――――絶対に、よりみちしてはいけませんよ?」
 カゴを受け取ると、ずっしりとした重みが伝わってきました。カゴには、花の模様がぬわれた白い布がかけられていて、中身はうかがえません。『何が入っているの?』と、首を傾かしげる赤ずきんに、お母さんは、にっこりと笑って答えました。

           *

「行っておいで。それまで家に帰って来るんじゃないよ」
 赤ずきんがお気に入りのブーツをはいて家の外に出ると、お母さんは、そう言ってカギをかけてしまいました。怖くなった赤ずきんは、困ったように辺りを見回します。
 しかし、ホコリをかぶった空っぽのタルや、お父さんが使っていたオノ、きれいに積まれたまきがそのままになっているだけで、不安はいっそう大きくなっていきます。
 赤ずきんは、小さなため息をつくと、木の影が伸びる暗い道を見つめ、あきらめたように歩きだしました。ふくろうが鳴き、どこからか吹いた風が、まぶかにかぶった赤いずきんと、スカートを揺らしました。

Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.2 )
日時: 2018/02/20 19:47
名前: 全州明 (ID: CJrJiUcR)

 しばらく歩いていると、しだいに日が差しはじめ、いくらか明るくなりました。それでも、道の両端に並ぶ大きな木々が、赤ずきんの通る道に薄暗い影を落としています。
『オオカミには気をつけてね』
 手前のやぶががさがさと震え出し、赤ずきんの胸に、お母さんの言葉がよみがえります。赤ずきんは、確かめるようにカゴを握りなおしました。しかし、現れたのは、オオカミではありませんでした。
「あ……」
 姿を見せたのは、瞳の赤い、真っ白なウサギでした。恐る恐る手を伸ばすと、ウサギは、しげみの奥へ引っ込んでしまいました。
「待って」
 心細くなった赤ずきんは、お母さんの言いつけを忘れ、しげみの中へ入って行ってしまいました。
 ウサギを追いかけ、うっそうとした森の中を駆け回っていた赤ずきんでしたが、不意に視界が開け、日の光がまぶしいくらいに照りつけました。木々やしげみに囲まれた、花畑の中ほどで、ウサギは気持ち良さそうに眠っています。
 そっと忍びより、首元を軽くなでると、温かくやわらかい羽毛が手のひらをくすぐります。
「お花、つんでいこうかな……」
 思い立った赤ずきんは、ちょうちょのとまっていない花を数本選び取り、くきで束ねてカゴに載せました。
「バイバイ」
 もう一度頭をなでようとする赤ずきん。すると、突然起き上ったウサギが赤ずきんの指に噛みつきました。
「痛っ!」
 慌てて振り払うと、指先から赤い水滴が飛び、驚いたウサギはしげみの奥へ逃げていきました。見ると、流れ出た血が、指のつけねまでしたたり落ちています。手のひら全体にどくどくと脈打つような感覚が広がり、赤ずきんは青ざめて、血だらけの指をくわえました。さびた鉄のような苦味に、たまらず顔をしかめます。
 そのうちに赤ずきんは、一人で座り込んでいるのが怖くなりました。急いで立ち上がると、花畑の奥に見えた道へ、わらにもすがるような思いで走り出しました。


――――それから、どれほどの時間が経ったことでしょう。赤ずきんは、薄暗い森の小道を、未だ抜けられずにいました。何度引き返そうとしたことでしょう。何度立ち止ったことでしょう。赤ずきんは、とうとう疲れ果て、その場にへたり込んでしまいました。
 そんな時、ふと思い出したのは、お母さんの言葉です。
「おべん、とう……」
 お母さんは、赤ずきんのために、お見舞いの品と一緒にお弁当を入れていたのです。赤ずきんは少しだけ元気になって、かぶさった白い布をどかすと、ブドウ酒のそばのきんちゃく袋を手にとり、袋の口をゆるめました。
「えっ?」
 赤ずきんは、口を開けたまま固まってしまいました。
 ずしりと重い、きんちゃく袋には、食べ物など入っていませんでした。
 赤ずきんが、戸惑うように袋から手を離すと、中身がいくつか転げ落ち、ぶつかりあって、かたく冷たい、無機質な音を立てます。

 ――――そこにはただ、袋いっぱいの小石が、敷き詰められていました。

Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.3 )
日時: 2018/03/01 19:43
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)

「…………え?」
 さえずる小鳥の声に交じって、一際鋭い鳴き声が響くと、慌てて逃げ出す小鳥たちの群れが、空の向こうへ吸い込まれていきます。赤ずきんは、我にかえるようにびくりと肩を震わせると、すいてしまったおなかを押さえ、野いちごを求めて歩き出しました。同じ方角の空に、くすんだ雲が漂ただよっていましたが、うつむいたままの赤ずきんが、気づくはずもありませんでした。


