二次創作小説(新・総合)
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- 【fgo二次創作】暗闇に舞い降りし涙の剣
- 日時: 2025/02/15 12:21
- 名前: きのこ (ID: nZYVVNWR)
暗闇に包まれた街並み。星ひとつない夜空が、どこまでも広がっている。
静寂の中、たったひとつだけ響く音があった。それは足音。
ひとり歩くその姿は、ただひたすらに前を向いて進んでいく。
セイバー――
彼女はその背中を、誰にも見せないようにしていた。
だが、その姿がどこか哀しげに見えるのは、決して偶然ではない。
「――なぜ、私はこんなに…」
彼女の心の中で、問いかけが響く。
問いかけには答えがない。それは、何度も繰り返してきたものだからだ。
「誰かのために戦う。その覚悟を胸に、私は王となり、剣を握った。」
だが、その先に待っていたものは何だったのか。
忠義、名誉、誇り――それら全てを背負った結果、彼女が得たものは、孤独と絶望だった。
士郎が言った。彼の理想を守るために戦うのだと。
しかし、それを叶えるために自分を犠牲にし続けることが、どれほど痛ましいことなのか、彼女には分かっていた。
足音が止まる。
ひとしきりの静寂が続き、彼女の瞳から涙が一粒、頬を伝って落ちた。
「…守れなかった。」
彼女はそれを言葉にして、ようやく自分を許した。だが、それでもその涙が、乾くことはなかった。
その時、背後から声が聞こえる。
「セイバー」
振り向くと、そこに立っていたのは士郎だった。
手には、彼女のために準備された聖剣が握られている。
「…士郎」
セイバーの胸が一瞬だけ高鳴る。
だが、その瞳の中には、もうあの輝きはなかった。
彼は、ただその場に立っているだけで、何も言わなかった。
士郎はただ彼女の側に寄り添い、何も言わずに立ち尽くす。
沈黙が二人の間に広がり、その時のセイバーの心には、深い安堵が広がった。
それは、どれだけの痛みを抱えても、誰かがそばにいるということの尊さを知った瞬間だった。
その背後で、もうひとりの声が聞こえた。
「……先輩、セイバーさん」
振り返ると、そこには桜が立っていた。
その顔には、何とも言えない複雑な表情が浮かんでいる。
「桜…」
セイバーは、その瞳を見つめる。
桜の内面に抱える痛みが、いっそう強く感じられた。
彼女もまた、何かを背負って生きている。
桜は一歩踏み出し、セイバーに向かって歩きながら、静かに言った。
「私も、先輩たちを守りたかった。でも、どうしてもその手を離せなくて...」
その言葉に、セイバーの心が揺れる。
桜は苦しんでいた。彼女の瞳の奥には、数え切れないほどの涙が眠っている。
士郎が言った。「誰も一人じゃない」と。
だが、その言葉が、すべてを解決するわけではない。
みんなそれぞれ、守るべきもの、失ったもの、そして抱えた過去がある。
今、目の前に立つ桜を見ながら、セイバーはその思いを改めて感じた。
「私たち、どこへ行けばいいんでしょう」
桜が言ったその言葉が、セイバーの胸に響く。
その時、凛が現れた。
静かな笑みを浮かべて、しかしその目にはどこか冷たさを感じさせた。
「どうしてそんなに悩んでいるのよ。戦い続けるしかないでしょう。」
「でも…」
セイバーが何かを言いかけたその瞬間、凛が口を閉ざし、ただ頷いた。
「分かってるわ。でも、前に進まなきゃ。」
その時、背後からカレンの冷徹な声が響いた。
「そんなことを言っても、無駄でしょう。未来に答えがあるなんて、誰も保証してくれません。」
その言葉に、セイバーは静かに目を閉じた。
どんなに未来を信じても、その先に待っているのは、自分に与えられた役割と使命だけだ。