SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】
「明日の彼方」 ( No.49 )
- 日時: 2015/11/22 17:59
- 名前: とりけらとぷす
「明日の彼方」
”僕は今、地平線の上に立っている”
何処かの、誰かが言っていた言葉。
きっと今の私もそうだ。何の変化もない地平線のような場所に立って、生きている。
つまらない。世界はいつも濁って見えて。
高校生活を始めて早半年、周りが落ち着いてきたこの頃、私は無償に寂しかった。
友達も出来た。両親もいる。家もある。
私は他に何を望むことがあるだろう。
何もかも持っている。持っているはずなのに。
私はいつも、一人ぼっちなんだ。
昼休み、私は友達2人とお昼ご飯を食べていた。
日向の当たる窓側での昼食は、明るくてとても眩しい。交わす会話はドラマであったり、アイドルであったり、コイバナであったりと、誰もが思い描くようなごく普通の高校生活の1ページ。
でもーーー私は、ふと不安になる。私は、ここにいていいですか?
もちろん、誰も私を阻害しようなんて考えている子などいない。でも……彼女たちの目に、私は映っていないように思えた。
会話を交わす時、友達2人だけで会話しているように見える。もちろん、私も入っているのだけれど、2人の目には、それぞれお互いが映っていた。
そう、私は映っていない。
気のせい。きっと気のせいだと、自分に言い聞かせた。
でも、これは自分のせいなんだ。私は、わかっていた。
知らず知らずに硬い壁を作ってしまって、でも、それを開けるための鍵は何処かへ落としてしまっていた。
自分ではどうしようも出来ないこと。そう、壊してしまえばいい。壊してしまえばいいのだけれど。
私には、それが出来なかった。
そんなことを悩みながら歩いていた一人の帰り道。
前を通っていった大型トラックの排気ガスが鼻を刺した。排気ガスの匂い。それは、私の気分をより悲しくさせた。
元に戻りたい。小さかった頃の私に。
そう強く思った時、制服のポケットからブーブーとバイブ音がしているのに気がついた。
ケータイを取り出すと、そこには”ホタル”の文字。
私は通話ボタンを押し、耳に当てた。
『久しぶり!元気だった?』
電話の向こうから聞こえる声はとても明るかった。
ホタルは、私の幼稚園からの幼なじみだった。
懐かしい声。一ヶ月前に文化祭で出会っているのに、とても懐かしく思えた。
「うん!元気元気」
嘘。元気じゃない。でも、自然とこんな言葉が出てしまっていた。でも、彼女の前では明るくしていたかった。
『…大丈夫?』
ホタルの返事はこうだった。唾を飲み込む。ああ、そうか。15年も一緒にいたら、バレちゃうか。
「大丈夫だよ」
『本当に?』
「…うん。ありがとう」
私の目には、少しだけ涙が浮かんでいた。そっか。そうだった。私の事を、ちゃんと見てくれている人もいるんだった。
ホタルとはそれから5分ほど話して私は電話を切った。
電話の向こうでは、明るく騒ぐようなホタルの友達の声が度々聞こえた。
そう、私も前を向かなきゃいけない。
もっと自分から色々な人に話しかけるんだ。
自分の壁は、自分で壊す。どこかで落とした心の鍵なんていらない。そんなもので開けなくても、そんなもの、自分で粉々にしてしまえばいい。
夕焼けが町を紅に染めていた。夕闇が迫ってくる。私はその闇に呑まれないように、後ろを向いて歩き出した。
ーあとがきー
最近スランプなのか何なのか全然書けなくて、何も考えずに書いたのがこれです。なので、全然凝っていないし、拙文となってしまいましたが。
そんな事はさて置き、皆さん最近悩んでいることなどないですか?少し冷たくなってきたこの頃、気分も沈みがちなものです。
悩んでいて、それを解決…とまではいきませんが、少しでも明るい方へ歩いていく人が書きたくて書きました。なんの面白みもない日常。主人公はこの先、自分を変えることが出来たのでしょうか?
と、これ以上書いてしまうと長くなりますので、この辺で。
お手に取っていただきありがとうございました。