二次創作小説(新・総合)

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敵中横断二九六千光年
日時: 2019/04/20 12:00
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

個人リメイクによるオリジナルとは別の『ヤマト・イスカンダル編』。
古代進が最初は貨物輸送機のパイロットとして登場します。武装のない輸送機でサーシャを追うガミラスと遭遇、危機を切り抜けカプセルをヤマトに届けるという展開です。

この作では〈人類滅亡まで一年〉の定義を『最後のひとりが死ぬとき』でなく『すべての女が子を産めなくなるとき』及び『すべての子供が白血病に侵されるとき』であり、そのリミットが共にあと一年であるとします。ヤマトが九ヶ月で帰還できるならまだ生きている人のほとんどを救えるのですが、しかし一日遅れるごとに十万の子が病に倒れ、百万の女が出産不能になる設定です。ゆえにヤマトはこの作では、子を救うための船としてイスカンダルを目指します。

なお、同じ作品を二次小説サイト〈ハーメルン〉と〈2.novelist.〉にも投稿しています。

Re: 頭痛の種 ( No.34 )
日時: 2020/04/14 00:07
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

「どのみちすぐに太陽系を出るわけにいかん」

第一艦橋で沖田が言った。見上げるメインスクリーンには太陽系の惑星の今の配置が図で表されているが、〈ヤマト〉がマゼランへ行くためにワープで出ていくべきはそれらのどの先でもない。〈イスカンダルへの道〉として示されている矢印は、黄道こうどうを囲む12の星座のどれとも違う方角へ向けて伸びている。

〈南〉だ。かつて、船乗りのマゼランが、吠え狂う海で見上げた方角――しかし沖田は続けて言う。

「この〈ヤマト〉は動かしたばかりだ。初期不具合の種がいくらでもひそんでいるに違いないのだからな。たとえば、これだ。いきなりひとつ頭の痛い報告が来た。波動砲の発射で薬室を破損し、撃てなくなったが、修理にはコスモナイトというレアメタルが必要という。これは木星のガリレオか土星のタイタンでしか採れぬものなのだそうだ。ゆえに入手しなければならんが、火星などに『ありますか』と電報を打つわけにはいかん」

〈電報〉とはレーザー通信を指す隠語だ。

南部が言う。「やはり最大出力で撃ったのがまずかったのではないでしょうか」

「そうだが、あれでよかったのだ。120パーセントだから威力も1.2倍ではなく、過充填をすることで倍にも高めるという話だったのだからな。ところがなんと、それ以上に出てしまった。100パーセントで撃ったのではこうはならなかったのだから、太陽系を出てしまってから120を撃ってしまうとそこで立ち往生することになる。マゼランへの道を半分も行ったところでコスモナイトがなくなったら、どこで手に入れるというんだ?」

一同はみな黙って聞いている。

「これが結果論なのは百も承知だが、いずれにしてもあのときは最大で撃つべきだったのだ。計画は動き出してしまったのだから、そのときそのときで最善の道を取るしかない。そして今は、できるうちにできる限りのテストをすべきときなのだ」と言って、それから付け加えた。「何しろこの船ときたら、床が傾いとったせいで水まわりがちゃんとしてるかどうかすらまだわからんくらいだからな」

というわけだった。これは予定の行動でもあり、特に大きな文句が出るはずもない。〈ヤマト〉は今しばらくは、各種のテストを行う場所を求めて火星から木星へと太陽系を回りながら進むことになる。

〈初期不具合〉にはある程度、事前に予想・警告がされているものもある。それらを潰していくだけでも大変な作業となるはずだった。予想外の不具合は、見つけた後で対処する他にない。

さて〈ヤマト〉には、存在そのものが不具合とでも呼ぶべきクルーがひとりいた。彼はまったく予定外の人員であり、船のすべてになんの適応もできずにいた。

どういうわけかその男が、この船の航空隊の隊長なのだ。

Re: 山本 ( No.35 )
日時: 2020/05/04 13:59
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

