二次創作小説(新・総合)
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- 【fgo二次創作】影と真実のバルンロンド
- 日時: 2025/02/11 20:11
- 名前: きのこ (ID: cHp/tugs)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
プロローグ
深夜、時計の針が午前2時を指している。
冷たい風が人気のない路地裏を吹き抜け、不気味な音を立てていた。
どこからともなく、湿った地面に靴音が響く。
その音は一歩一歩、迷いなく前へと進んでいる。月は雲に隠れ、世界は深い闇に包まれていた。
「……誰か、いるんですか?」
震える声が暗闇を切り裂く。しかし返事はない。
次の瞬間、霧の中から冷たい金属音が聞こえ、鋭い悲鳴が夜の静寂を引き裂いた。
そして、すべては再び静寂に沈んだ。
第1章
「……というわけで、先輩。どうやらまた奇妙な事件が発生したみたいです」
探偵事務所の窓の外には雨粒が打ちつけている。
どこか寂しげな雨音が室内にこもる湿気とともに重く漂っていた。
「ふぅん……今度はどんな事件?」
藤丸立香は椅子の背にもたれながら、机の上に投げ出された一枚の写真を見た。
そこに写っているのは、黒い霧に包まれた路地裏と、ぼんやりと浮かぶ人影だった。
マシュが小さく咳払いをして説明を続ける。
「目撃証言によると、黒い霧の中に引きずり込まれた人が戻ってこない、とのことです。警察も何度か捜索したみたいですが、原因不明で……」
「うーん……また厄介な事件だね」立香は額に手を当てた。
探偵を名乗り始めてからというもの、日常的な事件よりも異様なものばかりが舞い込んでくる。
何かに呪われているのか、それともただの偶然か。
「先輩、依頼人が待っています」
マシュが扉の方へ視線を向けると、控えめにノックが聞こえた。
「どうぞ」
ドアが軋む音を立てて開き、入ってきたのは、青い鎧に身を包んだ凛とした女性――アルトリア・ペンドラゴンだった。
彼女は静かに頭を下げると、丁寧な口調で口を開いた。
「お久しぶりですね、立香、マシュ。今回の事件は、私たちにも協力させていただきたいと思っています」
「アルトリア……!」立香は少し驚いた表情を浮かべた。
彼女が現れるということは、この事件が普通ではない証拠だ。
「……アルトリアが関わるということは、何か裏がありそうだね」
「ええ、その可能性が高いでしょう」
アルトリアは真剣な表情で写真を見つめた。
「先輩、もう一人、協力者が来ています」
マシュが扉の方へ視線を向けると、今度は豪奢な赤いドレスをまとった少女――ネロ・クラウディウスが堂々とした足取りで入ってきた。
「ふふん、余も来たぞ! この事件、余の華麗なる推理で一刀両断してくれる!」
「ネロ……相変わらず元気だね」
立香が苦笑すると、ネロは胸を張って笑う。
「当然である! 余に解けぬ謎などないのだ!」
その後ろから、少し控えめな足取りでエリザベート・バートリーが現れた。
手には彼女らしからぬ分厚いファイルを抱えている。
「ちょっと、私もいるんだから忘れないでよね! ふん、こういうのはアイドルの勉強にもなるんだから!」
立香はため息をついた。
「これは……賑やかになりそうだね」
その日の夜、彼らは黒い霧が発生したという路地裏へと足を踏み入れた。
空気は冷たく湿っており、何かが潜んでいるような不気味な静寂が漂っている。
「……気をつけてください」アルトリアが注意を促す。
霧はゆっくりと彼らの足元を包み込み、視界が次第に悪くなっていった。
「うわ、気味が悪い……」エリザベートが小さく呟いた。
「余は怖くないぞ! かかってこい、黒い霧よ!」
ネロが虚勢を張ったその時――。
「……誰か、いるんですか?」遠くから、震える声が聞こえた。
マシュが立香の袖をぎゅっと掴む。「先輩、あれは……」
突然、霧の中から鋭い悲鳴が響いた。
「キャアアアアアッ!!」
次の瞬間、立香たちの視界が真っ暗になり――。
- Re: 【fgo二次創作】影と真実のバルンロンド ( No.1 )
- 日時: 2025/02/11 20:14
- 名前: きのこ (ID: cHp/tugs)
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第2章
立香たちの視界は漆黒に閉ざされた。
――冷たい風が肌を刺し、暗闇が重くのしかかる。
「先輩! 大丈夫ですか!」
マシュの切羽詰まった声が闇の中から聞こえ、立香はゆっくりと目を開けた。
ほんの数秒の出来事のはずなのに、妙に長く感じた。
「うん、大丈夫……みんなは?」
「余はここにいるぞ! 立香、心配ない、余がついている!」ネロの声が響く。
