SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

二人は確かに愛し合った ( No.36 )

日時: 2015/11/09 21:50
名前: 希都

彼女と付き合い始めて5年が経って俺が25歳の時、もともとある病気だった俺は余命1か月と診断された。

嘘であってほしかった。
だけど、隣で泣いている彼女を見て嘘なんかじゃないって実感した。
彼女が泣いてる。
抱き締めたいのに俺はベッドに寝て見てることしか、手を握ってあげることしかできない。
・・・残りの時間、彼女に何をしてあげられるだろうか。

考えた挙げ句、手紙を書くことにした。
一日一日書いては消しての繰り返し。

自分の体が自分で動かなくなるときまで繰り返してた。

意識も朦朧としてきてもう終わりかなって思う日が多くなった。
その度に彼女は泣きそうになるんだ。




今日も意識が朦朧とする。
次第に何処にも力が入らなくなる。

うっすらと見えたのは彼女が泣いている顔だった。

あぁ、ごめん。
もう駄目みたいだ。

【拝啓 愛しき人
 手紙でごめん。直接言わなきゃいけないんだけど恥ずかしいし、もう時間がないからさ。
今までありがとな。
5年間すっげぇ幸せだった。
でもできれば一緒に年をとりたかったなっておもったりした。


あのさ、幸せになれよ。
お前の隣にいるのが俺じゃなくてもいい。お前に新しい彼氏ができて、結婚して、子供ができて。
幸せに向かってくれ。幸せになってほしい。

泣いてないか、きちんと笑っているか、落ち込んでいないか。
傍にいてやれないけど、俺は君を想う。

ありがとう。
ありがとう。
最後までありがとう。
さよなら。

願わくは君に幸せが訪れることを】


次の日。
昨日まで男性が寝ていた病院のベッドは綺麗に畳まれていた。
その横で
手紙を大事そうに抱きしめた一人の女性が、

静かに涙を流していた。

fin.

メンテ