二次創作小説(新・総合)
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- 【fate二次創作】あなたに捧げるデッドエンド
- 日時: 2025/03/01 14:47
- 名前: きのこ (ID: 0N93rCdO)
月の裏側
――その奇妙な空間で、私はBBと二人きりだった。
「先輩、わたしの愛、受け取ってくれますよね?」
BBが、にっこりと笑って私の頬に手を伸ばす。
その仕草は優しく、まるで普通の後輩のように思えた。
しかし、彼女が普通ではないことは嫌というほど知っている。
「どうせまた、ろくでもないことを企んでいるんでしょ?」
私がため息交じりにそう言うと、BBは唇を尖らせた。
「先輩は本当に疑い深いですね。こんなに健気に愛を囁いているのに」
「愛を囁きながら私を殺そうとするのは、健気とは言わないんじゃないかな」
「先輩…ひどいです!」
わざとらしく涙を浮かべるBBに、私は無表情で見つめ返す。
彼女のそういう演技はもう慣れたものだ。
だが、同時に、それがただの演技とも思えなかった。
BBの「好き」は本物なのだろう。
ただし、それがどこまで純粋なもので、どこから歪んでいるのか、そこが問題だ。
BBは私の手を取ると、ぎゅっと握りしめた。
その力は決して強くはないが、離れることを許さないような執着を感じさせた。
「……BB、私は君が敵だと言うのなら、容赦しないよ」
「わたしもですよ? でも、それでも好きなものは好きなんです」
BBはくすりと笑う。
まるで、戦うことが愛の形であるかのように。
「ねえ、先輩。もし世界がふたりだけになったら、どうします?」
「…そんな世界は来ないよ」
「でも、ここはもう、そんなものじゃないですか?」
BBは私の手を引いて、強引に抱きしめた。
「わたし、先輩とこうしていられるなら、それでいいんです。戦いも、勝敗も、どうでもいい。ただ、先輩がわたしのそばにいれば、それだけで」
彼女の声は甘く、けれどどこか切なげで、私は思わずため息をついた。
「……本当に君は、どうしようもないな」
「ええ、先輩のせいです」
私は、彼女の背にそっと手を回した。
「なら、私に付き合ってよ」
BBは目を細め、耳元にそっと囁く。
「ええ、どこまでも、ね……」
静寂の月の裏側で、私たちは溶け合うように寄り添い、世界が終わるまで、この場所に留まることを選んだ。
