二次創作小説(新・総合)

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【fgo二次創作】避暑地はどこですか?
日時: 2025/02/28 21:41
名前: きのこ (ID: opLc/10u)


「……死ぬ。間違いなく、今日の僕はここで死ぬ……」

カドック・ゼムルプスは、エアコンの効いた部屋の床に転がりながら、今にも消え入りそうな声で呟いた。

額には滝のような汗が流れ、Tシャツは背中に張り付いている。

──暑い。暑すぎる。

「カドック、耐えなさい。貴方もロシアの冬を経験したのなら、この程度……耐えられるわけがないわね、ゴッドホット」

ベッドの上でぐでーっと溶けたようになっているアナスタシアが、ゆるゆると手を振って彼を煽る。

普段は気品あふれる彼女だが、暑さにはめっぽう弱い。

今日みたいな猛暑日にはもはや戦闘不能だった。

「……何がゴッドホットだよ。なんでエアコンつけてんのにこんなに暑いんだ……!」

カドックはうんざりした顔でアナスタシアを見る。

彼女はシーツを被りながら、まるでロシアの冬に戻りたいとでも言いたげにベッドの上で身悶えていた。

「……冷蔵庫のアイス、残ってたっけ?」

「三つあったはずよ。昨日の時点では」

「……昨日の時点では?」

「さっき食べたわ」

「……何やってんだアンタ!!」

「だって暑かったのよ、カドック。仕方ないじゃない?」

カドックは両手で頭を抱えた。

何のために昨日、汗だくになりながらコンビニまで買いに行ったと思っているのか。

いや、もちろん食べるためだが。

「……じゃあもう、氷水でも作るしかないな……」

「氷も使い切ったわ」

「……ふざけんなよ!!!」

カドックは叫んだが、アナスタシアはぴくりとも動かない。

暑さで完全にやる気を失ったらしい。

「カドック、あなた何か涼しくなる魔術は使えないの?」

「使えたらとっくにやってる!僕の得意分野は獣除けの魔術なんだよ!暑さなんか防げるか!」

「……あら、では私を獣として扱って、冷却魔術でも試みてみる?」

「なんでそんな自虐的なんだよ……いや違う、そういう話じゃない」

カドックはフラフラと立ち上がると、扇風機のスイッチを入れた。

しかし、蒸し暑い風が回るだけでまったく意味がない。

「……もう駄目だ。これ以上ここにいたら、本当に溶ける」

「では、どうするのかしら?」

「……海か、プールにでも行くしかない」

アナスタシアはベッドの上で目を輝かせた。

「それは良いわね!海を堪能できるのね!」

「よし、じゃあ今から……」

「でも、準備するのが面倒だわ」

「……は?」

「水着を選ぶのも、着替えるのも、日焼け止めを塗るのも、とても面倒だわ。私、もう動きたくないもの」

「……」

カドックは悟った。

結局、彼らは今日一日、エアコンの効いた(効いているはずの)部屋の中で暑さに苦しみながら、溶けるような時間を過ごすことになるのだと。

「……僕は……もうダメかもしれない……」

「しっかりしなさい、カドック。死ぬにはまだ早いわ」

「いや、君も十分ダメになってるだろ……」

二人は再び床に転がる。

どこかからセミの鳴き声が聞こえてきた。

──夏、早く終われ。

カドックとアナスタシアの、灼熱地獄の日常はまだまだ続くのだった。