二次創作小説(新・総合)

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【fgo二次創作】暗殺者の恋は優しくて
日時: 2025/03/02 14:50
名前: きのこ (ID: UrWetJ/L)


「ふぁ〜、朝だぁ……って、えぇぇぇぇぇ!?」

藤丸立香は朝日と共に目を覚ました。

そして目の前に広がる光景に、布団の中でのけ反った。

黒衣の少女

——静謐のハサンが、当然のように彼女の隣で寝息を立てていた。

「ちょ、ちょっと静謐!? なんで私のベッドにいるの!?」

驚いて身を起こすと、静謐も薄く瞼を開ける。

その紫色の瞳が揺らぎながら藤丸を見つめ、ゆるりと微笑んだ。

「……おはようございます、マスター」

「おはようじゃなくて! 何してるの!?」

「……ただ、ここが心地よかったから……」

静謐はぽつりと言って、布団の端を握りしめる。

その仕草があまりにもいじらしくて、立香はつい怒るのを忘れてしまった。

「も、もう……毎回こうやって忍び込んでくるのやめてって言ってるのに……」

「……でも、マスターは私のことを拒まないから」

「そ、それはそうだけど!?」

藤丸はぐっと言葉に詰まる。

確かに、静謐がこうして甘えてくるのを拒むことはできなかった。

彼女がどれほど孤独を抱えてきたか、よく知っているから。

「……えへへ。やっぱり、マスターの隣はあたたかいです」

静謐は頬を染めながら、そっと顔を寄せた。

その距離が近すぎて、立香の心臓が跳ねる。

「せ、静謐…顔近い……!」

「触れ合うことは……できませんけど、こうしていれば……少しは、満たされる気がするんです」

「うっ……」

そんなことを言われてしまったら、突き放すことなんてできるわけがない。

「……もう、しょうがないなぁ……」

立香は小さくため息をつくと、そっと静謐の頭を撫でた。

毒耐性があるとはいえ、彼女が普段どれだけ気を遣っているのか知っているからこそ、自分から触れることに意味があると思った。

「マスター……」

静謐の瞳が揺れた。

彼女は自分が触れることでしか愛を表せなかった少女。

けれど、立香は触れられなくても、触れることで彼女の心を包んでいた。

「ふふっ、これで満足した?」

「……まだ、足りません」

「えぇ……?」

静謐はそっと、指先を立香の頬に添えた。

毒は、ない。

だって、彼女は今、ただの恋する少女だから。

「もう少しだけ……そばにいさせてください」

「……うん」

朝の陽が、二人を優しく包み込んでいた。

——その後、毎朝のように静謐は立香のベッドに忍び込むこととなる。

「……ほんとに、もう……」

呆れながらも、立香は彼女を追い出すことなく、そっと毛布をかけ直した。