二次創作小説(新・総合)
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- 【fgo二次創作】文学少女、オタク文化に染まる
- 日時: 2025/03/08 14:53
- 名前: きのこ (ID: DTTuuvtM)
東京ビッグサイト
――世界最大の同人誌即売会、コミックマーケットの会場内。
「キターーーーー!!!」
開場と同時に、清少納言は歓喜の声を上げた。
「あたしちゃんの初頒布、ついにデビューしちゃうよー!」
彼女の目の前には、ずらりと並べられた同人誌。
「枕草子の隣は源氏でよろしく!」と銘打たれた清少納言×紫式部のギャグ百合本の表紙には、紫式部が困惑した顔で清少納言に振り回される姿が描かれている。
「……なんで、私があなたとこんなことを……」
サークルスペースの奥で、紫式部は頬を赤らめながら溜息をついていた。
指先でペラペラとページをめくりながら、表紙に描かれた自分と清少納言の姿を見つめる。
「何言ってるの式部っち!これは我らが平安文学ガールズの新境地開拓ってやつだよ!」
「そうは言いますが、これ……その……私があなたに押し倒されて、さらには……」
紫式部の声が小さくなり、指先が震える。
表紙には、清少納言に押し倒され、目を潤ませる自分の姿が大きく描かれていた。
「うんうん、めっちゃ“をかし”でしょ?」
「……そういう意味ではありません……!」
紫式部は目元を抑え、静かに震えていたが、すでに手元の在庫はじわじわと減り始めている。
清少納言の熱意は間違いなく伝わっているようだった。
一方――
「……ふふふ、売れる……売れるぞぉ……!」
少し離れた別のスペースでは、刑部姫が自作のBL同人誌を抱えながらニヤニヤしていた。
「姫の全情熱を注ぎ込んだ『マスター×カドック』の甘々BL……このカップリングの良さがついに世に広まる時が来たのです……!」
彼女の机には、表紙に「雪解けのキス〜極寒の地に咲く愛〜」と書かれた分厚い本が鎮座している。
立香とカドックが雪の降る夜に寄り添い合う、情熱的な表紙イラストが実に印象的だった。
「……な、何ですかその目は……?」
「い、いや、すごい熱量だなって……」
隣のサークルの売り子が苦笑いしながら視線をそらす。
刑部姫は気にする様子もなく、再び本を撫でた。
「ふふ……これは姫の集大成……必ずや藤カドの世界を広めてみせるのです……!」
そしてさらに数列離れたブースでは、紫式部が静かに自分の同人誌を並べていた。
「マリー×シャルルの純愛本……史実の運命を超えて、二人が幸せになる物語……」
彼女の本は、実に美しく仕上がっていた。
淡い色彩の表紙には、幻想的な雰囲気の中で見つめ合う二人の姿が描かれている。
「……歴史的背景を踏まえつつ、二人の心の機微を丁寧に描いたつもりです……読んでいただければ、きっと伝わるはず……」
紫式部は自信なさげに呟いたが、すぐに購入希望者が列を作り始めた。
「おお……!」
「式部っち、すごいじゃん!」
清少納言が駆け寄り、感嘆の声を上げる。
「いや、これはその……」
「マリー×シャルルっていうチョイスがマジで天才。あたしちゃんも見習いたいセンス!」
「そ、そうでしょうか……?」
紫式部は恥ずかしそうにしながらも、少しだけ誇らしげな表情を浮かべた。
そんな中――
「ふふ……姫の本も売れてきた……!」
「おっ、すごいねー!どれどれ、カベちゃんの本もちょっと見せてよ!」
「えっ……!?い、いや、その……清少納言様には刺激が強すぎるかと……!」
「えー、気になるー!どんな感じなのさ!」
「え、えっと……藤丸くんとカドックくんがこう、寒い夜にお互いの体温を求め合って……」
「おおー!熱い展開だねぇ!」
「そ、そうでしょう!?藤カドはこういう……切なくも甘いシチュエーションが……!」
「いやぁ、やっぱコミケは最高だね!」
清少納言は両手を広げ、会場を見渡した。
「いろんな人の“好き”が詰まってて、マジで“をかし”!」
「ふふ、そうですね……」
紫式部も静かに微笑み、刑部姫はニヤニヤしながら自分の本を抱え込む。
「……また来年も、出たいですね」
紫式部がふと呟くと、清少納言が勢いよく頷いた。
「もちろん!あたしちゃん、もう次の本の構想できてるし!」
「お、お早いですね……」
「今度は、枕草子×徒然草のクロスオーバー百合本とかどうかな!?」
「時代を超えてます……!」
そのやり取りを聞いていた刑部姫は、くすっと笑いながらぽつりと呟く。
「……次は姫ももっと攻めた作品に挑戦しようかと……」
「カベっち、もう十分攻めてると思うよ!」
「えぇ!?そ、そんなことは……!」
大盛況のまま、彼女たちのコミケ初参加は幕を閉じた。
そして夜――
ホテルの一室。
戦いを終えた戦士たちのように、ベッドやソファでぐったりと横たわる三人。
「……楽しかったけど、めっちゃ疲れた……」
「ええ……想像以上でした……」
「だがしかし!次回こそ姫は伝説を作るのです……!」
「もう作ってるよ!」
そんな軽口を交わしながら、彼女たちは次の創作へと思いを馳せるのだった――。