SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

花言葉に想いをのせて ( No.32 )

日時: 2015/11/08 11:36
名前: あると ◆9cjbSd9YrQ

声は、思いを届ける大切なもの。
自分だけのもの。
何にも変えられない、大事な大事なタカラモノ。

でも。

私は声を失った。
ある日の事故で、声が出なくなってしまった。
医師は、もう、二度と治ることはないと言う。
私は、タカラモノを失ったんだ。

目が見える。
耳が聞こえる。
笑える。泣ける。
そんなあたりまえのことができる。
でも、声が出ない。
笑えても、泣けても、
もう私は
誰かと喜びや悲しみを分かち合うことができない。
大好きな人と、喜びや悲しみを半分コできない。
今更のように、知ったんだ。
「私には、もう、言葉がないんだ」


だけど、そうじゃなかった。
確かに、言葉は喋れない。
喋ることはもう二度とできない。
それでも私は、
「伝えることができる」

だから、大好きな人に伝えたい。
私を支えてくれた、大切な人に届けたい。
私の想いをこの花にのせて。


花言葉って知っている?
ひとつひとつに、たくさんの意味が込められているんだよ。
そんな話を聞いたことがある。
私には、これしかないと思った。
伝えるなら手紙。
きっと、みんなはそう言うけれど。
私の言葉は花だから。


花言葉は、私の想いを届けてくれる。
言葉にしなくても、花言葉に想いをのせれば、
花は雄弁に語りだす。

声は思いを届ける。
花は想いを届ける。
だから、今、大好きな君にこの花を贈ります。
サルスベリ。花言葉は、

『あなたを信じる』

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