二次創作小説(新・総合)

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【fgo二次創作】霧深き館の聖戦
日時: 2025/02/15 18:04
名前: きのこ (ID: nZYVVNWR)

エピローグ

霧の立ち込める深夜、静寂に包まれた館の中で、赤い光を帯びた月が暗い窓から差し込んでいた。

古びた家具が所々に散乱し、長い時間が経過した証として、ほこりを被った床と壁が目に入る。

過去に起きた出来事の痕跡が、今でもこの館に生々しく残っている。

一度も解明されることなく時が過ぎた殺人事件。

その背後には、今もなお消え去ることのない謎が渦巻いている。

そして、その謎を解く者たちが集結しようとしていた。

「これが…300年前の未解決事件、か。」立香は、館の玄関前に立ち、深い息をついた。

目の前には、荒廃した屋敷が彼女を迎えている。

名探偵として数々の難事件を解決してきた彼女にとって、今回の事件はまさに未知の領域だった。

だが、その目には覚悟の色が宿っている。

その隣に立つのは、聖剣の騎士、アルトリア・ペンドラゴンだ。

彼女の姿は、まるで時を超えてやってきた騎士のように、堂々としている。

「立香、この館に何かが隠されているのは確かです。」

アルトリアの声は、静かでありながらも確固たる意志を感じさせた。

「私たちが探し出すべきは、犯人だけではないでしょう。」

その眼差しは、どこか遠くを見つめるような、何かを知っているかのような深い思索が滲んでいる。

その背後には、イシュタルの姿もあった。

彼女は少し不機嫌そうに腕を組んでいるが、目の端に輝く野性味あふれる光は、確かな意気込みを示していた。

「つまらない推理で無駄な時間を使うのは嫌だから、早く事件を解決してくれない? 私の力を借りるつもりなら、無駄な手間はかけさせないわよ。」

彼女の言葉には強気な一面がありつつも、どこかやる気に満ちているのが感じられる。

そして、最後に、マシュ・キリエライト。

彼女は助手として、少し背筋を伸ばして館の入口をじっと見つめている。

その目には、他のメンバーと同じく強い決意が込められていた。

「みなさん、気をつけてください。私たちの前に立ちはだかるのは、ただの謎じゃありません…」

マシュの声は、やや震えていたが、それでも彼女の心に迷いはなかった。

彼女たちの前に立つ館は、何世代にも渡って語り継がれてきた恐ろしい秘密を抱えている。

300年前、ここで何が起こったのか。

それを知ることが、彼女たちの運命をどこへ導くのか、まだ誰も知らない。

だが、今、彼女たちの足取りは、未来へと続いていた――。


第1章

館の扉が開く音が、静かな空気を破った。

重たい音が響き渡り、薄暗い館の内部が姿を現す。

足元には、かすかに浮かび上がる埃の粒が、過去の時を物語っていた。

「さて、どうする?」イシュタルが少しだけ口を尖らせながら言った。

「私としては、早く全てを終わらせたいんだけど。」

彼女は手を腰に当て、やや不機嫌そうに歩き出す。

その先には、壊れた絵画が飾られた広間が広がっている。

アルトリアは、無言でその先を見つめている。

「私たちが進むべきは、真実のみです。」

彼女は言葉少なに歩みを進め、その背中は不安定な館の中でも一貫して落ち着きを保っている。

立香が足を一歩踏み出すと、突然、暗がりからひときわ不気味な音が響いた。

ピタリと動きを止め、立香はその音に耳を澄ませる。

「何…?」音はすぐに止まり、館は再び静寂に包まれた。

マシュは心配そうに立香に近づき、囁くように言った。

「先輩、大丈夫ですか?」立香は振り返り、軽く頷いた。

うん、大丈夫。でも、ここは…ただの館じゃない。何かが、確実に私たちを試している。」

その時、ふと目に入ったのは、館の中央に立つ大きな鏡だった。

鏡には、何かが映っているような気配が漂っている。

だが、立香が近づいても、鏡には何も映っていなかった。

彼女は気のせいだろうと思いながらも、視線をそのままにしていた。

「それにしても、この館の歴史は長いんですね。」アルトリアが静かに言う。

「おそらく、この事件も単なる殺人ではない。」

イシュタルが不意に振り返り、少しだけ挑戦的な表情を見せた。

「何か特別な意味が隠されているっていうの? それとも、何かが…お前の直感に訴えてきてるの?」

立香はその問いを受けて、ゆっくりと館の内装を見渡した。彼女の直感は鋭い。

「…そうだね。何かが、おかしい。」

その時、廊下の奥から、再び足音が聞こえた。ゆっくりと、そして不規則に。

その音の正体を確かめるべく、立香たちは足音を追いながら、館の奥へと進んでいった。

Re: 【fgo二次創作】霧深き館の聖戦 ( No.1 )
日時: 2025/02/15 18:11
名前: きのこ (ID: nZYVVNWR)


