二次創作小説(新・総合)
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- 【まほよ二次創作】夏の魔法は波音とともに
- 日時: 2025/02/21 19:35
- 名前: きのこ (ID: ovLely7v)
夏の日差しが照りつける真昼、青い空と白い雲が広がるビーチ。
潮騒の音が心地よく響く中、静希草十郎は裸足で砂浜を歩いていた。
「海、か……」
山育ちの彼にとって、こうした広大な水辺は馴染みがない。
見渡す限りの青と、足元を洗う波の感触に、ただただ圧倒されるばかりだった。
「草十郎、何してるの? ぼーっと突っ立ってたら干からびるわよ!」
元気な声とともに、バシャリと水しぶきが飛んできた。
振り向けば、青子が水着姿で仁王立ちしている。
赤と黒のビキニを身にまとい、腕を組んでこちらを睨んでいた。
「すまない、何をするべきなのかよくわからなくてな」
草十郎が素直に答えると、青子は呆れたようにため息をついた。
「いいから楽しみなさいよ。ほら、泳ぐなり、遊ぶなり!」
そう言いながら、青子は勢いよく水の中へ飛び込んだ。
波間に浮かび、器用に泳ぎながらこちらを見上げる。
「そうか……泳ぐのか」
草十郎は腕を組んで少し考えたが、結局、ズボンの裾をたくし上げて海に足を浸すだけに留めた。慣れない水の冷たさに軽く身震いする。
「まったく……本当に世話の焼ける人間ね」
いつの間にか隣に立っていたのは久遠寺有珠だった。
彼女は日傘を差し、白いワンピースの上から薄手のストールを羽織っている。
水着を着ている気配はない。
「有珠は泳がないのか?」
「当然。こんな開けた場所で肌を晒すなんて、あり得ないわ」
そう言いながら、有珠は浜辺に敷かれたパラソルの下へ向かって歩き出した。
そのままチェアに腰を下ろし、持っていた本を開く。
どうやら、彼女なりのビーチの過ごし方があるようだ。
「有珠は日光に弱いからねー。泳ぐのは私たちだけよ!」
青子がそう言いながら、再び水しぶきを上げた。
草十郎はしばらくそれを眺めていたが、やがて静かに笑った。
「そうだな――俺も遊んでくる」そう言いながら、草十郎は水へと飛び込んだ。
冷たい水の感触も、夏の太陽も、すべてが新鮮で心地よかった。
青子が飛びかかってきて、波のなかに転がり込む。
笑いながらじゃれ合う二人を、有珠が見守っていた。
いつか見たような、懐かしい光景だ。
それは遠い未来への願掛けのように思えた。
『まあ、たまにはこういうのも悪くないな』
潮風が吹き抜ける中、彼らの夏の一日は、ゆっくりと過ぎていった。