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SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
お別れ ( No.3 )
- 日時: 2015/11/02 06:57
- 名前: 奏音
――さようなら。 君とはもう、会えないんだ。
こんなひどい嘘。彼の口から出るわけない。
彼は優しくって嘘なんてつかない人。
それに嘘なんてついたとしても目が泳いですぐわかる。
なのに今は…
いつもみたいに目が泳いでいない。
その、綺麗な目は私を見ている。
「大分、嘘つくのが上手くなったね」
涙が目に溜まる。声が震える。
「嘘じゃない。 君とはもうお別れなんだ」
『嫌だ』声に出そうとしても声に出ない。
声がのどに張り付いて何も出ない。
ただ、出るのは目から溢れだす涙だけ。
幼馴染の彼。
昔からいつも一緒だった。
優しくって嘘が下手で、いろんなことに人一倍努力して。
そんな彼が大好きだった。
彼と離ればなれになるのはもっと先かと思ってた。
まだ、ずっと一緒に居られると思ってた。
お別れなんて…
「嫌だよ」
涙を流しながらそう呟く。
彼は困った顔をして『ごめん』という。
そんな顔しないでよ。
私がもっと悲しくなっちゃうからさ。
本当にお別れだとしたら。
いつもみたいに笑っててよ。ね?
――fin
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