第3章

立香たちは館の奥へと進む。音が消えると、館は再び静寂に包まれた。

足音が不安を募らせ、時折響く風の音だけが広間を満たす。

だが、彼女たちの気配を感じ取ったかのように、どこかから冷たい気息が漂ってきた。

「ここには…何かがいる。」立香は、全身で館の空気を感じ取りながら言った。

その声は静かだが、確かな決意を含んでいる。

彼女の目の前に広がるのは、長い廊下とそれに沿って並ぶ古びた扉だ。

アルトリアは少し考え込んだ後、冷静に言った。

「おそらく、これらの扉のどこかに何かが隠されている。ですが、慎重に行動するべきです。」

その言葉通り、アルトリアは一歩一歩、慎重に前進していった。

「待って」イシュタルが不意に足を止めた。

その視線は廊下の先、暗闇に溶け込むような場所を見つめている。

「なにか…見える?」立香が尋ねると、イシュタルはその視線をしばらく保ちながら答えた。

「わからないけど…今、何かが動いた気がしたの。気をつけて。」

その言葉を聞き終わると、館の内部から、ひときわ大きな音が響いた。

何かが落ちる音、または誰かが歩いている音が、じわじわと近づいてくる。

立香は深く息をつき、慎重に音の源を探ったが、誰もいないはずの場所にその姿は見当たらない。

「なぜ、こんなところに…」

突然、アルトリアが呟いた。その視線が、廊下の先にあった扉に固定されていた。

扉の前には、古い肖像画が掛けられている。だが、その顔がどこか不自然に感じられる。

目が、まるで立香たちを見つめているかのように動いている気がしていた。

「…この扉を開けてみましょう。」アルトリアが、決心したように言った。

立香は軽く頷き、慎重に扉を押し開ける。

中には、重い空気が充満していた。その奥には、大きな書斎が広がっている。

壁一面に本棚が並び、書類や古い書籍が散乱している。

「ここで、何かを探さなきゃね。」立香はつぶやくと、書斎の中を調べ始めた。

すると、ふと目に入ったのは、古びた日記のようなものだった。

立香はそれを手に取り、慎重にページをめくる。

そこに記された名前は、彼女が予想していたものではなかった。

「リム…?」立香は、その名前を見つけた瞬間、心の中で何かが弾けた気がした。


第4章

日記のページをめくるにつれ、立香は驚くべき事実を次々に発見する。

リムという少女は、この館の元々の住人であり、皇族の令嬢として、何不自由なく育てられた人物だった。

しかし、その少女の人生は、謎の失踪と共に終わりを迎えた。

「リム…彼女はここで殺された?」

立香はつぶやきながら、日記に書かれた内容をさらに読み進める。

その内容は、非常に不気味だった。

日記には、リムが急激に精神的に不安定になり、家族との関係も悪化していったことが記されていた。

そして、最終的には家族全員が事故のような形で亡くなり、リムも行方不明になったという。

だが、その後、館内で奇怪な現象が頻発し、いくつかの怪談が語られるようになった。

それはまるで、リムの霊が館にとどまり続けているかのようだった。

「リムが生きている可能性もある…」立香はしばらく考え込む。