今の地球の地下都市で、ノックに応えて市民住宅のドアを開けると、思いつめた顔の女が『あなたは神を信じますか? ガミラスは実は人類を救いに来たとは思いませんか?』とよく聞いてくるという。ガミラスは実は神の使い。人類を滅ぼしに来たのは来たが、本当の目的は選ばれた者の魂だけをより高い世界へ連れていくことにある――滅亡がいよいよ間近となれば、そのようなことをかたる宗教が生まれ信者を増やすのは当然だった。

もとより、〈終末はもうすぐで、自分達の教団だけが人を救える〉などととなえるカルトはいつの世もあったのであり、その教祖がガミラスを『見よ、あれこそワタシが予言してきたものだ』と言えば信じてしまう人間は信じてしまう――それは侵略が始まった直後から起きていたのだが、ここへ来て〈ガミラス教〉に入信する者は急速に増しているという。

が、それは別の話だ。ノックとともに、

『鍵を解きました。ドアを開けていただけますか』

そう言われて古代が地下の市民住宅以下の、まさに寝て一畳な小部屋のドアを開けると、どうにも暗く思いつめた顔の女が立っていた。そして言うのが、

「山本 あきら三尉であります。あなたの僚機を務めさせていただきます」

「えーと……」

「まずはシャワーを。着替えをお持ちしました」

タオルや歯ブラシと一緒に、黒地に赤のコードが入ったパイロットスーツをたたんだものを渡される。古代は襟の記章を見た。

「これ、階級が違うんだけど」

「いえ。それで間違いありません」

ニコリともしない。ご案内しますと言ってサッサと歩いていく。古代はついていくしかなかった。

軍艦内の通路はまるで迷路である。それに狭いと決まっている。進んでいくと、白地に赤や緑のコードを付けた船内服のクルー達とすれ違う。互いに道をよけ合いながらでないとすれ違えない。誰もがかなり忙しげな早足だ。手に手にあれこれ道具を持って、連れ合い同士や艦内通話機でやりとりしている。怒鳴り合うような声がそこらじゅうから聞こえてきていた。

「なんか騒がしいね」

古代が言うと、

「火星の陰に入らなければできないテストがたくさんあるものですから。その準備だけでいま大変なところなんです」

「ははあ」

どうやらほんとに船に乗せられちまったらしい、と思った。それにしても、この宙に浮いてるらしい船の中で、おれってなんか〈浮いて〉ねえか?

「こちらです」シャワールームらしきところに着いた。「使い方はわかりますか?」

「と思うよ」

「一応OKは出ていますが、まだ完全に使える状態かどうかはわからないそうです。ひょっとすると熱湯などが出たりせぬとも限らないので、気を付けて使うようにとのことです」

何をどう気を付けるんだ、と言ってやりたい気がしたが、口に出さないことにした。エンジン熱のボイラーで湯をグラグラ沸かしているのを、冷たい水で適温に割って出す仕組みに違いない。それがもしちゃんと働いてくれなければ――。

しかし、『いいです遠慮します』などとも言えない。そんなこと言ったら何をされるかと思う。相手はパイロットスーツの肩をモリモリさせた筋肉女だ。古代に渡されたのと同じ黒地に赤のコードが入ったそれは、バイク乗りの革ツナギのようである。あれと同様、相当にスタイルがいい人間でないと似合わない。それに、相当に鍛えてないと。この山本というお姉さんはどちらも百点満点だろうが、

代わりに言った。「おれもこれを着ないとダメなの?」

「当然です」

冗談だろう、と思った。スタイルうんぬんは置くとしよう。古代もかつてはこれを着せられた人間であり、だからこれがどういうものか知っている。一度着るとトイレに行くとき困るのだ。いや、そういう問題じゃなく、

「おれ、こんなの着せられたって――」

「早くしてください」

冷たく睨みつけられた。古代はスゴスゴと従った。

シャワーを浴びて、あらためて服を確かめてみる。間違いなく戦闘機用のパイロットスーツだ。これは宇宙服であり、着れば外気は遮断される。しかしそれではサウナスーツになってしまうので、裏に細いチューブを織った層が重ねられており、空気を循環させて通気を保つ仕組みになっている。

そしてそれが戦闘機のコンピュータと繋がると、あちらこちらで膨らんで体の随所を締めつける。そうすることで体の中で血がかたよるのを抑え、戦闘機動の強いGから操縦者を守るのだ。

