二次創作小説(新・総合)

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【まほよ二次創作】三人と一冊、閉ざされた夜
日時: 2025/02/21 21:16
名前: きのこ (ID: ovLely7v)


プロローグ

ある日、静希草十郎、蒼崎青子、久遠寺有珠の三人は、なぜか屋敷の一室に閉じ込められていた。

「……なんで?」ぽつりと草十郎が呟く。

「こっちが聞きたいわよ!」青子が頭を抱えて叫ぶ。

普段の彼女の口調からすれば、比較的穏やかな怒り方だ。

「これは、確かに困った状況だな……」

有珠が腕を組み、冷静に状況を分析している。

だがその表情は明らかに不機嫌だ。ドアは開かず、窓もない。

魔術的な封印が施されているらしく、有珠が試しても解けなかった。

「どういうことなかしら?」

「……これは、閉じ込められたのか?」

「ええ、そういうことよ」

「なるほど」草十郎は納得したように頷いた。

そして——

「……で、どうする?」

「どうするって、あんた!」

「まあ、待て。落ち着け、蒼崎。」

「……この程度の事で、私たちに動揺は無用」

「で、でも……!」

「大丈夫、問題ない」

ここに三人で閉じ込められたまま、無事に脱出することはできるのか。

これは、そんなちょっとした事件の始まりだった。

第一章 

「……あー、誰の仕業なのよ!?」青子が頬杖をつきながら問いかけた。

「それは分からない、魔術的な仕掛けがある以上、単なる物理的な事故ではないことは確か」有珠が冷静に分析する。

「そうか……じゃあ、誰かのイタズラか?」草十郎が考え込む。

「そんな簡単な話じゃないわよ! 誰がこんなことをするっていうのよ!」

「……蒼崎じゃないのか?」草十郎の一言に青子が激昂する。

「誰が好き好んでこんなことするのよ!?」

「蒼崎はなんとなく、こういうことをしそうな気がする」

「しないわよ!!」

「……まぁ、可能性としては、青子の魔術の暴発も考えられる」

有珠が静かに言うと、青子は「ぐっ」と言葉を詰まらせた。

「……いや、今回は違うわよ! ちゃんと管理してたもの!」

「本当に?」

「本当に!」

「ならいいが」

「むぅ……」

青子がむくれる中、草十郎はドアを押したり引いたりしてみる。

「ダメか……まぁ、何とかなるだろう」

「……なんとかなる根拠は?」有珠が冷たく尋ねる。

「こういうのは、そのうち勝手に解決するもんだろ?」

「しないわよ!?」青子のツッコミが炸裂する。

草十郎の言葉は事実だが、実際にそういうパターンを何度も見ているわけではないので、根拠はない。

「まぁ、いいさ。何か方法が見つかるかもしれないし、見つからなくても、いずれ誰か来るだろ? 誰かが来たら、その時はその時だ」

「……まぁ、そうね。確かに、誰かが来るかも」青子も同意する。

そんなこんなで、密室に閉じ込められた三人は、脱出の糸口を探ることになるのだった。

Re: 【まほよ二次創作】三人と一冊、閉ざされた夜 ( No.1 )
日時: 2025/02/21 21:19
名前: きのこ (ID: ovLely7v)