だが、答えは出ない。彼女の胸に、何か重いものが残っている感覚があった。

その瞬間、イシュタルが声を上げた。

「立香! 何かが…ここにいるわ!」彼女の目は、恐怖に満ちていた。

立香が振り返ると、書斎の中に、薄い霧のようなものが漂っていた。

そして、その霧の中に、かすかな人影が見えた。

立香の視線と、その影が交わった瞬間、背筋に冷たいものが走った。

「リム…?」立香が言った瞬間、その人影が一気に現れた。

幽霊のような少女、血だらけの服を着たその姿は、立香たちに向かって猛然と突進してきた。


第5章

「先輩!」マシュの叫び声が響くと同時に、立香は一瞬でその場から飛び退いた。

だが、間に合わなかった。

幽霊の少女、リムは、無表情でその爪のような手を突き刺してきた。

マシュが間一髪で盾となろうとしたが、リムの爪は彼女の肩を切り裂き、深い傷を負わせる。

「マシュ!」

立香は駆け寄ろうとしたが、その足元で不意に何かが足を引っ張り、転倒してしまった。

「くっ…!」立香は必死で立ち上がる。

その瞬間、イシュタルが背後から飛びかかろうとしたが、リムの手が予想外の速さで伸び、イシュタルを強く押し倒す。

その衝撃で、イシュタルの体は床に激しく叩きつけられ、彼女の顔が青ざめる。

「ぐっ…!」

イシュタルはうめき声を上げ、動けないままだ。

「先輩…!」

マシュは立ち上がろうとするが、血を流している体では動けず、目の前で立香が必死に戦う姿を見守るしかない。

立香は、もう一度リムに向き直る。

「あなたは…何がしたいの!?」

立香は叫びながら、リムに向かって攻撃を仕掛けるが、リムの速度は異常に速く、立香の攻撃をかわしてすぐに反撃してきた。

その姿はまるで、過去に死んだ者のように、もう一度命を持っているかのようだった。


第6章

立香は必死でリムの攻撃をかわしながら、その姿を観察していた。

「どうしてこんなことを…?」

その問いに、リムは答えることなく、ただ血だらけの顔で一歩一歩立香に迫ってきた。

「先輩、気をつけてください!」

マシュが必死で叫んでいたが、イシュタルも動けない。

立香は、この恐ろしい少女の背後に隠された真実を掴まなければならないことを感じていた。

「リム、あなたの背後にある真実を知りたい。」立香はゆっくりと距離を取る。

その時、リムが立ち止まり、無表情のまま静かに言った。

「あなたたちは…私を放っておけないの…」

その声は、どこか悲しげで、まるで自分の運命にすべてを呪っているかのようだった。

立香はその目をじっと見つめる。

「私たちはあなたを助けたい。けど、今はその方法がわからないの。」

その瞬間、リムの顔が一瞬変わり、彼女は無言で後退し始めた。

その姿が、霧の中へと消えていく。

立香はその後を追おうとするが、もう一度だけ振り返る。

「私たちはお前を解放する。」

その誓いを胸に、立香は再び館の中へと踏み込んでいった。

Re: 【fgo二次創作】霧深き館の聖戦 ( No.2 )
日時: 2025/02/15 18:15
名前: きのこ (ID: nZYVVNWR)


