二次創作小説(新・総合)
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- 【空の境界二次創作】両儀式と黒桐幹也の旅館宿泊話
- 日時: 2025/02/16 16:57
- 名前: きのこ (ID: sB2BNYQJ)
夜の山道を走るバスの中、式はぼんやりと窓の外を眺めていた。
「なあ、式」隣に座る黒桐幹也が、控えめに声をかける。
「この旅館、知り合いから紹介してもらったんだけど、評判がいいみたいだよ」
「ふーん」式は興味なさげに相槌を打つが、内心は少しだけ期待していた。
目的地の旅館は、山奥にひっそりと佇む小さな宿だった。
格式ばった雰囲気ではなく、どこか懐かしさを感じる和の趣がある。
「いらっしゃいませ、お二人様ですね」受付の女性がにこやかに迎える。
「一部屋でいいですよね?」幹也が何気なく確認すると、式はじろりと睨んだ。
「……別々に決まってるだろ」
幹也は苦笑しながら、「冗談」と両手を上げた。
部屋は隣同士だった。
荷物を置き、浴衣に着替えると、幹也は「風呂、行く?」と式に尋ねた。
「後で」そう答えた式は、窓際に座って静かに夜の空気を吸い込む。
ここに来るまでの車中の疲れが、少しだけ癒える気がした。
しばらくして、式も風呂へ向かう。
湯に浸かると、体の芯からじんわりと温まった。
露天風呂に出ると、月が静かに照らしていた。
「たまには、こういうのも悪くないな」
ぽつりと呟くと、不意に幹也の顔が浮かんだ。
「……あいつ、もう寝たか?」
風呂から上がり、自室へ戻ると、襖の向こうから「式、寝た?」と幹也の声が聞こえた。
「まだ」
「じゃあ、ちょっとお茶でもどう?」
「……五分だけな」
式は小さく溜息をついて、隣の部屋へ足を向けた。
幹也の部屋に入ると、彼はすでに湯呑みを二つ用意していた。
「温泉旅館の夜って、こういう時間がいいよね」
「別に」
式は湯呑みを手に取り、静かにお茶をすする。
月明かりの下、ふたりの時間がゆっくりと流れていった。
「式……」幹也の手が、そっと式の手を包み込む。
「お前……好きなんだよな?こういうの……」
「バカか」
「でもさ……」幹也が顔を近付ける。
「やめろ!」
「……なんで?」
「なんでって……」
幹也がそっと手を伸ばし、式の髪を梳くように撫でた。
「僕……式のことが……」
「言うな」
「でも……」式がそっと幹也の手を掴む。
「……もう少しだけ……」
「……式……」
幹也は静かに目を閉じ、二人の距離を縮めた。
「……こんなのは……」
唇が触れる寸前、式が幹也の胸板を押して距離を取る。
「……ダメだ……」
「式……」
「ごめん、もう戻る……」
「待ってよ」
「きょ、今日は……色々あって疲れた。また明日な」
幹也はそれ以上止めることなく、小さく頷いた。「おやすみ」