二次創作小説(新・総合)
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- 【fate二次創作】千年越しの恋、月に誓って
- 日時: 2025/03/01 15:15
- 名前: きのこ (ID: 0N93rCdO)
月の聖杯戦争、開戦。
光が満ちる電子の夜、揺れる銀の大地を踏みしめ、岸波白野は静かに息を吐いた。
彼女の隣には、妖艶な狐耳の魔女が立つ。
「ご主人様、今日も麗しいですねぇ。……と言っても、表情が乏しいのが玉に瑕。でも、その無愛想な感じも……はぁ、堪りませんっ!」
キャスター
──玉藻の前が、うっとりした表情で頬を押さえる。
「……あの、キャスター。もうちょっと真剣に戦闘の話をしようよ」
「もちろんですとも、ご主人様!ですがですね、こうしてお二人きりで夜を迎えるだけで、この玉藻、しあわせ四畳半気分なのですよ? ああ、ご主人様と買い物帰りなどしてみたい……!」
白野は肩を落としながら、溜息をついた。
「戦闘の話、してくれない?」
「はーい、はーい。真面目な顔も可愛いですねぇ、ご主人様♪」
彼女の明るい声とは裏腹に、その手に宿る呪術は月の夜に溶け込みながら、鋭い気配を漂わせていた。
たとえ普段どれほど軽口を叩いていようとも、彼女は魔術師としても、一騎の英霊としても一流だ。
「しかしまぁ、やはりご主人様は可愛いですねえ……はぁ、私の大好きな、最推しのご主人様♪」
「……キャスター、もういいから。そろそろ集中して」
「ひどいっ!ですが、そういうご主人様の冷たい態度も嫌いじゃありませんよ?」
小さな笑い声を漏らしながら、玉藻はそっと白野の手を取った。
「けれど、ご主人様は私のことをどう思っているんですか?」
白野は、ふと足を止めた。
「……どう、って?」
「私がこうして、毎日ご主人様に尽くしているのは……その……ふふ、何と言いますか。良妻狐を自称するからには、愛がなくては始まりませんでしょう?」
淡い夜風が吹き抜ける。
白野は玉藻の手を見つめた。
柔らかく温かい、けれどその奥には計り知れないほどの力を秘めた指先。
「私は……」
彼女の言葉が月の光に溶けかけたその瞬間──
「待った!今のお言葉、記録しておきましょうね!」
玉藻の前が嬉しそうに白野の手をぎゅっと握りしめた。
「ご主人様が私のことを意識し始めた!……ふふっ、うれしいです♪」
その笑顔は、まるで少女のように純粋だった。
白野は静かに目を伏せ、小さく、だが確かに微笑んだ。
「……まったく」
そうして二人の戦いは、いつしか共に歩む未来へと繋がっていくのだった。
月の大地に広がる影──夜の帳が降りる中、二人の視線の先には、静かに佇む対戦相手の姿があった。
「キャスター、準備は?」
「ええ、ご主人様のためならば、いつでもお手伝いいたしますとも♪」
玉藻の手が軽く振るわれると、彼女の周囲に呪符が舞い上がり、淡く輝く魔法陣が展開される。
「ふふっ、ご主人様の前ではおちゃらけてばかりですが……こういう時はしっかりやりますよ♪」
白野は小さく頷き、手の中の令呪を意識しながら前を見据えた。
「なら、行こうか」
「ええ、共に!」
夜の静寂を切り裂くように、戦いの幕が開いた──。
