二次創作小説(新・総合)
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- 【fate二次創作】雲のかけら
- 日時: 2025/02/15 19:42
- 名前: きのこ (ID: ovLely7v)
プロローグ
朝陽が差し込む窓の向こう、空は穏やかな青さを見せていた。
冷たい風がカーテンを揺らし、部屋の中に新鮮な空気を運ぶ。
だが、俺の心は晴れることがなかった。
あの日から、セイバーと過ごす時間がどんどん少なくなっていった気がする。
戦いが終わり、俺たちはどうしても前に進まなければならなかった。
彼女の瞳に宿る、終わりを迎えることを恐れるような表情が、今も脳裏に焼き付いている。
「セイバー…」思わず呟くと、部屋の片隅から静かな足音が近づいてきた。
振り返ると、セイバーが静かに立っていた。
金色の髪が光を受けて輝き、目を閉じた彼女の顔は、まるで絵画のように美しかった。
だが、その美しさの裏には、何か寂しげなものがあった。
「おはようございます、士郎。」彼女の声が静かに響く。
俺は立ち上がり、無意識に手を伸ばしていた。セイバーはその手を見て、少しだけ目を伏せた。
「何かあったのか?」
彼女のその言葉に、俺は少しだけ安心したような気がした。
セイバーが俺を心配してくれる。そんな小さなことが、どれほど支えになったことか。
だが、俺の心の中には、もっと大きな不安が広がっていた。
俺たちの未来が、これからどうなるのか。
セイバーとの約束を果たすために、俺は何をしなければならないのか。
「俺たち、これからどうなるんだろうな。」
口に出すと、セイバーはしばらく黙っていた。長い沈黙の後、彼女は静かに答える。
「わかりません。けれど、どんな未来が待っていようと、私はそれを受け入れます。」
その言葉に、俺は胸が締め付けられるような気がした。
セイバーが言うように、どんな未来が待っていようと、受け入れる覚悟が彼女にはあるのだろう。
だが、俺にはその覚悟ができているのか、どうしても自信が持てなかった。
「セイバー…」
「士郎、私のために涙を流すことはありません。」
セイバーは、淡い微笑みを浮かべてそう言った。だが、俺にはその笑顔が痛々しく感じられた。
「俺は…泣かないよ。約束しただろ。守るって。」
その言葉に、セイバーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその瞳に優しさを宿しながら、深く頷いた。
「ありがとうございます、士郎。」
その瞬間、俺は確信した。この戦いが終わった後、俺たちがどんな道を歩んでも、必ず守り抜くと。
第1章
俺たちが出会ったあの日、全てが始まりだった。
運命のように引き寄せられたセイバーとの出会い。
それがどんなに苦しいものだったとしても、俺は後悔しなかった。
だが、運命というものは時に冷徹で、無情で、そして何よりも私たちを試す。
セイバーが俺にとってどれほど大切な存在であるか、身をもって知った。
だが、そんな時でも、俺はセイバーを守り続けると決めた。
どんなに傷つき、疲れ果てても、俺は彼女を守るために戦う。それが、俺の誓いだった。
そして、彼女もまた、俺に誓ってくれた。
どんなに辛くても、どんなに苦しくても、俺を見守り続けると。
二人で過ごす時間が、どんなに短くても、それが何よりも大切なものだと。
あの日のことが、今でも鮮明に思い出される。
セイバーの目に浮かぶ涙、その温かさが、俺の心に深く刻まれている。
だが、その涙が、次第に笑顔へと変わっていったのも、また事実だ。
俺はそれが嬉しくてたまらなかった。
「士郎、ありがとう。」その言葉を聞いたとき、俺は初めて気づいた。
俺が彼女を守ることが、彼女を支えることが、俺にとって何よりも大切なことだと。
だが、時は容赦なく過ぎていく。
第2章
「士郎、あの時の約束、覚えていますか?」セイバーがふと呟いた。
その言葉に、俺は心の中で何度も繰り返し、彼女の顔を見つめた。
彼女の目は、少しだけ遠くを見つめていた。
「覚えてるよ。絶対に守るって約束した。」
その言葉に、セイバーは静かに笑った。そして、俺の手を握りしめてきた。
「私は、士郎と一緒に歩んでいきたい。どんな未来が待っていても。」
その言葉に、俺は思わず涙をこぼしてしまった。
セイバーが望んでくれる未来、それがどんなに厳しいものだとしても、俺はその手を離さない。
だが、セイバーが俺に告げた言葉は、俺をさらに深い苦しみに陥れるものだった。
「士郎、私は…もうすぐ、あなたのもとを離れることになります。」
その言葉が、まるで雷に打たれたように俺の胸を貫いた。