つまりこれは耐Gスーツなのでもあった。それにしてもこの階級章。

おれが本当に戦闘機隊の隊長なのか? そんなバカな――。

古代は思わずにいられなかった。

Re: 加藤 ( No.36 )
日時: 2020/09/05 10:42
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

「つまり、そこに並んでいるこの止め具が、全部しっかりロックするか確かめなきゃいけないわけだな? そうしないとまた空気を満たしたときに、扉がバンと外に開いちゃうかもしれないと」

「そうなんだけど、それにはまず、この油圧が無重力下でちゃんと動くか見なければいけないんだ! それと、真空にしたときに――」

〈ヤマト〉艦底の格納庫だ。翼をたたんだ〈タイガー〉が何十機もヒシめいて、段に積み重なっている。

「こんなところにだいたいこう無理矢理に詰め込んじまってるんだからな。もしひとつでも正常に働かないものがあったら――」

そんな声が飛び交う中、古代は山本の後を追って庫内を抜けていくしかなかった。すると向こうに黒い服の一団が見える。古代達と同じ戦闘機スーツだが、識別コードの色は黄色。

「で、このリフトがこう動いて機体を降ろして、アームがギアをひっかけるわけだ。その後はこっちの牽引機が機を引っ張って発艦ゲートに送る。ここまでは地上でできたわけだよな」

「そうです。だから宇宙でも問題なくそれができるかどうかというのと、その先ですね。二機三機とちゃんと続けてやれるのかどうか。ゲートの向こうは真空で重力もないわけですから、そこで――」

黒服と発艦作業員らしき者達が話している。山本はそれに近づいて言った。

「加藤二尉。古代隊長をお連れしました」

古代はその『カトウ』と呼ばれた者の顔に見覚えがあった。〈がんもどき〉で地上に降りたときに自分に拳銃を突きつけた男だ。尾翼に《隼》のマーキングをした〈タイガー〉のパイロット。

彼は山本に応えなかった。チラリと古代を見たものの、横顔を向けたまま作業員とのやりとりを続ける。

山本がまた言った。「二尉。隊長をお連れしましたが」

「なんだ」と言った。「おれは忙しい。後にしてくれ」

古代はまわりを見た。黒いパイロットスーツの者達がみなソッポを向く。

誰も口を利かなかった。騒がしい格納庫の中が、古代の周囲だけ静まった。加藤と呼ばれた男ひとりだけ、作業員と話していたが、その相手も黙ってしまう。

それで初めて、加藤は山本に顔を向けた。だが古代には眼もくれない。

「ここは〈タイガー〉の格納庫だ。〈ゼロ〉の搭乗員がなんの用だ」

「隊長をお連れしましたが」

「知らないな。隊長なら、お前がやればいいだろう。おれは別にかまわない」

「そういうわけにはいきません」

「もちろんだ。しかし、どうすると言うんだ。坂井隊長は亡くなられた」

「ですから――」

山本が言うのを手を挙げて遮った。

「〈がんもどき〉のパイロットがここに紛れ込んでるようだ。連れ出してくれ」

作業員に向き直る。

「で、続きだが、本来なら発艦は船の前部からやるべきところ、それができなかったので、離着艦ともに後ろの扉でやらなければならなくなったと。その代わりに導入したのがこの装置で、つまり空中給油機のようなアームで機を引っ張り上げる……」

「あ、ああ、はい……」

作業員が戸惑いげに受け応える。山本はしばらくやりとりを見ていたが、

「わかりました。行きましょう」

言ってきびすを返した。古代をうながして歩き出す。

むろん、ついて行くしかなかった。古代にも、今のが何かわかっていた。軍においてその階級は絶対だ。古代が一尉で加藤という男が二尉、山本を含むその他大勢が三尉となれば、つまり古代がこの中でなら絶対君主。そういうものと決まっている。決まっているが、現実は、そうと決まっていないのだ。きのうまで古代は一応二尉だった。だががんもどきパイロットが二尉だといってそれがなんだ。戦闘機に乗る人間がはなもひっかけるものじゃない。

ましてやそれが今日から一尉で隊長だと? トップガンのタイガー乗りの連中がそんなもの受け入れるわけがないではないか。

自分はシカトを食らったのだ。それが当然のことなのだ。古代は思った。ホラ見ろだいたいこういうことになるんじゃないかと思ったんだよ。なんとかおれだけこの船を降ろしてもらうっつーわけにはいかんもんかな。あの加藤という男、拳銃を突きつけたときおれに言った。『この船を見たからには帰さない』と。だがもう秘密もへったくれもないんじゃないのか?