その向こうにはアルトリアの青い鎧がぼんやりと見え、エリザベートが肩を震わせながら周囲を警戒していた。
「な、なんなのよ、これ……! ただの霧じゃない!」
エリザベートの言葉通り、この霧はただの自然現象ではない。
まるで意志を持って彼らを絡め取り、迷わせているかのようだった。
「これは幻惑の魔術の一種でしょう。気をしっかり持てば、惑わされることはありません」
アルトリアが静かに剣を構え、周囲を見回す。
その瞳には鋭い光が宿っていた。
「とにかく、ここから抜け出しましょう。先輩、私についてきてください」
マシュが前に立ち、盾を構える。
「分かった。みんな、はぐれないように!」
全員が頷き、霧の中を慎重に進み始めた。
数分後――。
「……待て、何かいるぞ」ネロが立ち止まり、手を横に振って全員を制止した。
霧の向こうに、ぼんやりと人影が浮かび上がっている。
「誰だ……?」立香が囁くように呟く。
人影はゆっくりとこちらに向かってくる。その動きはぎこちなく、不自然だ。
「……おかしいですね」アルトリアが眉をひそめる。
人影が霧を切り裂いて姿を現した瞬間――全員の呼吸が止まった。
そこに立っていたのは、全身が黒い霧に覆われた女性。
顔は隠れているが、手には何か鋭利なものを持っている。
「……助けて……」その女性は、掠れた声で呟いた。
だが次の瞬間――。
「助けて……“殺して”……!」
黒い霧が彼女の体を飲み込み、女性は突然こちらに向かって突進してきた!
「来ます!」アルトリアが剣を振りかざし、マシュが盾を前に出す。
「くっ……!」
刃物がマシュの盾にぶつかり、火花が散る。
その衝撃で女性の体は吹き飛ばされ、霧の中へと消えた。
「な、何なのよ、今の!」エリザベートが息を切らしながら叫ぶ。
「完全に正気を失っていますね……。それに、この霧がさらに悪影響を与えているようです」
アルトリアが冷静に状況を分析する。
「先輩、早くここを離れましょう! 霧が濃くなっています!」
「分かった、急ごう!」
全員が駆け出した。だが霧はさらに濃く、重くなり、視界を奪っていく――。
第3章
「ハァ、ハァ……ここは、どこ?」
立香は息を切らしながら辺りを見回した。
走ったはずなのに、どこにも出口らしきものは見えない。
「完全に迷っていますね……」アルトリアが悔しそうに唇を噛む。
彼女ほどの冷静さを持つ者でさえ、この状況には焦りを隠せない。
「余たちは……閉じ込められた、のか?」ネロが天を仰いだ。
霧は上空にまで広がり、まるで巨大な牢獄のように彼らを覆い尽くしている。
「うう……なんでこんなことに……」
エリザベートがうつむいた瞬間――霧の中から、再び異様な気配が漂い始めた。
――ギィ……ギィ……。
「この音は……」
歪んだ扉が軋むような音が、背後から聞こえてくる。
立香たちが振り返ると、霧の中に古びた扉が浮かび上がっていた。
「こんなところに扉なんて……?」
「怪しすぎますね。しかし、進むしかないでしょう」
アルトリアが静かに扉に手をかける。
――ギィ……。
扉が開いた先には、朽ちた洋館の廊下が広がっていた。
壁には黒い染みが広がり、床は今にも崩れそうだ。
「……ようこそ、“真実の館”へ……」
誰かの囁き声が耳元で響いた。
「今、何か言いました?」マシュが不安そうに立香を見る。
「いや……気のせい、じゃないよね」立香が喉を鳴らす。
「行きましょう。ここで立ち止まっても仕方ありません」
アルトリアが先頭に立ち、全員が廃墟の中へと足を踏み入れた。
その瞬間――冷たい風が吹き抜け、扉が音を立てて閉まった。
- Re: 【fgo二次創作】影と真実のバルンロンド ( No.2 )
- 日時: 2025/02/11 20:17
- 名前: きのこ (ID: cHp/tugs)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
第4章
私たちが目にしたのは――死体の山だった。
暗い廊下を進んだ先、開けた大広間に広がっていたのは、黒い霧に覆われた無数の死体。
冷たく横たわった人々の顔には、苦痛と恐怖が刻まれている。
「……嘘でしょ……」エリザベートの顔が青ざめ、喉から押し殺したような声が漏れる。
「これは、いったい……」アルトリアは眉をひそめ、剣を強く握りしめた。
その目には悲しみと怒りが入り混じっている。
「先輩……、これ、どういうことなんでしょう……」マシュが震える声で立香に問いかける。
立香もまた、目の前の光景に言葉を失っていた。
「余は、こんな光景……見たくも……」ネロの威勢は消え、ただ呆然と立ち尽くしている。
大広間の空気は重く、呼吸をするたびに喉に鉄錆のような味が広がる。
死体の間を縫うように、黒い霧がゆらゆらと漂い、時折、不気味な笑い声のような音が聞こえた。
「これは罠かもしれません。注意してください」
アルトリアが警戒を促したその瞬間――。
バキッ!
