二次創作小説(新・総合)
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- 【fate二次創作】歪んだ愛の狂詩曲
- 日時: 2025/02/24 12:32
- 名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
王は愛された。かつて、彼女に。
だが、愛とは決して美しいものばかりではない。
愛はときに歪み、狂気となる。
「セイバー、久しぶりね。元気にしていた?」
その声は変わらず甘美で、無邪気な響きを持っていた。
まるで幼子が戯れるような純真さ。
しかし、それこそが恐怖を誘う。
「……沙条愛歌」
かつての主、沙条愛歌がそこにいた。
確かに彼女は死んだはずだった。
彼が自ら剣を突き立てたのだから。
「驚いた? でも、貴方なら分かるでしょう? 私がこんなことで終わるはずがないって」
セイバーは静かに剣を握った。
愛歌の微笑は変わらない。
彼を前にしているときだけは、彼女はあまりにも純粋な少女だった。
「……君は、なぜ戻ってきた?」
「決まっているでしょう?」
愛歌は歩み寄る。
恐れもためらいもなく、ただ王の前に。
「貴方がいるからよ。私が愛する、私の王子様が」
セイバーは眉を寄せた。彼は理解している。
この少女の愛が、何よりも重く、何よりも恐ろしいことを。
「私は君のマスターではない。今の私は——」
「……妹…綾香のサーヴァントでしょう?」
その名を口にしたとき、愛歌の顔が僅かに曇る。
だが、それは一瞬のこと。すぐに微笑が戻った。
「それでもいいわ。だって、貴方は私のものだから」
彼女の指先がセイバーの頬を撫でる。
その仕草はあまりにも自然で、優しく、慈愛に満ちていた。
「私、貴方のためにたくさん用意したのよ。愛しいセイバー。今度こそ、私のものになってくれる?」
彼女の背後に広がる異形の闇。
魔術という概念を遥かに逸脱した、ただの"奇跡"。
「断る」即答だった。
「そう……そうよね。じゃあ仕方ないわ」
愛歌は微笑を崩さぬまま、手を振った。
すると、異形が蠢き始める。
「それじゃあ、もう一度、貴方を私のものにするために頑張らなきゃ」
セイバーは嘆息する。
彼女は変わらない。いや、変わるはずがない。
「私の王子様、今度はどんな風に私を楽しませてくれるの?」
彼女は心から楽しそうに笑った。
そして、戦いが始まる。