第6章

立香の息は荒く、体中が疲れ切っていた。

しかし、それでも彼女は一歩も引かずに、リムの背後に潜む真実を追い続けようとしていた。

目の前に立つ血だらけの幽霊は、まるで彼女の魂を飲み込もうとしているかのように、冷たい眼差しで立香を見据えている。

「リム、どうしてこんなことを…」

立香は恐る恐る問いかけるが、リムは無言でゆっくりと歩み寄ってくる。

少女のその瞳には、何かを訴えかけるような強い意思が感じられたが、同時に深い絶望も滲んでいた。

突然、リムが無言で手を差し伸べてきた。

その手は、血のように赤黒く染まっており、まるで立香を引き込もうとしているかのように震えていた。

立香はその手に触れることなく、一歩後退した。

「先輩、気をつけて!」

マシュが叫びながら、立香に向かって急ぐが、傷だらけの体ではもう動けず、ただ立ち尽くしている。

「動かないで、マシュ。」

立香は静かに声をかけ、マシュに再度警戒を促す。

そして、立香はリムと対峙する。彼女の表情は決して動かず、恐怖と冷徹さが交錯したその眼差しには、立香が思わず息を呑んでしまうほどの圧倒的な力が宿っていた。

その瞬間、リムが一歩踏み出した。

その足音が、館内に響き渡り、立香の心を一層焦燥に陥れた。

まるで、この館の中で起こったすべての出来事が今、立香を試すかのようだった。

突然、リムの体が奇妙な動きを始める。彼女の身体は歪み、手足が不自然に伸びていく。

それに合わせて、リムの顔が歪んでいく。立香はその変貌に驚愕し、すぐに立ち止まった。

「これが…あなたの正体?」

立香は冷静を保ちながらも、内心で戦慄を覚えた。

目の前にいるリムは、もはや人間とは思えない姿に変貌しつつあった。

その時、突如として館の中に鋭い剣の音が響いた。

「止まりなさい!」

声とともに、鋭い一閃がリムの背後に現れる。

立香が驚いて振り向くと、そこにはアルトリアが立っていた。

彼女の聖剣が、光を放ちながらリムの動きを封じようとする。

「アルトリア!」立香は思わず叫び、アルトリアの動きを確認する。

アルトリアは冷静にリムの変貌した姿に目を向け、剣を握り直した。

「立香、気をつけて。奴はただの霊ではない。何か大きな力が働いています。」

アルトリアの声はいつもと変わらず、冷静で確かなものだった。

その目には、リムの姿がもたらす恐ろしい真実を見抜こうとする強い意志が感じられる。

リムはその鋭い刃を避けるように素早く後退し、館の中で奇妙な力が渦巻く中、再び立香とアルトリアに向かって襲いかかろうとする。

その動きは今や人間のものではなく、まるで化け物のように速く、激しい。

「くっ…!」

アルトリアがリムの動きを見逃さないようにと、瞬時に聖剣を振りかざし、その身を前に進めた。

リムの手が振り下ろされたとき、アルトリアはその攻撃を避けると同時に、素早く反撃を試みる。

剣の一閃がリムの影を切り裂いたが、彼女の体は消えることなく、むしろその場に新たな霧を残す。

「くっ…何だこれは!」

アルトリアが冷静に構えながらも、どこか焦りを見せる。

リムの姿は、その霧の中で再び現れた。

リムの目には憎しみと怒りが満ち、アルトリアを見据えていた。

「リム、止めなさい!」

アルトリアが叫びながら、再び剣を振るう。

しかし、リムはその速度で避けることなく、アルトリアの体を引き裂こうと猛然と爪を振り上げてくる。

「アルトリア!」

立香は、その戦いを止めようとするが、アルトリアは冷静に対処し、リムの爪を見切りながらも反撃の一撃を決めようとしていた。

「立香、私に任せてください。」

アルトリアは、立香の助けを受け入れることなく、目の前のリムに集中した。

剣を構え、まるでその場を支配するかのように冷徹に戦う姿には、彼女の全てを捧げる覚悟が込められていた。

立香はその姿を見て、心の中で改めて彼女の強さを感じた。そして、立香自身も決意を固めた。

「私たちだけでは、リムを救うことはできない。でも、あきらめるわけにはいかない!」

立香は立ち上がり、リムに向かって叫びながら、再びその足を進めた。

アルトリアは一瞬、立香の言葉を聞いて振り返ると、その表情がわずかに変わった。

「立香、あなたもですか。」その言葉を胸に、立香は再度戦いに挑む。

アルトリアがリムの攻撃をかわす間隙をついて、立香は全身に力を込めてリムの弱点を探し始めた。

リムの攻撃がいくつかアルトリアをかすめたが、アルトリアは冷静にその隙を突き、ついにリムを強く打ち倒す。

リムが床に倒れ、しばらくそのまま動かなくなる。

立香がゆっくりと近づき、リムに声をかけた。「リム、あなたは何を恐れているの?」

その声が、リムの耳に届いた瞬間、リムの体が一瞬だけ震えた。

そして、その体が、まるで生き返るように元の姿を取り戻した。

「私を…放っておいて。」リムの声はかすれていたが、どこか悲しみが込められていた。

アルトリアがその言葉を聞きながら、優しく剣を地面に突き立てる。

「立香、彼女を解放するためには、まだ何かをしなければならない。」

立香は静かに頷き、リムの元に跪いた。

「あなたが受けた痛みを私たちが理解するわけではないけれど、少なくともこれ以上苦しませはしない。」

そして、その瞬間、リムの姿は完全に消え、館の中は静寂に包まれた。

立香とアルトリアは、重苦しい空気の中でしばらく黙っていたが、その後、立香が口を開いた。

「ありがとう、アルトリア。あなたがいてくれて本当に良かった。」

アルトリアは静かに答える。「立香、あなたもよくやった。」

そして二人は、館を後にする決意を固めるのだった。

Re: 【fgo二次創作】霧深き館の聖戦 ( No.3 )
日時: 2025/02/15 18:20
名前: きのこ (ID: nZYVVNWR)

