SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

Memorialdays ( No.11 )

日時: 2015/11/02 20:53
名前:

有難う


御免なさい



遅過ぎた言葉。

街から隔絶された様な土砂降りの中。

目の前で力尽きた彼の前で零れた言葉。

ずっと護ってくれたのにね

何時だって傍に居た

喜怒哀楽を共にして

一緒に生きて



ずっと一緒だって誓ったでしょ?



其の言葉は私の口から出て来ない。

彼が逝ったのは私のせいだって解ってるから。

笑ってる私が好きだって

彼は伝えてくれたけど

如何しても笑えないよ

彼が何事も無かったかの様に起きてくれたらどんなに良かっただろう。

またあの毎日が繰り返せたらどんなに嬉しかっただろう。

もっと早く此の日常が幸せなんだって気づけたらどんなに良かったのだろう?

泣いて哭いて泣いて、濡れるアスファルトに同化した私は、

戯言に本気で縋って居た。

身体の感覚さえ如何でも良くなった。

倒れた彼を抱き締めて只慟哭する私は、

最後の感触を確かめて居た。


長い体に



ふわふわの茶色い毛。

少し垂れた愛らしい耳に、

二度と開く事の無い瞳。



私は、人生を共に歩んで来た―



遂に力尽きた愛犬を抱いて居た。



有難う

御免なさい

私が好きだって

何時も励ましてくれて

冷え切った私の心を癒してくれて

どれだけの感謝を、私は言いそびれて来たのだろう

もう遅いんだって

もう届かないんだって

今更愛しい手を握り締めて

聞こえてるって狂った様に聞いたって

泣き叫びながら現実を目の当たりにしたって

変わらないんだって

解ってるんだよ

認めたく無いだけで

今は只

何よりも愛しくて大事な貴方を抱きながら

紡いだ思い出に浸って

泣き崩れる事を

許してね







最高の笑顔で笑ってみせた

頬を伝う涙等気にしない侭

メンテ