SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
離れていくあなたへ贈るサヨナラ ( No.47 )
- 日時: 2015/11/21 17:05
- 名前: 妖眼美
(さよなら、あなた)
遠ざかるあなたの背中を見ながら、私は心の中でそう呟くことしかできなかった。手を振りたいと思う意志を振り払い、あなたの背から視線を外す。まだ冬の名残が残っている風を受けながら、蕾を震わす木々の合間の道を行く。
幸せそうな恋人たちが手を取り、語り合う道であなたと今日別れた。
前を向かなければ、振り返ってしまえば上手く歩けない。
ホントは声に出して引き止めたかった。
――――あなたの夢についていきたいと
あなたの真剣な眼差しを見て、言葉を失って、別れた。
迎えに来ると言ったあなたのセリフ。
信じていないわけじゃない。でも、きっと私のことなんて忘れてしまう。
馬鹿だなぁ、私。
あたりまえの温もりを失くして、初めて気づく。あなたへの愛。
寂しさを噛み締めて、道を歩く。
溢れ出す涙があなたとの思い出を遮るようで、あなたのさっきの笑顔を思い出す。
またいつか、夢叶えた日に会おう″
今日まで何度も傷付け合いながら、その度許し合った。
だからこそ、あなたのその言葉は美しい過去として終わらせたいと思わせた。
いつでも互いに手を取り合った私たち。
またいつかだなんて、別れるための言葉。
どうして言ったの?
我侭だって貶されてもいい。
私はそんな言葉欲しくなかった。
あなたが旅立った今日。
私は願う、あなたの夢が叶うことを。
そして、私が旅立てることを。
あなたが、あなたでいてくれるなら、
もし私が何かに敗れて、諦めてしまったなら、
あなたはそこから叱って欲しい。
あの日々のように。
あなたが指差す未来に希望があって、私はそれを取りに行く。
忘れ物のように落ちているはずだから。
一人で抱え込んで、泣きたくなったときは思い出すから。
二人で歩んだ、あの日の私たちを。
叶わない約束事に、またいつか"の儚さを重ねてしまっても、私は決して忘れない。
――――私の記憶にあなたがいないページはないのだから
溢れた涙をぬぐうあなたはいない。
もう見えない愛しい人に残す言葉は、
ありがとう
さぁ、行こうか。立ち止まるよりもはやく、歩き出さなければ。
私たちの絆は、思い出の中にあるのだから。