第7章

立香とアルトリアは、リムの霊を解放した後も、館内に残る不穏な空気に警戒を続けていた。

館の中は静まり返り、先ほどの戦闘の残響だけが徐々に消えていく。

それでも、立香の胸の中には、リムの訴えが深く残っていた。

彼女の恐怖、絶望、そして最後の言葉。

「放っておいて」というその言葉が、立香の心に重くのしかかっていた。

「どうして、あんな風に…」立香は静かに呟いた。

アルトリアはその言葉に答えず、ただ視線を館の奥に向ける。

その目には、決して消え去ることのない過去の亡霊を見つめるような厳しさがあった。

「リムは、過去に何かとても辛い出来事を経験した。それが彼女を狂わせ、霊としてこの館に閉じ込められることになったのでしょう。」

アルトリアの声は冷静だが、その目に宿る哀しみを隠しきれない。

立香は少し黙り込んだ。彼女もまた、リムの苦しみを感じていた。

だが、それを受け入れることができない自分が、どうしても許せなかった。

「アルトリア…」

立香がアルトリアに目を向けると、彼女は少し驚いたように立香を見つめ返した。

「私、まだこの館に残るべきだと思う。リムの悲しみを、完全に解き放つためには、もう少しだけここに留まるべきなんじゃないかって。」

立香の言葉に、アルトリアはしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。

「分かりました、立香。私も、あなたに従います。」

その言葉に、立香は安心したように息を吐き出すと、再び館の奥へと進んでいった。

だが、館の奥へと進むにつれて、立香は再び異様な気配を感じ取る。

どこかから漂う冷たい空気、そして耳を澄ませば微かな声が響いてくるようだった。

リムのように苦しんでいる者がまだ館にいるのだろうか。

それとも、館自体が何か大きな力に支配されているのか。

立香が警戒しながら歩いていると、突如として廊下の壁に異変が生じた。

壁のひび割れから血のような液体が滴り落ち、館の中がまるで生き物のように脈動しているように感じられた。

「何これ…?」

立香は一歩後退したが、アルトリアはすぐに冷静に剣を構えた。

「気をつけてください、立香。これはただの霊的なものではない。何か他の力が動いています。」

その言葉が終わると同時に、館の壁から異様な音が響き渡る。

血のような液体が、壁を這うように動き、ついには巨大な影を作り出す。

「これは…一体何?」

立香の目の前に現れたのは、かつて見たことのない、巨大で不気味な影だった。

その影はまるで館の中に宿る魔物のようで、立香とアルトリアをじっと見下ろしていた。

「来ます!」アルトリアが立香を引き寄せ、急いで後退した。

しかし、その影は動き出し、急速に二人に向かって迫ってきた。

「くっ、どうする?」

立香は冷静さを保ちながらも、その恐ろしい影に怯えを感じていた。

だが、アルトリアはゆっくりと剣を構え、前に出る。

「私が足止めする、立香はその隙に回り込んで! それができるだろう?」

立香はアルトリアの指示を受け入れ、すぐに動き出す。

アルトリアは聖剣を振り上げ、その力を全開にして巨大な影に向けて切りかかる。