第2章

「……で、どうするのよこれ?」

青子が腕を組み、閉ざされた扉を睨む。

久遠寺邸の地下室に閉じ込められて数十分。

魔法使いと魔女、そして山育ちの男という奇妙な三人組は、未だ脱出の糸口を見つけられずにいた。

「有珠。何か手はないのか?」

草十郎が淡々と尋ねる。対する有珠は薄く眉を寄せながら答えた。

「扉には魔術的な封印が施されている。私でもすぐには解けない」

「じゃあぶち破るのは?」青子が期待した目で尋ねる。

「あり得ない。そんなことをすれば屋敷全体に影響が出る可能性がある」

「ちぇっ、やっぱりダメか……」

肩をすくめる青子を横目に、草十郎がポツリとつぶやいた。

「この部屋、食料はあるのか?」

「そんなもの、あるわけが——」

と、有珠が言いかけたところで草十郎は机の引き出しを開け、ポリポリと乾燥クラッカーを取り出した。

「……あるな」

「……なんで」有珠が驚愕し、青子が爆笑する。

「まあ、そう焦るなよ。とりあえず落ち着いて作戦を立てよう」

草十郎は冷静に言いながら、クラッカーをポリポリと食べ続けた。

「ちょっと!それ非常食じゃないの!?」

青子が叫ぶが、草十郎は気にせず食べ続ける。

「…あんた、腹が減って死にそうなんだったら、少しは遠慮しなさい!」

「…別に?私はまだ大丈夫だよ?」

青子が憤慨するが、草十郎は余裕の表情で、ポリポリと音を立てながら、クラッカーを食べ続ける。

「もうっ!」

かくして、空腹と知恵比べの密室脱出劇が幕を開けるのだった。

第3章

「……青子、さっきから私の方ばかり見ているけど、何か言いたいことがあるの?」

「いや……だってさ、これってある意味サバイバルじゃない? だったら役割分担しないと」

「役割分担?」

「そう。食糧管理は有珠、体力勝負は草十郎、知恵を絞るのは私! これで完璧!」

「待て、俺が体力勝負なのは分かるが、知恵を絞るのが蒼崎?」

草十郎が無表情で突っ込む。

「ちょっと草十郎、私の知性をバカにしてるの?」

「いや、別に。そもそも蒼崎は、力技で何とかしようとしてたし」

草十郎に指摘されて私はハッとする。

確かに私は、火力勝負なら勝てると踏んで力技で戦ってきた。

だが、そんな勝手は通用しない相手がいることを忘れていた。

「それと知性は関係ない!」

「関係あるだろ」

「……それで?」有珠がため息混じりに問いかける。

「何が?」

「この役割分担に、何の意味があるの?」

「うっ……」青子が言葉に詰まる。すかさず草十郎が畳みかける。

「つまり、蒼崎が言いたかったのは『とりあえず考えたっぽいことを言いたかった』ってことか?」

「そ、そんなわけないでしょ!」

「なるほど……」

「納得しないで!」

こうして、脱出よりも先に三人の心理戦が激化していくのだった。

第四章

「……もういい。強行突破する」有珠が静かにそう宣言した。

「え!? さっきは駄目だって言ったじゃん!」

青子が驚き、草十郎が興味深げに見つめる。

「青子のあまりにも無計画な案と、静希くんのマイペースすぎる行動に耐えきれなくなった」

「……そんなこともある」

「だから諦めるな!」

「やっぱり、直接魔術を使うしかないわね……」

そう言って有珠が魔術を発動しようとした瞬間、

——ガチャ。

「…………」

「…………」

「…………」

「……え、開いた?」青子が呆然と呟く。

「……草十郎、どういうこと?」

有珠が静かに尋ねると、草十郎はポケットから鍵を取り出した。

「机の引き出しに入ってた」

「もっと早く言え!!!!」

かくして、三人の密室生活は呆気なく幕を閉じたのだった。


Re: 【まほよ二次創作】三人と一冊、閉ざされた夜 ( No.2 )
日時: 2025/02/21 21:22
名前: きのこ (ID: ovLely7v)


エピローグ

「……二度とゴメンだ。」

静希草十郎は疲れ果てた様子で、真っ先にそう呟いた。

数時間に及ぶ密室でのサバイバルは、ついに幕を閉じた。

結局、どうやって閉じ込められたのかは青子の手による何らかの魔術的事故(※本人は絶対に認めない)であり、そこの引き出しにあった鍵によって一件落着。

「そもそも最初から騒ぐ必要はなかったのよ。私のミスではないし、あれほど慌てる必要はね……!」意地でも認めない青子。

「……今回はさすがに焦ったかしら。私たち、このまま歴史から抹消されるかと思った…。」冷静に言う有珠。

「いや、でもさ、それはどうかな。案外、すぐに忘れてしまうかも。」

「確かに、そんな気も……なーんて。冗談よ。」

「あはは。」 「……」 「……」

「あー、うん。なんかさ。」

「なに?」

「この、何というか……微妙な空気、どうしたらいいのかとか。」

「あー、そうね。……そうね。」

「……」 「……」気まずい沈黙が流れた。

「じゃあ、えっと……その。」

「……なあ、有珠。」

「何かしら?」

「その本、最初から持ってたんじゃないか?」

何故か、彼女の袖口には、「密室ロック解除マニュアル」 というタイトルの古びた本が、ひっそりと挟まっている。

「……。」有珠は無言で本を背後に隠した。

「おーい。」草十郎の淡々とした声が響く。

青子は一拍置いてから、じわじわと有珠を指差した。

「ちょっと有珠、それ最初からあったの!?私たちが床に落ちたパンの欠片を取り合ってた時も!?草十郎が、追い詰められた末に**『究極の心理戦じゃんけん』** を提案した時も!?」

「……知らない。」

「知らないじゃないわよ!!!」青子の怒号が屋敷に響き渡る。

「いや、……私は……だって。」有珠はゆっくりと振り返った。

その表情はどこか悲しそうだった。

「……だって、これじゃ面白くないでしょう?」

青子は、しばらくの間、口をパクパクとさせたまま固まってしまった。

草十郎はと言えば、天を仰いで大きく息を吐いた。

「ま、いいか。無事に出られたし。」

「よくないわよ!?青春の貴重な数時間を、ムダにしたわけだけど!?」

「まあ、それも思い出ということで。」

「思い出にしたくない!!」

青子が叫び、有珠は静かに目を逸らし、草十郎は苦笑した。

――かくして、三人の密室事件は終焉を迎えた。

青子の怒りの追求はこの後もしばらく続いたが、有珠が巧妙に話をはぐらかし、最後は草十郎が無理やり話題を変えることでようやく収束した。

だが、彼らはまだ知らない。

数日後――有珠の屋敷の別の部屋にて、同じく密室事件が発生することを。

「ま た か」

草十郎の呆れた声が屋敷に響き渡ったのは、もう少し先の話である。



―完―


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