突如、死体の一つが動いた。
「……ッ!?」全員が息を呑んだ。
死体の眼がカッと見開き、黒い霧が口から漏れ出す。
次々に死体が起き上がり、その瞳には光がなく、ただ暗黒が広がっていた。
「まさか、動く死体……!?」立香が後ずさる。
「操られているのでしょう! 皆、戦闘準備を!」アルトリアが剣を振りかざす。
「余もやるぞ! こんな悪趣味、余が断ち切ってやる!」
ネロが叫び、エリザベートも震えながら槍を構える。
第5章
動く死体たちが一斉に襲いかかる。
「行きます!」
マシュが盾を振り上げ、迫りくる死体を弾き飛ばす。
「はぁぁっ!」
アルトリアが鋭い一閃を放ち、黒い霧ごと死体を切り裂く。
しかし、切り倒しても切り倒しても、霧が集まり再び死体が動き出す。
「キリがない……!」エリザベートが焦りの声を上げた。
「この霧が原因だ! 霧を何とかしないと!」立香が叫ぶ。
その時、大広間の中央に、不気味に揺れる霧の塊が見えた。
まるで心臓のように脈動し、死体たちに力を与えている。
「アレが元凶ですね」アルトリアが目を細める。
「了解! 余がやるぞ!」ネロが一直線に霧の塊へと走り出す。
死体たちが彼女を阻止しようとするが、マシュとエリザベートが道を切り開く。
「ネロさん、今です!」
「うおおおおっ!」
ネロが霧の塊に向けて剣を突き立てる。
ズンッ――!!
霧の塊が悲鳴のような音を上げ、爆発的に霧が散った。
死体たちはその場に崩れ落ち、二度と動くことはなかった。
「やった……?」立香が息を整えながら呟いた。
「ええ、これでひとまず安全でしょう」
アルトリアが剣を収め、静かに頷く。
だが――。
「……終わりじゃない」
立香は、館の奥から新たな気配を感じていた。
第6章
「先輩、あちらに何かあります!」
マシュが指差す方向には、古びた階段があった。
闇に沈んでいるが、その奥からかすかな光が漏れている。
「行こう。ここで止まるわけにはいかない」
立香が意を決して言うと、全員が頷いた。
階段を上るたびに、冷気が肌を刺す。
心臓が高鳴り、不安が全身を蝕んでいく。
ギィ……。
扉を開けると、そこには豪華な書斎が広がっていた。だが、その中央には――。
黒い影に包まれた男が立っていた。
「……やっと来たか」男の声は低く、冷たかった。
「あなたが、この事件の犯人ですか!」アルトリアが剣を向ける。
「犯人、か。そう呼ばれても構わん。だが、お前たちには理解できまい。この世界の“真実”が」
男は冷たい笑みを浮かべた。
「お前たちも、すぐに知ることになる――絶望という名の真実をな」
男が手を掲げると、再び黒い霧が巻き起こった。
第7章
「来るぞ!」立香が叫び、全員が構えを取った。
霧の中から、無数の腕が伸び、闇が牙を剥く。
「こんなところで……負けられません!」
マシュが盾を突き出し、霧の腕を弾く。
「はああっ!」
アルトリアとネロが剣を振るい、エリザベートが槍を突き出す。
光の刃が闇を裂き、少しずつ霧が後退していく。
「先輩、今です!」マシュが叫ぶ。
「……終わらせる!」
立香が男に向かって駆け出し、その胸に剣を突き立てた。
「ぐああああっ!」
男が悲鳴を上げ、黒い霧が一気に晴れていく。
光が差し込み、闇は消え――館は静寂に包まれた。
「……終わった、のか?」ネロが息を切らしながら尋ねる。
「ええ、これで本当に」アルトリアが頷いた。
「先輩……やりましたね」
マシュが笑顔を浮かべた。
立香は静かに頷き、涙が頬を伝った。
- Re: 【fgo二次創作】影と真実のバルンロンド ( No.3 )
- 日時: 2025/02/11 20:19
- 名前: きのこ (ID: cHp/tugs)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
第8章
黒い霧が晴れた廃墟の館に、静かな空気が戻っていた。
「……これで、本当に終わった?」立香が深く息を吸い込む。
冷たかった空気に、かすかに温もりが戻り始めている。
「ええ、霧を操っていた元凶は倒れました。もう、この館に力を及ぼすものはいません」
