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SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
無彩色と白。 ( No.12 )
- 日時: 2015/11/02 21:09
- 名前: とある
―――…君に出会うまで、僕の世界は嘘だらけだった。
自分に背を向けて、人を欺いて、気づけば”自分”がなんなのか全くわからなくなって僕は救いようのない暗闇をずっと彷徨っていた。
少し、希望を持っていた目はまるで蝕まれるかのように黒に染まって行って―――。
そんな時、君と出会ったんだ。
君の第一印象は、”白”
何でだろうね、―――それはきっと僕が醜い黒色だったからかもしれない。
君と出会ってから僕の世界には色が戻り始めてきた。
楽しくて、楽しくて、いつまでもこの時間が続けばいいと思った。
だけど
別れは
唐突で
あれは、君と出会って二度目の雪の振る日だった。
待っても、待っても君は来なくて。
僕は、また黒に蝕まれそうになった。
でもね―――。
”黒”に蝕まれそうになると君との思い出で僕の世界は色鮮やかに光る。
春に見た桜。
夏の海。
秋の紅葉。
冬の雪。
どの思い出にも必ず―――君の笑顔が映っていて。
――――君がいなくなってきた五度目の春。
相変わらず僕は毎年ここに来るけど、君は来ない。
ザァッ…
温かい春風が吹く
――――…春風の中には微かに、君の香りがした。
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