二次創作小説(新・総合)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【fate二次創作】アイリ、聖杯より料理を学べ
日時: 2025/03/07 16:44
名前: きのこ (ID: fiow63Ig)


「切嗣、これ…食べてみて!」

アイリは切嗣に微笑みながら小さな皿を差し出した。

だが、その中身は……。

「……これは、何だい?」

皿の上に乗っているのは、奇妙な形をした焼き物のようなもの。

見た目に少し、いや、かなり怪しさが漂っていた。

「実は、魔術の応用で料理を作ってみたの!これもその一環!」

「……まさか、魔術でできてるとは思わなかった。食べられるんだね?」

「大丈夫!ちゃんと食べられるわよ……きっと…!?」

切嗣は、何とも言えぬ顔をして皿を手に取り、しばらくそれを見つめた。

彼の心の中では、アイリの意気込みを無碍にできず、かといってその見た目に食指が動かない自分がいた。

「……試してみるか。」

一口食べた瞬間、切嗣の顔が引きつった。

「どう?美味しいでしょ?」

「……味は確かに不思議だが、どこか不安定だな。」

アイリは切嗣の反応を見て少し眉をひそめ、そして思いついたようににっこりと笑った。

「それなら、もっと魔力を込めて改善するわ!次は完璧にしてみせるわ!」

「無理しなくていいんだが……。」

彼の言葉もむなしく、アイリはすぐに次の試作に取り掛かろうとしていた。

そのとき、キッチンからは聞こえなかったが、焼け焦げた香りが漂ってきた。

次の晩、今度はアイリが切嗣に頼まれた料理を用意する番だった。

切嗣は少し不安げにテーブルに座った。

「切嗣、今日は本当にうまくいくと思うのよ!」

『……不安だ』

アイリは魔術を使わずに料理に挑戦し、かなりの時間をかけてようやく料理を仕上げた。

それを見た切嗣は、ほんの少しだけ安心した。

しかし、アイリが持ってきたのは……。

「はい、これ!今日は普通の料理よ!」

「……本当に普通の料理か?」

見るからに普通の料理が置かれていたが、切嗣はあまりに疑い深くなっていた。

アイリは切嗣の疑念を感じ取って、少し照れくさそうに笑った。

「大丈夫、食べてみて?」

切嗣は思わず口に運んだが、その後、目を見開いて呆れた。

「……本当に、普通にうまい!?」

「やった!やっと成功したわ!」

「……でも、君の料理は、やっぱり色々とドキドキする。」

アイリはちょっと困ったように肩をすくめた。

「でも、切嗣が喜んでくれるなら、私はそれで嬉しいわ。」

切嗣はしばらく黙って食べていたが、ふと顔を上げて微笑んだ。

「……ありがとう、アイリ。だが、これからは普通の方法でお願いする。」

アイリは嬉しそうにうなずいた。

――その夜。

「切嗣、少し散歩しない?」

夜風が涼しく、星がよく見える夜だった。

アイリスフィールは、そっと切嗣の手を取る。

「こんな夜、なんだかあの日を思い出すわ。」

「…あの日?」

「あなたと過ごした日々、そしてこれからもずっと……。」

アイリの声が微かに震えていた。

切嗣はその手を少しだけ強く握りしめる。

「アイリ……」

「私、幸せよ。あなたがそばにいてくれるから。」

アイリが笑った。

その笑顔は儚く、美しく、そしてどこか切なかった。

――まるで、この幸せが永遠ではないことを知っているかのように。

切嗣は、何も言えずに夜空を見上げた。