それにしても、もう格納庫全体が、ほぼ静まってしまっていた。古代と山本が進むのを、役割ごとに色の違うヘルメットとベストを着けた作業員がヒソヒソと何か互いにささやき合いながら眼を向けてくる。

なんだ?と思った。別に作業員にまで、れ物みたいに見られなくてもいいはずでは……考えてると、山本が言った。

「ここではどのみち、わたし達のすべき仕事はありません。ここは〈タイガー〉の専用区画で、すべてが主力艦載機である〈タイガー〉を円滑に整備・離着艦させるように造られています。それを阻害するようなものは一切あってはならないわけです。たとえば、他の戦闘機のような」

「ははあ」

「隊長には〈ゼロ〉に乗っていただきます。今からそこにご案内します」

Re: コスモゼロ ( No.37 )
日時: 2020/09/06 20:57
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

艦底部の〈タイガー〉専用デッキと比べて、はるかに狭い格納庫。二機並んで置かれているのは、銀色に光る戦闘機だった。主翼も尾翼もたたみ込んで、もはや折りたたみの傘をすぼめたようになってる機体が、カタパルトへ送るためのリフトに固定されている。狭い庫内はその二機だけで一杯だ。

「これがわたしと隊長が搭乗する機です」山本が言う。「九九式支援艦上戦闘機。数年前から試作型が〈コスモゼロ〉と呼ばれていたものが、つい最近制式採用されました」

「へえ」と言った。「〈コスモナインティナイン〉じゃダメなの?」

応えず、「この機体は〈タイガー〉と違い、艦の後方上部にある発進台を用いて離着艦します。旧戦艦〈大和〉では観測機のカタパルトがあった場所です」

「せんかんやまと」

「はい。その形に合わせて船を設計しなければならない事情があったために、このようなやり方を取らなければならなかったと聞いております」

「だからなんで……」

「〈ゼロ〉と〈タイガー〉では機体の性格が大きく異なります。〈タイガー〉は基本的に船を護るための戦闘機で数を多く必要としますが、〈ゼロ〉は攻撃をむねとするため最小限でいいわけです。〈ヤマト〉の任務はイスカンダルへ行くことですので、防御が優先されるわけです」

「そういうことを聞いてんじゃないけど」古代は〈ゼロ〉と呼ばれた機体をながめた。どことなくエビやシャコかヤゴのたぐいに翼を生やしたように見える。「つまり、これって、攻撃機だよね。戦闘機じゃないよね」

「戦闘攻撃機ですよ」

「まだ〈タイガー〉の方がいい」

「隊長はこちらに乗ると決まってるんです」

「それだよ」と言った。「さっきの見たでしょう。ああなると思ったよ。おれが隊長になれるわけないじゃないっすか」

「わたしに敬語を使う必要はありません」

「だって、おれなんかがんもどきだし」

「今は航空隊長です」

「だからさ……」

「艦長がお決めになられたことです」

「艦長が決めた? ってなんなんだあの艦長は。艦長が死ねと言ったら君は死ぬのか」

「もちろんです」

「いや……」詰まった。「あのさ」

「なんでしょう」

黙って次の言葉を待ってる。古代は困った。少し考えてようやく言った。

「この船の航空隊長って、いちばん最初にカミカゼ特攻させられる役って意味じゃないよね?」

「なんですかそれは」

「だってこの船、気味が悪くて……本当にあの沈没船まんまな形してるわけ?」

「そうですが」

「おかしいでしょ。それってさ、水に浮くための形だよね。宇宙を飛ぶ形じゃないよね」

「そう言われると困りますが」

「言われないと困らないの? 君らおかしいよ、やっぱり。まるで玉砕覚悟っていう感じ……ほんとはこの〈ヤマト〉って、船ごとどっかへ特攻かけるための船じゃないんだろうね」

