二次創作小説(新・総合)

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【fate二次創作】王子様は天然です。
日時: 2025/02/23 23:32
名前: きのこ (ID: ovLely7v)


沙条綾香は悩んでいた。

目の前に座るセイバーが、湯気を立てるカップを手に持ちながら真剣な顔でこう言ったからである。

「綾香、私はどうも紅茶をうまく淹れられないらしい」

「……いや、それは別にいいんじゃない?」

何が問題なのかわからない。

というか、そもそも彼が紅茶を淹れようとしていたこと自体、予想外だった。

「なぜそんなことを?」

「いや、マスターの君が紅茶を好むからには、私も淹れられるようになった方がいいと思ったのだが……」

綾香は一瞬、言葉を失った。

確かに自分は紅茶が好きだ。

しかし、それを理由に王が紅茶の淹れ方を気にしているという状況は、どう考えても妙だ。

「そんなことよりも、もっと重要なことがあると思うんだけど……」

「ふむ。確かに、紅茶を淹れる技術より剣技の鍛錬の方が優先されるべきか」

「いや、そういう意味じゃなくて!」

この天然セイバーにどう説明すればいいのか、綾香は思案する。

彼はまぎれもなく最強クラスのサーヴァントであり、正義と誇りを重んじる騎士である。

しかし、なぜか変なところで妙なこだわりを発揮するのだった。

「では、いっそ君が手取り足取り教えてくれないか?」

「……いや、それくらいは自分でやってよ……」

「ふむ。君は厳しいな、綾香」

何かが根本的にズレている。

そんなやりとりをしているうちに、いつの間にかカップの中の紅茶が冷めてしまっていた。

「……うーん、結局この紅茶、どうしよう?」

「ならば、私がいただこう」

「え? でもさっき、自分で淹れたのが上手くないって──」

「関係ない。綾香が淹れた紅茶なのだから、飲む価値がある」

そう言って、一切の迷いなくカップを口に運ぶ。

……なぜだろう?

たかが紅茶を飲むだけなのに、どこか王子様然とした雰囲気が漂っている。

それを見た綾香は、思わず顔を覆いたくなった。

「セイバーって、ほんとズルいよね……」

「……何か言ったか、綾香?」

「な、なんでもない!」

そうして、今日も沙条綾香はセイバーに振り回されるのだった。