しかし、その攻撃は影に当たることなく、まるで消えるかのようにすり抜けていった。

「無駄だ、アルトリア!」立香は叫び、急いで別の方法を考え始める。

しかし、その時、突然影が一気に膨れ上がり、アルトリアを飲み込んでしまう。

「アルトリア!」

立香は必死にアルトリアの名を呼びながら、影に立ち向かうべく前進した。

しかし、その瞬間、影が消え、館内に響く不気味な笑い声がこだまする。

「…あなたたちのような者が、ここに来るとは。」

その声は、まるで館自体が語りかけているかのようだった。


第8章

立香は再び館内に響く声を聞きながら、動けなくなったアルトリアの姿を見つめていた。

アルトリアが消えたように見えたその瞬間、立香はその場に足を踏み出すことをためらった。

だが、アルトリアの言葉が、心に響いてきた。

「立香、あなたならできる…」

その言葉が、立香の背中を押し、彼女は再び一歩を踏み出した。

「私は…諦めない。」

立香は自分に言い聞かせながら、深く息を吸い込んだ。

そして、館の奥に進むにつれて、恐ろしい力が立香を引き寄せるのを感じた。

もう後戻りはできない。

立香が進み続けると、館の最深部に辿り着いた。

そこには、一枚の大きな扉が待っていた。

その扉はまるで、長年の封印を解かれることを待ち望んでいたかのように、ひび割れている。

「この扉を開けることが、すべてを終わらせる道」

立香はつぶやきながら、扉を開ける。

扉が開かれると、広間の中に光の束が降り注ぎ、その中心に立っていたのは、リムの幻影だった。

「リム…?」

立香はその姿に向かって歩み寄るが、リムの顔は悲しみに満ちていた。

「立香、私は…許されない存在。」その言葉に立香は目を見開いた。

リムの姿は、もう一度変わり、血のような液体がその体から溢れ出す。

「私を解放するには…これを受け入れなければならない。」

リムの声は、立香に深く響く。

その瞬間、立香の目の前に現れたのは、アルトリアが再び現れた姿だった。

「立香、彼女を救うためには、あなたが必要です。」

アルトリアは言った。そして、立香はその言葉に従い、リムに向かって最後の一撃を決めた。

その一撃が、リムを解放することに繋がった。

リムはその場で崩れ落ち、やがて霧のように消えていった。


エピローグ

館は、再び静寂に包まれた。立香とアルトリアは、並んでその場に立ち尽くしていた。

全てが終わり、館の呪縛も解かれた。リムの姿も、もうここにはなかった。

「立香、よくやりました。」アルトリアは、立香に微笑みかける。

立香は静かに頷き、長い間の戦いの疲れを感じていた。

しかし、心の中では確かな達成感が広がっていた。

「ありがとう、アルトリア。あなたがいなかったら、私はここまで来られなかったよ。」

立香は深く息をつき、アルトリアに感謝の気持ちを伝えた。

二人はそのまま、館を後にした。

道を歩みながら、立香はふと空を見上げると、満点の星が輝いていた。

あの暗い夜の中で、二人は確かな光を見つけたのだった。


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