SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
雨、というその日に。 ( No.1 )
- 日時: 2015/11/01 21:23
- 名前: miNoRi
- 参照: http://shousetu/5564/j-w
ある日、君は言ったんだ。
__雨の降らない世界はあるのかな
雨上がりの虹を見上げて言ったんだ。
彼女の名前は、柴橋れい。
少し目の青い、キリッとした顔立ちの黒髪の少女。
「今日も雨ですか」
いつも同じバス停から乗る、という共通点から次第に話すようになっていった。
話を聞けば彼女は雨が嫌いだそう。
「なんで嫌いなんですか」
そう聞いたけど、笑って誤魔化された。
いつも赤いリボンのついた制服を着ている。
どこの学校かは知らないが年は近そうだ。
・
・
「おっはー!ひなた〜!」
雨で憂鬱だっていうのに、幼馴染みの源はいつものように暑苦しい。
「日向〜!お前もっと笑えよー!」
日向。
彼女は雨が嫌いだが、晴れは好きなのだろうか。
好きか嫌い、ただそれだけなのにどうしても気になるのは
この名前のせいだと俺は思う。
晴碕日向。
彼女には言いたくない名前。
だって、思いっきし " 晴れ " って感じがするじゃん。
なんか恥ずかしい。
つまり無理。
毎朝、バス停で会う彼女には
日向、とだけ言っておいた。
そしたら『いい名前だね』って微笑んでくれた。
でもそういうってことは、やっぱり晴れが好きなんだろうか。
・
・
「おはよ、日向くん」
今日も彼女はいた。
「今日は雨だね」
傘を差しながら、またいつものように微笑む。
その微笑みがなによりも僕が好きな顔。
「日向くんて、いつも濡れてるってイメージしかない」
笑いながら言われた言葉。
「ふは、なんで?」
「んー、なんとなく?」
「なにそれ」
僕は笑った。
「そういえば日向くんは雨好きなの?」
「え、違う…けど」
「そうなの?ずっと好きだって勘違いしてた」
「俺、雨好きだって言ってた?」
彼女は首を横にふる
「日向くん、雨のときものすごく可愛く笑うから」
か。かわ……
「可愛くねぇし!」
これがはじめて彼女にみせた照れ隠し
「そ、そういう柴橋さんこそ、雨好きそうだし」
違うよ、って困らせるつもり
だった
のに
「好きだよ」
思ってもみない言葉が返ってきた。
「嫌いだけど、好き…みたいなね」
雨の日に見せた彼女の小悪魔みたいな笑顔は
僕を虜にさせた。
その日、君は言ったんだ。
__晴れのない世界はあるのかな
雨上がりの空を見上げて言ったんだ。
fin.