「イスカンダルへ行くための船です」

「ははは」笑った。「冗談だろう」

「冗談ではありません」

「だってまさか、そんなこと、本気で考えてるなんて――」

「古代一尉」と言った。「発言にはお気を付けになられるべきと思います。今はわたしがいるだけだからいいですが、他の者の眼があるときに不用意なことは言わない方が」

「おれは本来この船に乗る人間じゃないんだよ」

「理解しております。ですから申し上げたまでです」

古代は黙った。山本も口をつぐんでいた。しばらくの間沈黙が流れた。

古代は首を振り、それから言った。「おれはこんなもん乗れない」

「あなたは腕がいいはずです」

「そういう問題じゃない。わかってるはずだ」

「いいえ。あなたも軍人ならば戦うべきです」

「ほんとの隊長みたいにか」

「どういう意味かわかりませんが」

「おれが言うのは、『これにほんとに乗るはずだった人間みたいに』ってことだ。あのとき、おれを護るために、無人機に突っ込んだ……」

「坂井一尉は、〈コア〉を護るためにそうしたのです。あなたのためではありません」

「同じことだ! おれにもあれをやれって言うのか!」

「そんなつもりはありませんが」

「ははは」笑った。「やっぱり、カミカゼ特攻機じゃないか。冗談じゃない。おれはイヤだ」

「古代一尉……」

「やめろ! おれはそんなんじゃない!」

「あなたの他にいないんです」

「なんでだよ! タイガー乗りがいくらでもいるだろ!」

「そういう問題ではありません。わかってるはずです」

「わかるかよ! どうしておれってことになるんだ!」

「ですからその……」と言ってまごつく。ちょっと詰まったようだった。

「ほら見ろ。ほんとの隊長が死んだからだろう。なんでおれが代わりなんだよ」

「艦長がお決めに……」言いかけて〈まずい〉と思った顔になる。

「ほうら見ろ」とまた言った。「やっぱり思ってるんだな? おれのせいでほんとの隊長が死んだんだと。だからおれにも死ねって言うつもりなんだ」

「そんなことは……」

「そうだ」と言った。「あの下にいたやつら……」

「古代一尉。あれはあなたのせいなどでは……」

「みんな思ってる。そうなんだな? この船のクルーみんながみんな。隊長だけじゃない、沖縄の基地で千人が死んだのはおれのせいだって。おれがあんなカプセルを拾ってこなければ……」

「違います! 誰もそんなこと思ってません!」

「いや、思ってる! 思ってるんだ! そうでなきゃ――」

「古代一尉!」

「やめろ! ごまかそうとするな!」

「あの〈コア〉には地球の運命がかかっていたんです!」

「それがなんだ! 知ったことか! おれになんの関係がある!」

「地球のためだったんです! 人類を救うためにああしたんです!」

「同じことだろうが! これならおれはあのとき死んだ方がよかった!」

「そんなこと言わないでください!」

山本は叫んだ。もはや悲鳴だった。涙をこぼし、顔を覆ってうつむいてしまった。

「お願いだから」首を振りながらつぶやいた。「あなたにそう言われてしまったら、死んだ人達が哀し過ぎる……」

「その……」

と古代は言った。しかし後が続かなかった。嗚咽おえつを漏らす山本にかける言葉もなく、ただ庫内を見渡した。しかし銀色の戦闘機しかない。

泣き声がいくらかおさまったところで言った。「あの艦長は何を考えてるんだ。おれが〈タイガー〉のパイロットから認められるわけがないってわからなかったのか」

「わたしにはわかりません」

「それに、これだ。とにかくこんなの、おれに乗れるわけがない」

「いいえ」と言った。「一尉には、まずこの機体のシュミレーターによる訓練を受けてもらいます」

「はあ」と言った。「シュミレーターね」

また思った。ほんとにあのヒゲの艦長とかいうの、何を考えているんだか……。

Re: 沖田は何を考えている ( No.38 )
日時: 2020/09/07 20:20
名前: 島田イスケ (ID: y0qltvGJ)

