二次創作小説(新・総合)
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- 【月姫二次創作】シエルのカレー放浪記
- 日時: 2025/02/22 09:44
- 名前: きのこ (ID: ovLely7v)
プロローグ
『おいしいカレーって、何が違うんだろう?』
シエルは少し困ったように、目の前のカレーをじっと見つめていた。
食べ歩きと言っても、ただ食事を楽しむだけのつもりで始めたわけではない。
ただ、あれもこれも試してみたくなっただけだ。
カレーの香りが漂う店内は、普段の彼女からは想像もつかないほどにリラックスした雰囲気に包まれている。
本当は、ただの昼食の時間に過ぎないのだが、彼女には少し特別な意味があった。
身の回りで起こる騒動が多すぎて、たまには無心で食べることも悪くないと思ったのだ。
それが、カレーという料理ならなおさらだ。
香辛料が効いたその風味、そして食べるたびに変わる口の中の景色。
まさに彼女の好みにぴったりだ。
ふと視線を上げると、カウンターの向こう側にいる店主が心配そうに彼女を見ていることに気づいた。
シエルは気恥ずかしさに軽く微笑んだ。
「…ごめんなさい、ちょっと考え事をしてました。」
「おいしいカレー。そう、これが一番」
微笑みながら、彼女は再びスプーンを取った。
実は、カレーという料理にはひとつの秘密がある。
どんなに辛くても、どんなに複雑なスパイスを使っても、心が温かければ、それが最高のカレーになるのだということ。
『あぁ、これが幸せってやつね』ふと、心の中で呟いた。
思わずスプーンをもう一口運ぶ手が止まる。
無意識のうちに、心の奥底にひっかかるような何かがあったからだ。
それは、あの日を思い出させるものであり、同時に誰かのことを想わせるものでもあった。
—遠野志貴。
そう。彼のことだ。
だが、そのことを考え始めると、気がつけばカレーが冷めてしまう。
とりあえず、今は食べ歩きに集中しよう。
志貴のことを思いながら食べるのも悪くない、
と思うけれど、いったんカレーのことだけを考えてみることにした。
「次は、どの店に行こうか?」シエルは一人ごちた。
その声には、ほんの少しだけ無邪気な輝きが混じっていた。
- Re: 【月姫二次創作】シエルのカレー放浪記 ( No.1 )
- 日時: 2025/02/22 09:46
- 名前: きのこ (ID: ovLely7v)
第1章
シエルの食べ歩きは、一日や二日で終わるようなものではなかった。
彼女の目的は、ただ「おいしいカレーを食べること」ではなく、「最高のカレーとは何か」を知ることだった。
そんな彼女が次に訪れたのは、カレーの名店が軒を連ねることで有名な商店街だった。
スパイスの香りが通りを包み込み、歩くだけで食欲をそそられる。
屋台からレストランまで、多種多様なカレーが並ぶこの街で、シエルの期待は大いに高まった。
「さて、どこから攻めましょうか……」
シエルは通りを歩きながら、各店の看板を見比べた。
インド風、欧風、スープカレー、キーマカレー、果ては創作カレーまで――
選択肢は無限に広がっている。
「うーん……これは悩ましい」
そんな時、ふと目に留まったのは、古びた小さなカレー屋だった。
店の名前は『スパイスの小径』。
派手な看板もなく、客足もまばらなその店は、まるで隠れ家のような佇まいだった。
「こういう店が、意外と当たりだったりするんですよね」
シエルは微笑むと、扉を押して中へ入った。
第2章
店内に入ると、スパイスの香りがふわりと鼻をくすぐった。
外観の印象とは裏腹に、店内は温かみのある雰囲気で、奥には年配の店主が静かに鍋をかき回している。
「いらっしゃい」店主の声は低く、落ち着いたものだった。
シエルはカウンター席に腰を下ろし、メニューを手に取る。
シンプルな品揃えの中に、一つだけ目を引くものがあった。
「特製スパイスカレー……これをお願いします」
店主は頷くと、無駄のない動きで調理を始めた。
鍋の中でスパイスが混ざり合い、じっくりと煮込まれていく音が心地よい。
シエルはしばし目を閉じ、その香りを楽しんだ。
数分後、目の前に運ばれてきたカレーは、見た目こそ素朴だったが、湯気とともに立ち上る香りはただ者ではないことを物語っていた。
「いただきます」
シエルはスプーンを手に取り、ひとくちカレーを口に運んだ。
――その瞬間、世界が変わった。
「……!」
スパイスが舌の上で踊るように広がり、辛さの中に奥深い甘みが感じられる。
これは、ただのカレーではない。
長年の経験と、職人のこだわりが生み出した一皿だった。
「すごい……」シエルは思わず呟いた。
店主は静かに微笑みながら、シエルをじっと見つめていた。
「どうだい?」
シエルは少し考えた後、笑顔で答えた。
「……最高です」
こうして、シエルのカレー探求の旅は、まだまだ続くのだった。
- Re: 【月姫二次創作】シエルのカレー放浪記 ( No.2 )
- 日時: 2025/02/22 10:57
- 名前: きのこ (ID: ovLely7v)
エピローグ
シエルは静かにスプーンを置いた。
目の前の皿は空っぽで、スパイスの香りがまだ鼻腔に残っている。
「結局、どのカレーが一番おいしいかなんて、決められませんね。」
彼女は小さく笑った。
どの店もそれぞれの味があり、それぞれのこだわりがあった。
スパイスの配合、煮込み時間、隠し味――
どれも違いながらも、カレーという料理が持つ魅力には変わりがない。
「……でも、やっぱり最後に食べたいのは、あの味かな。」
思い浮かぶのは、彼の顔。
そして、彼の家で作った、少し不格好だけれど優しい味のカレー。
特別なスパイスが入っているわけではない。
ただ、誰かと一緒に食べるという、それだけで満たされる味。
『また、作ってもらおうかな。』
店を出ると、夜風が心地よく頬を撫でた。
シエルは軽く伸びをして、次に向かうべき場所を考える。
カレーの旅は終わりではない。
これからも、彼女の「おいしいカレー」を探す道のりは続いていくのだから。
これからも、シエルのカレーの旅は続いていく。
きっと、その先でまた——懐かしい味に出会う日まで。
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