二次創作小説(新・総合)

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【fgo二次創作】チョコと返り血と誤解と
日時: 2025/02/22 08:11
名前: きのこ (ID: ovLely7v)


カルデアにバレンタインがやってきた。英霊たちがチョコを贈り合い、愛と混沌が入り混じるこの日、天草四郎時貞は決意を固めていた。

「セミラミスに、手作りのチョコを渡そう」

女帝たる彼女が既製品で満足するはずがない。

ならば、私が彼女のために作るべきだ―と、真剣な眼差しでエプロンを締めた。

だが問題は彼がチョコ作りの経験ゼロだったことだ。テンション高めのアンリマユや、なぜか楽しそうなカーマの邪魔を受けつつ、天草は試行錯誤の末にそれなりの形をしたチョコを作り上げた。

「よし……何とか形になったな」しかし、彼は気づいていなかった。チョコを溶かす際、勢いよくかき混ぜすぎたせいで、黒い液体があちこちに飛び散っていたことに。

そして運命の時――

天草が自信満々にセミラミスの私室へと赴く。

「セミラミス、手作りのチョコレートを用意しました」

「ふん、我に貢ぎ物とは殊勝なことよ」

彼女は腕を組みながら天草を見下ろすように座っていたが、彼の姿を見た瞬間、その表情が凍りついた。

天草の白い衣装に、点々と飛び散る黒いシミ。それは――まるで誰かの返り血のようだった。

「……なにをした?」

「? 何を、とは?」

「とぼけるな、天草四郎。我の目は誤魔化せぬ。貴様、また何か企んだな?」

「いえ、これは単なるチョコレ――」

「血の匂いがする!」

「いや、カカオの香りです!」

だがセミラミスは天草の言葉を信じなかった。何せ、目の前の男はニコニコと微笑みながら、堂々と「手作りのチョコレート」などと言っている。

――血の匂いがする衣を纏いながら。

「貴様……我に隠れて何者かを始末したのだな?」

「違います! これは純粋な愛情の表れで――」

「ふざけるな! 我が知らぬところで勝手に暗殺を企てるとは、いい度胸だな!!」女帝は席を立ち、天草の胸ぐらを掴んだ。彼女の瞳は怒りに燃えている。

「待ってください! これはチョコが飛び散っただけで――!」

「ならば証拠を見せよ!!」

「証拠と申しますと……」

「舐めてみせろ」

「えっ」

「その黒いシミを、今すぐ我の目の前で舐めてみせろ!!」天草は絶句した。いや、確かにチョコレートだから舐めればいいのだが……この状況でやるのは恥ずかしすぎる。

「……」

「どうした? できぬか?」

「……いや、できます」天草は覚悟を決めた。指先に付着した黒いシミを舌先で舐める。

「……ん、ビターですね」

その様子を食い入るように見つめていたセミラミスが、静かに目を細める。

「……本当にチョコレートなのか?」

「はい、間違いなく」

「……」

「ご安心を、セミラミス。私は何もしておりません。これは純粋に、貴女への贈り物で――」

「ならば良い」

バサリと袖を翻し、セミラミスは再び椅子に座る。そして、天草が差し出したチョコを手に取ると、ゆっくりと口元へ運んだ。

「……ふむ。まぁ、味は悪くないな」

「それは何よりです」

「……だが、次に我にこのような紛らわしい姿を見せたら……わかっているな?」

「以後、気を付けます」

心底ホッとした天草だったが、部屋を出る間際、背後からセミラミスの小さな声が聞こえた。

「…それでも、我のために作ったというのは……許してやらぬこともない」

天草はくすりと笑い、静かに部屋を後にした。

カルデアのバレンタインは、今日も平和(?)である。


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