「沖田は何を考えとるのだ!」

地球防衛軍司令部。会議室ではテーブルを囲む幕僚達が怒鳴り声を上げていた。

「いきなり波動砲を使うとは! 切り札を最初に敵にさらしてどうするというんだ!」

「それにあの空母! 生け捕りにできるチャンスだったというのに。波動砲で吹き飛ばしてしまったのでは残骸も残らん!」

「試射をするにも別のやり方があったろうに! 木星の夜の面にでも撃つとか――」

「それは二時間で〈朝〉になるだけだ」

「そういう問題ではない! 冥王星まで秘匿すべきだったのだ!」

「どうかな。それはただ秘匿のための秘匿にしかならなかったとは思うが」

「別の問題もある! あのせいで、火星の徹底抗戦派がまたわめき出したのだ。〈メ二号作戦〉をやろうとな。『〈ヤマト〉を囲んで二ヶ月かけて冥王星まで艦隊で行く。波動砲が届く距離まで必ず〈ヤマト〉を護ってみせる。その後〈ヤマト〉がワープするまで持ちこたえればいいのだろう』と――まったく、信じられん話だ。冥王星は確かに消し飛ばせるかもしれんよ。だが今ある地球の船はみんな沈んでしまうではないか。またガミラスがやって来たとき誰が地球を護るというのだ」

「その通り。〈メ二号〉は問題外だ。冥王星をやろうとしたら、〈ヤマト〉だけで行かすしかない」

「そういう話になってしまうということをなぜ早くによく考えてみなかったのだ! 波動砲の完成ばかり気をかまけていたからだろう。戦闘機に護らせればいいなどと精神論で考えるから――」

「今更それを言ったところで始まるまい」

――と、「まあ待て。今は、沖田が何を考えているかの話だ。沖縄基地で何十人かのクルーが死んでしまったな。その中に副長の南雲と航空隊長の坂井が含まれているのがわかった」

「なんだと? 今は副長なしか」「いや待て。死亡した分は、発進前になんとか補充したはずではないか。沖田に請われて急ぎかき集めたのではなかったか?」

「そうだ。だが沖田の要請の中に、代わりの副長と〈ゼロ〉のパイロットがなかった」

「どういうことだ。副長なしにあれだけ大きな船が運用できるのか」

「いや、それなんだが、副長についてはわからなくもないのだ。〈ヤマト〉のすべてを知る人間など確保しようがないのだからな。沖田の補佐には軍人としてのスキル以前に、あの船の中を迷わず歩けて主な乗員の顔と名前を知ってることが必要になる。そんな人間どこにもいるわけないのだから代わりを手配しようがない」

「理屈を言えばそうかもしれんが……」

「おおかたこの島か南部というのを副長にして、副操舵長か副砲雷長を引き上げたというところだろう。それをこちらに黙っていたということだ。それも気にかかることではあるが、それ以上に〈ゼロ〉のパイロットだ。この代わりを言ってこなかったのがわからん」

「〈タイガー〉のパイロットがいるだろう。代わりに乗せればいいではないか」

「そういうわけにはいかんのだよ。たとえばテレビのリモコンひとつとってみろ。機種を変えたら、ボタンの位置はぜんぜん変わってしまうではないか。ましてやあのボタンを全部使ってみたことがあるかね。だが戦闘機パイロットは、その機体が持つあらゆる機能を完璧に使いこなせねばいかん。それも、目をつむってな。そこまで〈タイガー〉に習熟した人間を〈ゼロ〉に慣れ直させるのは、一ヶ月やそこらでできることではないのだ」

「ふうむ。〈ゼロ〉のパイロットなら代わりの手配もできたはずだな」

「そうだ。なのに沖田は要請もしてこなかった」

「それはどういうことなのだ?」

「わからんからおかしいと言っているんだ。だが『何を考えてるか』と通信で聞くわけにもいくまい。敵もそうだが、火星の徹底抗戦派などに聞かれたらどうする」

幕僚達は議論を続ける。しかし、〈ヤマト〉が飛び立った今、沖田が何を考えていようと彼らにはどうすることもできないのである。ゆえに会議は不毛だった。テーブルには、大型プロジェクターによる宇宙の立体映像の他、各自のコンピュータ端末器や電子メモパッド、紙の資料といったものが広げられている。その中に、沖縄で死んだ人員の代わりに〈ヤマト〉に急遽補充された数十名のデータがあった。

五十音順に並んだリストの末尾に、機関員の藪助治の名前が記されていた。


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