「迷子かい? お嬢さん」
 開けた通りに出た矢先、そばの切りカブに座っていた男に声をかけられました。縮ちぢこまり、俯き続ける赤ずきんに、男は構わず続けます。
「私は猟師だよ。この辺りをテリトリーとしているんだ。……おや?」
 猟師はふと、赤ずきんのカゴに目を止めると、首を傾げました。
「ブドウ酒など持ってどこへ行くんだい?」
 赤ずきんが、お母さんにお見舞いを頼まれたことをやっとの思いで伝えると、猟師は腰を浮かし、赤ずきんの顔を覗き込んできました。赤ずきんは、戸惑い、後ずさろうとしますが、すぐ後ろでオノの刺さった切りカブが立ちふさがっています。
「――――ほお。お婆さんのお見舞いかい。たった一人で、偉いねぇ。お婆さんのお家はどこにあるんだい?」
 答えずにいる赤ずきんに、猟師はにっこりと笑みを作ります。
「わかったよ、ありがとう。赤ずきんちゃん。せっかくだから、少し寄り道をして行ってはどうかな」
 言って、猟師はふところから葉っぱでくるんだ包みを取り出すと、ひざの上に乗せて広げます。そこには、おいしそうなおにぎりが三つ、並んでいました。苦しいくらいにおなかのすいている赤ずきんでしたが、緊張のあまり口に出すことはできません。猟師の、どことなく人相の悪い目鼻立ちや、背中からかけた大きな猟銃が、いっそうそれを難しくさせます。
「……あ、そうそう。この森にはオオカミが出るから、気をつけるんだよ」
 日焼けした黒い大きな手でおにぎりを一つわしづかむと、猟師はそれを一口で平らげてしまいました。一呼吸おいて二つ目に手をかけた猟師に、赤ずきんは精一杯声を絞り出します。
「……あっ、あの――――」
「――――ん、なんだい?」
 しかし、猟師の鋭い瞳に射抜かれると、赤ずきんはまた肩を縮こまらせ、すっかりおびえてしまいます。そのままふるふると首を横に振ると、赤ずきんは通りの奥に目をやり、逃げるように駆け出しました。

 ――――赤ずきんの小さな背中を見届けた後、猟師は、小さな含み笑いを浮かべました。

           *

 開けた通りをしばらく進んでいると、ついに、青い煙突屋根の小屋が見えてきました。おばあちゃんの家に着いたのです。赤ずきんは空腹も忘れ走り寄ると、扉の前に立ちノックします。
 しかし、返事はありません。不思議に思った赤ずきんが、もう一度ノックしようとしたとき、扉が、ひとりでに開きました。
 そしてその先では、血だらけになったおばあちゃんが倒れていました。
「おばあちゃんっ!?」
 悲鳴にも近い声を上げ、小屋に駆け込む赤ずきん。おばあさんの体は、凍こおったようにひんやりとしていました。雲に隠れて弱くなった日の光に、流れ出た血が不気味な光沢を帯びています。あまりのことに、赤ずきんは、言葉を失い青ざめてしまいます。
「死んでいるね」
 小屋の中、それも、おばあさんのベッドが置いてある方から当然のように現れた猟師が、こともなげに呟きます。
「……かわいそうに。きっとオオカミに殺されたんだろう」
 赤ずきんには、どうしてか、空々しく聞こえました。
「なんだい、私を疑っているのか? 生意気な小娘だな、私をそんな目で見るなっ!」
 下を向き、視線を泳がせる赤ずきんに、突然、猟師が怒り出しました。振るわれた腕が本棚の上の小物に当たり、弾き飛んだ砂時計が、壁にぶつかって耳障みみざわりな音を立てます。声にならない悲鳴を上げる赤ずきん。逃げ出そうとして足をくじき、尻もちをついてしまいました。
 見せつけるように猟銃をかかげ、猟師がゆっくりと迫ってきます。狭せまい小屋の中、赤ずきんは、あっという間に壁際まで追いつめられてしまいました。
「……あぁそうだ。君にはまだ、私が何を狩る猟師なのか、言っていなかったね」
 猟師は、邪魔な猟銃を背中にかけてからさらに距離をつめると、声を立てて笑い出しました。
「――――それは……お前のようなガキだよ。殺されたくなかったら、大人しくしていろ」
 濁にごった邪よこしまな視線が、赤ずきんのスカートから伸びた、白い細枝のような足に注そそがれます。
「諦めろ。子供の足じゃ、私には勝てないよ。君はどこにも逃げられないさ」
 言いながら、猟師は入口の扉を左手で閉め、カギをおろしてしまいます。
 その時、赤ずきんが扉を横目で盗み見たのを、猟師は見逃しませんでした。
「……逆らうつもりか? ガキの分際ぶんさいで!」
「きゃっ!?」
 突然腕を掴つかまれ、赤ずきんは、たまわらず声を上げます。手から離れたカゴが転がり、中身が床の上に散らばってしまいました。
 猟師は血走った目で笑いながら赤ずきんの髪を掴み、無理やり上を向かせます。
「いいか、もう一度だけ言う。殺されたくなかったら、俺の言うことを聞け! お前は一生、俺の奴隷だ!! わかったな!?」
 震え上がる赤ずきんの胸ぐらをつかみ、耳元で叫ぶ猟師。そのまま両手に力を込めると、シャツのボタンがはじけ飛び、赤ずきんの小さな胸元がはだけてしまいました。
 暗い小屋の中に唯一灯った赤いランプの火が、露わになった雪のような肌を、あやしく照らし出します。猟師は、薄闇の中に浮かび上がる少女の裸体を舐めるように見つめながら、しだいに激しく息を荒げさせ、やがてその絹きぬのようにたおやかな肌を貪むさぼり始めました。
 赤ずきんは絶叫のような悲鳴を上げ、必死に抵抗します。しかし、大人を相手に敵かなうはずもありません。猟師は、赤ずきんの手足を抑え込むこともせず、ただ、自身の欲望を満たすことに夢中になっています。
 そんな中赤ずきんは、ふとすぐそばに、あのきんちゃく袋が転がっているのに気がつきました。咄嗟とっさにつかみ取ると、赤ずきんはそれを猟師の側頭部に叩きつけました。
「ぐっ!?」
 細身の裸体に馬乗りになっていた猟師は大きくバランスを崩し、ベッドに角に頭を強くぶつけてしまいました。衝撃でそばにあったランプが落ち、破片とともに、ランプの火が猟師の頭に降り注ぎます。それは髪の毛に引火してあっという間に燃え広がり、首から上が火ダルマと化してしましました。
「――――ぁぁぁぁっっ!!」
 猟師は、激痛のあまり我を忘れ、燃え盛る頭を抱えて獣のように叫びました。そり返ったまま頭から倒れこみ、床の上で転げ回ります。
 その光景をしばし呆然と見つめていた赤ずきんでしたが、一歩後ずさると、もう止まらなくなりました。背中を何度も強くぶつけてようやくドアの存在に気づくと、振り返り、無理やりこじ開けようとします。おろされた古い木製のカギは、二つに折れて壊れてしまいました。
 赤ずきんがドアを開け放つと、外は降り出した雨で真っ暗です。
 背後で香る肉の焼ける匂いにおなかをすかせながら、赤ずきんはまた走り出しました。

Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.4 )
日時: 2018/02/24 21:15
名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)

           *

 息を切らし、ぬかるんだ道を歩いていた赤ずきんは、道の先が馬車でふさがれているのに気がつきました。そのそばにいた二人組の男が赤ずきんに気づき、近づいてきました。嫌な予感が頭を過よぎり、赤ずきんは足を止めました。とはいえ、引き返す気にはなれません。迷っている間にも、男たちとの距離はどんどん縮まっていきます。二人の顔に見覚えはありませんでしたが、悪い予感はいっそう強くなっていきます。
「やあ。赤ずきんっていうのは、君かい?」
 わきの茂しげみに隠れようとしていた赤ずきんの肩を、ひょろ長い長身の男が掴みます。振り向くと、それは二人組のうちの一人でした。となりの大柄な背の低い男が、優しげな笑みを浮かべながら歩み寄ってきました。
「……可哀そうにねぇ。まだ、自分がどういう状況なのかわかっていないようだ」
 強まる大粒の雨の中、遠くの空が瞬またたき、轟とどろく雷鳴とともに、男たちの顔に暗い陰影いんえいを落としました。
「お前は売られたんだよ、赤ずきん」
 ひょろ長い男が目を細めてにやにやと笑います。
「君のお母さんに、十分な金は払ったよ。嘘なんかじゃない、正式な取引さ」
 背の低い大柄の男が、にこやかに語りながら赤ずきんの前に回り込んできました。
「一生、私の元で奴隷として働いてもらうよ。これから君は、死ぬより辛い仕事をするんだ」
「そう。お前の息が止まるその時まで、ずーっとね」
 高笑いする二人の声が、頭の中で幾重いくえにも連なって駆け回り、赤ずきんはめまいに似た感覚に襲われました。

 お花畑で開いたきんちゃく袋――――中には小石がつめられていて、お弁当などどこにもありませんでした。今なら、そのわけが手に取るようにわかります。
 ――――赤ずきんのお母さんは、はなからお見舞いに行かせる気などなかったのです。
 赤ずきんを、人目に付かない深い森の中へ行かせることさえできれば、それだけで良かったのです。もう一生、帰ってくることはないのですから。そして、
「……おっと、忘れるところだった。お前、ブドウ酒を持たされてるんだったな?」
 一緒に持たされたブドウ酒も、当然、お見舞いの品などではありませんでした。

 ――――すべては口実。見せかけだったのです。


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