アルトリアが剣を収め、静かに頷いた。彼女の目には安堵の色が浮かんでいる。
「やっと……やっと終わったのね!」エリザベートが膝から崩れ落ち、涙を浮かべながら笑った。
ネロも大きく息を吐き、堂々と胸を張る。
「余たちは勝った! これぞ、英雄たる余たちの勝利である!」
その言葉に、全員の表情がほころぶ。
「でも……まだ気になることがあるんです」
マシュが辺りを見回しながら言った。
「何かしら、マシュ?」
「この館が、どうしてこんな状態になったのか。あの男が言っていた“真実”って、結局なんだったんでしょう?」
マシュの問いに、立香は静かに考え込む。
「そうだな……彼は『絶望という名の真実』って言ってた。でも、それが何を意味していたのかは……」
その時、館の奥から微かな光が差し込んだ。光の先には、古びた扉がひとつ。
「……行ってみましょう。もしかしたら、そこに答えがあるかもしれません」
アルトリアが静かに言い、全員が頷いた。
扉を開くと、そこには意外にも美しい庭園が広がっていた。
枯れ果てていたはずの草花が、霧が晴れたことで息を吹き返し、色鮮やかな姿を見せている。
「こんな場所が、まだ残っていたなんて……」エリザベートが目を輝かせる。
「まるで、館の闇が消えたことで、光が戻ってきたようですね」
マシュが微笑む。
その時、庭園の中央に一本の大きな木が光を浴びて佇んでいるのが目に入った。
木の根元には、小さな石碑が建っていた。
立香はそっと石碑に近づき、そこに刻まれた文字を読み上げた。
「――『希望を忘れるな。絶望の先に、必ず光はある』」
「希望……」アルトリアが目を細めた。
「彼が言っていた“真実”は、もしかしたら絶望そのものではなく、その先にある“希望”だったのかもしれません」
マシュの言葉に、立香は頷く。
「そうだね。私たちが諦めなかったから、こうして光が戻ったんだ」
「ならば、余たちの戦いは無駄ではなかったな!」ネロが誇らしげに笑う。
「うん、そうだよ。私たち、ちゃんと真実にたどり着いたんだ」
立香の言葉に、全員の心に温かな光が灯った。
第9章
館を出ると、外の空は美しい夕焼けに染まっていた。
冷たい風は温もりを取り戻し、遠くで鳥たちの歌が聞こえる。
「やっと、外に出られましたね」
マシュが大きく息を吸い込み、笑顔を浮かべた。
「もう二度と、あんな霧はごめんだわ!」
エリザベートが肩をすくめる。
「ですが、あの恐怖を乗り越えたからこそ、今の景色がこんなにも美しく感じるのでしょう」
アルトリアが静かに言い、夕日を見つめる。
「うむ! 余も、今この瞬間が最高に気持ち良いぞ!」
ネロが両手を広げ、太陽の光を全身で受け止める。
立香はそんな仲間たちの姿を見て、心がじんわりと温かくなるのを感じた。
「みんな、本当にありがとう。一緒に戦ってくれて……」
「先輩、私たちはこれからも、ずっと一緒です」
マシュが優しく微笑む。
「ええ、私たちは仲間ですから」アルトリアが静かに頷いた。
「ふふっ、そうね。これからもよろしく!」エリザベートが笑顔を浮かべる。
「では、帰るとしよう! 余たちの勝利を祝う宴を開かねばならん!」
ネロが張り切って言い、全員が笑った。
立香は夕焼けに照らされながら、心の底から思った。
――どんな絶望があっても、仲間と一緒なら、きっと乗り越えられる。
エピローグ
穏やかな風が吹くカルデアの庭園。立香たちは穏やかな午後を過ごしていた。
「やっぱり、平和っていいね」
立香がベンチに座り、空を見上げる。
「ええ、平和だからこそ、私たちは次の一歩を踏み出せるんです」
マシュが隣に座り、微笑む。
「先輩、次のミッションも、一緒に頑張りましょう!」
「うん、もちろん!」
アルトリアとネロ、エリザベートも笑顔で彼女たちを見守っている。
「さあ、次の冒険の準備は万全であるぞ!」
ネロが高らかに宣言し、全員が笑い合った。
暖かな光に包まれたカルデアは、これからも続く新たな物語への希望に満ちていた。
――終わりは、始まり。光は闇を超えて、永遠に輝き続ける。
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