セイバーの目に宿る決意、そしてその背中に宿る寂しさが、俺を飲み込んでいく。
「セイバー…」その時、彼女が微笑んで言った言葉が、俺の心に深く響いた。
「でも、私は必ず、あなたと再び会う。約束しましょう。」
その約束を、俺は信じている。
- Re: 【fate二次創作】雲のかけら ( No.1 )
- 日時: 2025/02/15 19:46
- 名前: きのこ (ID: ovLely7v)
第3章
「士郎、私は…あなたに言わなければならないことがあります。」
セイバーが静かに口を開いた。
その声は、これまでと違って重く、そしてどこか寂しげだった。
まるで何かを隠しているかのように、彼女の瞳が一瞬揺れた。
「何だ?」その問いに、セイバーは少し間を置いた後、ゆっくりと答えた。
「私には、もうあなたと共に歩む未来がありません。」
その言葉を聞いた瞬間、胸に大きな衝撃が走った。
まるで何かが引き裂かれたような感覚に陥り、足元がふらつく。
「冗談だろ…?そ、そんなこと言うなよ。」
「冗談ではないのです、士郎。」
セイバーの声は、まるで冷たい水をかけられたように、突き刺さる。
彼女は少し顔を俯け、そして静かに続けた。
「私は、今の私の使命を全うしなければならない。士郎を守るために、私がここにいる意味が、今の私には無くなってしまったんです。」
その言葉が、俺の胸に重くのしかかった。
セイバーが、俺を守るために戦ってきたことは知っている。
だが、俺がそれを受け入れることができなかった。
彼女の使命が何かを聞くことはできない。
すべてが終わったら、俺たちには未来が待っていると思っていたから。
「だから、私は士郎を手放さなければなりません。」
その瞬間、全てが崩れ落ちたように感じた。
セイバーの目に映るのは、もう俺ではなく、何か他の使命を全うしようとする強さと決意だった。
どれほど彼女のことを愛しても、その手は俺を離さなければならないという事実を、俺はどうしても受け入れることができなかった。
「お願いだ、セイバー…俺のそばにいてくれ。」
「士郎…」セイバーの目が、言葉にならない痛みに満ちていた。
「私がどれだけ士郎を愛しているか、あなたにはわかっているでしょう。ですが、私の愛は、士郎を縛るためにあるものではありません。」
その言葉が、俺の胸をさらに締め付ける。
セイバーが俺を縛らず、自由に生きることを願ってくれているというのはわかる。
でも、そんなことを望んでくれているのなら、なぜ、俺をこんなにも愛してくれたのだろうか。
「セイバー、お願いだ…俺には、セイバーと歩みたい未来がある。」
その言葉を、どれだけ呟いたのだろうか。涙がこみ上げてきて、止めどなく流れ落ちる。
セイバーはその涙を見つめ、しばらく無言で立ち尽くしていた。
だが、やがて彼女は小さな声で言った。
「士郎、私はあなたと共にいられることを、心から幸せに思います。だけど…今は、このままではいられません。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。
だが、それを許すことはできない。
セイバーが自分を解き放ち、自由に歩むことを選ぶなら、俺がそれを強いるわけにはいかない。
「セイバー、ありがとう。君を愛している。」
その言葉だけが、やっと口をついて出てきた。
エピローグ
時が経ち、俺たちが交わした約束がどうなったのかはわからない。
だが、俺はあの日、セイバーと交わした言葉を胸に刻んで生きている。
セイバーと過ごした日々は、決して長くはなかった。
でも、それがどれほど濃密で、かけがえのないものであったかを、今も感じている。
もう一度、あの優しい微笑みを見ることはないかもしれない。
だが、それでも俺は前を向いて歩き続ける。セイバーが残した、あの日の約束を胸に。
「いつかまた会える日が来ます。その時には、きっと、士郎に伝えたいことがあるでしょう。」
あの言葉は、今も俺の心の中に響いている。
セイバーが俺に向けてくれた、あの優しさが、希望が、今でも消えることなく心に残っている。
俺は今日も、セイバーとの約束を守りながら生きている。
彼女が見守ってくれていることを信じて。
どんなに遠くても、いつか必ず再び会える日が来ると信じて。
空には、数えきれない希望の雲が浮かんでいる。
その中に、俺とセイバーが交わした約束があることを、心から願いながら。
「ありがとう、セイバー。」
その言葉を最後に、俺は歩き出す。
雲のかけらのように儚く、でも確かに存在している約束を胸に、未来を信じて。
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