二次創作小説(新・総合)

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【fgo二次創作】女帝の恋は計算外
日時: 2025/02/23 22:08
名前: きのこ (ID: ovLely7v)

カルデアの廊下を、優雅な黒衣を揺らしながら歩くセミラミス。

毒の調合も終え、今日も誰かを手のひらで転がす愉悦に浸ろうとしていた――

はずだった。

「やあ、セミラミス」

唐突に聞こえた馴染みのある声に、彼女の足がピタリと止まる。

「…何だ、貴様か。いきなり話しかけるな、心臓に悪い」

「それはすまなかった。だが、久しぶりに顔を合わせたのだから、挨拶くらいはね」

天草四郎時貞――かつて共に戦った男。

彼の銀灰色の瞳が微笑ましげにこちらを見つめている。

その態度が妙に馴れ馴れしい。いや、馴れ馴れしいどころか、自然すぎる。

「…我に何か用か?」

「いや、ただ様子が気になっただけだよ。相変わらずお美しいな、セミラミス」

「っ――」

セミラミスの指先がピクリと動く。

わざとらしい口説き文句ならば一蹴して終わる。

しかし、天草のそれは違う。

ただの事実を述べているだけ、という顔をしているから腹立たしい。

「フン…当然だ。我の美貌が色褪せるなどありえぬ」

「それもそうだね」

素直に同意されると、どう返せばいいのか分からなくなる。

いつもなら男どもは照れたり、気を引こうとしたりするものだが、こやつはそうではない。

「ふふ、何だか懐かしいね」

「…何がだ」

「君がこうして不機嫌そうな顔をするのを見ていると、あの頃を思い出すよ」

「っ…!?」

『何を言っているのだ、この男は!?普通なら「久しぶりに会えて嬉しい」とか、「また一緒に戦えて光栄だ」とか、そういう言葉を選ぶだろうに、よりによって「不機嫌そうな顔が懐かしい」とは!?』

「…ほぅ?我がそんな顔をすることなど、そうそうないはずだが?」

「いや、しているよ。こう、唇をわずかに尖らせて、眉をほんの少し寄せる。その仕草がなんとも可愛らしい」

「なっ……!?」

無意識に唇に触れそうになり、慌てて手を引っ込める。

まさか、こやつは本当に狙って言っているのか?

それとも、ただの天然か?どちらにせよ、計算外すぎる。

「では、また話そう。君とこうして話すのは楽しいからね」

そう言って、天草はふわりと微笑み、そのまま去っていく。

残されたセミラミスは、ギリッと奥歯を噛みしめた。

『何なのだ、あの態度は…!我を口説いているのか?それとも弄んでいるのか…!?』

悔しいことに、答えは出ない。ただひとつ確かなのは――

「……気に食わぬ」

気に食わぬ、ということだった。